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■ まねぶ/まなぶ
机や床をたたくと、Kも真似をしてたたく。 大人に真似をされると楽しくて、自分も真似てみるらしい。これからどんどんものまねめいじんになるのだろう。縁側のソファに座りながら、私の膝につかまって立っているKを見ていたら、「まねっこあそび」の歌が口をついて出た。 どんな歌詞だったか、正確にはあやしいが、
まねっこあそび
と、付点音符をゆっくりスキップをするように気まぐれに歌い出したら、なにかとても楽しいことをみつけたみたいにKの顔がぱっと輝いた。 これはちょっと遊べそうだ、とこちらもわくわくして、続けて歌う。
すずめさんになってさ いち・にでほらね ちゅちゅんとなきましょう
(歌詞、違うかも知れないし合っているかも知れない。)
ちゅんちゅんちゅんちゅん
真似をするのは私のつもりで、歌のあとに鳴き声をくっつけてみた。すると続いてKも何やら口をとがらせて、「ちゅん」ではないが「でゅっ」だか何だか言うのだった。 あれ、これって真似をしているつもりなのかしらん。 それなら今度は、このごろKが気に入ってよく発している音をためしてみよう。この際「正しい」歌詞はどうでもよくなっている。
まねっこあそび こぶたさんになってさ いち・にでほらね ぶぶーとなきましょう
ぶーぶーぶー ぶぶぶぶぶ
「こぶたさん」のリアルな鳴き声を、Kが真似をしやすいようにアレンジして発してみる。するとはたして「ブウゥー」と、とくいになって唇をぶるぶる言わせた。 更にこの後、いくつかの鳴き声、すなわち「音」をためしてみた。「ひひ(ー)ん」(おうまさん)、「わん(わん)」(こいぬさん)、「にゃーん」(こねこさん)、「きゃっきゃっ」(おさるさん)など。Kの発した音は、大人が聴いてそれらしく似て聞こえるものもあれば、そうでないものもあった。 まだKが発することの出来ない音を、Kはどのように表現するのだろうか。それが知りたくて、わざとにゃーんだのわんわんだの言ってみたりもした。ときおり、とくいな音をまじえつつ。すると自分なりにそれらしく試みることもあれば、音の高さで表現することもあり、あるいは最初から違う音でもっぱら楽しさを表現することもあった。
Kがどのように音を認識しているのか(聴くことと再現する(発する)ことの両面で)、知る。 人の、イノセントな頭の中なんて、だんだん見られなくなるんだろう。
「まなぶ」は「まねぶ」から来ているとはよく言うけれども、そうか、君は一所懸命修行中なんだね、と、先生や先輩の仕事を見て倣っていた時の自分を思い出す。 (いや、今だって、これからも、見て倣い続け(てい)ますとも。)
2007年08月08日(水)
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