酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2002年10月15日(火) 聖なる黒夜

 RIKOシリーズで訳ありな、練ちゃんと麻生さんの長い長い因縁の物語。たくさんの登場人物の過去が複雑に絡み合い、最後にすべてがときほぐされます。
 非難を恐れずに言うならば、栗本薫さんの魔性の少年(彼はシンガーだったかな)ものを彷彿とさせました。どうしても男性同士の恋愛もの路線は、出てくるタイプがかたまってきてしまうのかなぁ。がちがちに堅い男が男にのめりこむ、とか。女よりフェロモンだしまくって関わる男をどん底に突き落としてしまう魔性の男、とか。
 RIKOシリーズでは、練ちゃんと麻生さんの‘訳あり’なところがわからなくてもどかしかったけれど、やっとふたりの関わりの全てがわかりました。運命のいたずら、そうとしか言いようのない物語でした。おもしろいですよーv
 練ちゃんに真実を聞いた時の麻生さんの心の声;
  夜はなかなか明けない。もう永遠に夜明けは来ないのかもしれない。
 ・・・うーん。そういう気持ちになること人生には何度かある。

 練ちゃんと麻生さんが出会うきっかけになった事件とその裏に隠された陰謀の物語が、またいつか読めるのかもしれませんね。楽しみです。

 『聖なる黒夜』 2002.10.5. 柴田よしき 角川書店



2002年10月12日(土) ライン

 チャットや掲示板で、美月とよっちゃんが絶賛していた漫画家の西村しのぶさん。知らなかったのですが、美月が送ってくれました。
 ブティックを経営する×1のリツコが、目にとめた帽子を作る年下の青年との恋の物語。漫画も小説と同じで言葉のリズムがとても大事だと思うのですが、それがとってもいいんですねー。絵もいいし。西村しのぶさんのリツコに言わせる言葉がとてもよいです。あと、吹き出しじゃない西村さんの手書きの文字がすごーくいいです。しゅたっ、とか、ちっ弱虫め、とか字面からムードがにじみ出る。
 ブラをつけないリツコねぇさんの名言;
    わたしは街のナチュラリスト 心はヒッピーよ
    ナイロンでしめつけるなんて
 ・・・惚れたv

 『ライン』 1998.8.7. 西村しのぶ 講談社



2002年10月11日(金) 花散る頃の殺人

 乃南アサさんの作品では、女刑事音道貴子シリーズがお気に入りv 今出ているのは『凍える牙』(テレビ化では天海祐希が音道役を演りました)、『花散る頃の殺人』、『鎖』、『未練』の4作品だと思います。
 今回、久しぶりに音道貴子の物語を読み返すにあたり、読みやすい短編集を読んでみました。音道貴子は離婚歴があり、まだまだ男性社会である警察の中で彼女なりに懸命に生きようとしています。男性上位の警察機構において腹の中で彼女が毒づくさまは気分爽快(笑)。警察内でのセクハラなぞ洒落になりません!
 この短編の中で一番気に入っている作品が、「長夜」です。ここに音道貴子のかつての同僚、元警察官のおかまのママが素敵。村越鉄平から村越安曇と変身した友人の知り合いが自殺します。その原因を探ろうとする安曇と、安曇の気持ちを思いやる音道貴子のかけあいが微笑ましい。こういう友情もあるんだなぁなんて思います。
 まだ音道貴子シリーズを読んでいない方は、この短編集から入ってみられたらどうでしょう。長編の『凍える牙』と『鎖』もよいですが、これなりに読みきるパワーが必要です。その前にこの短編集で音道貴子を好きになれるかどうか判断してみてください。

『花散る頃の殺人』 1999.1.15. 乃南アサ 新潮社



2002年10月10日(木) ローズガーデン

 『海辺のカフカ』打撃から立ち直れず、あれこれ再読している。
この『ローズガーデン』は、ミロシリーズ初の短編集。

自殺したミロの夫、博夫からの視点で語られるミロと博夫とミロの村野善三(義父)との三角関係にはどぎまぎ。ミロに囚われてしまった博夫の気持ちがよくわかります。>「ローズガーデン」
 ミロの隣人であるゲイのトモさんがなかなかいい男。トモさんの部屋に転がり込んでいるカイに嫉妬するミロの気持ちがわかります。>「漂う魂」
 心はレズビアンでもある私にとっては、興味深々な世界を垣間見ることができます。>「独りにしないで」
 またまた非常に興味の湧くお店、SMクラブに絡んだ仕事をミロが引き受けます。世の中は奥が深い。まだまだ知りたいこと山盛り。>「愛のトンネル」

 『ローズガーデン』 2000.6.15. 桐野夏生 講談社 



2002年10月09日(水) それでも警官は微笑う

 第25回メフィスト賞作品。メフィスト賞では珍しい(ハッ、私が知らないだけかもしてない)ハードカバー。女性が描いた警察小説です。
 無骨なデカ(出世できない)武本正純と、武本が未知の生物と思っている年下のおぼっちゃまくん上司潮崎哲夫警部補。このふたりが事件を追ううちにほのぼのと心を通わせていく過程がとてもよいですv 意外に繊細でいちいち傷つく武本は笑いを誘います。笑っては可哀想なんですけどね。

『それでも警官は微笑う』 2002.6.20. 日明恩 講談社



2002年10月08日(火) 今日を忘れた明日の僕へ

 タイトルの魅力は大切だと思うのですが、この『今日を忘れた明日の僕へ』は感心するほど素敵なタイトル。そしてタイトルどおり主人公は、事故で記憶の蓄積ができなくなった男の物語です。最後にとんでもない事実が明らかになりますが、うーんこのラスト考えさせられます。おもしろくもどかしく読めます。
 それにしても、この作品から記憶障害ものが増えた気がするのですが、いかがでしょうか。
 
『今日を忘れた明日の僕へ』 2002.1.15. 黒田研二 原書房



2002年10月07日(月) トキオ

 東野圭吾さんの物語は、欠かさず拝読しておりますが、この『トキオ』、ただただ読んでくださいと言いたいです。読んだ後に、号泣してました。私。
 23才の宮本拓実が花やしきで出会った少年<トキオ>は、俺の親はこの世界にはいない、と言います。トキオが法螺で言う親の名前は、ことあろうか‘キムタク’v こういうおちゃめな会話が随所に盛り込まれ、笑いを誘います。とある事件に巻き込まれ、大阪に行き出会う竹美と黒人のジェシー。このふたりがまたいいキャラクターです。竹美が、苦労が顔に出たら惨めだとか、悲観しててもしょうがないとか言います。ホントその通りだよねー、と気分は竹美とマブダチです。
 なにかのせいにして、なにかを言い訳にばかりして生きるんじゃない。そんな当たり前のことをあらためて教えてくれる物語です。必読。

『トキオ』 2002.7.18. 東野圭吾 講談社



2002年10月06日(日) あやかし通信「怪」

 数多く出版されている怪談本のなかで、最も恐ろしい本としてインターネット上で伝説となっていた、というシロモノの改訂版です。
 本当にあった怖い話、ともだちから聞いた怖い話、たくさんあるものですね。私も聞いたことのある‘あやかし’がかなりありました。中でも「合わない人数」の四角い場所の四隅に人を4人配置して・・・と言うお話は、昔ラジオで別バージョンで聞いて怖いなぁ〜と思った記憶があります。私が聞いた設定は幽霊が出るというお寺で真夜中〜と言うものでした。
 背筋がひんやりする、本当にあったのかもしれないお話です。

『あやかし通信「怪」』 2002.6.18. 大迫純一 ハルキホラー文庫



2002年10月05日(土) ぶたぶた

 今や、空前のぶたぶたさんブーム到来! 矢崎存美さんの‘ぶたぶたシリーズ’は、心温まる物語です。ぬいぐるみのぶたさんが(モンスイユの製品ショコラがモデル)、人間? ・・・これは読んで頂かないと理解不能でしょう。山崎ぶたぶたさんに出会う人はなにか暖かな幸せをもらえるのです。私もどこかでぶたぶたさんに会えないかなぁ。タクシーの運ちゃんがぶたぶたさんだったら延々と夜中を走ってもらいたいなぁ。いろんなことを話しながら。
 矢崎存美さんが、ゲリラ撮影をされると言うことで、私も今年岡山に遊びにやってきた某ひろただくんと撮影会をやってみました。これがむちゃくちゃ面白い! 人々の奇異の視線を浴びながらの撮影はもはやカ・イ・カ・ン(古いか)。某矢崎先生もご存知のカメラマンひろただは様々な場所で撮影に励むのでありました。アハハ。私が参加できたのは、岡山編・明治村編・都庁編であります。そして最近では、新しいぶたぶたさんカメラーを発見。日本に広がるぶたぶたの輪っ。
 『ぶたぶた』の中で、私が一番好きなお話は、「銀色のプール」。少年が家出してぶたぶたさんのところへ転がり込むのですが、泣けます。よすぎて。
 ぬいぐるみが人間!?と言う場面での人々の心の叫びが微笑ましくて笑えます。心が疲れたときに、騙されたと思って読んでみてください。
 私の部屋には、元祖ひろただモデルのぶたぶたさんと、かわゆいチビぶたぶたが抱き合って飾られています。

『ぶたぶた』 1998.8. 矢崎存美 廣済堂出版 



2002年10月04日(金) なつこ、孤島に囚われ。

 大好きな西澤保彦さんのよくも悪くも様々な反響を受けたであろうこの一冊(笑)。西澤先生が、師匠と慕われている森奈津子さんを実名モデルにして書かれた架空の(当たり前だ)孤島もの! アハハ。
 私は、こういう物語は気楽にガハハと楽しめばいいな、と思っています。孤島に囚われた奈津子が、自分のいる島を<百合島>、向かい側の男性の姿が見える島を<アニキ島>と名づけちゃうなんて、お茶目で大好きだけどなぁv 
 全ての人におすすめとは言いがたい物語でありますが(あぁ、西澤先生ごめんなさい)、気軽に楽しめる奇想天外な孤島密室でございます。

『なつこ、孤島に囚われ。』 2000.1.1. 西澤保彦 詳伝社文庫



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