くじら浜
 夢使い







いつも山の音を聞いていた   2010年02月21日(日)

ピンと張った縦糸の合間を
小さい輪っかのついた横糸車を起用にすべらせ
トントントン
と、締めていく

機を織る母のよこには大きな窓がついていた

老眼鏡に指をやり
縦糸と横糸でできた地味な柄を確認するように
母は紡いだ糸たちに顔をすりつける

そして
また、ピンと張った縦糸に横糸をすべらせ
トントントン
と、打ってゆく

一息ついて、母は窓からおでもり山を見上げる

夕日で真赤に燃えるおでもり山には
たくさんの母の音がある

お茶を飲み
背中をさすって
目をこすり

そして
また母は、トントントンと
山に向かって打っていく








井戸の中 ��   2010年02月11日(木)

ナナはぼくよりひとつ年下だった。

ある日学校の帰り道、女の子が河原の土手でしゃがみ込んでいた。ぼくは近づき、
なにしてるの?
この花をみてるの
それは低い雑草の中にひとつだけ黄色い花を咲かせていた。
ビー玉あげるよ
ありがとう
ぼくはナナに透明なビー玉を一個あげて立ちあがった。
ナナも立ちあがり、そしてぼくのあとについてきた。

次の日、校門でナナが待っていた。
ビー玉あげるよ
ぼくはふたつめのビー玉をナナにあげた。
ありがとう、と言ってナナは笑った。


覗き込む井戸の中からは冷気と一緒に白い光がふたりの顔を照らしている。
あの日以来ナナはぼくにまとわりついてくるようになり、この井戸を発見したのは夏休みに入る二日前だった。








交錯する   2010年02月01日(月)

ラジオが好きです

枕元のラジオのボリュームを
聴こえるか聴こえないかくらいに絞り
そしていつも布団にはいります

かすかに聴こえるラジオの音を
しばらく聞いてます

聞くとはなしに聴こえるラジオの音が夢をさそい

夢のなかにラジオの音が交錯したら
ふかい眠りにはいります








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