酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2002年09月18日(水) 桜さがし

 柴田よしきさんと言えば、RIKOシリーズに都シリーズ。どちらもヒロインたちが強く美しく読んでいてわくわくどきどき。次回作が楽しみでたまりません。待ち遠しい〜v
 ちなみに柴田さまのペンネームのよしきは弟さんのお名前をいただいているとか。 

 多作な柴田さま(ワタクシは物心ついてからこうお呼びしている)の作品の中で、ワタクシ的ナンバーワンは、『桜さがし』が不動です。 『ふたたびの虹』も負けず劣らずほのぼのと心が暖かくなるので好きですが、浅間寺竜之介(せんげんじ)のある限り、ナンバーワンの座は揺るがないでしょう。浅間寺せんせーの嫁になりたい〜。

『桜さがし』は、柴田さまがお住まいの京都を舞台にした物語。もと教師で作家となった浅間寺と、彼のかつての教え子、成瀬歌義(歌やん)・田津波綾(あや助)・安枝陽介・大河内まり恵の4人が、さまざまな京都ならではの事件や人間模様に遭遇します。
 恋愛や人生に悩む4人と、それを見守り、時に叱咤激励する浅間寺せんせい、ラブ。

 「一夜だけ」では、柴田さまのご趣味のきのこ狩りを彷彿とさせてくれる美味しそうなきのこ料理が出てきます。食べてみたいぞ。山奥のログハウス(もどき)でわいわい言いながら食べたらさぞかし美味しいことだろうなぁ。この物語では、歌やんとまり恵の終わりかけた恋愛の行方が気になります。浅間寺せんせいの言葉や、ふたりへの対応は、もう大人のオトコって感じで惚れ惚れします。あぁっ浅間寺せんせい嫁にしてっ。

 「何を言われても、決めるのはおまえや。後になって誰それのせいでこんなになった、てぼやくのは筋が違う。おまえが決めたんや、最後はな。それを忘れたらあかん」
 私は、まり恵への浅間寺せんせいのこの言葉にびりびりとしびれました。

 ちょいと話が、ずれますが、(いやまぁ、いつものことですが、はい)、この浅間寺せんせいの言葉は、人としての基本姿勢だと思うのです。私は、早々と未亡人になりながらケタケタ笑って生きているせいか、よく相談をもちかけられます。気になるのは、なにかと悩みを自分以外のなにかのせいにしたがる人が多いことです。私は、必ず言います。今現在自分が立っている立ち位置は自分で選んだ結果でしょう、と。その責任を取るのはやはり自分だと思うのです。決して自分以外のなにかのだれかのせいでない。
そう言って去っていた人の多いこと(大笑)。だから 『桜さがし』 を読んでいて、この浅間寺せんせいの言葉を聞いて(聞いた気になってしまった)、うんうんうんと深く深くうなづいたのでした。私は、そういうオトコが好きなのぅー。あぁっ。悶える。

 「夏の鬼」と「片想いの猫」では、中学時代に付き合っていた陽介とあや助の過去と現在の対比となっています。中学時代の恋にいつまでもこだわっていたあや助がやっと新しい恋と出会う。あや助を想い出に変えていた陽介は、道ならぬ苦しい恋に終止符をうつ。「夏の鬼」では、姫だるまが、「片想いの猫」では、赤いタキシードの陶器の猫がKeyとなります。そういう小物使いがまた柴田さまらしくて、京都らしくて素敵v

 「梅香の記憶」は、桜さがしの中で一番好きな物語。歌やんとまり恵の恋愛の方向が見えてきます。この物語のラストで言う歌やんの言葉。ほんの一行。もう何度読んでも涙ぼろぼろになってしまいます。このひとことのうまさが柴田さまの魅力。うん、そうよっ! と叫びたくなる言葉を〆に持ってこられる。その瞬間心がぎゅっとなる。

 この物語で、浅間寺せんせいのかつての教え子の4人は、それぞれの人生を模索し旅立ちます。浅間寺せんせいのほのかな恋も見え隠れします。それはちょっといやんv
 浅間寺せんせいのその後は、『風精の棲む場所』 で知ることができます。柴田さまが、また浅間寺せんせいの物語を書いてくださらないかしら。いつまでも待ってます。

『桜さがし』 2000.5.30. 柴田よしき 集英社



2002年09月17日(火) よもつひらさか

 鮎川哲也さんが、9月24日にお亡くなりになりました。私は鮎川さんのご本より、鮎川さんが見出された作家さんのご本をたくさん読ませていただいています。本関係のネット世界にこのニュースが駆け巡り、鮎川哲也さんを悼む気持ち一色になりました。
ご冥福をお祈り申し上げます。

 酩酊本処に書きたい本(作家さん)は、まだまだ尽きません。
今回は鮎川さんに敬意を表して、鮎川さんに見出されたおひとりの今邑彩さんを。

 今邑彩さんは、1989年に「鮎川哲也と十三の謎」の十三番目の椅子を射止めました。
今邑彩さんの作品は、ホラー・ミステリィ・ファンタジーなど作風も多彩(多才)。
今回、私がオススメしたいご本は、私が一番好きな 『よもつひらさか』 です。
今月集英社から文庫化されましたので、興味を持たれたら読んでみてくださいね。
これは、短編集なのですが、一番最初の作品は1993年に書かれたそうです。
時代が流れ、内容に手を加えようかと考えたそうですが、あえて発表当時のままで手直しを入れなかったと言うことです。ほんの10年前と今の違いも楽しんでください。
『よもつひらさか』の中からいくつかを簡単にご紹介。

「見知らぬあなた」
不思議な文通相手の正体に気づいた時、彼女はいったいどうするのでしょう。

「時を重ねて」
友人の妻の浮気旅行を調べた男の見たものは・・・。あるといいな。こんなこと。

「ハーフ・アンド・ハーフ」
分かれる時には、もめないためにきっちり‘ふたつ’に分けましょう。ふっ。

「穴二つ」
今ほど電脳世界が身近になる前だからこその物語。

「生まれ変わり」
いわゆるとてつもなく気の長ぁ〜いストーカーの狂気の世界。

「よもつひらさか」
 私が、今邑彩さんの物語で一番好きな作品。
黄泉比良坂、あの世とこの世の分かれ道と言われる坂です。
そこで亡くなった誰かに出会っても、すすめられたものを口にしてはいけません。
そのままこの世に帰ってこられなくなるからです。

 この『よもつひらさか』の装丁は、みなさまお馴染みの《北見隆》さん。
 実はこの本は、図書館で発見し、タイトルに惹かれ、手にして、装丁に惹かれ、はじめて読んだのでした。それが今邑彩さんとの出会い。他の作品では、『かなわぬ想い』、『盗まれて』、『鋏の記憶』、『七人の中にいる』なども面白いと思います。

『よもつひらさか』 1999.5.30. 今邑彩 集英社



2002年09月16日(月) MOMENT

 2000年このミステリーがすごい! にランクインをした 『MISSING』 、昨年の 『ALONE TOGETHER』、そして今年出た 『MOMENT』 と読み続けています。この人の文章は静かな音楽を聞いているような心持になります。なんとなく凛とした静謐な感性がとても好ましい作家さんです。淡々とした中のやさしさもとても好ましい。

 さて、このたびの 『MOMENT』、少々おびえながら読み始めました。舞台が病院で末期患者さんがたくさん登場するからです。どうしても腎臓癌で若くして死んじゃった旦那のことを思い起こさずにいられないかしら、と思ってしまって。だいじょうぶでした。泣いたり、過去に引き戻されたりしませんでした。むしろあの日々の中でも旦那と静かに生きたことが小さな優しいさざなみが押し寄せてくるように思い起こされ、嬉しくなりました。
あんなせつない限られた時間の中でさえ、笑顔も確かにそこにあったから。

 ある病院で、末期患者の間に語り継がれている噂、死ぬ前に願いを叶えてくれる人間が現れるv 笑ってしまうでしょう。それじゃまるで現代病院版必殺じゃないか(笑)。でも本当に叶えてあげようとする青年がいる。この青年が、できる範囲で願いを叶えようとしますが、依頼人も一筋縄ではいかない病人ばかり。
 死に際の人間っていったいなにを思うのでしょう。私は死ぬ間際になにを願うのだろうなぁ。

 「FACE」 「WISH」 「FIREFLY」 「MOMENT」 の4つの物語がリンクしながら、静かに流れていきます。 
 私が一番好きなのは、「WISH」 です。 悲しいのですが、少女の弱さや強さや憧れが綺麗。
 物語の最後には、 ‘噂の真相’ と言うものにたどり着きますが、ものすごく問題提起だと思いました。
 ネタバレなので、これ以上書けませんが、秋にふさわしい物語です。是非読んでみてくださいね。

 「まあ、どうでもいいけどな。でも、あんまり余計なものは背負い込むな。お前、最近険しい顔してるぞ。
  気づいてないかもしれないけれど、お前の頭は偏差値ほどには良くはない」

 とても素敵な言葉だったのでおまけですv

『MOMENT』 2002.8.30. 本多孝好 集英社 



2002年09月15日(日) 触身仏 蓮杖那智フィールドワーク��

 酔わされて2002に北森鴻さんが2冊入ってしまいました(9月20日現在)。酔わされて2002は最終的には10冊に絞り込めたらよいなぁと思っています。でもベスト10にはできないでしょう。たぶん順位なんてつけられっこない。2002年私の酔ったこの10冊! と言った感じです。きっと。抜け落とした作品も面白かったものばかりだし。しかしベストを意識するなら、年の後半に出したほうが強みありますよ。印象に残りやすいから。

 酩酊本処で、北森鴻さんの 『親不孝通りディテクティブ』 を書かせていただいていますが、北森鴻さんの作品はほぼハズレないのです。酔わされて2002の北森鴻さん一冊目の 『狐闇』 も最高に面白かった。2002年の私的に非常にマイブームな作家さんのおひとりであると言えるのでしょう。(なぁーんて偉そうだわぁ)

 『触身仏 蓮杖那智フィールドファイル�供戞,蓮∨楹別餌�学ミステリの第二弾! だそうです(笑) 『凶笑面』 に続く、異端の民俗学者、蓮杖那智シリーズ。蓮杖那智の突き抜けたキャラクターには今回もうっとりv 『狐闇』 で活躍する三美女はみんな大好き。自立していて戦う女だから好きなのです。自分で地に足をつけてしっかりと立っている。理想だわぁ〜。ぷーだから余計に・・・あぁぁぁぁっ。自爆どーん。

 この物語の中で、ある人が、「民俗学って、まるで推理小説みたいですね」と言います。そうそうそうなんですよー。私がもう一度若い時をやり直せるとしたら、やってみたい学問は民俗学か心理学。高橋克彦さんを好きになってからその想いを抱いておりましたが、この度ますます強まりました。日本の暗い闇にぶちあたるのだろうなぁ。蓮杖那智と内藤三國のように。那智は強いからいいけど、気の弱い内藤くんは可哀想かも。まぁ、謎解きで ‘とっても役得’ なことがあったからいいかv
 今回、またもや那智は「裏のフィールドワーク」を5つも増やしてしまいます。フィールドワーク最中に ‘必ず’ 事件が起きて、発表できなくなってしまうから。事件が起こるから、名探偵が登場する図式でなく、名探偵がいるから事件が動き出す。
那智の場合はその上進んで自分から突進していくし(大笑)。

「秘供養」
 このフィールドワークで勉強になったのは、「多情仏心」。むーです。

「大黒闇」
 大黒様も不思議な神様。神様って破壊と死をもたらす存在でもあると再認識。
 しかし、宗教は怖い。私は純真にのめりこみ、信じること絶対できない。

「死満瓊」
 美貌の考古学者、奥津城要もなかなかに良いです。この人のおかげで内藤君はっv

「触身仏」
 民俗学をやってみたいーと一番思わせてくれる物語。
 ダイレクトに語れない過去を形を変え、語り継いでいく。東北に行きたい〜。

「御蔭講」
 ここで出てくるアイドル論には妙に納得します。あとどうしてこの物語をラストに持ってきたのかが、最後にものすごぉーく納得できます。がんばれ、内藤三國っ!

 今回とても気になった人は狐目の教務部担当者さん! 彼が今後那智のフィールドワークにどうかかわっていくのか非常に楽しみです。彼のミステリアスな過去もまだ明かされていないしv きっとなにかあったのだろうなぁ。
 前回の 『凶笑面』 を読んでいなくても、じゅうぶん楽しめる作品です。
 北森鴻さんはオススメ作家さんです。

『触身仏 蓮杖那智フィールドワーク�供戞�2002.8.30. 北森鴻 新潮社



2002年09月14日(土) 夏の庭 -The Friends-

 このページをはじめて、酔客Barにケロロ(高校時代からの友人)がやってきて、 『夏の庭』 をすすめてくれました。それに呼応して美月が、 『夏の庭』 いいよねぇ〜と。ふむ、これはもう読むしかあるまいと手にとりました。手に取ったら面白くて眠れなくなって、こんなことまでやってます(苦笑)。只今9月18日午前1時過ぎ。感動が薄れないうちにパソコンを立ち上げてしまう私。もう完璧病気かも〜。

 つくづく童話や児童文学はあなどれないと思います。かつて本仲間で一気に盛り上がった梨木さんの 『りかさん』 、あれなんかもこれに匹敵する力を持っていました。この作品は1992年3月に刊行されています。その時のあとがきに、湯本さんは相米慎二さんに謝辞を述べられていますので、映画化は相米さんが監督をされたのかもしれませんね。(知らないので予想で書いてます) 世界各国で話題を呼び、児童文学協会新人賞などお取りになっているので、この物語を知らない、もしかすると私だけなのかもしれません(大汗っ) 去年、再出版されたご本を読みました(多少手を入れられたらしい)。

 12歳の少年、木山・山下・河辺の3人が出逢ったひとりのおじいさん。出会ったきっかけは死んだ人間を見てみたいからという子供らしい残酷な好奇心からでした。そのターゲットにされたおじいさんが死にかけて見えていたと言うのにのに、みるみるうちに再生していくさまは微笑ましくも可笑しいです。ひと夏で少年たちが体験して得たものは、きっと彼らの一生涯で他のなにものにも替えられないものだったろうなぁと思います。おじいさんが少年たちから生きる力(意欲)を取り戻してもらったように、少年たちはおじいさんからさまざまなことを身を持って経験させてもらいます。生きる屍のようだったおじいさんが元気になり、荒れ放題だった家や庭にも生命力が蘇る。生きるということを謳歌したいと感じさせる物語ですね。この物語の映画、ビデオかなにか探してきて観なきゃいけない。絶対観たい。

たぶん、この世界には隠れているもの、見えないものがいっぱいあるんだろう。虹のように、ほんのちょっとしたことで姿を現してくれるものもあれば、長くてつらい道のりの果てに、やっと出会えるものもあるに違いない。ぼくが見つけるのを待っている何かが、今もどこかにひっそりと隠れているのだろうか。 

 おじいさんの庭に種蒔きをした時、ホースの水が作った小さな虹を見て、木山少年はそう感じます。
こういう感性を持った少年たちが大人になれば、きっと世界に戦争なんて起こらないだろうに・・・。

 映画化までされていたご本ですので、読まれた方も多いかと思います。もしもまだ読んでいないならそれはとてもしあわせです。この本を最初に読めるあの感動を味わうことができるのですから。必読v

『夏の庭 −The Friends- 』 2001.5.31. 湯本香樹実 徳間書店



2002年09月13日(金) 水曜日の朝、午前三時

 「今まで生きてきてものすごく好きになった人って何人います?」
 私は、酔うとよくこの質問を投げます。いろんな年代の人に尋ねてみるけれど、戻ってくる答えの人数はみんなとても少ないです。そう、ほんのひとりかふたりなんです。そういうものかもしれません。
私が今まで生きてきてたまらなく好きになった人は、死んじゃった旦那ともうひとりだけ。
またいつか私がそうを尋ねたら教えてくださいね。

 この物語は、ホラーでもミステリーでもサスペンスでもありません。人が死にますが、それは事故であったり、病気のためだったりです。私にしては珍しく分類は、 ‘ある愛の詩’ という感じでしょうか。
 物語のヒロインは、四条直美。病気で死ぬ前に娘にあてて自分の人生を録音します。その彼女の激しく愚かな70年代の青春と後悔の物語です。高度成長期にあたり、差別や戦争の影も落ちていた、そんな時代の物語。舞台は大阪万博。日本中が世界中が熱に浮かされるようにそこへ行った特定の時間と空間。万博でホステスとして働く直美は、激しい恋に落ち、現実とぶつかり、自己嫌悪に陥る・・・。

 「私はこれまでに何千冊もの本を読んできたけれど、それ以上に日々の暮らしから学ぶことの方がずっと多かった。二十代の私は嫌味な自信家だったし、多くの人のことを軽蔑していたけれど、それでもけして自分の知的確信の奴隷にはなれなかった。内心では花見客を馬鹿にしていながら、偶然に桜の花を目にして、その美しさに圧倒されたりしていたのです。ピアニストが毎日休みなく鍵盤を叩くように、私は人生の練習を続けてきたのです」 これが典型的な四条直美。こういう女性の物語です。

 直美が、録音の最後に娘へ語り聞かせる、彼女の得た人生の宝物のくだりはとりはだが立ちます。迷った時に焦らないで立ち止まれ、という直美の言葉は私の人生においても自戒となりました。彼女は差別という壁にぶちあたります。これには私は答えられません。奇麗事も言えそうにありません。実際、自分がその立場になったら直美と同じ行動を取ってしまう気がします。そして必ず後悔をする。

 この本は、Pabloへ行く前に、別嬪ゆうちゃんと待ち合わせをしている時にふと手にして読んでしまった本です。きっと本に呼ばれたのでしょう。この本を読んだ頃、私は熱に浮かされたようにこの本のことを人に喋っていた気がします。でも残念ながら世の中ではクリーンヒットにはならなかったのかな。
 あまったるい恋愛小説は読まない、見ない、そんな私が惚れた恋愛モノです。
 悲しいけれど清清しい想いをする本です。そして人間について考えさせられる本です。
 なにかの時に、この本を見つけたら読んでみてください。

 奇しくも今日、2002年9月17日、小泉さんが北朝鮮で会談に臨みました。行方不明になり北朝鮮の拉致疑惑があった方々の生存確認表明もありました。6名死亡。なんということでしょう。国交正常化ですか。人と人の心に差別という垣根がある限り、正常になるとは思えない。ニュースを聞きながらそんなふうに感じてしまった、火曜日の夜、午後七時でした。亡くなった方々のご冥福をお祈りしいたします。

 『水曜の朝、午前三時』 2001.11.20. 蓮見圭一 新潮社



2002年09月12日(木) 眠らない少女

 はじめて高橋克彦さんの作品を読んだのは、美月からのオススメがあったからと ‘記憶’ しています。はじめて読ませていただいたのも、おそらくは 《記憶シリーズ》 のどれかだったろうと思います。当然の帰結、高橋克彦さんにどっぷりとはまりこんだ次第です。 《ドールズシリーズ》 や、 《浮世絵シリーズ》 など、どれを酩酊本としてご紹介させていいのかわかりません。そこで単純に私が一番好きで一番怖いと感じた 『眠らない少女』 ほか、さまざまなシリーズも短篇として楽しむことのできる高橋克彦さん自薦短編集をご紹介することにいたします。気に入られたら是非長編へ進んでくださいね。

「眠らない少女」
 この話は、ものすごく短いモノもあったと記憶しています。東北での民話を題材にした世にもおそろしい物語。現代に甦るところがゾーッとします。それでいて最後の父親の愛には思わず、ほろりとする。高橋先生ご自身も、 「ひょっとして私の小説の中では一番怖い作品ではないだろうか?」 とコメントされておいでです。この作品が私の高橋克彦さん好きのルーツです。
あぁ〜東北行ってみたいなぁ〜。

「卒業写真」
 《記憶シリーズ》 の出発点となった作品だそうです。タイトルからして、なにか起こりそうですよね。記憶シリーズでの私のお気に入りはまた別の作品なのですが、この作品もセピア色でよい感じです。

「歌麿の首」
 高橋克彦さんが、分身のようとおっしゃる搭馬双太郎が初登場した作品です。
この作品では、竹久夢二の取材のため、岡山が出てくることが個人的には嬉しかったりするのです。怖い話が駄目な人でも、このシリーズはおもしろく読めるはずです。
  
「ゆきどまり」
 照れ屋さんでいらっしゃる高橋克彦さんの珍しい愛欲(笑)シーンが読めます。ポイント!

「ねじれた記憶」
 実は、この作品が私の 《記憶シリーズ》 での一番好きなお話なのです。
うろ覚えなのですが、世にも奇妙な物語あたりで映像化されたことがあるのではないかしら。

「紙の蜻蛉」
 私の愛してやまない 《ドールズシリーズ》 の短篇。さまざまな本を読み、たくさんのキャラクターのことを好きな私ですが、このドールズシリーズの ‘泉目吉’ は最高に好きですね。男気があって、洒落っ気がある。とっても粋な男なんです。高橋克彦さんもご自分の作品の中でも大好きキャラにあげられています。目吉っつぁんが、ある事情で悲しい状況に置かれているのですが、彼の慟哭は涙を誘います。その彼を認め、守り、愛してくれる仲間たちの友情も泣かせます。ただのホラーじゃありません。怖い話が苦手と言って、このドールズシリーズを読み逃したら、あなた人生損します。断言(笑)

 この自薦短編集は、高橋克彦さんがデビューから10年目に実現したそうです。もしもまだ高橋克彦さんを読んだことのない方がおいででしたら(あまりいそうには思えないのですが)、まずはこの短編集から入ってみられてはいかがでしょうか? 上にあげたもの以外にも短篇がのっています。その中の作品で気に入ったものがあれば、どうぞシリーズを長編を読んでみてください。 

『眠らない少女』高橋克彦自薦短編集 1992.12.25. 角川書店



2002年09月11日(水) 滅びのモノクローム

 ここ数年、電脳社会に泳ぎ出るようになって預かった恩恵のひとつにあげられることに、じょうずに本の情報を得ることができるようになったことがあります。仲良しの本仲間からの情報は勿論、出版社サイト、作家さんサイト、本読みさんサイトなどなど。そうやって情報収集をしていくうちにその昔は <漠然と手にして読んでいた> から <意識をして本を探す> に変わってきたように思います。今までは、たいして気にも留めてこなかった ‘なんたら賞’ もの。あまり流行に流される人間じゃないんで、面白ければどうでもよかったと言うか (ずぼら〜)。まるで気にしていなかったのですね。でもやはり賞を取る作品には、本の方から呼ばれたことも多々あったことだし、気にかけるようになりました、とさ(笑)

 その ‘なんたら賞’ ものでも、私が意識外でも意識し始めてからも、読んでいい手ごたえを感じる作品が多い賞が江戸川乱歩賞。この歩賞は、ものすごく歴史があって、なんと昭和30年にはじまっている。すごいなぁ〜。読んだ作品は時系に沿ってはいないのですが、賞の時系列であげていきます。
『高層の死角』 森村誠一、 『アルキメデスは手を汚さない』 小峰元、 『蝶たちは今・・・』 日下圭介、 『ぼくらの時代』 栗本薫、 『写楽殺人事件』 高橋克彦、 『放課後』 東野圭吾、 『花園の迷宮』 山崎洋子、 『風のターンロード』 石井敏弘、 『顔に降りかかる雨』 桐野夏生、 『テロリストのパラソル』 藤原伊織、 『左手に告げるなかれ』 渡辺容子、 『破線のマリス』 野沢尚、 『八月のマルクス』 新野剛志、 『脳男』 首藤瓜於、 『13階段』 高野和明、そして今回の 『滅びのモノクローム』 三浦明博です(以上敬称略です)。48回のうち読んでいるのは、たったの16作品!? あぁ、ワタクシもまだまだよねぇ。ハァ〜。本気で深いため息が出てしまいました。おーしv またがんばろーっと。

 私が、本を読んで最後のページで胸が熱くなって泣ける。それは私がその本に対して「ブラボー!」と叫んでいるのです。今日、のんびり本を読んで先ほど読了。そしてそのブラボー! だったの。感動。
 またもやダ・ヴィンチからあらすじ拝借; 《仙台の広告マン日下哲は骨董市でレアな釣り用リールを手に入れ、オマケ品のスチール缶から見つけた古い16ミリフィルムを広告に使おうとする。同じ頃リールを売った日光の老舗旅館の娘・月森花はそれを祖父・進之助に伝えていた。だが、話に何故かショックを受けた進之助は倒れて入院。花はリールを取り戻そうとするが・・・》 どうしてみんなあらすじをネタバレにならずにこういうふうにうまく書けるのかなぁ。私にその才は皆無。あ、余談ですけどね。

 この物語、面白いと言うだけではなく、人間として読んでおいて欲しいなぁと思いました。テーマは、戦争や戦後の闇、そして父と子供の絆かな。私も戦争を知らない子供たちのひとりだけど、あの一年前のテロ事件の時には、戦争がおこるのではという恐怖を体中で感じました。戦争が巻き起こしてしまう戦時下の群集心理、禍々しい空気に飲み込まれ、本来ならしないような残酷な過去を背負ってしまう。そんなことは私たちの未来には断じてあってはならないことです。物語は、サスペンスなので、どきどきはらはらと展開を追いかけることができるので、決して全編を通じて重苦しいものではありません。むしろ出てくるキャラクターたちがいい味だしているので、笑えるほどです。まぁ、ちょっとマリモのこと見たくなくなったけど(苦笑)。←理由は作品でどうぞ。 お気に入りキャラはカルトなあんちゃんです。 

『滅びのモノクローム』 2002.8.5. 三浦明博 講談社 
第48回江戸川乱歩賞受賞作品



2002年09月10日(火) 左手に告げるなかれ

 私の好みの女性のタイプは、女優さんで言うと松雪泰子さん(「きらきらひかる」 の時のえらそーな女刑事役)、鈴木保奈美さん(「ニュースな女」 の時のえらそーなキャスター役)、常盤貴子さん(「タブロイド」 の時の負けず嫌いな女性記者役)などなど。そして今一番好きな女優さんは、天海祐希さんv 天海の宝塚時代はまったく知りません。彼女が宝塚退団後、テレビやスクリーンに登場して以来、めろめろのくらくらvvv そんな天海主演だから見たテレビドラマが、この 『左手に告げるなかれ』 でした。ドラマ終了後、原作を知りさっそく読みに走った訳です。 (いわゆる根がミーハーなんですね、ははっ)

 本を読んだ後、私は天海がこの作品のヒロイン八木薔子役を演じてくれたことに感謝しました。それくらいこの本のヒロインはいいです。そしてヒロイン役に天海を選んだプロデューサーもすごいです。
 八木薔子は、かつてエリートキャリアまっしぐらだった女性ですが、とある恋愛が原因でそのキャリアを失う。愛した人に家庭があったから。傷ついた薔子は、その後スルガ警備保障保安課の保安士としてストイックに仕事に生きていく。同僚に蔭で ‘氷の薔薇’ とあだ名をつけられて。なぜそんなあだ名をつけられてしまったのかは本を読んでみてください。納得のネーミングですから。
 そんな薔子のもとへ、刑事が現れます。かつて愛した人の妻が殺害された事件の容疑者とうたがわれて! ・・・愛し合いながら生木を裂かれるように別れた男との再会、汚名を晴らすべく事件を調べはじめる八木薔子。いいですよー。どんどんと引き込まれてあっと言う間に読んでしまうこと間違いないv

 この物語で、すごくいい味を出している人物が薔子の上司にあたる、指令長の坂東女史。薔子のよき理解者であり、応援者であり、時にかっかした薔子の頭を冷やしてくれます。私はいつか坂東さんのような人になれたらいいなぁ。薔子が、神経的に参った時に坂東さんはこう言います。
 「なあ八木、さっさと家に帰って、風呂を沸かせ。そしてゆっくりあったまれや。
まちがっても辞表を書いたりするなよ。同じカクなら鼾をかけ。これは坂東からの命令だ」

これが胸にじーんとくるですよ。そのすぐ後の台詞がより泣かせるのですが、そこはほれ、本を読んでくださいな。こういう懐の深い人間って言うのは、いいですなぁ。
存在感が圧倒的です。引き締まる。

 薔子が、たどりつく真相にはどんでん返しがあります。たどりついた真相は、書けない。
 たどりつくまでに薔子が、かつて愛した人の妻の実像に迫りますが、いろんな意味でこれまた痛々しいです。人間という生き物はやっかいで、複雑で、いい人ばかりじゃない。はぁ。

「左手に告げるなかれ」は聖書から引用されています。マタイ伝第六章、山上の垂訓;

 人にみせびらかそうとして、他人の前で善業を行わないように気をつけよ。そんなことをすれば、天においでになるあなたの父からの、すべてのむくいが受けられない。だから施しをする時には、偽善者が、人の尊敬をうけようとして、会堂や町でするように、自分の前でらっぱをならしてはいけない。まことに、私はいう。そういう人々はすでにむくいを受けてしまったのである。あなたが、施しをするときには、右の手でしていることを、左の手にさえも知らせないようにせよ。それは、あなたのする施しをかくすためである。そうすれば、かくれたことをごらんになるあなたの父が、むくいをくださるー。

 八木薔子が、この垂訓からなにを得ることができるのか、是非読んでみてくださいねv
 ちなみに、 『無制限』 もかなり面白いです。こちらには八木薔子がちょこっとだけ登場。

『左手に告げるなかれ』 1996.9.10. 渡辺容子 講談社



2002年09月09日(月) ふたりのシンデレラ

 西澤先生の掲示板で、よく話題になる作家さんのおひとりが鯨さん。その流れで鯨さん作品はかかさず読むようになりました。ちょうど去年の秋くらいだったと思いますが(おぼろげ〜)、『鬼のすべて』 を読んで、“うわっすっごーいっ!” と感服してしまいました。そのあとも涙研究所とか酒に絡む話とかなかなかに良い感じでした。そこでまたガツンときた作品が 『タイムスリップ森鴎外』 でした。本当はここにそのモリリンのこと書くつもりだったのですが、只今読みたてほやほやの違った角度からのスマッシュヒット! 『ふたりのシンデレラ』 をあげたいと思います。ネタバレになるからあまり書けないけど。むー。

 ダ・ヴィンチ10月号に鯨さんのエッセイがあります。そこや本の表紙の裏に乗っている惹句を拝借v
《わたしはこの事件の証人で犯人で犠牲者で探偵役でワトソン役で記録者で容疑者で共犯者》
このひとり8役を見事に料理されておられますです。ははーっ。平伏。ちなみにエッセイによると、鯨さんはジャブリゾの 『シンデレラの罠』 に挑戦しているのだそうです。フランスの名作ミステリで、探偵であり、証人であり、被害者であり、犯人でもあると言うひとり4役の 『シンデレラの罠』 は残念ながら私は未読ですので、いつかは読んでみたいと思います。そのうえで鯨さんの 『ふたりのシンデレラ』 が 『シンデレラの罠』 を超えているのか、どうか。とても気になるところです。どうもミステリー作家さんって挑戦したがりさんが多い(笑)ような気がするのですけど。 
なんだかとってもチャレンジャー。

 物語はいきなり、犯人のモノローグからはじまり、突如いやぁーんどきどきシーンに展開します。舞台は文字通り劇団なのでまさに舞台。劇のヒロインをめぐって起こる孤島での殺人劇。古典的でもあるのですよねv 物語の劇団の脚本が重要な鍵となっていくこともうまい。脚本も面白いし。

 読んでいて、物語の半ばで犯人とトリック (と言うよりからくりだな) はわかってしまいました。それでも最後まで面白く悲しく読ませてくれるし、ぴたぴたぴたとオチが綺麗にはまっていくのは読んでいて快感です。装丁のイラストは、最近よく見かける亀井洋子さんのイラスト。素敵です。しかし亀井洋子さん今売れっ子だなぁ。本は装丁 (イラスト) も命。

これ以上はもうネタばれなので書けません〜。間違いなく面白いので読んで〜。
『鬼のすべて』 と 『タイムスリップ森鴎外』 もあわせてオススメいたします。

『ふたりのシンデレラ』 2002.9.2. 鯨統一郎 原書房



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