白日の独白
索引|←|→
日付が変る三十分と少し前に、御酒に酔った彼女からの電話。 彼女は酔うと記憶が曖昧になり誰彼構わずに電話をする癖がある。 「来月末に引越すから。また一緒に住もう・・・じゃなくて遊びに来てね」 「そうだね」と僕は言う。「出来ることは何でもするから」 僕は彼女が言い間違えたことに困惑している。割と動揺していたかもしれない。
『寒々しい』 と、想う。
太陽はその存在が少しずつあからさまに僕を衰弱させる。 だけど持て余した時間を出来る限りの力でもって無駄遣いしなくちゃいけない。 その時は笑顔と愛嬌と御世辞を忘れずに。 それで太陽の光も届かない地下四十メートルはどうでしたか? 地図にない東京は地図のない僕の気持ちにぴったりでした。 光も風も匂いもない世界は泣きたくなる位ぴったりでした。
「また地震かよ〜いい加減にしろよな〜来るならガツっと来いよな〜」 とか想っていたら暑いのと喰ってないので眩暈を起こしているだけだった。 「大抵眩暈が酷い時期と道路で寝たい衝動に駆られる時期は同じなのだが全然ないな〜」 とか想っていたら暑いのでそもそも外に出ていなかったのだから当然。
流石戦前なだけあって、酷く実用的で恐ろしく雑だった。 使い古され埃っぽいのに妙に生生しいそれを彼女と眺める。 ふたりで溜息をつき何だか居た堪れなくなる。 夜、部屋で何も知らない彼女が君にそのことを話していた。 君は「お腹が痛い」と顔を伏せた。 君の痛みが伝わってくるのだけれど、でもそこまでだ。 失念する程度の共感。追体験はやらなければ出来ないのだ。 痛みとは結局は個人的なもの過ぎて、だからこそ人には残酷になれる。 君の秘密を知っていたのに、僕は気付かない振りをした。 それ以外僕に何が出来たと言うのだろう。
蝉といえば、7年間たった1匹で土の中にいたにも関わらず、成虫として外へ出てきてみれば運命の恋人に廻りあう為に力の限り「ミンミン」とか鳴きやがって、まぁ無事交尾できて子孫が残せればいいけど、割と直ぐに猫とか子供とかに捕獲されて翅を捥がれたり車に轢かれたりしてうわぁ〜な姿で道路に落ちてたりするよね。 更に言えば「ミンミン」鳴き続けたのに全然出逢いがなくって、リミット1週間が終了だと結構悲惨かも。 で、そんな蝉の姿を自分と重ね合わせて、これまでの努力が意外と報われないことを哀れんだり、最後に一花咲かせる為の努力と見做して一念発起したるする感が時折見られるように思うのですがどうでしょうか。 例えば小・中学校の先生とかが好んで例える感じで。 でも蝉なんて「ミンミン」鳴く位しか能が無いんだから、そんなものに自分を投影するってちょっと考えるとげんなりするよね。 それにそもそも1週間の命なんだから、何だか色々背負わすなんて可哀想だし放っておいてあげようよ。 関係ないけど昔ハンズ大賞を取った作品で卵型の硝子だか樹脂の中に蝉の抜け殻とガラクタが閉じ込められていて、それが50個位あったのは圧巻だったな。
火事を見ると何だかぼんやりと見とれる。 雷の方が花火よりも美しいと想う。 地震は電車がぐちゃぐちゃになるから面倒だなぁと想う。 飛行機事故なんて宝くじよりも確率低いだろう。 結局の所、僕達にはどうしようもないことは確かにある。 だから怖がるなんて無意味なことはやめませんか?
どう想おうが僕の勝手。 どう想おうが僕の自由。
絶対に言ってはいけない事だって確かにある。 絶対に言ってはいけない人だって確かにいる。
『自分ではどうしようもない怖いこと』を身をもって知っている人。
僕はなんて傲慢で無知な大馬鹿者なんだろう。 自分を騙して無自覚に無責任に人を傷つけた。 それは地震なんかよりも怖いことで。 僕は何もわかっていないしわかろうともしないどうしようもない人間だ。 何度だって気付かないといけない。
2005年08月10日(水) |
真実の記録/記録の真実。 |
急に胸を打ったのは『多分今しかないんだ』という焦りなのかもしれません。 僕は戦争っぽい音楽を聴いて、戦争っぽい映画を観て、戦争っぽい本を読んでいます。 僕の思考は停止して、僕の感情は鈍磨して、僕の想像力は欠落することが怖いです。 戦争っぽいものはいつも僕をそういう世界に置いてけぼりにします。 ずっと何処にも行けずにいるけれど、そうじゃなくちゃいけない気もします。 だって僕が知っているのは、戦争っぽいものであって、本当の戦争じゃない。
君達といると楽しかった。君達が好きだった。しあわせだと想った。 その気持ちにも言葉にも嘘偽りはありません。 でもそれはこの前のことで、今日は同じ位強くうんざりしています。 君達は僕の影で、僕は君達の影で。 終わらせるのは簡単でも終わらせられるものとは限りません。 まだその時ではないというだけです。
「チョコレートが好きな貴方は甘えん坊で我侭な妹属性」 「肉が嫌いな貴方は頑固で潔癖症。孤独を好む傾向にあります」
食べ物の好みから性格傾向を図れる訳でもなく。 自己紹介欄の「好きな食べ物」「嫌いな食べ物」の意味が解らない。 食事をする関係にならない限り役に立たないと想うのだが。
|