酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年01月30日(木) 君の夢はもう見ない

 久しぶりにタイトルに惹かれて手にして読んでみたご本。これはもう私にとっては大ビンゴ!でした。五條瑛(ごじょうあきら)と言う作家さんは、今の私の一番の注目作家さんですv
 この物語は、仲上孔兵という訳あり×いち男の周りで起きるさまざまな事件や問題を、仲上なりに解決していきます。この仲上という男がとても魅力的なのです。彼の部下のラリー・チャンの純粋さもとてもいい。
 仲上はアメリカ国防総省の情報機関で働いていた過去があります。その過去からさまざまなお客様がやってきます。問題を抱えて。情報を握るものは世界を動かすことができるのだなぁと思いました。
 短篇がリンクして物語は進み、短篇のどこかで姿をちらりと見せていた《君》が最後に登場します。この登場のさせ方と収め方が非常に心地よいのです。
 今年は、五條瑛がマイブレイクになりそうな嬉しい予感。

『君の夢はもう見ない』 2002.10.30. 五條瑛 集英社



2003年01月27日(月)

 見えないものが見えてしまう少女;弓田泉。彼女はサークルの催しで百物語に参加する。そこで悲劇が起こってしまいます・・・。
 倉阪鬼一郎さんのホラーを読みきれたのは、今回がはじめてでした。学生たちの日常が生き生きと楽しそうでその場にいるかのような気持ちで読めました。ホラーとして最高級に怖いとは思いませんが、しんねりと不気味ではありました。登場する人物はなかなかどのキャラもよい味出しています。

『泉』 2002.12.25. 倉阪鬼一郎 白泉社



2003年01月26日(日) 椿姫 ニンフォマニア

 和田はつ子さんと言う作家さんのご本は、かなり読ませていただいていますが、またあらためて読み返したいと思いました。
 この『椿姫』は、和田はつ子さんのシリーズキャラのひとり、食を中心とする文化人類学者;日下部遼が登場します。この日下部遼、アイヌの血を継ぐ彫の深い日本人離れしたいい男。物語は彼が講師をつとめる名門女子大での彼のセクハラ疑惑から始まります。教え子のセクハラ疑惑、そして彼女の謎の失踪。その渦中昔愛した美しい女性;草間佳奈子との再会。日下部は、彼女の妖しく狂おしい人生に巻き込まれていきます・・・。
 日下部遼は、草間佳奈子を愛した時に知りえなかった彼女の心の闇を今度こそ理解してあげたいと思います。今回の物語で草間佳奈子という美しい女性の人生を日下部遼が追いかけ真実に迫りますが、・・・。日下部遼の一途な思いがせつないです。
 オススメです。

『椿姫 ニンフォマニア』 2002.12.20. 和田はつ子 角川書店



2003年01月25日(土) 蛇怨鬼

 いやぁー久しぶりに面白い(?)ホラーを読みました。蛇が嫌いな人は絶対にお読みになれません。アハハ。しかもこの物語いろんなものがごちゃ混ぜになっている感じ。でも結構どきどきしながら読みすすめたのでホラー好きさんにはオススメしちゃいます。
 物語は、美貌の電脳霊媒師(このあたりから既にうさんくさい)菅原裕子のもとに、死者に会うべく集まった者たちが次々に奇怪な死に方をしていくことから始まる。その怪事件に立ち向かう刑事落合。渋谷署の問題児落合は、この事件に関わるうちに本庁にある‘迷宮課’の扉を開く・・・。
 これって書いてたら内容全部を書きたくなっちゃう。悩める霊能力美少女なんかも出てきます。そしてなによりラストが‘ぞくり’。物語は終らない(笑)。

『蛇怨鬼』 2001.12.18. 天沢彰 ハルキホラー文庫



2003年01月22日(水) 天国までの百マイル

 私が受付をしている病院のせんせーは、もととある有名心臓病大病院の副医院長さまだったお方。そのため患者さんに心臓病の方が多いのです。門前の小僧の習いで不肖私も多少なりとも心臓病とその薬の知識が増えてきました。
 さてこの『天国までの百マイル』、一世風靡した男が自己破産し、心臓病で死にかけている母親を救おうと百マイル車を走らせます。この男とおかぁさんに関わる人々がものすごくいいです。特に、おかぁさまの内科的主治医と手術をしてくださるドクターは最高。このふたりの人間性にはおいおいと泣かされてしまいました。
 もしも、うちの旦那が癌じゃなくて心臓病だったら、このふたりのドクターにみてほしかった。それだけで奴は心が救われていただろうな。
 この物語の主人公、城所安男は、母親と共に再生します。人間っていくつであろうと目から鱗が落ちる瞬間を逃さずにいられたら、きっとなんとかやりなおせる。自暴自棄になるのはすごく簡単。
 浅田次郎さんに圧倒されてばかりです。超オススメです。泣くことを覚悟してくださいね。

『天国までの百マイル』 1998.12.1. 浅田次郎 朝日新聞社



2003年01月20日(月) 13歳の黙示録

 中学教師、秋元千佳が受け持った問題のあるとされる少年‘升本幸雄’。このまだ幼い少年をそこまで屈折させた過去とはいったい・・・。
 私が、中学生の頃に俗に言う不良たちはいました。でも彼らに対応する熱血教師さんもいらっしゃって、悪いことをしたら平気でビンタされていましたし、それを体罰だと言う風潮はありませんでした。不良たちもその親たちも周りも、イケナイことをきちんと認識できていたからだと思います。今はなにかあれば体罰だとヒステリックに騒ぐ、もしくは常軌を逸脱した指導をする。そういう構図が垣間見れる気がします。勿論私の友人に何人も教師をやっている人たちがいて、そんな人ばかりではなく、ごくごく一部だとはわかっていますが。
 今回の『13歳の黙示録』は、本当に黙示なのだなぁと思い、神妙に読み進めました。物語としても言い方は悪いかもしれませんが、面白いですし。私は親になっていないので、大きなことを言えないのかもしれません。でも尊敬する母親の育て方を鑑みますと、親からの愛情いっぱいに育った人間はそうそう間違った方向へ進まないのではないかと思いました。

『13歳の黙示録』2000.8.21. 宗田理 講談社



2003年01月18日(土) 水曜日のジゴロ 伊集院大介の探究

 伊集院大介がふらりとひとりで立ち寄る六本木のクラブ「樹」。そこのマスター(女性)樹は女性しか愛せない女性。今ではストレートな女性すら‘目で殺す’こともできる樹・・・うっとり。殺されてみたい。
 その樹の店にそこいらの美しい女性よりも美しく妖しい男、千秋が現れる。その瞬間から樹の周りで連続強姦殺人が多発。犯人は、事件の真ん中にいる樹の運命は。
 栗本くんの書くゲイの世界は、男同士であれ女同士であれ、昔から私を魅了し続けています。そんな世界に違和感なく身を置く事のできる伊集院大介。伊集院大介は観察者の立場だから、ものごとの真理を見抜けるのかもしれません。

『水曜日のジゴロ』 2002.12.20. 栗本薫 講談社



2003年01月17日(金) スワンレイク

 目には目を、のハンムラビ法典。罪を犯した人間を暴力の限りを尽くして裁こうとするアン・ドゥ・トロワ、そしてキャトルとサンク。彼らの中で均衡が崩れた時に殺し合いが始まる。生き残るのは・・・。
 と、まぁこれは表の物語。脇役となる女性が締めくくるラストシーンは正直これら全てを内包していたと言うこと?と理解でききれずにまだ自分の中でうまく昇華できていない。
 野島伸司さんだから、面白いし読ませてくれるのですけれど、うーむー私的には今ひとつでした。

『スワンレイク』 2002.12.25. 野島伸司 幻冬舎



2003年01月16日(木) 悪魔のカタルシス

 牧本はある日、‘悪魔’を見た。古来から絵に描かれてきた禍々しい悪魔の姿を。この悪魔の姿を見抜けることのできる人間が古来から存在したのではないか?その存在こそが・・・。
 鯨統一郎さんらしい悪魔解釈でした。本当によく目にする悪魔の姿は人間の想像上のものなのでしょうか。

『悪魔のカタルシス』 2002.10.25. 鯨統一郎 幻冬舎文庫



2003年01月14日(火) 闇匣

 黒田研二さんの密室本、『闇匣』。まったくの暗闇で音しか聞こえない状況下で、人はどれだけずぶとくいられるのでしょうか。真っ暗闇の中でヘッドフォンつけて音だけで怖がらせるアトラクションを経験したことがありますが、想像力が増幅されてしまうのですよねぇ。
 物語は、妹の死と捨てた恋人の死の真相が、暗闇の中であばかれていきます。見えない真っ暗な闇と、殺人犯の心の闇。黒田研二さんらしい運びとラストだなぁと思います。面白く読めます。なんじ罪を犯すなかれ。

『闇匣』 2002.12.5. 黒田研二 講談社ノベルス



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