酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEXpastwill


2003年04月02日(水) 白い薔薇の淵まで 中山可穂

 川島とく子が出会ってしまった売れない作家・山野辺塁。とく子はまさかその風変わりな作家と阿修羅の恋に陥るとは思っていなかった・・・。
 女性が女性と愛し合う激しさや苦悩をこれでもかーと畳み掛ける物語。今回の山野辺塁という女性は苦悩を抱えていてだんだんとその過去が明かされていき胸が詰まります。

『白い薔薇の淵まで』 2001.2.10. 中山可穂 集英社



2003年04月01日(火) 永遠の咎 永瀬隼介

 無認可保育園に子供を預ける銀座のホステス神坂綾乃・風俗嬢佐々木聖子・ダメホスト樋口貞男の3人が知り合う。綾乃の美しさとその影にある咎に魅せられた男、轡田が現れ破滅がはじまった・・・。

 作者の永瀬隼介さんは、週刊誌の記者からジャーナリストとして事件現場を追い続けた人です。その永瀬さんの書く物語は、本当にあった話ではないだろうかと思わせるほど現実的。今回の物語も無認可保育園と言う存在を扱い、現実とフィクションをうまくリンクさせています。
 また綾乃の魔力のような吸引力と、ストーカーと化した轡田の変質的な部分もものすごくうまく表現されている。ありえそうで怖くて哀しい物語でした。

『永遠の咎』 2003.2.25. 永瀬隼介 光文社



2003年03月31日(月) 天使はモップを持って 近藤史恵

 若くてお洒落な女の子がビルの清掃員!? 掃除の天才キリコは、ビルや人の曇った心やこんがらがった謎を文字通りクリーンにしていくv

 うまいですねー、近藤史恵さん。大好きな作家さんのおひとりですが、今回の物語もとってもいいです。タイトルがいいし、チャプターをCLEANとしたところもうまい。清掃員のキリコは、芯の通ったとても魅力的な女の子です。読んでいて自分の心もクリーンになっていく感じでした。オススメv

『天使はモップを持って』 2003.3.25. 近藤史恵 JOY NOVELS



2003年03月30日(日) ミステリアス学園 鯨統一郎

 ミステリ学園に入学した湾田乱人(わんだらんど)は、松本清張の『砂の器』に感動してミステリアス学園ミステリ研究会→ミスミス研に入部する。そこで乱人が遭遇する事件の数々・・・。

 いつもながら鯨統一郎さんの変幻自在な作風には驚かされてしまいます。今回は劇団LEDさんをヴィジュアル・スタッフに迎え、素晴らしい装丁になっているところも魅力のひとつ。また推理小説のおおまかな変遷や用語、ジャンル分けの説明などが作中でなされていて勉強になります。作中にお気に入りの推理作家さんの名前を見つけることも楽しみのひとつv
 しかし・・・ラストの〆の言葉はうまいなぁ。さすが鯨統一郎って感じ。

『ミステリアス学園』 2003.3.25. 鯨統一郎 光文社



2003年03月29日(土) 感情教育 中山可穂

 「あなたには感情教育が必要みたいだね」
 育った環境から自分を押さえて生きる性質になった那智に、愛人の理緒はそう説教をする。
 女同士の恋愛(肉体を伴う)は、はまると抜け出すことは出来ない甘美な蟻地獄のようなものなのかもしれない。中山可穂さんの描く女性同士の恋愛には心がきしむほどせつなさを感じる。美しい女性同士の恋愛に憧れているからかもしれない。

『感情教育』 2000.2.5. 中山可穂 講談社



2003年03月26日(水) 観覧車 柴田よしき

 下澤唯は、失踪した夫の探偵事務所を継いでいる。唯のもとへさまざまな事件が持ち込まれ解決されていく。そんな中、唯は失踪した夫の姿を見かける。唯の夫は見つかるのか。どうして失踪してしまったのか。
 柴田よしきさんらしい物語で読みやすいです。それぞれの事件に哀しい事情や人間模様や柴田さんの目線が現れていてとても面白かった。中でも肌を露出しすぎな若い女性への警告は同感。肌を露出して男性の視線が集まることはもててることじゃないと言い切る柴田よしき。読み手の若い女性たちはそこにちゃんと気づく賢い女性であって欲しいなぁと思います。
 この物語は、夫探しと言う難事件が解決しない限り続いていきそうです。

『観覧車』 2003.2.20. 柴田よしき 詳伝社



2003年03月25日(火) 愛がなんだ 角田光代

 テルコはマモちゃん依存症。マモちゃんのためなら仕事だって辞めちゃった。マモちゃんのお使いをするためにいつでも待機。でもマモちゃんに捨てられた・・・。

 ぬー、なんなんでしょうね。このテルコって女。なんだか一歩間違うと自分の中にテルコがいそうでいやでいやでしょうがない。要するに都合のいい女を嬉々としてやっているテルコなのです。
 こういう形を愛と呼びたければ呼べばいいけれど、付き合う男は選びましょう。歪んでるなぁと思いつつ、あっと言う間に読んじゃいました。

『愛がなんだ』 2003.3.14. 角田光代 メディアファクトリー



2003年03月24日(月) リアルワールド 桐野夏生

 4人の少女(ホリニンナ・ユウザン・キラリン・テラウチ)が、母親殺しの少年ミミズと好奇心から関わった時、彼女たちの世界は崩壊していく・・・。

 うー、桐野夏生らしい毒の小説を読ませていただけて満足満足。この物語の少年少女の心模様を誉められるものではないけれど、共感できる部分があります。破滅していく10代って感じでしょうか。装丁も素敵だし、私的には◎でした。

『リアルワールド』 2003.2.28. 桐野夏生 集英社



2003年03月23日(日) 死日記 桂望実

 中学三年生の田口潤の日記。愚かな母親の恋愛に振り回されながら、母親を愛してやまない男の子・・・。
 いまどきこんな純な男の子がいるのかしら。母親と愛人に殺されそうになっても母親を愛するなんて。潤の母親を愛する気持ちのせつなさよりも、子供より男に振り回される母親陽子の方に怒りが湧きます。でも母親の陽子も母親に愛されていなかった。こういう悪循環が悲劇を呼ぶのでしょうか。

 この物語は保険金殺人と母親の愛人への殺意と言う二点で貴志祐介の『黒い家』と『青の炎』のブレンドのような感がぬぐえません。そのニ作品を読んでいなければもっと哀しく読めたかもしれません。

『死日記』 2003.1.10. 桂望実 エクスナレッジ



2003年03月22日(土) おこう紅絵暦 高橋克彦

 与力・仙波一之進の妻おこうは、舅・左門にかわいがられながら共に数々の事件の謎を紐解いていく。
 昔ばくれん(今でいうレディースみたいなものかな)で芸者だったおこうは、人の裏も表も見て生きてきた。そんなおこうが心に疑問を思ったちょっとしたきっかけから事件が解明されていく。人情あふるる時代物です。

『おこう紅絵日記』 2003.02.15. 高橋克彦 文藝春秋



酔子へろり |酔陽亭酔客BAR
enpitu