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眺める 2003年05月20日(火)
夏が始まろうとする頃、海の見える小高い丘に登った。
海を見下ろすその丘には一本の巨大なガジュマルの樹があり、いくつにも枝分かれをした幹には、上から垂れ下がった茎や枝が幾十にも重なり合い、その土台を造りあげている。 でこぼこだらけのその幹にはところどころに不気味な穴が開いていて、ムカデ(らしきもの)や名も無い生物たちの巣になっている。
そういえばあの頃夢中になって遊んだこの樹。その核から真っ直ぐに伸びた、太くてそれでいてしなやかな枝には、何人の子供達が乗っても折れることなく、ただ静かに揺れるだけだった。
樹は巨大でなければならない。 幹は枝を支えなければならない。 枝は子供達を守らなければならない。 強くてそれでいてしなやかでなければならない。 そして落ちた子には教えてあげなければならない。
樹は相変わらずそこにあった。
樹に登り、隠れ処にしていたその場所から海を眺めた。 海も相変わらずそこにあり、海もやはり強かった。 そして海も今でも子供たちに教えていた。
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