酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年04月20日(日) ドッグ レース 内山安雄

 万代銀行行員、福沢一樹はお得意様である商店街のおえらがたに自分の部下、小手毬朋子をパーティの余興として提供する。しかし羽目をはずしすぎたのか、目が醒めると朋子はあられもない姿で死んでいた。福沢と商店街のおえらがたは朋子の死体を隠蔽するのだが、朋子は数人の顧客から色仕掛けで数千万円単位の金を巻き上げていた? その億を越す大金のゆくえをめぐって・・・。

 この本の表紙のイラストはエロティックで煽情的。冒頭の朋子の死んでいる姿を描いています。内容は小市民的なおじさまがたを馬鹿馬鹿しいくらい滑稽に揶揄しているけれど、笑い飛ばしてしまえない。なんとも妙な読後感でした。女性より男性に受けるかもしれません。

『ドッグ レース』 2001.7.23. 内山安雄 講談社



2003年04月19日(土) 新本格猛虎会の冒険 有栖川有栖ほか

 9人の阪神タイガースファン(ではない方もいらっしゃるか)作家さんによる奇想天外なアンソロジー。しかも本格(大笑)。これはもう阪神ファン体質の方にしかおすすめできないかもしれません。
 いしいひさいちさんと言えば、『がんばれ田淵くん』を思い出します。いしいひさいちさんはヤクルトファンだったかしら。まぁプロ野球を愛している方って気がします。いしいひさいちさんのイラストがとってもキュートなのですが、小森健太朗さんの『一九八五年の言霊』の《あとひとりッあとひとり!あとひとりッあとひとり!いつまでたってもあとひとり》イラストには大爆笑してしまいました。言いえて妙&描いて妙。うまいっ。
 物語では、黒崎緑さんの『甲子園騒動』がぴかいちでした。和戸と保住の漫才探偵と助手コンビが久々。煙に巻くようなボケと突っ込みの応酬は小気味よいテンポ。往年の阪神のスター選手の名前がどんどこ挙がってくることも懐かしくも嬉しい。
 あえて私も言ってしまおう。がんばれ、阪神タイガース!

『新本格猛虎会の冒険』 2003.3.28. 東京創元社
 有栖川有栖/いしいひさいち/逢阪剛/佳多山大地/北村薫/黒崎緑/小森健太朗/白峰良介/エドワード・D・ホック



2003年04月18日(金) アリスの夜 三上洸

 水原真彦は、自分の店ジャズバー『foolish』を借金の代償として薬の受け渡し場所として提供し、いやいやながら悪事の片棒を担いでいく。どこまでも落ちていく真彦は、児童売春のために送り出される少年少女たちの運転手となり、運命の少女アリスに出会う。アリスのあどけなさと妖しさの虜となった真彦はアリスをつれて逃亡をするのだが・・・。

 これは第六回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作です。大沢在昌さんが大絶賛したとか。うーん・・・これってノワールになると思うのですが、ノワールならではのどぎつさやエロさなどが希薄。美しい表面だけを物語としたかったのかな。
 私の好みから言えば、ノワールはどぎつくせめていただきたい。だから題材も展開もとてもいいからもっとぎとぎとに描いて欲しかったなー。私は鬼畜系ですから(苦笑)。
 表紙の恋月姫さんの人形はイメージぴったり。10歳の純真無垢な美少女の娼婦アリスに。

『アリスの夜』 2003.3.25. 三上洸 光文社



2003年04月15日(火) ダブルダウン勘繰郎 西尾維新

 ‘ただ’のOL・蘿蔔(すずしろ)むつみは、JDC(日本探偵倶楽部)ビルの前で挙動不審な少年と出会う。彼の名乗った名前は、虚野勘繰郎(むなしのかんぐろう)。自分でつけた名前らしい(笑)。この偶然の出会いから、ふたりは連続名探偵殺戮事件に巻き込まれて(いや望んで巻き込まれて)しまう。

 西尾維新と言えば、去年ミステリー好きさんの話題をかっさらった若者でありました。私も彼とイラストレーターTAKEさんの世界に魅了されたひとり。あのいーたんの世界が強烈であればこそ、西尾維新の新しいキャラに対する評価は厳しくならざるを得ません。結果から言うとキャラはほぼ満足。それより畳み掛けた物語が小気味良かったですね。単純な私は意外な結末にきちんとだまされたし。
 残念なことは、清涼院流水さんのJDCの物語を未読なため、魅力が半減しているかも・・・。また本家のJDCの物語を読んでみようと思う。

『ダブルダウン勘繰郎』 2003.3.5. 西尾維新 講談社NOVELS



2003年04月14日(月) 贄門島 内田康夫

 浅見光彦はまたまた旅と歴史の取材で房総半島へ車を走らせる。奇しくも(笑)亡き父がかつて海難事故に巻き込まれ九死に一生を得た場所が近くにある。恐怖の母上様のご命令で20年前のお礼をも伝えに、贄門島と揶揄される島へ渡ることになるのだが・・・。

 さすがに小説界の久米宏(私はそう思っている)v 日本で起こっているさまざまな時事問題をたくみに小説に盛り込んでいます。今回は、贄門島で行われる秘事がKEYとなっています。普通ならその秘事は孤島ならではの殺人隠蔽だったりしますが、ところがどっこい内田康夫はそんな姑息な使い古された手は使いません。
 内田康夫さんは好き嫌いのハッキリ分かれる作家さんのようで、私がかかさず内田康夫本を追いかけることを不思議と思われることがよくあります。でも私にとっては、わかりやすい現在の日本を知らしめてくれる作品群なので貴重。北朝鮮問題をこういうふうに料理する内田康夫さんはただものではないと私は思っています。
 「人にはそれぞれ事情があるんだ」と言うこともよくわかります。

『贄門島』上下 2003.3.15. 内田康夫 文藝春秋



2003年04月13日(日) 寿司とマヨネーズ ある愛の記録 水月マヨ

 これは、1996年から1999年の間にインターネット上で公開されていた伝説のサイト日記の活字版です。噂には聞いていましたが、読めると言うことでどきどきしながら一気に読みました。が、しかし、ほぼリアルなマヨさんの日常はかなりヘビーで辛かった。愛の形はSMでご主人様と奴隷ですが、マヨさんの寿司氏への一途な思いの発露に他なりません。半分ほど読んだ時に吐き気がしてしまいました。SMへの嫌悪感とかではなく、マヨさんの恋心が胸に痛くて重くて可哀想で。
 しかし、活字に携わる仕事をされていたから当然かもしれませんが、マヨさんの文章はものすごく惹き付けるものがある。文は人なりと言いますが、マヨさんの日記が支持されたことも納得。マヨさんの性格、人柄こそ魅力のモトだと思います。一気に読むのでなく、毎日のぞくサイトであればこそ読まずにいられなかっただろうなぁ。その時代にアクセスできなかったことを悔やみます。
 マヨさんに会ってみたい。寿司さんを殴ってやりたい。

『寿司とマヨネーズ』 2003.3.12. 水月マヨ バジリコ



2003年04月11日(金) Black Magic Woman 吉村達也

 脱サラして作家となった黒木夏夫。作品は当たり、10周年記念作品にとりかかる黒木の周辺に異変が。妻の未紗が数字にこだわり、6という数字は縁起が悪いと言いはじめる。黒木の母と同居し、黒木家の人数はちょうど6人になっていたのだ・・・。

 吉村達也さんと言う人はソツなくなんでもうまく書かれるなぁと思います。今回の物語も題材の目の付け所が良いと思うし、その気になればもっともっとこれでもかーと怖がらせることも可能だったろうになぁと残念な読後感なのでした。

『Black Magic Woman』 2003.2.10. 吉村達也 JOY NOVELS



2003年04月09日(水) 蚊トンボ白髭の冒険 藤原伊織

 倉沢達夫は二十歳の天涯孤独な青年。ある日達夫の頭の中に不思議な同居者が住み着いてしまった。その相棒とともに達夫は冒険にいどむことになる・・・。

 いやー、藤原伊織はいいですわーv 最高。どちらかと言うと反社会的な色合いの孤高の主人公を描いてきた藤原伊織が、根底に流れる闘うトーンは変わらないものの、コメディ路線も加味されて非常にぐーv 達夫の敵となるカイバラの粘着質な異常っぷりが際立っていてよいvv
 ラストシーンが悲しすぎますけどね。私は大好きですv

『蚊トンボ白髭の冒険』 2002.4.20. 藤原伊織 講談社



2003年04月06日(日) 手紙 東野圭吾

 武島剛志は弟、直貴を大学に行かせてやりたいために強盗に入る。そしてはずみで人を殺してしまう。兄の犯罪の償いを直貴まで償って生きなければならないのか?

 もう鳥肌もんの東野圭吾作品です。容赦ありません。これぞ東野圭吾って感じです。最後はでろでろに泣いてしまいました。
 読んで欲しい作品です。読んであなたならどうしますか?と問いたい物語です。私ならいったいどうするだろう。

『手紙』 2003.3.15. 東野圭吾 毎日新聞社



2003年04月05日(土) ジゴロ 中山可穂

 カイは新宿2丁目で歌うストリートミュージシャン。カイの歌う歌は女性が女性を愛する歌。カイの流し目でさまざまな女たちがカイのとりこになっていく・・・。

 女性が女性を愛する。今でこそかなり認知されつつある愛の形だと思います。カイという女性は愛してやまない本命がいるくせに、あちこちの女性をくどきます。なんだか男でも女でもこういうバカな奴いるよなぁ。一番愛している女性をどうしようもなく愛しているくせに・・・。
 中山可穂さんの物語はやっぱり素敵。きゃ。どっぷりですv

『ジゴロ』 2003.2.10. 中山可穂 集英社



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