
手を伸ばせば届きそうだった。
「あっ!!!」
その時突風が吹いて、叫び声と共に僕は流された。
どこまで行くんだろう。
あっ、気球だ。
お願い、僕も乗せてってよ。
僕はこの風にただ乗っていくしかないの?
黒いカラスが僕の背中に乗ってこう言った。 「このまま流されるのも悪くないぜ」
カラスは厳つい見かけよりもいい奴だった。 そうか、風まかせ、なんだね。
どのくらい経ったのか分からないその時、 突如巻き起こった竜巻の渦に僕は吸い込まれた。
見渡すと、そこには翡翠色の湖があった。
・・・あれ? 最初に僕が欲しかった物って何だったんだろう。 すっかり忘れちゃった。
でもいいんだ。 僕は今、本当に欲しかった物にやっと気付けたから。
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