カンラン
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私のアルバムはすごく頑丈で
水の中に沈めても
火の中に投じても
かたちをなくすことなく
いつも同じように
ここにある
大事は大事なんだけど
ときには
なくなってしまえばいいのにと思う
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思い出の公園を背中に
ご飯を食べた。
お店の大きくて透明な窓ガラスをうらめしく思った。
大きくて透明な窓ガラスをぴかぴかにみがきあげた
お店の人をうらめしく思った。
今日は雨降りだというのに。
「すごい雨が降ってる!」と
「見て,犬がずぶぬれ。」と
私をふりむかせるような
悪意のかけらもない,
何気ないことばをつくり出す口に
一秒でも早く
あつあつのピザをほおばらせてしまいたいと思った。
今日も雨降りだというのに。
一雨ごとに暖かくなっているこの季節が
突然いじわるに思えた。
あわてたように逃げていく寒い冬が
もう一度戻ってきて
この時間のこの一帯を
一秒でも早く真っ暗にしてしまって,
窓にはこちら側の様子を映して欲しいと思った。
今日も雨降りなんだから。
夏服を着て傘をさして
藤棚の下に立ってる私が見えるような気がした。
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