.◆◆第1話:『彼女の彼』��

〜♪恋人のふりをして今日だけは歩いてね 
 めずらしく私へと歩幅を合わせてくれた    
 傾いたこころはもう神様も動かせない
  明日から大切なあなたはもう彼女の彼♪〜       1 
                      1
 ♪き〜ん こ〜ん か〜ん こ〜ん♪
・・・その瞬間、教室中で鉛筆と消しゴムが宙を舞った・・・・というのは嘘だけど。
「よーし、答案を後ろから集めろー!ちゃんと掃除して帰れよー」
「はぁーい!!」先生の声に返事するみんなの声も心なしか明るい。

 今日は一学期の期末試験の最終日、そしてたった今最後の教科が終わったところだ。土曜日ということもあってか、教室は解放感にあふれて騒がしい。
 そんな中、あたし・相川梢は一人重大な決心を抱えて、教室の最後列の富田夏樹の席に向かう。  
「ねえ夏樹、テストも終わったことだし、明日は二人で遊園地に行こうよ!」帰り支度をしていた彼は一瞬困ったような顔をする。・・・いつからこんな顔するようになったのかな・・・心の中でため息つきつつも、あたしはその表情に気づかぬ振りをした。
「・・・・よし、じゃあ明日行こう、遊園地。」
 明るく言う彼。だけど、それがかなり無理して言ってることだと気づかないほどあたしは鈍感じゃない。 
 優しい夏樹。いつでもあたしを傷つけまいとしてる。    
 だから今、彼が好きなのはあたしじゃないことも、本命はあたしの友達・森本楓だということも。そして、楓も夏樹のことを好きだということも。だけど、二人ともあたしに遠慮してお互いの本心を打ち明けられないことも。みんなみんなお見通し、気づいてる。
 
 もちろん、あたしも楓に負けないくらい夏樹のことが好きだ。
 でも、もう耐えられない。 
『彼女』であるあたしのために自分の本当の気持ちをおさえている夏樹と、『友達』の彼を好きになって、それでもあたしと夏樹の事を応援している楓。そんなふたりの優しさに。
夏樹が、はっきりと「さよなら」を言ってくれれば、楓が抜け駆けして彼に告白して二人がくっつけば、それなりにふんぎりがつくのに、ふたりともそんなことを口にしないからあたしからこの恋を終わりにしようと決めたのだ。

 ものすごく迷った。この結論にたどり着くまで長い長い日々だった。
 自分でも馬鹿なことをしようとしているのはわかってる。
 自分で実らせた恋を、また自分の手でこわそうとしているのだから。
                           (�△悗弔鼎�)

2002年03月03日(日)◆◆


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