毒茄子
レガお君



 気遣える人

ゆうべ遅くに。

実習病棟の臨床指導者がメールをくれた。
「その後の患者さんですが、
学生さんが挨拶して帰られたあと
何だか嬉しそうでニコニコされてましたよ。
どんな挨拶をされたんでしょうか」

昨日受け持ち患者に何とか
気持ちを伝えたいと手紙を書いてきた学生。
教員と臨床指導者が内容を見て
手紙ではなく自分の言葉や態度で
思いを伝えるように言ったところ
最初はボロボロ泣いてたけど
帰り際に自分で部屋に行き、
患者と話をして帰ってきた。

その評価が患者の「ニコニコ」。
何かいい作用が働いたらしい。
学生はそれを知らないうちは
ずっと悶々とレポートに取り組むハメになる。
とってもしんどい週末。

本来なら指導者と教員は
お互いのメールなんて知らなくて
こういういいフィードバックは
週明けまでもたらされない。
以前からの知り合いである指導者は
学生も私も困りきってるのを見て
わざわざメールをくれたのかも。

という事で、私も学生に電話する。
休みの日まで教員から電話がかかるって
イヤかもしれないけど、
いいニュースだから許して貰おう。
学生にメールの事を言ったら喜んでた。
昨日も他の学生が電話をしてきて
色々話してちょっと楽にはなってたらしい。

私が学生の頃、実習で大きな壁には当たらず。
壁に当たってる同期がいることにも
全然気がついてなかった。
だからそうやって励ましあう事もなかった。
彼女達は入学当初から仕事と勉強と
人によっては家庭とも両立させてやってきた。
しんどい思いを知ってるからこそ
人に対する気遣いが育ってるのかなぁと思う。

夕方からいさお君とホタルを見に行く。
姫路から迎えに来てもらって
また姫路へ引き返して夢前へ。
夏至前日で現地についても日暮れにはほど遠い。
車で田舎をグルグル走る。
どんどん山へ入っていって道が行き止まる。
私はぼーっと坐ってるだけだけど
いさお君は運転しっぱなし。

色々と話はするんだけど
盛り上がらないし広がらない。
一緒にいてイヤな感じはないけど
恋愛感情には程遠い。
ちょっと退屈だったりもする。
私が寒そうにしてたらエアコンに気を使い
田舎に入る前にはトイレの心配もしてくれる。
本当に、「いい人」。
私は、いつかまた誰かを好きになるんだろうか?

明日も会えるかと聞かれて
仕事も残ってるしでお断りする。
来週末は土日とも在宅・ホスピス研究会だから
2週間いさお君と会う予定はない。
さて、それがどう作用するか。
その頃には魚と会わなくなって1ヶ月。
毎週会ってたのが私が誘わないと
魚からの連絡も無くて、自分の位置を思い知る。

去年の今頃と、ほとんど同じシュチエーション。

2003年06月21日(土)



 ケアは与えて受け取るもの

またまた週の終わり。

実習中の学生は今日のカンファレンスで
来週に向けての方針を大まかににでも
発表できないといけない。
が、方向性はなかなか見えてこない。
それぞれに色々関わってるんだけど
具体的な援助となると難しいらしい。

はっきりと「ダメです」「煮詰まってます」
と言う彼女たちに励ましの言葉をと
色々ネタを繰るんだけど難しい。
ある学生は体調が思わしくない患者に
「今日はしんどくて話すのは無理」と言われ
どう近づいていいのかわからず
苦し紛れに手紙を書いてきた。

・・・患者に対する気遣いが出てこない。
「関わらせて頂いてありがとうございます」
「治療や病気の事でわからない事があれば
調べてお答えしますので教えて下さい」
要は自分が言いたいお礼を述べ
自分がやりたいことを表明しただけで
患者のニードに沿う事には目が向いてない。
結局手紙は渡せないことになり
学生はどうしていいかわからず泣き出す。

別の学生も患者の言いたいことを聴くより
自分の言いたいことを言ったり
自分が聞きたいことを聴きだしたい
という思いが強くてそこから抜けられない。
自分が求める言葉が聞かれなければ
「情報が取れてない」と悶々としてる。

私は私で彼女たちを思うように導けずに悶々。
「こうすればいいのに」と思う事を
いかに彼女たちに気づいてもらうか
回りくどいプロセスに疲れ気味。
学生は記録上ではいまいち深まってないし
要綱に上がってるような
実習目標に沿うのも完全ではない。
何とか手ごたえをつかませてやりたいし
心理的援助の大切さを感じてもらいたい。

でも、毎日患者と接して自分の人生を考えたり
スタッフの言動に感動し
看護の奥深さも感じつつあるという
とても意義の大きい学びをしてると思う。
それが評価に出てこないもどかしさ。
カンファレンスになって学生がそれぞれ
自分の考えを言うんだけど
またまたちっともまとまってない。

私が半分以上答えを言ったような
状況に対するアセスメントも
結局私が言った意味がわかってないから
きちんと覚えてなくて
同じように言う事もできない。
惨憺たる結果で私も目が泳いでしまった。

めでたく私の教員初挫折。
これからどうして行こう?
まだまだ若く人生経験も未熟な3人と
臨床家も関わりが難しいという患者と
ひとり立ちしたての新米教員。
不利な状況が多すぎる。
成人看護学実習は一生に一度。重すぎる。
学生がうけもち患者に対して
わかりやすい感情表出を求めるのと同じくらい
私も学生にわかりやすい変化を求めてるのかも。

学生は鼻炎で鼻水が止まらない私に
大丈夫?と声をかけてくれ
泣いてる学生にはみんなで声をかけ
記録で困ってる学生をみんなで待ってる。
恐るべき連帯感の強さ。

帰り際、どんよりしてたら学生が
「先生〜ありがと〜また来週ね〜」と
案外明るく手を振って挨拶してくれて
ちょっと気分が上向く。
私も学生に助けられてる。

やはりケアは相互作用らしい。


2003年06月20日(金)
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