遠距離M女ですが、何か?
井原りり



 同僚Aその後


働きなれたこの職場を離れたくないだなんて甘ったれだ、と聞こえないここで厳しく書かれている同僚Aではあるが……。

その後、本部としても、こんなちんけな職場に専従として籍を置き半人前の仕事しかこなしてないことが監査でばれるとやばい! ってことで、上の意向で「転勤」する可能性が大……らしい。


でも職場の誰も「甘い」とか「甘えてる」とかいう言葉で彼を評しないのよね。


どうなってんだ?


2003年02月02日(日)



 札束を着る

あたしが住んでいるのは狭くて古臭い地方都市である。


町の本屋も、電器屋も、郊外型に押されてつぶれていく。

なのに呉服屋は多いし、どこもつぶれずに商売を続けている。

秋冬になると着物で出歩いているばあさんに、一日何回もすれ違う。

普段着として着物を着てるババアがそこそこにいるってことだ。


こんなにたっくさん呉服屋あるんだから、知りあいと一軒の店で鉢合わせすることなんてありえないと思っていた。

ところが昨日、○×屋にいたら、店の前にベンツが停まり、夫の妹とそのダンナが入ってきた。


もおお、ほんっとにびっくりだ。


そこんちの次女が来年の成人式に着るという振袖が出来上がったので見に来たのだ。
自分の家に置いておく気などないらしい。まだ1年も……。

成人式っていったって出来ちゃった結婚で高校中退して、まだ19歳なのに子持ちの人妻だぜ。
まったくもう。


それにしても見事な着物だった。

染めといい、柄といい、金糸の縫い取りといい……。

振袖なんて興味ないあたしだが、ため息が出た。


どこにそんな金があるんだろう?


でもやつらには品も学もない。

義妹のダンナはあたしが結婚したころはまだ塀の中にいたんだし……。

まあ、そういうことだ。


呉服屋で義妹に会ったことを誰かに話したい。

夫に言っても鼻で、ふん、というだけでつまらない。

舅は義妹と仲がいいから、下手なことはいえない。

告げ口するなら、姑だ。

義妹は自分の母親をバカにしすぎている。
やつに比べたら、嫁のあたしのほうが姑とはうまくいってるくらいだ。


「○▼子の振袖見たよ」

「わしにも○▼子に振袖作ってやりたいから金出せって言ってきたが、断ったんだ。なんだ、金あるんじゃないか。ふん。まあ、しかしねえ、子どももいて結婚もしてるのに、今さら振袖なんてねえ」


ほんっと、金だけあってもだめだ。


品性も教養も金では買えない。







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2003年01月31日(金)



 甘えんぼは断罪

同僚Aが来年度から労組の専従に近い勤務になるため、うちの職場には実質週に2回しか出勤できないという。

組合本部としては転勤希望があるなら優先的に配慮するそうだ。

同僚Aとしては、働きなれたこの職場に来年も籍を置いておきたい意向を持っていた。


が、そのためには一方的に彼が今までやっていた仕事をわれわれが分散して背負い込まねばならない。

こんな小人数の職場で、彼は自分の甘えのために、わたしらに負担を強いるのか?


それはちょっとキツイだろう?

あたしゃごめんだね。


期限が決まっているなら我慢もしよう。

だが、彼の専従期間は未定。
このままずっと労働組合に半生を捧げちゃう可能性だってある。


あたしは、彼の甘えた根性が気に入らない。

みんなはどう思っているんだろう?


あたしたちは、ちょっと冷たいかな? とは思ったが、彼には転勤してもらうことにした。

でも、それではあまりにも今までの彼の仕事に対して冷たすぎるんじゃないかと、いう同僚もいる。

感情だけじゃ仕事はできない。


彼は口惜しがっているだろう。

今までこんなにがんばってきて、専従やるならさっさと出てけっていうのか、ってね。

う〜。


かわいそうだけど、そういうことよ。







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で、同僚Aはちょっと落ち込んでいる、つか、さびしそうだ。

あたしはこのまま彼を甘やかしても、今後の彼のためにゃならないと思う。

初めての職場でクールに組合専従として勤めたほうがいい。


そんな同僚Aをみかねて、同僚Bはいうのだ。


「彼のために、もうちょっとわれわれは動くべきじゃないか? 彼にうちにいてもらって、本部からうちに期限付き職員を派遣させるように働きかけたりできないか」


そんな結果がわかっているようなこと、かたちだけの動きを見せたところで一体何になるというのだ。


何度もいうが、同僚Aはわたしらに甘えているだけだ。

来年以降もここにいていいよって言ってほしいだけだ。

わたしらなら多少の負担もみんなで背負い込んでくれるだろうというのが見え見えだから、あたしはヤなんだ。



2003年01月30日(木)



 危機意識

いはらもササキケンジもいうが、関東以西の日本人には危機意識がない、もしくは薄すぎる。


今日は雪が積もるかもしれない。

帰りの交通手段が確保できないおそれがある。

仕事? どうなる。

雪が降ったくらいで、なんだ? と言われそうだ。







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2003年01月29日(水)



 のろけんな

友人の中年の歯科医が不倫にはまってしまい、のろけたいが相手がいない。

のろけ話をするには相手を選ばねばならない。


口が堅く、同じ立場であればなおよい。

だからってあんたが選んだのは、あたしかよ。


業務連絡の短いメールには必要な事柄の他に必ずひとことのろけを付け加えるのを忘れない。


ううう〜、ちょっと迷惑よ。

なんで、あたしにそういう話を聞かせるのかね?

他の人には言えないのはわかるがな。


歯科医とは同じ文芸系同人誌で原稿を書いたり編集したりというつきあい。

いはらを知る前にこの歯科医に言い寄られていたら、今のあたしは彼の「彼女」になっていただろうか?

こちらから言い寄るつもりなどはない。
こころ惹かれることなどないから。

起こらなかったできごとを仮定して語っても無意味だ。


これまで勤務先、取引先、同人仲間など、現実を共有する相手とは深い仲にならないようにしてきた。



他人の目。

無責任な噂。

それぞれの家庭。

想像に難くないトラブルをおしてまで恋に堕ちたいほどの相手はそうそう見つかるものではない。


オトナだから距離のある人とこうなることを望んだのだ。







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2003年01月28日(火)
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