酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年01月13日(月) 椿山課長の七日間

 去年、仲間たちの『プリズンホテル』大絶賛につられ、どっぷりと浸ってしまった浅田次郎WORLD。あまりにもプリズンホテルシリーズが素晴らしかったため、今回『椿山課長の七日間』を読むことに少々おそれのようなものがありました。が、しかし、そんなおそれなど取るに足らないつまらない杞憂。素晴らしい物語でした。でろでろに泣かされてしまいましたけど。
 たたき上げのデパートマン椿山和昭は、仕事中に突然死をしてしまいます。彼が気がついたのはあの世とこの世の間、中陰の世界。そこでデパートマンだった椿山と、やっぱり出てくる(笑)ザッツ任侠の男・武田勇と、聡明な少年根岸雄太くんの三人は現世で遣り残したことを果たすべく七日間だけ現世に戻ることになります・・・。
 この現世に戻るために三人が守らなければならない決まりごとってのがなかなか深いんですねー。個人的にはリライフ・サービス・センターのマヤが超いけてますv サイコーvv
 浅田次郎さん節というのは、こういうものなのかなと思います。必ず泣けます。今私を泣かせたら天下一品の作家さんかもしれないなぁ。考えることも多いし、人の優しさも心に染み渡ってきます。これぞ究極のオススメ本にございます。必読!

『椿山課長の七日間』 2002.10.1. 浅田次郎 朝日新聞社



2003年01月12日(日) 罪深き者に罰を ミステリー傑作選42

 ぼつぼつと読んでいたミステリー短篇傑作選を読了。ううーん、これってものすごーく内容の濃い短編集です。
 真保裕一『暗室』・横山秀夫『動機』・新津きよみ『返す女』・新野剛志『公僕の鎖』・若竹七海『女探偵の夏休み』・吉村達也『蒲団』・浅黄斑『海馬にて』・奥宮和典『おじいさんの内緒』・恩田陸『往復書簡』という豪華ラインナップです。
 横山秀夫『動機』は読んでいるうちに、読んでいたことを思い出しました。あと若竹七海と恩田陸も読んでいました。若竹さんと陸ちゃんは好きなシリーズキャラものだから当然かな。
 未読の作品もどれも面白くてとっても得した気分なのです。初読みとなった真保さんの作品は真保さんはこういう物語をお書きになるのかーと納得。硬質ですが、やはりうまい方ですね。新津さんは、相変わらず‘怖い’です。ミステリーホラーと言った趣。新野剛志の『公僕の鎖』は嬉しい作品。私が注目した大好きな『八月のマルクス』の主人公が登場するのです。あの主人公の短篇集が期待できるとほくほく。物語りも面白かったです。吉村さんは、さすがなにを書いてもそれなりにうまく料理をされます。浅黄さんは初めて読ませていただきましたが、面白かったです。これは収穫ですね。これから探して読んでみたいと思います。
 そして今回の超目玉となった方が奥宮和典さんです。宮部みゆきさんに絶賛されたという方だけのことはあります。北村薫さんズキな方なら絶対読むべきv これまたこれから探して読もうと思います。唸りましたよ、この方の短篇。

 アンソロジーの良さは、こうした新しいめぐり合いにあります。オススメアンソロジーです。

『罪深き者に罰を』 2002.11.15. 日本推理協会編 講談社文庫



2003年01月11日(土) わたしはあなたのこんなところが好き。

 まおまお経由でお友達になってくださった‘あっきー’から素敵なプレゼントをいただきました。堀川波さんという絵本作家さんの『わたしはあなたのこんなところが好き。』です。あっきーは恋をしている私にと贈ってくださいました(照れ照れ)。
 イラストと文が本当にマッチしていて好きな人同士の感覚がじんわり伝わってきます。中でもなにより共感できることが、お互いにそれぞれの時間も楽しむということころ。お互いに寄りかかりすぎないというところ。
 これは私も恋をしているお友達にプレゼントしたいなぁと思います。私の宝物がまたひとつ増えました。にっこり。ほんわか。しあわせv

『わたしはあなたのこんなところが好き。』 2002.8月  堀川波 ポプラ社



2003年01月10日(金) 闇の子供たち

 梁石日(ヤンソギル)さんの書く小説は、内容はともかく心をがっしりつかんで離しません。暗くて重くてすごいです。誰にでもオススメできないけれど、面白い(という言葉はふさわしくないかな)です。
 この『闇の子供たち』は、バンコクを舞台に少年少女売春、臓器売買、ペドフィリアをテーマにしています。8歳くらいの子供に与えられるむごい仕打ちは読んでいて心がずーんっと沈みます。沈みますが、読むことをやめらません。
 ただ残念ながら最後の納め方に不満が残りました。徹底的に悲惨で終るのか、どこまでも戦うのか、どちらかを押し通して欲しかった。そして誰を主人公に据えるべきか途中から悩まれたのではないかなぁ。うーん。

『闇の子供たち』 2002.11.20. 梁石日 解放出版社



2003年01月08日(水) 蛇行する川のほとり

 『ロミオとロミオは永遠に』そして『ねじの回転』と読み、昨夜『蛇行する川のほとり』を読みました。あぁぁぁぁぁっ、陸ちゃんってば天才っ! 3作品が全てまったく違った趣。個人的な好みは別れることと思いますが、私はこの『蛇行する川のほとり』に流れるあぶなぁーいあやうーい雰囲気がたまらず好きです。陸ちゃんの書くあぶない美しい女子学生っていいんですよねー。
 これは放置プレイものの三部作の第一作。耐えながら待ち、感想はすべて読み終えてからということでっ(おいおい)。あぁ次が待ち遠しい・・・。次は4月。ラストは8月。悶死もんです(涙)。

『蛇行する川のほとり』 2002.12.10. 恩田陸 中央公論社



2003年01月07日(火) 標的走路

 私が大沢親分にはまったのは、新宿鮫シリーズではなく、佐久間公シリーズでした。その佐久間公シリーズで絶版になっていたこの『標的走路』がファンの熱い要望で甦りました。
 しかしながら・・・やはりこの佐久間公は今ひとつ魅力が足りない。絶版になるには絶版になる理由があるものだなぁ。でも勿論そこそこのハードボイルドとしては楽しめます。従来の基準を期待してはいけません。

『標的走路』 2002.12.10. 大沢在昌 文春ネスコ



2003年01月06日(月) しまなみ幻想

 瀬戸内しまなみ海道は、本州と四国を結ぶ3つ目の橋になります。浅見光彦くんは今回この橋を行ったり、来たり。刑事局長の弟である光彦くんは、兄の七光りのもとでの名探偵。警察機構をあごで使える素人なんて存在しないよなぁと思いつつ、兄上様のご印籠の発揮っぷりが快感です。
 このシリーズはもう長いこと読んでいるので今更やめられないと言った気分で読んでいます。なんて言うか、本の中に古い馴染みがいる気がしてしまうから不思議というか勝手な感覚です(苦笑)。
 今回は天才少女ピアニストがヒロインとなりますが、彼女を教える先生で浅見くんの知り合いの女性の絶対音感が事件をとく鍵となります。
 さらさらさらと読めてしまう物語でした。

『しまなみ幻想』 2002.11.25. 内田康夫 光文社



2003年01月04日(土) ねじの回転

 1936年2月26日にクーデター発生。これがいわゆる2・26事件です。この2・26事件はよく小説家さんたちの手によって物語化されています。今回は陸ちゃんの手による2・26事件。(ダ・ヴィンチ等で陸ちゃんが答えられていることなど引用する範囲のネタバレありです。まっさらで読みたい方は、これ以上読まないでくださいね)
 この物語は、タイトルからも想像がつくようにタイムパラドックスをテーマにした物語です。人間が過去に干渉をした時、果たして‘時間’はその介入にどういう動きを見せるのでしょうか。歴史は動かせるのか。歴史は繰り返されるのか。歴史は改竄(書き換え)を決して許さないのか。
 陸ちゃんは、《IF》もしもやりなおせたらを突き詰めてきます。もしもたった一度だけなにかをやり直す(訂正する)ことができたなら、人はその時点へ戻るのでしょうか。物語の面白さに惹きつけられながら、耐えず自問自答していました。今の全てを捨てても私はあの時点へ戻るのだろうか、と。
 陸ちゃんは、この物語の着想に映画『マトリックス』を挙げています。それまで動いていた人間がいきなり止まったらおかしいな、同じ時間を何度も何度も繰り返し体験したら変だな、という思いつきだけが最初にあったそうです。そこからこれだけの物語を書き始めたのだからすごい。そして書いているご本人にも着地点がわからないまま書き進めていたというのだから、もっとすごい。

『ねじの回転』 2002.12.10. 恩田陸 集英社



2003年01月01日(水) サイコロジカル 曳かれ者の小唄

 サイコロジカル上下巻を読了して思ったことは「いーたんかわいそうに」でした。いーたんって本当に生意気だし、こむずかしいし、憎たらしいけれど(あ、まるで息子に向けて言っているかのよう)、なんだか母性本能刺激するのよねぇ。だからあぁも屈強なおねぇさまがたに可愛がられるのでしょう。
 今回、いーたんは友の所有物(らしい)兎吊木該輔救出に出向き、いーたんひとりずたぼろになるわけです。ま、簡単に言うとそんなとこ。しっかしラストはそうくるかなぁとは思ったけど、本当にそうくるとはねぇー。しかもダブルで。はぁ。
 ラストにダブルでこうくる、は読んだ方にしかわからないことだし(当たり前だ)、読まれていない方のために書きません。読んでください。
 このサイコロジカルの話をあっちゃんとまおまおと別々にしたところ、ふたりとも最初から読み直したくなりましたと言ったのですね。その気持ちが今痛いほどよくわかる・・・。こういう気持ちにさせてしまうだけで、西尾維新の非凡な才能がわかるというものですねぇ。いやはや新年早々いい本を読ませていただきました。

『サイコロジカル 曳かれ者の小唄』 2002.11.5. 西尾維新 講談社ノベルス



2002年12月31日(火) サイコロジカル 兎吊木該輔の戯言殺し

 2002年の話題をさらいまくった作家さん、西尾維新くんとtakeさん。この西尾維新くんの快挙は、takeさんのイラストなしにはありえなかったでしょう(と言い切ってしまっちゃうわ)。
 とにかくこの西尾くんの新刊上下巻を読むために、神戸のイベントのあと頑張りぬいたことは言うまでもありません。その美味しいにんじん作戦のおかげで大掃除もスムーズにこなし、12月31日と1月1日の2年がかり(大笑)で読了。
 感想はふたつ。ひとつめは「うーやられた・・・」。ふたつめは身内にしかわからないでしょうが、「いーたんってうちの息子そっくり(ぷりぷり)」にございました。やられた、ばたり・・・についてはネタバレになりますので書けません。うちの息子ってのは酔陽亭でワタクシをママと呼ぶ不敵な男の子のことを指しています。うにゃらうにゃら言うところ、しかも的を射ている憎たらしさがそっくりだ。ぷんぷくぷん。
 いや、そんなこたぁー置いておいて・・・。この西尾くんも名前にこだわる人ですねぇ(苦笑)。またどこかの作家さんとは違ったこだわりようです。あはは。誤解や非難を恐れずに言うならば、西尾維新くんは京極夏彦さんの京極堂シリーズのような世界観をお持ちなのかなと感じました。きっと彼の頭の中ではさまざまな大きな世界が繰り広げられていて、出てくる本はそのごく一部という感じ。いやはや恐ろしい若い人がここにもひとりですね。天晴れ。
 今回もあくの強いキャラクター満載ですが、ワタクシの好みは(哀川潤は別格として)いーたんの過去を握る三好心視(みよしこころみ)ティーチャーです。こういうぶっとんだ人いいですねぇ。是非ともお友達になりたい。
 あ、内容にまったく触れていない。あはははははは。

『サイコロジカル 兎吊木該輔の戯言殺し』 2002.11.5. 西尾維新 講談社ノベルス



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