僕は禿げる。(中略)それでも歌を聴いてくれますか?
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世を忍ぶ仮の仕事場でのことであるw。
休憩時間に給湯室へ行った。コーヒーを作るためだ。僕は 一日にコーヒーを何リットルか飲む。タンブラを持って行っ て給湯室でインスタントのものを入れることにしている。甘 くないのが好きなので休憩室の自販機のコーヒは飲めないか らちょうどいい。
僕がコーヒーを入れているといつも給湯室で会うある子が お茶のパックとタンブラを持って入ってきた。彼女の雰囲気 がいつもと違ったので「あれ」と僕は言った。その時点で何が 違うのか気付いていない。直後彼女の服装が変わったことに 気付いた。スカートだ。前はパンツの姿しか見たことがなか った。今はスカートを履いている。
僕は「お、スカート」と言った。「見たことなかったけど似 合うんじゃん」とも。
彼女は最近同じ職場の男性と付き合い始めた。彼女は9時 から18時までの勤務、彼氏は18時から23時までの勤務。ど うやって接点を作ったのかも野次馬的に気になる。僕はお湯 を入れ終わる頃に「彼のこのみかなあ」と冷やかしを言った。 あたりをインスタントとは思えないコーヒーの香りが包む。 彼女は冷やかしをものともせず「そうなんです」と言った。僕 は予想していない嬉しそうな受け答えにちょっと不意を付か れたが、なんだかうれしくなり「へえ」と返す。
彼女は彼が出来たのでスカートを履こうと思ったのだそう だ。彼も喜んでいるとの事で癪に障るくらいときめいている。
僕はちょっと意地悪かなと思いながら「でもスカートを見 る時間が少ないね」と言った。彼女が残業するのはせいぜい 30分。所属する組が違うのですれ違う程度。その問いに対す る彼女の答えは僕の意地悪な気持ちを消してしまうには充分 だった。
彼女が「むしろすれ違ったりするだけなので彼の中に残るそ の日の私の印象はその一瞬のもの。だからその一瞬は彼好みで いたい」というような意味のことを言った後、僕は「おあついね え」と言いながら給湯室を出た。廊下を「数年後もそんな事を言 ってろよな」などと思いながら歩いた。
休憩室のイスに座ると、入れたばかりのコーヒーをすすった。 粉を入れすぎたのか、コーヒーはとても苦かった。僕は彼女の 口調を思い出しながらもう一口そのにがいやつを流し込んだ。
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