Dance日記帳
モクジ|キノウ|ヨクジツ
僅かずつ、渡米の準備。 去年はイタリアに行ってしまったので、2年ぶり。 今回はMDSのメンバーも一緒の賑やかな旅。
事前情報は抜かり無く。 現地のダンススタジオの情報をネットで調べた。
私の古巣のスタジオは、いくつものスペースがあり、同じ時間帯にいろいろなクラスレッスンがある。 事前にタイムテーブルを調べ、どの時間にどのクラスを受けるか、計画しておかなければ現地にて混乱する。
パソコンの画面に映し出された文字を見つけ、驚喜した。 何かの間違いだろうと、何度も読み直した。 そこに記されている文字は「Marta」という懐かしい文字。 まさかと思いつつ、インストラクター一覧をチェックする。 間違いがない。「Cecilia Marta」と、顔写真までがはっきりとブラウザに映し出された。 思慕の想いに、胸が熱くなる。
NY留学を心に決めた大きな理由のひとつが此処にある。
10代の終わりにジャズダンスを始めることになった私は、彼女に出会った。 忘れもしない新宿のシアターで、手伝いの合間、リハーサルを垣間見、彼女の躍動を目にして、全身に鳥肌が立った感触を今も新鮮に覚えている。 クラシック出身の私は、何処かでジャズへの理解を拒否していた部分があったのだ。其れを全て打ち砕く、其のような衝撃的な踊りだった。 柔らかく、しなやかで、そして、強靭な。「美しい」だとか「カッコイイ」だとか、其のような稚拙な言葉では言い表すことができぬ、何やら、凄いものを感じ取った。
その日から、彼女はずっと私の中で不変のGoddessとなった。
当初NYに渡った直後は、恐れ多くて彼女のレッスンには参加できず、窓越しにレッスンを眺めては「いつかは、このクラスに入りたい」と切望を続けた。 彼女のクラスに参加することができるようになったのは、渡米して1年近くかかっていたように思う。
夢中で日々、彼女のレッスンを受けまくった。 彼女から吸収できるものだったら、何もかも欲しかった。 此のうえない敬慕。
今の私のダンススタイルは全て彼女がルーツ。
私の帰国のあと、数カ月して、彼女は活動を西海岸に移してしまった。 そして数年、彼女の消息はつかめず。 囁かな噂のみが流れていただけ。
あれから10年以上が経過し、心の何処かで思慕は募らせど、もう二度とあの時が戻らぬように、もう二度と彼女の踊りを見ることも、そして、彼女のレッスンに参加することもないのだろうと諦めていた。
15年ぶり。 今度の旅で彼女に再会できる。
この興奮と喜びをどう表現して善いのか、其れさえもわからず戸惑うばかりだ。 渡米が本気で待ちきれない。
|