カンラン
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2002年06月27日(木) ミリイ





電車の中で,みりちんとおんなじ場所におんなじおできのある人を見かけました。

忘れたことはないけれど,

なんだかひさしぶりにいろんなことを思い出しました。





ミリイはうちで以前飼ってた犬。

ちょっと気の弱そうな優しい顔をしたビーグル犬で,

若くして妻になり,母になった。

なんだか何もかもが早送りだったような気がして仕方ない。

たしか二回お産をして,14匹の子供を産んだ。





みりちんの首筋にできたおでき。

最初は小さなにきびみたいなものだったけど,

からだが大きくなるにつれて,おできもだんだん大きくなっていった。

最終的には炒った大豆を一粒,左っ側の首筋にくっつけてるような感じになった。

触るとかさかさしていて固い感触のその大きなおできがとても気になった私は,

お母さんにどうにかならないのか何度か聞いてみたけれど,

糸か何かで縛ってきりきり切り離すしかないんだろう,という答えが返ってきてからは,

それ以上おできについて聞くことはやめた。

みりちんにとってはどうでもいいことのように思えたし,

第一想像しただけであまりにも痛そうに思えたから。





そんなみりちんは,ある夏に死んだ。

その日,私たちは家族揃って朝からお墓参りに出かけていて,

夕方戻って来てすぐに「みりちーん。」と裏庭をのぞいたら

倒れていた。





随分苦しんだようで,まわりの土はひどく掘りかえされていた。

弟と私はただただ立ち尽くし,

少し遅れてお母さんが来るまで何もできなかった。

みりちんの旦那さんは首を垂れてあたりをぐるぐるぐるぐるまわっていた。





そのときまだみりちんは死んでいなくて,

私たちが帰ってくるのを頑張って待っていてくれたんだと思う。





病気で大きくなったからだをみんなでさすっていると安心したように目をつむった。





年上の旦那さんよりも随分早くに遠いところへ行ってしまった。





あれは私の誕生日の次の日のことでした。





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