本当の名前は学位証授与式とかそんな名前だった。まあ、要するに卒業式だ。
9時45分集合ってことだったので、それに合わせて出かけた。相変わらず遅刻しそうだったが、今日は特に電車の遅れなどはなく、問題なく着くことができた。ちょっと、楽しみにしていたのだ。この日は。彼女に会うことができる、おそらくは最後の日だから。
僕の座席には、僕の名前が書いた書類が置かれていた。わざわざ一人一人の座席に名前を書いた紙を置いてくれるなんて、なんて親切なんだ…、と思ったら違った。お前、卒業するんだから本は返せよ、って内容の書類だった。大学院に残るから、その辺の感覚がなかった…。まあ、返せと言われた以上は返すつもりだが。そして、4月になったらまた借りよう。XMLにはまだ興味がある。
卒業式は、意外とおもしろかった。まず、開会から国歌演奏までの流れが良かった。別に意図したものではないのかもしれないが、開会の合図で立ち上がったまま、国歌の演奏に入ったのだ。こうすれば、公の場で国家を流すことに反対する人も座りにくい。初めからみんな立っているわけだから。まあ、おそらくは関係ないのだろう。仮にも国立大学なのだから、中学や高校のような公立学校とは異なる。
学長の訓辞も良かった。さすがに国立大の学長ともなると聞かせる告辞をする。もっとも、内容なんて覚えていないが。大学で学べることは貴重ではあるが、わずかだ、とかそんな内容だったかな。
そのあとは祝賀会があった。と言っても、会議室に寿司だとか飲み物だとかを取って並べただけの、シンプルなものだが…。みんなで集まるという趣旨はよく理解できるのだが、僕はどうも、こういう席は慣れない。好きにもなれない。うちの研究室の教授や助教授も顔を出していたので挨拶をしに行ったのだが、そういうときも何を言っていいのやらさっぱり分からない。にしても、こういう宴会のたぐいは嫌いだと言っていたのに、なぜ顔を出したのだろう。少々驚いた。ちょこちょこ話はしていたが、1時くらいには友達と一緒に抜けてしまった。実は、前日の3月24日がその友達の誕生日だったのに、すっかり忘れていたのだ。というわけで、買い物につきあうことにした。
新しいPCを作ると言うので、秋葉原と錦糸町へ行った。錦糸町にはその友達のバイト先とヨドバシカメラがある。秋葉原ではfaithなどを見た。ついでに火事になった建物も見た。事故から1ヶ月以上たっているのに、まだ生々しい傷跡を残していた。それだけ大きな火事だったのか、それとも修復して再会できるだけの金がないのか。その両方ではないかと思うのだが。結局、錦糸町のヨドバシカメラで、その友達にルータをプレゼントした。スループット98Mbpsとかの、やや速いものだ。もうちょいスループットの低いものもあったが、贅沢するようだ。まあ、その程度は仕方あるまい。学費を払えるのかどうか、不安ではあるが。ちなみに、ここでUSBマウスも購入した。弟のノートPCで使えるようにするためだ。このノートPCは僕も使う可能性があるのだが、それにマウスがないのでは少々不便だからだ。とは言え、新しい法律で税込価格表示になって525円になったという、安いマウスだ。とりあえず弟が使ったら動いたとのことだが、まあ、あまり期待はできまい。
そのあと、その友達が帰ると言うので、夜のパーティに備えて移動することにした。前も書いた気はするが、僕はそもそも飲み会というのが好きではない。一気飲みなんて愚の骨頂だと思う。んでまあ、パーティと言っても飲み会と化すことは予想できた。それなのになぜそんな席に顔を出したのかと言えば、それは彼女に会いたいから。そのほかの多くの同級生には失礼な話だが…。でもまあ、結果的には、こうやってみんなで話す機会を持てて良かったと思う。
パーティの会場は、ゆりかもめの青海(あおみ)駅そばなのだとか聞いた。なので、錦糸町から総武線で秋葉原に行き、秋葉原から山手線で新橋まで行き、新橋からゆりかもめに乗ることにした。それをすべて友達から聞いた話だけで決め、自分では何も調べていないのだから、なかなかいい加減なものだ。まあ、信頼できる友人だし、問題はなかっただろう。
で、その新橋駅で、自称テレビ朝日の人に声をかけられた。何かの番組の収録らしい。小雨がぱらつく中、なんかがんばってカメラを動かしていた。なんだか大変なものだ。悪質なキャッチセールスではないかと疑いながら、僕はその人の話に乗った。明らかに約束の時間の1時間以上前に着きそうだったからだ。
そこで、手品をやるから見てて欲しいと言われた。鉄製の輪が四つあり、それがなぜか、するするとつながったり離れたりするのだ。いったいどういう理屈なのだろう。四つある輪のうち、僕に渡されたのは二つだけだったので、おそらくは残りの二つに隙間でもあるのだろう。だが、それをいちいち言うのも面倒なので、あえて言わずに置いた。次に、この手品に音楽をつけると何か、と言われた。始めに僕はひげダンスのテーマを歌ってみせた。そんなのを公衆の面前で歌うのはかなり恥ずかしかったが。だが、どうやらその人が期待していたのはそれではなかったらしい。「ちゃららららら〜ん♪」って音楽を聞いたことがないか、と言われた。まあ、この字だけでどんな音楽か分かったらすごいと思うが…。ちなみにこれ、あとで聞かされたのだがオリーブの首飾りという曲なのだそうだ。リンクをクリックすると音楽が流れるので注意して欲しい。で、もちろん、僕はそんな曲のことなど知らないので、「知らない」と答えた。で、やっぱり歌えと言われたので歌ってみせた。マジックの定番だと言われて、そう言えばそうかな、と思った。誰を連想するかと言われて、マジックと言えばMr.マリックかなぁ、とか思ったが、違うのかなとも思ったので、よく分からないと答えた。最近、全然テレビを見ないので、この辺に自信はないのだ。で、ここでちょっと種明かしがあって、なんでも、子供に質問されたらどう答えますか?という趣旨らしい。もちろん、本来であれば、ここに示したリンクを調べて、これを読んだ上で答えるだろう。ただ、曲名を知らない状態でインターネットの検索をかけるのはかなり難しいので、「理由は知らないけど、マジックではよく使われているみたいだよ」と答える、と言っておいた。話としては以上である。これが4月25日の13時から、テレビ朝日で放映される番組に使われるらしい。まあ、黒いコートにスーツを着て青いネクタイをしている、メガネをかけた怪しい学生が出てきたら僕だと思ってもらえればいいんじゃないかと。ただまあ、出てこないかもしれないが。にしても、今になってやってきたことを振り返ってみると、相当間抜けだなあ。テレビ局の都合のいいように動いていたつもりではいるが、それにしたってもう少し頭を使って答えれば良かったかもしれない。でもまあ、曲名が分からない音楽を調べるのは難しい、ってことは確かだが。にしてもあれ、本当にテレビ朝日だったのだろうか。どこにもテレビ朝日のロゴはなかったし、かなり怪しい。
で、そんなのを経て、ゆりかもめに乗って青海に着いた。ゆりかもめからの景色はなかなか良かった。一度は乗ってみることをお勧めする。ただし高いので、二度乗ることは勧めない。新橋から青海まで370円ってどういうことだよ。小田急線なら30キロ以上走れる金額だ。他の路線のことは知らん。
そこで時間があったので、しばらくパレットタウンをうろついていた。すると、ヴィーナスフォートという記述があった。確か、パーティ会場はヴィーナスフォートの青龍門という店だったはずだ。ということで、このヴィーナスフォートをうろついていたのだが…。Webサイトを見ているだけでも恐らくお分かりいただけると思うが、これは22歳の男が一人で歩く場所ではない。幻想的な演出、ロマンチックな風景。そう、ここは絶好のデートスポット…。ただし、ちょっと気をつけてみると安っぽい作りがすぐに分かるので、めざとい恋人と行くことは勧めない。壁をたたいてみるとすぐ分かる。ベニヤ板の音がするのだ。天空なんて格好つけているが、つまりは絵に描いた空だ。ただ、それで十分時間の感覚は狂った。真夜中になっても、この空の絵は昼間だったり夕方だったりしたので、なんだかおかしな気分になった。それにしても、当たり前ではあるが、このWebサイトの写真は実にきれいだ。実物はこんな大したものではない。
あちこち歩き回っていたら、別の友人から連絡があった。その友人に「ここは怪しい」だとか、「迷った」だとかメールを送りながら時間をつぶした。そして、しばらくしたらその友人が着いたので、合流してマクドナルドへ行った。何も頼まないというなかなか悪質な客だったのだが。まあ、その友人の方が注文をしたから問題あるまい。ちなみにこの友人、彼女と一緒だった。結局のところ、当初の目的は達成できたわけだ。感謝、感謝である。
で、集合時間の6時45分になっても誰も来ない。少したつと、徐々にやって来始めた。7時になって、いい加減待てないってことになり、ほとんど来ていないがその青龍門という店に移動した。
が、人数が全然そろっていなかったので、そのまま水だけを飲みながら待ち続けた。僕ははっきり言って、彼女や同級生たちと話さえできれば、飲み物なんて水でも良かった。ただまあ、それも1時間が限度で、結局全員そろわないままパーティ(と言っても段取りもへったくれもないが)が始まった。まあ、終わってみればただの飲み会だったわけだが。ただ、青龍門のページを見ていただけるとお分かりになるかと思うが、はっきり言って馬鹿騒ぎに向いている店ではない。ちなみに僕らの席は、このページに書いてある「奥に鎮座する舞台」だったのだが、馬鹿騒ぎする連中には演出など関係なかった。まあ、わざわざ正装でみんなを集めてパーティをしたかった女性陣と、飲み会しかできない男性陣の、根本的な食い違いが露呈したというところだろう。ちなみにこのとき、他の客の人に叱られてしまった。それでも「30対1なのだから負けない」なんて言ってるんだから困ったものだ。それで結局騒いで、一気飲みして…。頭が悪い…。世の中はそういうものなのだから慣れなければならない、と自分を激励したが、それでも納得できないものがあった。
でまあ、ここですでに会社の研修がある友人が帰ったので、ついでに帰ろうと思ったのだが、引き留められて残ることにした。もちろん、引き留められたから残ったのではなく、彼女のことが心残りだから残ったのである。結果的にはそれが良かった。その後、叱られたからなのか馬鹿騒ぎは収束し、みんなでメッセージを書くことになった。そんなものを用意しているのなら騒ぐ前に出せばいいのに…。結局、書く時間が全然なくて、時間がどんどん遅くなってしまった。でも、そうやってメッセージを書くことで、なかなか話す機会のなかった人にメッセージを送れる。大学の教官への色紙なんてのではそう感慨もなかったが、同級生同士となるとさすがにいいなあ、と感じた。で、このメッセージ、彼女も書いてよこしてくれた。ジーン…。感動。多少イヤな思いをしても、最後まで残って良かった。ちなみに、ラスト、パレットタウンの2階でクラッカーをぶっ放して逃げたのは内緒である。誰かがちゃんと掃除していたらしいから偉いものだ。僕は逃げたあと、逃げた人たちにくっついてきていたクラッカーの紙くずを拾っておいたが…。ちなみに僕は、酔った勢いなのか、彼女へのメッセージに「尊敬する人に似ていて…」とかなんとか書いた記憶がある。馬鹿なことを書いたものだ。彼女は彼女であって、誰かに似ていたとしても、それは彼女とは関係ない、なんて分かり切っていることなのに。
結局、そのあと帰るときも彼女と一緒だった。久しぶりだ。こんなに話をしたのは。話すと言っても、ここ一年は大学のロビーで立ち話とかばっかりだったからな…。まあ、これで終電間に合うのか、とか、そんなことしか話してない気もするが。
とりあえず、彼女が僕にくれたメッセージは、当分の間バイブルかな…。これくらいしか頼るもの、ないしな。なんか宗教にはまる人の気持ちが理解できる気がした。