酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2002年12月12日(木) 熊の場所

 舞城王太郎さんは読者を選ぶタイプの書き手かもしれない。独特のテンポと暴力と感性がほとばしっている感じを受けます。あ、私は彼の文章と言うか独特の語り口調がとても好きなのですv
 今回は、「熊の場所」「バット男」「ピコーン!」という三作品が読めます。どの作品も違った角度から描かれているから面白い。暴力やいじめやエロス満載。
 特に最後の「ピコーン!」は、かなりピー音入れないといけない(笑)。ただ最後の決め台詞がいい。
 ‘買った本はちゃんと読めっつうの馬鹿!’ ・・・ごもっともv

 装丁もかわいくってクリスマスプレゼントに・・・薦められない。

『熊の場所』 2002.10.15. 舞城王太郎 講談社



2002年12月11日(水) 猿若町捕物帳 ほおずき地獄

 千陰は吉原での幽霊騒動と殺人事件に遭遇する。またもや人気女形巴之丞と花魁梅が枝の助けを借り、哀しい事件の真相にたどりつく。
 今回は、千陰にお見合いが持ち込まれ、サイドストーリーはお見合いラプソディ。しかし、このお見合いの結末が一番素晴らしい^^v

『猿若町捕物町 ほおずき地獄』 2002.10.25. 近藤史恵 幻冬社文庫
 



2002年12月10日(火) 猿若町捕物帳 巴之丞鹿の子

 近藤史恵さんの時代ミステリー小説です。歌舞伎に精通されている近藤史恵さんならではの面白さ。出てくるキャラクターもすっごく魅力的v
 南町奉行所同心・玉島千陰は江戸の町娘連続殺人事件を追ううちに、人気女形役者巴之丞や、巴之丞と訳有の花魁梅が枝と知り合う。かれらの助力を得て無事事件は解明される。
 サイドストーリーで、さまざまな性的嗜好などもさらりと語られていて非常におもしろいです。短いのですっと読めることころもいいです。

『猿若町捕物帳 巴之丞鹿の子』 2001.10.25. 近藤史恵 幻冬舎文庫



2002年12月09日(月) Jの神話

 誤解を恐れずに素直な感想を述べると、「むっちゃくちゃおもしろかったぁ」でございますv 学生さんに薦められない裏指定図書と言う括りに入ってしまったこのご本。興味津々で拝読。うーん、本当は薦めてはいけないのだろうけどこっそり読ませてあげたいなぁ。
 乾くるみさんの作品を読んだのは今回はじめてでした。ちょっとこの作家さんは追いかけてみようと思います。←気に入った(笑)
 ミッション系全寮制名門女子高で発生したスキャンダル。死んでしまった美少女は妊娠していた!? こーんなオーソドックスな煽りでどうするのだろうと思っていましたら、映画「ヒドゥン」と「エイリアン」をシェイクしたような展開に。アハハハハ。もう背徳の香りびんびんでこういう物語大好きです。
 ラストをどう落とすのかと期待していたら、ものすごくアイロニーばっちりに締めくくって大変よろしゅうございました。多少のキワモノめいたところを許容できる方になら超オススメv

『Jの神話』 1998.2.5. 乾くるみ 講談社ノベルス



2002年12月08日(日) ファンタズム

 西澤先生の掲示板で、ご自身が‘救いのない物語’と言うようなコメントを書かれていた記憶があります。西澤先生の書かれる‘救いのなさ’は自虐的になりますが、ものすごく好きです。自分にぐさぐさぐさとくるような感じ。
 今回の『ファンタズム』は、それにプラスαがあります。西澤先生のお得意エッセンスがちらり。むー(笑)v ネタバレになっちゃうから書けないよう。
 しかし、罪なラストにされました。え、なになにどうなっちゃうのー、ですよ。希望としては、もっと重厚に分厚く描いていただきたかったです。ラストは放り出されても耐えますから。あえてさらりとショートに美しく纏められたのかなぁとも思いますが、ワタクシ的には「せんせーもっともっと」でございます。
 これ以上なにも言わないから、読んで読んでvvv
 今から愛読者カードに記入だわっ。

『ファンタズム』 2002.12.5. 西澤保彦 講談社ノベルス



2002年12月04日(水) ゲームの名は誘拐

 東野圭吾さんくらいになられると、なにを書かれようととりあえず面白い。今回の物語は、題名どおりある事情から誘拐をゲームに見立てるというもの。最後のどんでん返しはさすが東野圭吾と唸りました。
 でも、正直ぱぱぱっと書かれてしまったように読み受けました。やはり『片想い』などのように、じっくり腰を据えて書いていただきたいものです。ぱぱぱっと書かれたものだから、ぱぱぱぱぱっと読了です。

『ゲームの名は誘拐』 2002.11.25. 東野圭吾 光文社



2002年12月03日(火) 青葉の頃は終わった

 大学時代から崇拝していた、瞳子が死んでしまった。美しく硝子細工のような瞳子が。
 瞳子をとりまく仲間たちの罪の意識と自問自答。ずばぬけて美しいもの、優れたものへのどこか屈折した感情と言うものは、もてあましてしまうもの。
 近藤史恵さんらしい、心を棘がちくちくさすような物語。こういう物語を面白いで片付けていいのかな、と思わないではありませんが、面白かったです。
 ‘どんなに平凡に見えたり、幸福そうに見える日常にも、痛みは必ず潜んでいるものだと思っています。それをうまくやりすごせることが、大人になることかもしれません。だから、この小説は、その狭間にいる人たちの話なのです’とは、近藤史恵さんのこの物語へのお言葉です。私は、瞳子はやはり大人になりたくなかった、なれなかったのだと思いました。

『青葉の頃は終わった』 2002.10.25. 近藤史恵 光文社



2002年12月01日(日) ロミオとロミオは永遠に

 陸ちゃんの‘青春SFコメディ’(←勝手に命名)です。
 舞台は近未来の日本。荒廃した地球の居残り処理にあたる日本人。エリートになるべく競い選びぬかれた少年たちが集まる「大東京学園」。入ってみるとそこは・・・。
 少年たちがとてもいいですv 脇がいいから主役のふたりもとても光ってる。私の個人的好みは、シマバラ。こういうタイプの少年がいいなぁ。主役のふたりでどちらかと言うと、シゲル。シゲルとアタミが絡むと栗本薫さんの世界がふーっとImage湧いてきました。
 この物語は、陸ちゃん曰く猥雑で恥知らずの二十世紀へのオマージュだそうです。陸ちゃんと同世代の人間には笑うツボだらけだと思います。笑った笑った。
 なにより章タイトルがお洒落〜です。●●好きにはたまらない章タイトルです。
 なにを書いてもネタバレになりますので、どうぞとにかく読んで楽しんでくださいv 超オススメです。
 Lastは、SFならではの落ちです。サイコーv

『ロミオとロミオは永遠に』 2002.10.31. 恩田陸 早川書房



2002年11月30日(土) 最後の記憶

 綾辻さん曰く、『最後の記憶』は初本格ホラー長編だそうです。
 ホラーにもいろいろありまして(無類のホラー好き)、この作品は淡々とした不気味さが最初から最後まで貫かれていました。
 奇しくも最近、私が気にしている脳の痴呆化がテーマに関わってきます。もしも若くして記憶がどんどんと失われていき、最後に残った記憶が‘恐怖’にほかならないとすれば・・・どうします?
 設定と言い、ミステリー仕立てと言い、とても面白いです。面白いですけれどーっ、高橋克彦大先生の‘記憶シリーズ’にこのモチーフに似たものがあるような気がします。勿論、綾辻さんほどの作家さんがまねっこしたとは思いませんが、‘記憶’で‘ホラー’と言えば、高橋克彦さんのものですねぇ。などと改めて痛感してみたり。ただ、語り口調がねっとりしてしんねりしていて、そこは綾辻さんならではのホラーになっていると思います。

『最後の記憶』 2002.8.30. 綾辻行人 角川書店



2002年11月28日(木) 20世紀少年(10巻まで)

 ずっと気になっていた浦沢直樹さんの「20世紀少年」を、はじめから一気読みして参りました。おもしろすぎるー。はぁ。
 物語は、昭和30年代(くらいだと思う)の少年時代と、近未来(漫画では現代)が錯綜しながら進んでいきます。1巻に出ていた人物が、10巻くらいにまた重要な鍵を持って登場するという、壮大すぎる漫画です。
 主人公(と言えるのかな)ケンヂが、少年時代に書いた預言書が、現実になっていく。忘れかけていた過去が甦り、世界を守るために仲間たちが集ってくるっ! あぁーん、こう書いただけでいかにも私の好みそうな物語だとわかる人にはわかるってもんでしょう(当たり前だ)。
 浦沢直樹さんがうまいっと唸らせる点は、ストーリー展開の卓越さも然ることながら、登場人物たちの人間関係の複雑さがすごいっ。一度流して読んだくらいではわからないです。いや実はワタクシ本日二回読んできましたの。ほほほv
 物語のヒロイン、ケンヂの姪、カンナがまたいい子なんですよ。そこらへんの軟弱な野郎どもには無い男気がありますv

「20世紀少年」10巻まで 浦沢直樹



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