カンラン
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2008年06月20日(金) 雨ざあざあ

生きるということは蔓のようだと思う。
レールなんて大そうなものじゃ決してない。
もっともっと瑞々しく、あやうげでいて力強く、柔軟なものだ。

慎重に地面に近いところをじりじりと延びるものあり、いきなり高みを狙うものあり、十人十色。
ただ、真っ青な空に向かって手を伸ばしてみたところで、雲の切れ端はおろかできたての雨つぶを掴むことすらできない。傲慢大敵。



どこぞの大きなターミナルに向かってただただまっすぐに繋がるレールなどないのだ。ましてやそんなものを誰かが丁寧に敷いてくれたり、のんびり車窓を眺めているうちに、はい到着、なんてことはありえない。
今の時代、道はうんざりするほどに枝分かれているし、足元のレールが安全とも言い切れない。
進むも戻るも本人次第なのだよ。立ち止まって考える時間があるならそれは相当な贅沢者。

だいたい、レールを辿っていく勇気のない人にレールとまったく縁のない道をゆく勇気があるのか。
そんな人ほど遠く視界の端に映るレールをこっそりと意識しているに違いない。

果たしてレールというものがあればの話だけどね。







『アヒルと鴨のコインロッカー』を観る。

タイトルからして某有名作家の匂いがぷうんと漂ってくるようで、当分敬遠していた映画。
リタイアすることも視野に入れて借りたのだけど(ちょうどレンタル料金安い日だったし)、これはジャケットの文句とかその他宣伝面で損をしているよ。たしかにカテゴライズしにくい作品じゃある。青春とかいうことばで片付けないでー。

何度も観たい映画。原作も読んでみたくなったけど、謎が解けてしまったあとじゃつまらないかなあ。
瑛太の演技に静かに興奮。すべてが明らかになった上で回想される冒頭の本屋襲撃シーンに胸がしめつけられるよ。
それと、松田龍平の役づくりってきっと想像を絶するほどストイックなんだろうなあ。



最近、本でもDVDでもCDでも、気になったもの(もしくは気に入ったもの)があればamazonなどでレヴューを確認している。

この作品についてはやっぱり高く評価されていたのだけれど、時折ものすごく低い評価がなされていて、それはちょい年齢高め(50代とか)のお客さんによるものだった。

そこに書いてあった感想を読んで寂しくなる。
私も着実にそっちへ近づいていっているんだろうなあ、今抱いている感情も消えてなくなって、さらにはなくしてしまったことさえ忘れちゃうんだろうなあ、と。

ぽとりぽとりと物を落としてゆく夜更け。


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