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「恋」を何かに例えろと言われたら、 あたしは「海」に例える。 2004年、 もう今後こんなに恋愛運が絶好調の年は絶対ないぞ的なことを 占いで言われた双子座のあたしは、 見事に、はまった。その恋という海に。 最初、浅瀬でパシャパシャ遊んでた時はよかったの。 いつでも、陸に上がれたし、なにより、あの人が近くにいてくれたから。 でも、だんだん浅瀬じゃ物足りなくなって、 ちょっと深いところにも行ってみようかという気になる。 恐々、浅瀬を離れ、泳ぐ。 それはそれは、心地よくって、戻りたくないって気にもなる。 いつのまにか、足の届かないところまで来てしまった。 それでも、まだ大丈夫だった。あの人が手を引いていてくれたから。 でも、それは長くは続かなかった。 手は突然離された。 案の定、あたしは溺れる溺れる。 気が付けば、恋という名の海に溺れたいたのだ。 深い。暗い。冷たい。…寂しいってこういうこと? このまま、沈んでしまおうかとも思ったけど、なんとか、浜辺まで戻ってきて、 もう絶対あんな深いところなんて行かないとそう心に決めて、座り込んでいる。 ただ、波が寄せては返すのを見て。 そのうち、浅瀬にも近づくのが怖くなった。 時が経つと、あの深いところの水の心地よさだとか、波の音だとか、 そういうものは、全て、 深いところで溺れた怖さ、苦しさ、痛さ、そういうものにかき消されてしまった。 もう二度とあんなところ行くものか。 恋という名の海とあの人に、猜疑心を抱くようになっていた。 でも、1人で、体育座りで、回りの砂で遊ぶあたしの側に、いてくれる人がいた。 海に入ることはなく、浜辺でぼーっとする毎日だった。 泣き事も愚痴も、全て聞いてくれた。 なんか大したアドバイスはくれなかったし、 時には否定もされたけど、それでよかった。 ただ、一緒にいてくれるだけでよかった。 あたしは迷った。 その優しさに。 この優しさに甘えていいものなのか。 また、手を離されて溺れるのではないか。 そんな、不安で一杯だった。 だから、素直になれずにいた。 それどころか、素直にならないように努力さえしていた。 それでも、あの人は側にいてくれた。 その優しさは、あたしだけに向けられるものではないとも知って、 少し寂しくも思ったけれど、あたしは見ているだけだった。 でも、本当はその優しさが欲しかった。 本当は独り占めしたくて仕方なかった。 気が付けば、あたしは浜辺に立つ事ができていた。 あれ依頼、浜辺に座り込んで立とうとしていなかった あたしに、その人が手を差し伸べてくれたから。 立って、もう一回海を見てみたら?って差し出してくれた その人の手は温かかった。 冷えた体に、泣きたくなるような温かさだった。 また海に入ってもいいかも。そう思わせる温かさだった。 その温かさに包まれる事で、全てを受け止められる気がした。 この人となら、また恋という海が楽しめるのかもしれない。 それは、全く違う海。キラキラ光る穏やかな海。 ちょっと、そう思ったけど。 でも、まだ、秘密。 もしかしたら、このまま秘密のままにしてしまうかもしれない。 それでも、いい。側にいてくれるなら。 |