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.◆◆第5話:『GROWIN'UP』 ��
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「オーディションの曲なんだけどさ、一曲は今までのレパートリーから一曲、もう一曲は新曲で行こうかと思うんだけどさ、絵里ちゃんがこないだ書いてた詞があったろ?あれに曲つけてバラードにしたいと思ってるんだけど、どうかな?」 オーディションへの参加が決まり、まずは一次のテープ審査に向けての選曲会議で、リーダーがそう言った。 「あれだろ?三角関係のやつ。親友との友情を失うくらいなら自分は一生片想いでいい、って奴。あれなら俺、曲つけたいって思ってたんだよね」 浅倉さんがその話に即座にのって、あたしの詞・浅倉さんの作曲&編曲で新曲を作ることになったものの、あたしは正直言って少し戸惑っていた。バンドのこれからがかかってるオーディションに、あたしの書いた詞を使っていいのか、ということと、楓が何と言うか、ということで。
この詞を書いたのには、一つのエピソードがある。 あたし・梢・楓・瞳子さん・美和子・麻衣は入学以来いつも6人でつるんでいた。だけど、それが壊れてしまいそうな事態が、この夏・起こってしまった。 梢は、一年の時から同じクラスの富田夏樹とつきあっていた。彼と楓が同じ吹奏楽部で、楓が富田の情報を梢に流したりして二人の橋渡しをしたようなもんで、そのおかげで二人はつきあいはじめたわけだけど、そうしてるうちに楓も夏樹のことを好きになってしまったらしい。 それでも、楓は沈黙を守り通した。決して自分の恋心を明かすことなく、友情の法を選ぼうとしていた。 一度だけ、楓が自分の心を打ち明けたことがある。 その日、楓・梢・夏樹の三人が放課後お茶してるとき、たまたま同じ店であたしはメンバーのみんなとミーティングをしていて、これから別行動するとかで、梢たちが先に店を出たとき、その後ろ姿を見送る楓の思いつめたような、一途に夏樹のほうへ向けられていた視線が気になって、数日後・楓と二人っきりになった時、こっそりと聞いてみた。 「・・・ひょっとして、富田のことが好きなの?」 一瞬の沈黙。 「ばれてないと思ったんだけどなぁ・・・絵里にはばれてるんだね・・・」楓は苦笑いしつつも、素直にうなずいた。 「だけどあたしは言うつもりはないの。もちろん梢ちゃんに負けないくらい夏樹君のこと好きだけど、梢ちゃんを苦しめることになるから今は言わない。だからお願い、みんなには黙ってて」 「・・・あたしはもちろんそのつもりだけど、楓はそれでいいの? 梢は夏樹にべた惚れだし、夏樹もまんざらじゃないって感じだし。 このままじゃ楓の想いは報われないんだよ?辛い思いしてまであの二人といてもしょうがないじゃない。このまま言わないでおくつもり?」 正直な話、あたしには楓の言葉が理解できなかった。女の子は、友情よりも恋を選ぶ生きものだと思っていたから。そんなあたしの思いに気がついたのか、楓はかすかに微笑んで、静かに語りはじめた。 「・・・夏樹くんと同じ位、梢ちゃんやみんなのことが大切なの、失いたくないの。 ・・・あたしね、何でか女の子に嫌われるみたいで、中学の時に友達が一人もいなかったの。ほんの些細なことである女の子のグループに誤解されちゃって・・・誰も助けてくれなかった。友達だと思ってた子も手のひら返したように離れていっちゃったの。だから高校はみんなと一緒の高校に行きたくなくて、城山を選んだ。 やり直したかったの。誰もあたしのことを知ってる人がいないところで。だから、あの時梢ちゃんがあたしのことを誘ってくれてうれしかった。みんなの仲間に入れてうれしかったの・・・。だから失いたくない。 ありえない話だけど、もしもあたしの思いが夏樹くんに通じたとしても、どっちがいいかなんてあたしは選べない。それで梢ちゃんが泣く結果になるならあたしは自分から夏樹くんに言うことはないと思う。いい子ぶってる、ずるいって思われてもいい。でもこれがあたしの本当の気持ちなの。」
その後、楓の言葉が忘れられなくて、あたしはこの詞を書いた。
「♪好きになりたくなかった 泣くのはあたしだけでいい 失いたくない その笑顔曇らせたくない 恋よりも友情を守る 心からそう誓えるよ 気持ち心に閉じ込めよう 恋心(おもい)は笑顔で隠してしまおう この心地よい空気の中で ずっと笑い合っていたかった ごめんね嘘をつきつづけるよ あたしにはそれが真実だから♪」
だけど、梢と夏樹の仲は意外な方向に向かっていった。 彼らの間に何があったのか知らないけれど、梢は自分から身を引いて、楓と夏樹をくっつけるという行動に出た。だけど、その後の梢を見ていて、決して夏樹を嫌いになってそうしたわけじゃないのがわかった。 「ばかよ、梢は・・・」そう言って、あの冷静な瞳子さんが泣いていた。 楓もいたたまれなくなったのか、すこしずつあたしたちから離れていって、今じゃ同じ吹奏楽部の子と一緒に行動している。梢と楓、二人のことを思ったら、文句を言うことも、戻ってこいと説得することもできずに、そうしているうちに夏休みに突入した。 (「GROWIN'UP」�イ紡海�)
2002年06月23日(日)◆◆
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.◆◆第5話:『GROWIN'UP』 ��
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「嶋田さん・・・それマジ?」リーダーの言葉に真っ先に反応するのはやっぱり浩司。 「こんなときに真顔で冗談言う奴がいるかよ」いつも明るいムードメーカーであるリーダーの顔がいつになく真剣で、あたしたちは彼が本気で言ってるんだと感じて、何も言えなかった。 「本番は8月だから高校生組も浅倉も大丈夫だろ?」 リーダーの話と言うのは、今のメンバーになってもう2年以上たったから、そろそろオーディションに挑戦してみないかというものだった。学生のあたし・麻里・浩司と自分の家(楽器屋)勤務のリーダーはいいけど、今年から藤女の音楽の先生になった浅倉さんのスケジュールだけが心配だ、とも言った。その話に反対する奴などいるわけなくて、こうして本番へ向かっての猛練習が始まった。 「いやぁー、リーダーも人が悪いよなぁ。こんな大事なこと今まで黙ってるなんて」その日の帰り道。麻里は彼氏でもある浅倉さんに送ってもらうことになって、あたしと浩司は駅へ向かって歩いている。 「・・・しょうがないよ。あたし達は別にいいけど、浩司も試験・試験でそれどころじゃないし、何より浅倉さんが都合つかないもんね。なんてったって天下の地方公務員なんだから。」 「・・・確かにな。俺もどうかなりそうだよ、3年になったらこの試験漬けの日々。 進学するためとはいえ、きついぜ。だからって手ぇ抜いたら親も黙ってねーだろーし。バンドもやめろって言われかねないしな。いくらうちの親が放任だからって」 「・・・ちゃんと考えて、がんばってんだね。いかに親にばれないようにするかって、それだけしか考えてないような気がする、あたしも麻里も。」 たった一つしか違わないのに、自分のことをちゃんと考えてる浩司。口だけじゃなくて実際に頑張って、成績だって(この辺じゃ名の知れた進学校の)城山高の中でもトップクラスだし。 「おまえ、今はいいけど、ばれたときはもっと大変だぞ。麻里ちゃんもいるんだから、理解してもらえるようにやんないと。男だったら理解してもらえなくても勘当されてもそこそこやっていける けど、女の子だとつらいぜ、きっと。」 「・・・ところで浩司、進路どうするの?・・・まあ浩司ならどこの大学でも大丈夫って気がするけど・・・」 「うん、大学はどこか決まってないんだけど、いちお国・公立狙い。来年は尚登も受験だから親に余計な負担させたくないしな。学校終わったらリーダーの所でバイトさせてもらう事になってるんだ。楽器代も欲しいし、レッスンもさせてもらえるし。一石二鳥だろ?」 「んじゃあ、秋からはもっと大変だね。国・公立志望組って補習があるんでしょ?」 「・・・・うん。みんなにゃー悪いけどちょっと練習量減らしてくれってリーダーに頼んだ。昨年の浅倉さんの教員試験の時みたいになるんじゃないかな。 だから俺は今度のオーディションにかけてるんだ。リーダーが言うにはここでがんばらないと次のチャンスはそうそうないだろうからって。 来年はおまえが受験だし、その次は麻里ちゃんだろ?バンドのせいでこけたなんて言わせたくないからって。自分や浅倉さんはちゃんとやりたい職に就いてるからいいけど、学生組には後悔しないようにやってほしいってさ。」 「・・・がんばろうねっ。どんな結果でもさ。後悔したくないよね」 「そりゃー俺のセリフだよ。・・・ったく。これが終わったら残ってるのは勉強漬けの日々だし。」 「あれー?さっきと言ってることが違うよー。何か弱気じゃない?」 「そりゃーぐちりたくもなるさー。しばらくギター断ちだぜ?学祭終わったら本格的に。俺くじけそーよ。何かおまじないでもしてくれん?絵里」少しすねたような、甘えたような浩司。 「何がお望みです?ご主人様」あたしはわざとふざけて答えたら。 「・・・・絵里ちゃんのちゅー。」突拍子のない要求に、辺りは薄暗くなりかけてるのに、ばれてしまうんじゃないかって思うくらい、顔が真っ赤になってるのがわかる。 「なーに言ってんの!こんなところでなに言い出すの!ばー・・・・」か、の言葉は浩司の唇に封じられてしまった。
2002年06月13日(木)◆◆
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.◆◆第5話:「GROWIN’UP」 ��
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「今から志望校のランクを上げるだと?何考えとんじゃ・海藤!」 担任のあきれ顔。無理もない。もう志望校を決めてそれに向かって準備しないといけない中3の冬。ランクを下げる奴はいても、上げる奴なんてそういるもんじゃない。 「・・・で?どこにするんだ?藤生女子か?紅稜か?」 「それが・・・城山なんですが・・・」 「城山だと?何考えてるんだ?わかってんのか?城山って言ったらうちのクラスだと牧島ぐらいだぞ、余裕で合格できるのは。おまえの成績じゃとうてい無理」 そりゃそうだろう。瞳子さんといえばうちのクラスはおろか学年全体で3本の指に入る人なんだから。あとは美和子のようにクラスでも上位5人ぐらいしか行くことのできない進学校だから。 「本当にうちのクラスは恐いもん知らずと言うか、身の程知らずばかりだよなぁ・・・。永井が城山志願ってだけでも頭が痛いのに、おまえもそんなこと言い出すなんざ。・・・でも言い出した以上は合格するようにがんばるってことだよな?それなら期末の成績を少なくとも十番は上げるようにしろ。できないならあきらめろ。それからでも進路変更は十分間に合うから」
あたしはそれまで自分の成績なら、自分の家から一番近い明生高校に行こうと思っていた。だけど、それをあえて城山に変えたのは、桑原さんがいるから。 「CINQ」に入ったあの日、あたしは桑原さんと話をしている中で彼が城山高校の生徒であることを知った。そして、彼はぽつりと一緒の学校ならいいのにな、と言った。 あたしはその話を聞きながら、城山で軽音部に入って学校でも一緒にバンドができれば・・・と思った。 そんなあたしの決意に、瞳子さんと美和子が何も聞かずに協力してくれた。放課後・時間の許す限り、二人はあたしの猛勉強につきあってくれた。 二人のおかげで、あたしは城山の学生になれた。もちろん、瞳子さんも美和子も一緒に。 「絵里!」昼休みの2−Aの教室。 「あ、桑原先輩だー。いつ見てもいいおとこー」めざとい麻衣がつぶやく。クラスの女子の「いーなー」と「このやろー」光線を受けまくりつつあたしはそっと教室を出る。 「なに?」さりげないふりをして聞くけれど、実は心臓がばくばく言ってる。 無事に彼と同じ高校に入学して一年がたった。 初めはただの仲間としか意識しなかったのに、いつのまにか気持ちが恋へと向かっていって、「桑原さん」から「浩司」と呼び方が変わった頃、彼はあたしの「恋人」になった。出会った頃はなんとも思わなかったのに、今は浩司の言葉や表情、しぐさに魅かれる。 「今日、夕方空いてるか?嶋田さんが緊急ミーティングするからって」 「あたしはだいじょうぶだけど・・・麻里と連絡とってみるね。」あたしは麻里のポケベル�發魏,后K穃い蓮⊂觧海犬磴覆�て藤生女子高に通っている。あたしと浩司は同じ学校だからいいけど、こういう緊急の場合はすれ違いになることが多いから、麻里とふたりで話しあい、親に内緒でポケベルを買った。 二人ともバンドをやっていること、二人とも彼氏がいること・・・どんどん親への秘密が増えていく。 (『GROWIN'UP』��に続く。)
2002年06月09日(日)◆◆
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.◆◆第5話:『GROWIN’UP』��
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〜♪GROWIN’UP! GROWIN’UP!MY FRIEND GROWIN’UP! GROWIN’UP!MY DREAM 輝きたい 夢を捨てないで〜 「下手くそー!」 すべての始まりはこの一言だった。 忘れもしない、あれは中学3年の文化祭。クラスメイトにおがみたおされ、あたし・海藤絵里(かいとう・えり)は文化祭1回きりの即席バンドを組んで舞台にたったものの、こいつらと組むんじゃなかった。あたしは後悔しながらボーカルを務めていた。 ろくに練習しようとしないミーハー女どもの演奏がうまく行くはずがなく、あたしはとっとと終わらせて舞台を降りたい気持ちでいっぱいだった。ラストの曲も終わり、あたしたちが舞台を降りようとしたその時。 「下手くそー!ボーカルばっか目立ちやがって、バックはないほうが良かったんじゃないかー?」 途端に起こる笑い声。悔しくて自分の席に戻る気になれず、あたしは体育館を出るとそのまま外へ飛び出した。
「ち・・・っくしょー!」 裏庭で、あたしは腹立ち紛れにそこら辺のものをけとばす。 もっと練習すればもっとうまくできたはずだ。自分の歌い方はこんなのじゃないはずだ。後悔ばかりが先に立つ。 「ねえ、あんたさっきのボーカルの子だろ?」 突然後ろから声をかけられ、振り向くと。 「おーこわー・・・そんなに俺が言ったことが気に触った?」そこにはさっきのやじ男がたっていた。 「なあ、俺もバンドやってるんだけどさ、今ボーカル捜してんだー。俺たちと組まない?」 「・・・・・そんな急に言われても、あんたたちの演奏聞いたことないしね」 「少なくとも今日のあの連中よりはずぅーっとましだと思うぜ?ま、とりあえず俺たちの練習見に来てよ。土日ならここにいるからさ」 強引にあたしの手にメモを握らせて、そいつはその場から立ち去った。
「ねーおねーちゃん、このメモ何?」 妹の麻里があたしの制服のポケットからあのメモをとりだしてひらひらと振ってる。 「いーよ、それ捨てても」 「えーなんでー?男の子の名前が書いてあるよ。土曜に『Freedom』って書いてるけど待ち合わせかデートじゃないの?」 「欲しけりゃ、麻里にやるよ」 「えー?おねーちゃんに声かけたんだからおねーちゃんが行きなよー。あ・そうだ!それならあたしもついてく!いっぺん『Freedom』って行ってみたかったんだよねー。よし決めたっ!二人で行こーよ、おねーちゃん」 こー言うときの麻里はいじょーに決断が早い。あたしはもう逆らえないと思い、渋々うなずいた。 土曜日・午後三時。あたしと麻里はライブハウス『Freedom』にいる。 「よく来たね。そこらへんに座って見ててよ」 バンドのリーダーらしき人に声をかけられ、あたしたちはまだ誰もいない客席に座る。メンバーは男3人。ギター・ベース・キーボードが一人ずつの構成らしい。 「ねー、ドラムはいないんですかー?」麻里が聞く。 「今の所いないんだ。シンセの打ち込みでドラムの音を出してる」その言葉を聞いて、にやり。と麻里が笑う。 「あのー、ちょっとだけ叩かせてもらえませんか」 この突拍子のない申し出に、みんな驚いたようだ。いくら麻里が吹奏楽部でドラムを叩いていいて、賞をもらったことがあるとはいえ、そりゃ無茶だ。 「・・・いいよ。これ、プログラミング用の楽譜で悪いんだけどちょっとたたいてみてくれる?」 彼らが休憩に入り、その間にテーブルをスティックで叩いて練習する麻里。
「・・・見に来てくれてありがとな。来てくれないんじゃないかって思ったよ」あたしにメモを押しつけた彼が横に来て座る。 「妹って、ドラムできるの?」 「いちおーね。吹奏楽部でやってるし、賞ももらったこともあるけど・・・」 「すげぇな、まだ中2だろ?・・・そういう姉ちゃんのほうは?」 「あたしは・・・いちおー歌好きだけど、ちゃんと教えてもらったわけじゃないし・・・合唱部だけど、クラシックはなんか合わないなーって気がしてる」 「だよなー。あんたの声って、おとなしくみんなと合わせて歌うって感じじゃないもん。どーせならこの前みたいにボーカリストってのが合ってると思うけど。・・・良かったら、これ歌ってみない?そのために今日来てもらったんだし。今から妹と合わせてこの曲やるからさ、入れるところから歌ってみて」 いきなり歌詞を渡され、とまどうあたし。そうするうちに休憩が終わる 「・・・そしたら、まずドラムのほうでカウント入れてくれる?・・・そうそうそんな感じ。・・・よし、それじゃ行こうか!」リーダーの合図。麻里がスティックでカウントを入れる。
『♪Hey yo Girls カッコよく行かなきゃ Show Timeはこれから Hey yo You!男の顔色ばかりうかがってちゃ いかす女になれない (Hey everybody Comeon!)♪』
・・・なに、この感じ・・・。 体の中から何か熱いものがこみあげてきて、身体中が、心が、歌いたいと叫んでいる。気がついたら、もう夢中で歌っていた。 「・・・やるじゃん、二人とも!」曲が終わった途端、メンバーが駆け寄ってきてあたしと麻里の背中をばんばん叩く。 「いやぁ、浩司がボーカル候補ですごくいい子がいるって言ってたからどんな子かって思ってたんだけど・・・ 想像以上に良かった!改めて、お願いするよ。二人ともこのバンドに参加してくれないかな?」 (・・・どうする?)あたしはとなりにいる麻里に視線で問いかける。 「おねーちゃんが嫌だと言っても、あたしはやるよ」麻里はまだ興奮がおさまらん、と言わんばかりの顔であたしに言った。あたしも、あんなにいい気持ちで歌ったのは初めてだった。この人たちとやりたい。心からそう思った。 「・・・よろしくお願いします」 「・・・そーこなくっちゃ!あ、自己紹介がまだだったな。俺は、いちおーリーダーの嶋田貴弥(しまだたかや)。」 「僕は浅倉寿史(あさくらひさし)。キーボード担当。よろしくね。」 「俺は桑原浩司(くわはらこうじ)。ギターね。・・・やっぱり俺の目と耳に間違いはなかったろ?ボーカルはもちろん、腕のいいドラマーまで獲得できたんだからさぁ。感謝しろよ・俺に。」 「ばかやろー、最年少のくせに生意気な口聞くんじゃねー」 「今日から俺が最年少じゃねーだろー。麻里ちゃんがいるでしょーが、先輩方」 「しかし年齢層広いよなぁー。麻里ちゃん中2だっけ?ひょっとして俺と10歳近く違うわけ?」リーダーが言い、大爆笑になる。 なにしろ、自分ちの楽器屋勤務のリーダーが二十二歳、キーボードの浅倉さんが一つ下で大学3年・20歳、その下があたしをスカウト(?)した桑原さんで高校1年・16歳。その次があたしと麻里で15歳と14歳。 「まあ、絵里ちゃんと麻里ちゃんにしてみりゃーおじさんかもしれないけど、がんばろーね。」 「嶋田さーん、『おじさん』はよしましょーよ。自分がすごいふけたように思える。せめて『おにーさん』にしましょうや」さっきまで無口だった浅倉さんの一言にまたまた大爆笑。 とても三十分前に初めて会った人たちとは思えないなごやかな雰囲気。 こうしてあたしたちのバンド・「CINQ(サンク)」が誕生したのだった。
2002年06月02日(日)◆◆
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