酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2002年12月30日(月) 20世紀少年 11巻

 2002年に出会った人の中で(私が一方的に知り合った)、明野照葉さんと浦沢直樹さんははずせません。このおふたり中学時代のおともだちと言うのですから、すごいことですよね。明野さんは浦沢さんの書いたお話を読ませていただいていたそうです。すごいー。あと20世紀少年に出てくるかつての少年たちのニックネームは明野さんたちのその時代のニックネームを彷彿とさせるらしいですよv
 さて、『20世紀少年』です。今回も泣きました。どうしてこんな漫画が描けるんだ? モンスターを読んだ時にも感じましたが、漫画でここまで人を感動させる驚かすことができる。はぁぁぁ〜。言葉がありません。愛と平和と友情を願って信じて戦う人間たちは、そこにいるだけで美しい。中でも運命のこどもカンナの葛藤と成長は涙なくして語れません。あと長い物語の中でさまざまな登場人物の持ってきかた(配置かな)が絶妙なんですね。
 浦沢直樹さん、必ず読んでください。これって命令ですv

『20世紀少年』11巻 2003.2.1. 浦沢直樹 小学館



2002年12月26日(木) 月夜見の島

 ‘つくよみのしま’と読みます。この作者、青来(せいらい)有一さんの前作『聖水』は芥川賞を取っておられます。その物語から注目している作家さんのおひとりです。
 この物語は、ペットロスとなった妻の療養のために月夜見という島へ向かいます。そこで麗芳という女性の主催するセラピーに参加するのだが・・・。
 ペットであれ、愛しい人間であれ、大切な存在を失った人が時々心の迷路に彷徨いこみます。なにかにすがりたい、なにかで救われたいと思う心。そんな時出会うものなり、人なりが正しい方向性を持っていればいいな、と願ってやみません。

『月夜見の島』 2002.10.30. 青来有一 文藝春秋



2002年12月25日(水) 冬になる前の雨

 解説の井上雅彦さんが、ぶたぶたシリーズが表の代表作ならば、この短編集は裏の代表作と書かれていました。まさにそのとおり。矢崎存美さんの良質なホラーを堪能させていただきました。
 常々私は、ホラーも書ける作家さんの力量を絶賛しておりますが、矢崎さんも例外ではないのだなぁと感激いたしました。どの短篇もゾクリとさせてくれます。特にタイトルにもなっていておしまいを飾る「冬になる前の雨」、これが素晴らしい。ただのホラーではありませぬ。
 これからも矢崎さんのホラーを期待してしまいます。

『冬になる前の雨』 2002.11.30. 矢崎存美 光文社文庫



2002年12月24日(火) まどろむベイビーキッス

 キャバクラ嬢の管理するHPが荒らされる。その荒らされ方の粘着質さたるや、背筋がゾーッと寒くなるほど。
 殺人事件が起こりますが、この犯人もあっと言わされる。推理小説としても面白かった。
 破綻していく人間というものは見ていて(読んでいて)つらいと今回は思った。壊れていく原因が悲しすぎるからなのかもしれません。

『まどろむベイビーキッス』 2002.9.30. 小川勝己 角川書店



2002年12月23日(月) 海鳴

 私はよく作家さんのことを神様に愛された人と表現します。物語を紡ぎだすことのできる人は神様に愛されている。
 今回の明野照葉さんの物語には、歌をうたうことで神様に愛されてしまった少女RUKAが登場します。神様からものすごいエネルギーを注がれてしまった少女の変化や苦悩。これは読んでいて明野照葉という作家さんの苦悩を見るかのようでした。
 たったひとりの天才少女と、見守るしか術のない家族。悲しくて残酷でせつない物語でした。母親ってかなしいなぁ。

『海鳴』 明野照葉 双葉社



2002年12月21日(土) 聖家族のランチ

 林真理子さんの新刊と言うことで、私より先に母親に読ませました。母親が晩御飯のたびに内容を語ろうとするので(途中までは喋られた)困ったのですが、読了して、あぁこりゃぁー母親に読ませて大失敗っと後悔しました・・・。
 この物語は、聖なる家族の食卓にまつわる物語です。これ以上は書けません。私は途中から展開はすっかり読めましたが、ラストをどうおさめるのかなぁと思いつつ読みました。ラストはうまいって思いましたね。いや、こうしかないよなぁって思いました。うんうん。
 タイトルの響きに惹かれて読むとちょっと驚くかもしれません。

『聖家族のランチ』 2002.11.5. 林真理子 角川書店



2002年12月20日(金) サンタクロースのせいにしよう

 うーん、いいタイトルですねぇ。タイトルだけで惚れ惚れしてしまいます。章タイトルもいいですねぇv
 失恋した岡村柊子が、友人彦坂夏見の紹介で松枝銀子という世間離れしたおじょうさまの家に居候することになる。その家は、銀子という女性は・・・。
 ヒロインの柊子の名前からしてクリスマスv ちょっとした謎や不思議や悪意がちらほらするところは若竹七海ポイズンで面白いです。登場人物がそれぞれ魅力的ですが、私は夏見が好きです。こういう友人がいると心強い。

『サンタクロースのせいにしよう』 1995.8.30. 若竹七海 集英社
 



2002年12月17日(火) チグリスとユーフラテス

 新井素子さん談義になった時、私はこの物語を読んでいなかったなーと思い、読みました。読んでよかった。すごいSFだ!
 高校・大学の頃の私は、本好きではあったけれど文学少女と言うほど熱心でなく、恋や遊びに明け暮れる学生時代を過ごしていました。(この括りに勉強は入らない)でも、そんな中、新井素子さんとの出逢い『グリーンレクイエム』は衝撃的でした。私の読書の素地は、中学校時代の横溝正史、そしてこの新井素子さんに形付けられたのかもしれません。喰ったり、貼ったり、破滅的な感じ。新井素子さんは愛すればこそよく人を食べる描写をされますからね^^v
 さて、この『チグリスとユーフラテス』、長いお話にかかわらずラストシーンまで驚くべき魅力で引っ張りぬきます。地球から違う惑星に移住した人間たちの‘最後の子ども’の物語です。脇で男性は登場しますが、メインはひとりの女の子(苦笑)に対する4人の女性たち。まぁあれって闘いだよなぁ。この闘いの根底に流れるものが4つそれぞれ違うところが深い。ものすごく深い問題提起をされています。
 新井素子さんは、真っ向から《生きることの意味》を謳いあげておられます。これが共感できてねー。私が新井素子を好きなわけがわかるご本です。

『チグリスとユーフラテス』 1999.2.10. 新井素子 集英社



2002年12月15日(日) スパイク

 「脳をつかみ出されて、投げあげられて、落ちてきたのを頭蓋骨で受け止めるような」経験をした犬、スパイクが私は欲しいっ!!!
 松尾由美さんと言う作家さんの物語の中で私にとっては間違いなくナンバー1で、もしかするとこの物語はマイ2002ナンバー1かもしれない。それくらいせつなくて暖かくて感動しました。
 江添緑とスパイクと林幹夫との‘出逢い’は、‘運命のいたずら’。神様は時としてこんないたずらを仕掛けます。そうだなぁ、感想としてはSFというよりもラブストーリーと言ってしまいたい。
 ラスト数ページは泣けます。物語の世界にどっぷり浸ってしまって後から後から涙が流れてしまいます。こういう物語を書いてしまう松尾由美さんがまたもっともっと好きになった。
 必読v

『スパイク』 2002.11.25. 松尾由美 光文社



2002年12月14日(土) きよしこ

 岡山の★重松清さんの短篇連作集です。昨夜枕を涙でぬらしつつ(本当です)読了しました。今まで『流星ワゴン』が、マイ重松ベスト1だったのですが、勝るとも劣らない作品にございました。
 吃音の治らない少年が、転校とともにさまざまな目に遭遇しながら、吃音と生きていくおとなになるまでが描かれています。「きよしこ」「乗り換え案内」「どんぐりのココロ」「北風ぴゅう太」「ゲルマ」「交差点」「東京」の7つの物語。少年は、すこしずつ成長していく様子が心に温かいですv
 私のお気に入りは「北風ぴゅう太」と「東京」です。
 まだ重松清さんを読まれたことのない方には、短篇集ですし、超オススメです。

 ‘お話はー少なくともぼくの書くお話は、現実を生きるひとの励ましや支えになどならないだろう、と思っている。ましてや、慰めや癒しになど。ぼくはそこまで現実をなめてはいないし、お話にそんな重荷を背負わせるつもりもない。
 お話にできるのは「ただ、そばにいる」ということだけだ、とぼくは思う。だからいつも、まだ会ったことのない誰かのそばに置いてもらえることを願ってお話を書いている。’
 これは、物語のはじまる前に書かれている文章より抜粋しました。重松さんらしさがこの文章に表れている。そして重松さんは謙遜されていますが、重松さんの物語は励ましや支えや慰めや癒しになってくれることもあります。

『きよしこ』 2002.11.15. 重松清 新潮社



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