新聞記事から (東京板橋の建設会社の社員寮での両親殺害で思う・・)
おおらかな共生
著書で、講演で、「適度な不衛生の勧め」を説く。インドネシアに通い続けて、たどりついた持論だ。「最初は、こんな所二度と来るか、と思いました」68年、熱帯病調査でカリマンタン(ボルネオ)島を訪れた。 川べりの宿舎。トイレは板1枚で川につながる天然水洗で、しゃがむと真下に「餌」目当ての魚が群れる。洗面も行水もその川の水。気持ち悪くて歯も磨けない。食卓の魚を見れば、いやでも「餌」が頭に浮かんだ。 「それが、帰国して半年で、大地に根ざした知恵とおおらかさが恋しくなったんです」。以来、米留学中の2年を除き、毎年インドネシアに出かけている。 ある晩、宿舎で旅行カバンごと全財産が消えた。侵入盗の仕業らしい。困っていると、知人がまじない師を呼んできた。「裸で水をかぶり、いやしい心を清めなさい」 まじない師の言いつけ通りにすると、翌朝、全財産が戻っていた。泥棒も、まじない料の分け前にあずかっていたこと、周囲がみんなカラクリを承知だったことを、あとで知った。 「憎めないでしょ。トンチみたいな手口の泥棒がいっぱいいる」 「でも、いまわしい犯罪の話は聞かない。親殺し、幼児虐待、快楽殺人には無縁の社会です。金持ちも病人も、老人も泥棒も、おおらかに共生しているから」 いまの日本は「排除の社会」に見える。においや汚れを許さない、行き過ぎた清潔志向が、体と心をむしばんでいると思う。 「島でトイレにつながる川の水を調べたんです」。大腸菌が以外に少ないので驚いた。「多種の菌が共生して、調和ある生態系が出来ているんですよ」
寄生虫学者 藤田 紘一郎さん (人間総合科学大学教授。旧満州生まれ。「寄生虫がヒトのアレルギーを抑える」との説を発表、自らの体内にサナダムシを飼い続ける。著書に「笑うカイチュウ」「清潔はビョウキだ」「ウッふん」など。65歳。
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