管理人の想いの付くままに
瑳絵



 今は昔の物語 第一話

今はもう、此の世に名も無い国の話し。


自然は溢れかえり、人々は穏やかに、街もそれなりに栄え平和そのものだった。

そして、国の中心には大きなお城。
この国を治める王様の住む城。

そこに住む王様はとても温厚で、偉大で、頼りになる王様で、
お后様も優しくて、美人で聡明で、立派な方だった。



そんな2人の間には今年で16歳になる1人の娘がいた。
名を"ヨル"と言った。

綺麗な黒髪で、肌は象牙のように白く、大きな漆黒の瞳。
その姿はとても愛らしかった。

正確も、穏やかで、何一つ申し分の無い姫だった・・・。
と、民は思っていた。

が、実はとても好奇心旺盛なお姫様。
一度何かをやり始めたらとことん追求しないと気が済まない。
使用人もたまに手を焼くと言う一面も持っていた。


そんなお姫様が一番興味を示しているのは城の近くの森。
危ないからと言って近寄ることを許されない。

「何が危ないの?」

そう聞けば


「獣が出る」

や、

「魔女が住んでいる」

や、

「入ったら二度と戻れない」

や、終いには

「神の住む森」

など、十人十色な答えが返ってくる。


そのことが更に姫の好奇心を掻き立てた。





そしてある日、姫は城を抜け出して森に行く決心をした。

だが、姫の部屋は城の3階に位置していて、抜け出すことは困難だ。
昼間は昼間で、いつも傍に使用人の"アオイ"と"コウキ"がいる。

コウキはともかく、アオイの目を盗むのはとても難しい。
不可能と言っても過言ではない。


が、アオイは小さい頃からいつも一緒で、一番の"ヨル"の理解者であり一番の友達だ。
でも・・・甘やかしてはくれない。
姫はその日一晩考え抜いた。
そして、結局は答えが出ずに仕方ないので"もう1人の理解者"のところへと足を向けた。



2002.3.30

2002年03月16日(土)
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