毒茄子
レガお君



 連帯感の生まれ方

今日はレポート総仕上げの日。

2週間の実習で書きなぐった関連図や
アセスメントをキレイに整理して
言いがかりをつけてもらった看護計画も
最終評価をしてという
一番アタマを使う日が今日だったりする。
昨夜は病棟実習終了の開放感で
本当は飲みに行きたかったけど
今日二日酔いでアタマが働かなかったら
大変な事になるので自粛して早めに寝る。

そうやって万全の準備で出勤した今朝。
学生は何だかしんどそうにしてる。
最初は寝不足なのかと思ったら違った。
昨日の帰り、打ち上げをしたらしい。
で、今日は二日酔い。

ムカッと来たけど知らん振りしておく。
二日酔いでも何でもちゃんとレポートが書けるなら
私的には全然構わないし。
でも、結局は学生の頭がついてこない。
色々言っても「え?ちょっと待って」って
全然進まないからだんだんイライラしてきた所で
「先生〜あかんわ〜昨夜飲みすぎた〜」

堂々と言うとは後ろめたさはないらしい。
ずっと黙ってたけどお説教してやる。
「私は今日に差し支えたらあかんと思って
昨夜は飲むの我慢したんや。
それを自分らが二日酔いって何なんそれ〜
病棟から下がってもレポート出すまでが実習や。」
ホントにもう、呆れて笑いがでる。

さらに学生は言う。
「もう、今日ははよ終わって〜コンパやねん」
はぁ?
二日酔いのアタマでさくさく仕上げて
夕方からコンパに行けるほど
単純なレポートは科してない。
「コンパに行くのは勝手だけど
だからってレポートの内容は妥協しないよ。
遊ぶのは勝手だけどやるべき事はやるのが大人」
と偉そうな事を言いながら
結局夜7時まで缶詰め。
ナメてかかると大変ですなぁ。

最終OKが出たところで学生が壊れる。
「先生〜ありがと〜」半泣きで抱きついてくる。
「よう頑張ったやん」って
こちらもじーんとしてると
「先生もコンパ行く?男前揃いらしいで」
遠慮しときます。

もう、学校には誰も残ってないから一緒に戸締り。
「コンパって7時過ぎてるけど間に合うん?」
「10時集合やねん。」
10時からのコンパって、ヘンじゃない?
ますます遠慮しときます。
ってマジで危なくない?そのコンパ。
「無茶せんときよ〜」と
オトナぶった事言って送り出す。
学生のコンパの時間を心配する教員って?

今回の実習で学生は辛い思いをしたし
私にとってもヘビーだった。
それでも学生は「看護師はイケズやったけど
先生がわかってくれてたからそれでいい」
とか嬉しい事を言ってくれた。
一緒にしんどい思いをすると連帯感がついてくる。
昔、臨床で先輩に叱られ詰所に居られなかった時
患者さんの所に行って慰められた事があった。
今回の私は病棟スタッフにイラついたけど
見事に学生に癒されたんだと思う。

何だかんだ言っても、愛すべき存在。

2003年07月25日(金)



 学生を信じなくっちゃ

本日実習最終日。

昨日のムカつくカンファレンスは一旦忘れ。
とにかく最終日を乗り切ろうと
学生ともども身体に鞭打って出撃。
で、今日も朝からやらかしてくれる看護師。
正確には助産師。
学生に言いがかりのような「指導」を入れ
それを聞いた私が学生とのやり取りを
偵察すべく側に立ったら全然対応が違う。
わかりやすい人ね。

婦長は婦長で相変わらず重箱の隅をつつく。
出席表の押印欄に日付が全部書いてないと
はんこを押さずにつき返してくる。
今回の実習中の分だけ
日付書けてりゃ問題ないやん。
あいかわらずうっとおしい。

午後からまとめのカンファレンス。
臨床からは指導者一人が出席。
で、学生がそれぞれ学びを発表。
患者と性行為の話をしてきて
それをプライバシーの侵害だと
非難された学生は患者に
「気をつかって色々話してくれたけど
人間素直に関われば人は心を開いてくれるの
色々話せてたのしかったわ」
と言ってもらえた事を発表して一矢報いる。

後はそれに意見を下さいということになる。
で、さらりと「皆さんいい学びをされて」
という様な事を言って後は話が脱線。
「先生、カルテに記録をしないというのは
どういう事なんですか?」とか
「退院指導をしないのはどうして?」
「カンファレンスの持ち方は?」とか
実習の方法の相談が始まって
学生はそっちのけ。

今は学生に対する評価の場であって
そういう話をする場じゃないという事は
さっぱり解ってない。
ついでに学生がパンフレットを作って
患者に渡した事について
「院内で決められたパンフ以外のものを
患者に渡されると患者は学生からというよりは
病院からもらったと考えるから
それは病院としては困る」とか
パンフの内容の評価とは関係のない
完全に政治の話になってる。

で、それを学生に言葉で伝えられるだけの
力が指導者にはない。
学生は完全に怒った表情でみんな下を向いてる。
結局最後までそのパンフの内容については
コメントなし。で、指導者が言ったのは
「みんなどうしたの?元気ないわね」
やっぱりバカとしか言いようがない。

カンファレンスが終わって詰所へ。
とりあえずお礼を言って詰所を出るんだけど
学生の顔はお礼なんて感じてない顔。
私はさすがに心が痛む。
「いくら応対がひどいからといって
それでも実習の場を与えてもらった事に
ちょっとは感謝できないんだろうか?」
当たり前の事に感謝できる感性は
持っててほしいなぁと、この時は思う。

廊下を歩いてて学生が立ち止まる。
「先生、あの先生にお世話になったから
お礼言ってきていい?」「は?先生?」
学生が寄って行ったのは私と同い年の
女の研修医のところ。
「冷たい看護師と話すのがイヤで
薬の事とか治療の事とか聞けなかった時、
あの先生に聞いたらいつでも
すごい丁寧に教えてくれてん。
だからお礼言わなくっちゃ。」驚く。

いつもなら学生は実習時間がすぎると
「はよ帰ろうよ」とせっつく。
それが今日は時間を過ぎてもその女研修医が
患者と話し終わるまで部屋の外で待ってる。
で、その医者は出てきて学生に囲まれて驚く。
「先生、色々教えてもらって
ありがとうございました」学生は
親身に関わってくれた人にはちゃんと感謝する。

さらに驚いたのがその研修医の返事。
「いえいえこちらこそ。
私の診てる患者さんは本当はケモが嫌で嫌で
ケモの度にパニックになる人だから
今回も治療を乗り切れるかわからなかったのに
今回はとても楽に乗り切れて
それは学生さんが毎日
側で支えてくれたからだと思います。
ありがとうございました」って。学生嬉し号泣。
私もじーんと来る。

結局この病棟で一番学生が心を開いた医療者は
この若い女の研修医だけだったんだろう。
学生の頑張りを認めてくれた医療者も
この研修医だけだった。
研修医だから毎日話してたわけじゃないと思う。
でも、彼女が学生からの質問に
一生懸命答えようとしてくれた姿勢は
毎日関わってたスタッフよりも学生に響いてる。

こういう人間同士のふれあいが
どうして平均年齢40歳を超えそうな
大人だらけの病棟でできないのかが不思議。
最初は学生に感謝の気持ちがないのを
残念に思ってたけど、学生が鈍い訳じゃない。

私が信じてやらなくっちゃ。

2003年07月24日(木)
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