2003年09月22日(月) |
「台風の雨よりも、君達の方が激しかった」 |
今回は某音楽レポ風に。 お題「B’zの渚園ライブ 2003」
『「雨が降る」テレビで見た通り当日は一日中雨に見舞われた。さすが稲葉氏。彼の雨男っぷりはファンの中では有名。すでに伝説の域まで達してると思われる。 そんな九月後半の一日。 B’zの15周年ライブを見に静岡まで足を運んだ。 行きの電車では野球雑誌のクロスワードに熱中したり、座った席がクーラー直撃で1時間弱ガタガタ震えてたり・・・完全に体が冷え切った状態で浜松の駅に到着した自分だか、すでに浜松のキップ売り場で長蛇の列が出来ているのをみた瞬間、心は完全に温まった。 あと数時間であの熱い時間を味わえる!並んでる人のほとんどがそう考えていたに違いないと思いたい。
臨時電車の掲示板を嬉しそうに携帯カメラに収める微笑ましい光景を横目に、満員電車に揺られ雨の浜中湖へ。 霞みがかかりせっかくの風景を楽しめなかったのは残念だが、人の流れにのりいざ会場へ。 しかしここからが厄介だった。時間が開演30分前という事もあり、列が中々進まない。雨風も激しくなり着こんでいたパーカーは既にびしょぬれ。 そんなダラダラと続く列の中、ツアーTシャツ一枚の連れがガタガタ震え出した。気温が今までと急激に違う為と、最悪な事に連れはレインコート類を盛って来ていなかったのである。そんな彼になぜかスナックの前で露店を出していたにーさんが一言。 「そこのおにーちゃん!会場にはもうレインコート売ってないよ!」 連れ、思わず足を止めるが列の流れに逆らえず歩き出す。 「どうする?買う?」 「・・・いい、気合で乗り切る」 男の人はたまにコチラが理解出来ない事を言い出すものだ。気合で寒さが乗り切れるのか、このライブの楽しみの一つであった。
「急いでください!!開演時間と同じに始まります!!」 大声で叫ぶスタッフの声に触発され、チケットゲートを通った瞬間、一斉に走り出す観客。今回のライブは野外、ブロック指定だった為場所は早い者勝ちである。 自分も連れの猛ダッシュに必死に付いて行き何とかブロック内へ。 だがどう頑張ってもステージは見えず、辛うじて設置されていた画面が見える程度だ。 それでもライブ直前の高揚感は神経を刺激し、雨の冷たさも気にならなくなる。 「傘をさされてる方は閉じて下さい!」 スタッフの声に一斉に傘が閉じられ、会場全体の視線がステージに向かう。
そしてドワッッ!!という歓声と共にステージ上にB'zの二人が姿を現した。
「IT'S SHOWTIME!!」
何回か野外ライブは体験した事がある。それでもパタパタ・・・と雨がビニール袋を濡らす音は聞いた事がない。 その音は観客の荷物を包んであるビニール袋を叩く音だ。 その音と稲葉さんの雄叫び、松本さんのギター、それに観客の歓声が交じり合い、聞いた事のない音が耳に付く。 いつもの 「B’zのLIVEGYMへようこそ!」 という稲葉さんの声は寒さに耐えた体を刺激し、自分でも不安になるぐらい叫び狂う。体のリミッターが外れた感触に似ている。 手を叩けば水飛沫があがり、前髪から滴れる冷たい雨が頬を濡らす。 それでも体は熱くてたまらない。 B’zのライブは参加する度に本当に「熱く」なるのだ。そして「これがロックだっ!」と心底思ってしまうのである。
有名ドコロも押さえつつ、ファンが待ち望んでいた懐かしい曲も披露され、イントロが流れる度に歓声に似た雄叫びが上がる。 演奏してる二人も本当に楽しそうに、そしてものすごいエネルギーをぶつけてくる。あぁ、この瞬間の二人に敵う物など何もない。 そんな中、とある名曲が披露され思わず歌詞に耳が止まった。 それは「今の自分」にとってみればとても痛くて、痛烈なメッセージとして体内にズカズカと侵入してた。リミッターの外れた体は全てを吸収してしまい。 気が付けば涙か雨か。理解不能の液体が止めど無く流れていた。
振り上げた拳を数秒下ろすことが出来なかった。
後半戦は過去の懐かしい映像と共に、その時代の曲のオンパレード。 「BUZZ」というライブと同じ仕掛けでドラキュラの格好をした稲葉氏は、正直かっこよすぎで、画面に叫ぶ黄色い歓声が1段と大きくなる。そしてお決まり(?)のステージへのダイブ!今回は野外という事もありセットにも随分楽しませてもらった。 そんなライブだからもう気が抜けない!盛りあがりも最高潮に達した瞬間、止せばいいのに着ていたパーカーを脱いでしまった。 確かにTシャツは濡れていた。しかし雨直撃よりはなんぼかマシだったのに・・・ それでも勢いは止まらずTシャツ一枚で激しくジャンプを繰り返してしまったのである。 そんな自分の前にクライマックスとなる火柱が温かなストーブに見えてしまった。
アンコール前、連れの首からかけていたタオルを雑巾絞りすると、脱水前の洗濯物のような水がダァ・・・と足元に水溜りを作った。 役にたつとは思えない、と感じながらもとりあえずツアータオル二枚目を手渡す。お互い指先が細かく震え、九月だというのに話すと微かな白い息が目に見えた。 自分も落ちていたパーカーに袖を通す。不快感は感じるがやはり寒さは感じない。 気持ちは臨界点を越えていた。
アンコールが始まり、15周年という節目の彼らに精一杯の声援を送る。 声がかれ途中からは呼吸さえ苦しくなった。ふくらはぎもつり出し、飛び跳ねる度に嫌な筋肉の動きを感じていた。 それでも楽しかった。本当に楽しいと思えるのだ。今考えると不思議だ。 そして最後に二人がパンッ!と手を組んだ瞬間。 よろける体を必死に押さえるのであった。
フィナーレは打ち上げ花火。場所柄すぐ目の前に広がる火花に知れず歓声が上がる。 今年最初で最後の打ち上げ花火。鮮やかな色は雨に濡れその艶を増してるような感じがした。
帰り道になりようやく小雨になってくる。しかし観客のほとんどが「今更少しぐらい濡れても関係ない」って顔で駅まで歩いてる。 連れは帰りに急遽購入した新しいツアーTシャツに着替え、何とか体の震えは止まったようだ。本人曰く 「気合で乗り切った」 そうである。人間意外な所で気合を発揮させるものである。
10時過ぎ、ようやく浜松の駅へ辿りつくと明日のライブへ向けて、駅構内で一夜を明かすファンの姿を目にした。 風邪をひかないように、と思いながら濡れた靴で帰路へ向かう。 やはり雨が降っていたが、もう傘をさす気力は残ってない。 (そういえば雨の中で傘もささないで歩くのは、何年以来だろう??) そしてその機会を与えてくれたB’zに、やはり感謝をしたのである。
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