○プラシーヴォ○
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今日はバイトが午前のシフトだったので お昼にハム男が迎えに来てくれた。
「お待たせ~!」
と車に乗りこむと、 ハム男が誰かに携帯で電話をかけていた。
相手が電話にでなかったらしく、 少しディスプレイを見つめてから電話を切った。
「誰に電話してたの?」
「youちゃん。 明日、釣り行くやろ? youちゃんも行かへんかな~、と思って」
ガンっと頭を殴られた気がした。 youちゃんは私の一番の親友で、ハム男と3人で遊んだこともある。
でもまさか、ハム男から直接電話するなんて?! せっかく久しぶりに二人きりで遊べるのに
どうしてわざわざ誰かを呼ぼうとするの! 私と二人じゃつまらないの?!
「落ち込みスイッチ」 がオンになってしまった。 1度オンになると、そうそう元には戻らない。
youちゃんは料理もできるし 面白いし なにより中絶してないし 卑屈じゃないし
深~い落とし穴の底で、冷たい地面にべちゃっと倒れている感じ。 ハム男が何を言ってもほとんど答えない状態で車は走っていた。 ハム男の家でも私の家でもない景色が流れる。
「・・・何処いく気なの」
やっと口をきいた私を見て、 ハム男が優しく答える。
「お腹すいたの?ちょっと俺、用事があって・・・。 一緒についてきてよ。すぐ終わるからさ」 「じゃあさ、どこでもいいから降ろしてよ。 勝手に御飯食べるから。 用事が終わったら迎えにきてくれればいいじゃん」 冷たくて突き放すような言葉。 「・・・そんなこと言わないで。お願い」
そのうち景色は見なれたものに変わって行った。 私が行っていた短大の近く・・・ そしてここにはアレがある・・・。
ハム男?
目的地に気づいて、ハム男の方を見る。 「はい、着きました!」
駐車場に車をとめて、100メートルほど歩くと 大きなお寺の門が見えてきた。 「ここでいいのかな?」 と、ハム男が門をくぐってすぐ左手にある 『水子供養』と書かれたところへ入っていった。 ふたりでぎゅうっと目をつむって手を合わせる。 とてつもなく広いお寺なので二人で散歩した。
彼の家へ帰って、ベッドの上で絡まりあった。 エッチな意味でなく、まるで知恵の輪のように 手足がくるくると絡み合って寝ていたのだ。 私より体温が高いハム男のせいで、汗がでてくる。 いつのまにか「落ち込みスイッチ」は切れていた。
やっと笑い出した私を見て、 「はあ、やっと戻った。よし!がちゃ子の釣り竿買いにいくぞ~!」
手のかかる彼女でごめんね。
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