酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年05月01日(月) 『イルカ』 よしもとばなな

 キミコは恋愛小説家。素敵な男と恋に落ちたが、その男には年上で妻同然の存在があった。深みに嵌り、泥沼化することがイヤでキミコはあちこちへ彷徨い、いろんな人間に出会い、家に残る悪意にうなされる。そしてそこで妊娠していることに気付き・・・

 なんて言うか、ピュアで不思議なトーンは相変わらず。よしもとばななもよしもとばななにしか描けない世界をしっかと持っているんだなぁ。子供を産むと言う女性だけが経験できることを経て、よしもとばななは何かをつかんだのかもしれません。私は子どもを持たなかったし、もう持つこともないケレドモ、描かれた子供を育む尊さ暖かさは心にスッと馴染んできました。女性なら誰しも心に染み入るように読めるのではないのかしらね。

 淋しさはウィルスのようにまず全身にしみこんでいって、体から抜けていくのに時間がかかる。毎回もうだめだと思うけれど、毎回けろりと立ちなおる。私が私であるということは、なんとすごいことだろうと思う。治癒と時間の関係については、いくら考えても奇跡だと思わざるをえない。それ以上の善なる力はこの世にないとさえ思う。

『イルカ』 2006.3.31. よしもとばなな 文藝春秋



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