この家に越したとて
あと30回、杜若を愛でられれば、というだけの
木漏れ日の陰にゆらゆらと揺蕩う緑紫
ゆらゆらと日向、日陰を行きつ戻りつ
若年からチアノーゼ、に至るだけの
瞼を閉じて残像が残るかのように 私の存在が残るのならば
杜若が死者の返りを示す彼岸花になりえるだろうに
付記:杜若(かきつばた)、「揺蕩(たゆた)う」、「日向(ひなた)」、「日陰(ひかげ)」、チアノーゼは人が紫になる、「瞼(まぶた)」 杜若が細かく枝分かれした花弁を持てば彼岸花に近づくように観える、との想いをこめて。