森岡万貴 徒然記 (黒いブログ)
INDEX|previous|next
の"どい"だい"けど、とても朝早くからお仕事。
午後は、天平楽府でお世話になっている中国の笛の名手、劉宏軍さんを追ったドキュメンタリー番組の収録で、中野のお寺へ。
劉さんは、今のような五線譜がなかった時代の古代譜を解読したり、楽器を復元して現代に甦らせている、一見変なオジサンですが、素晴らしい方です。 知り合ってもうすぐ3年。いろいろな仕事を通して、私が知らない音楽世界を教えて下さっています。
唐の女帝、則天武功が書いた「如意娘」という曲があるんです。 琵琶の単旋律なんですが、すごく美しい。 時を隔てた今、聴いていても、少しも古くさい感じがしません。 ちょっとモーダルな長調の、静かで淡々とした曲なのですが、独特のオリエンタルな優美さの中に、もの悲しさがあって、琵琶の音色で演奏されると余計に切なくなります。
この静かな悲しみはなんだろう?、と思っていたら、この曲には詩があったんですね。 漢文で、全ての意味は分かりませんが、女帝、則天武功が恋しい人を思って書いた、悲恋の歌だったんです。 彼女は古代シンガーソングライターだったんですね。
偶然にも、私のオリジナルで「向日葵」という曲があって、カリンバとビブラフォンの弾き語り、私のソロで演奏するんですが、これも飛鳥時代の女帝の悲恋を歌った曲なんですよね。 私はこの曲、飛鳥を旅していた時、斉明天皇の御陵に行って、そこで受けたインスピレーションを元に描きました。 女帝、という立場であるが故、叶わぬ恋もあったのではないかしら。
斉明天皇については、いろいろ恐ろしい逸話が残っていて、冷酷で孤独な人だと思っていたんです。でも、御陵に行ったとき、すごく静かで悲しい気分になったんですよね。 誰にも弱さを見せられないのって、辛かっただろうな。
則天武功も斉明天皇も。
|