毒茄子
レガお君



 小娘に出来る事

今日は電車で初出勤。

電車での所要時間がわからないから
早めの電車に乗って坐っていく。
私は座れたけど、次の駅ではほぼ満員。
ちょっとの事で通勤の楽さは
全然違うんだなぁ。とか思ってたら
電車が止まった。
京都で人身事故、上り線はオールストップ。

初めての電車通勤でいきなり遅刻?
こういう場合どうしていいのか
さっぱりわからない。
うろたえて親に電話して指示を仰ぐも
「さあねぇ」というお返事。

電車は田んぼの真中だし
次の駅で降りたところで私鉄の駅なんて
遠すぎて乗り継ぎも大変。
職場へ遅刻予告の電話をしようにも
開門は8時半。出勤は8時45分までという
恐るべきストライクゾーンの狭さ。
それまでは電話しても誰も出ない。

電車はずっと止まったままで
坐ってる私はいいけど
立ってる人はたまらないはず。
少し動いて駅に着いて、
新快速も止まっててそれに乗るはずの人も
全員普通電車に殺到する。
乗換えとか色々考えたけど
じたばたせずこのまま行こうと腹をくくる。

結局40分足らずのところを
2時間かけてたどり着く。
他の先生達は私よりも
さらに遠方住まいの人もいて
加古川から姫路へ出て新幹線で新神戸
そこから下りの在来線で学校まで。
ある人はタクシーで4000円近く自腹で出勤。
みんなすごすぎ。
あっさり遅刻を決め込んだ私は
お咎めは受けなかったけどやはり甘かった。

最近人身事故の多いJR。
多分誰かが線路に飛び込んだんだろう。
奇しくも今朝の朝刊には
香港映画スターの自殺記事。
ちょっと前に日本の俳優も自宅で自殺。
春先って、そんな季節だなぁ。
でも、朝の7時半って
通勤ラッシュの時間だし
何も人の初出勤を邪魔しなくても。
最後に周りに大迷惑をかけて
存在を示したかったんだろうか?

今日からは本格的にオリエンテーション。
担任をする学生の個人情報を見せて貰う。
想像以上にヘビーな背景の学生達。
離婚・母子家庭も多いし
家族の借金で大学を諦めたとか
10数人兄弟の下から2番目とか
44歳大卒後失業とか
面接記録も被虐待経験ありとか
15歳年上と同棲中とか波乱万丈。
実習中は働けないから無収入と言う事で
目標に「貯金」と書いてある事も多い。

仕事と学校の両立が大変で
学校を辞めたいという相談もよく見受ける。
あっさり「学校も大事なんだから
仕事の方をどうにかすればいいのに」
と思ったけど、よくよく考えたら
病院の寮に入ってる彼らは
仕事をセーブしてクビにでもなったら
職と一緒に住まいも失う事になるから
勉強どころじゃない死活問題。

進学コースを長年見てきた先生が
「彼らは生活の面でも
本当に複雑なたくさんの問題を抱えてて
学問だけじゃなくて生活全般にわたって
指導していく必要があるし、
それがかなり重要だったりする」と言われる。

その担任をする私といえば
クラスの平均年齢よりも若く
家族は揃ってて、最低限不自由もなく
奨学金ももらったけど
県外の短大へ行って仕送りしてもらって
学費も出してもらって
卒業したらまた親元で
仕事以外はメシ・フロ・ネルで
悩みといえば恋愛か洋服で
小娘に不釣合いな好きな車を買って
ガソリン代も考えずに乗りまわして
スノボにライブと趣味にもお金つぎ込んで
ホントにぬくぬく育ってきたと思う。
そんな私に何ができるんだろう。

ある意味、死に対峙した患者のように
彼らの痛みや悩みを
完全に理解はできないと思う。
ただ、見放さずに関心を持ちつづけて
側で支える事で、彼らが自分自身で
試練を乗り越えるお手伝いを
小娘ながらできたらなぁと思う。
器が人を育てる事もある、
私も一緒に成長するのだ。

夜は歓迎会。
今まで行った事のない「和食屋」よりも
落ち着いた雰囲気の日本料理店。
学校の全職員が集まって
やはり平均年齢は40歳以上。
とっても落ち着いた宴会で
背伸びした世界に足を突っ込んだという
落ち着かない気分を味わう。

自腹で食べられそうもない料理、最高。

2003年04月02日(水)



 出発

新しい所属へ初出勤。

が、髪が2月に散髪したまま
ほったらかしで根元がプリンで
毛先もバラバラで前髪も長い。
全然爽やかじゃないので散髪へ。
辞令交付は午後だから
午前中に予約を入れて美容院へ。
出勤前の美容院なんて
ホステスさんみたいで優雅。

そのまま出勤だからスーツで散髪へ。
なじみの美容師さんは
私の出で立ちを見て驚いてる。
事情を説明、落ち着いた感じで
カッコよくなりたい。
というオーダーでカット開始。

そこへお初にお目にかかるオーナー登場。
小柄なんだけどよく喋る。
神戸の服はどれもこれも地味だと
ぼやいてたと思ったら私に近づいてくる。
「小柄だから首周りで一度ラインを絞って
ウルフカットのようにしたら
とてもスラッと見えて素敵ですよ。」とか
「前髪を厚くして、その分
高さを出したほうが鼻筋が
キレイに見えますよ」とか色々言う。

面白そうだから前髪は厚めにしてみたら
見事に短めでとっても若返ってしまった。
オーナー曰く「まぁ、かわいらしい。
全然先生っぽくなくて素敵。」
それって、あかんやん。
スタバでお昼を食べて新しい職場へ。
明石は全然だった桜も
須磨の浦公園は咲きはじめてて和む。

学校は老舗だから建物もアンティーク。
震災をのりこえてなお頑張っている。
冷暖房はけっして十分じゃないし
何もかも古めかしい。
でも、不思議と落ち着いたりもする。

私は定時制の進学コースの担当。
進学コースだけあって
皆さん背景も年齢もバラバラ。
学生の平均年齢は28.6歳で私より年上。
さらにすごいのは教員は全部で8人。
平均年齢はどうやら40歳前後で
私は若いというより青いと言われそう。

自分用の机をもらう。
1人に一台、パソコンが貸与されて
椅子は肘置きがついてる先生椅子。
前任の先生がお花を活けて下さってて
机の中にも文房具を揃えて下さってて
おまけに教育系の雑誌を20冊ばかり
私にと置いて下さってた。
発行日を見たら20世紀と古い。
でも、目次を見たら
「いかに学生の声を聞くか」とか
「効果的な学習とは」といった
今も昔も変わらない基礎の基礎。

こんなに色々して下さるなんて
どんな先生なんだろうと思って
雑誌を開けたら先生の名前が書いてある。
・・・どう考えても50歳は超えてそうな
味のある名前。
激若の私が来ると聞いて
心配になったんだろうか??
とにかく、ありがたい限り。

職員を紹介していただく。
レギュラーコースの先生の中には
私が昔臨床指導をしてた時に
一緒に仕事した先生や、
今回の異動にあたって「部長の推薦を」と
具体的なアドバイスを下さった先生がいる。

部署が違うのでどう近づこうと思ってたら
あちらから声をかけて下さる。
「レギュラーだったらよかったのに。
学生の事も良くわかってらっしゃるし
惜しいわぁ。また何でも相談に乗るから」
と言ってくださる。
実は、「人間関係があんまり
爽やかじゃない時もある」という噂が
流れてたうちの学校。
今のところは皆さんフレンドリーだから
とりあえずはヘンに壁を作らないで
普通に頑張ってみようかな。

いちおう初日なので定時帰り。
が、肌色のストッキングとか
卓上カレンダーとか一筆箋とか
色々小物が不足してる。
結局帰ってすぐスーツ脱いで
昨日まで通勤で着てた服を着て
通勤で乗ってた車で通勤道路を通って
買い物に行く。

買い物に行って普段どおりごはん食べて
PC触ってお風呂入って22時。
広島に帰った後輩から電話がかかって
小一時間ばかり話す。
彼女も今日が初出勤で
古巣での看護と新任地の
あまりのギャップにショックを受けて
帰りの車で泣いたと言う。

でも、そんな状況の中でも
「夏にはまた就職活動するか
院を受けるかじっくり考えます」
「忙しい病院で、時間管理とか
色々勉強できるかも」とか
後ろは向いてない彼女。ステキ。

明日の準備等、諸々の用事が終わって
寝たのは1時過ぎ。
この1時まで、ぼーっとする間もなくて
こんなのは初めて。
臨床時代は何だかんだ言って
かなりヒマだったらしい。

もしかしたら、うっかりすると
自分の時間もとれなくなる。
自分の時間といっても
自分の好きな仕事をしてるんだから
それって自分の時間?
長い人生、ちょっとぐらい
ストイックな時間があってもいいかな。

長い道、始まりの一歩。

2003年04月01日(火)
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