酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年05月17日(土) |
感染夢 Carrier 明野照葉 |
阿波隼人の従兄が妻と子供を道連れに死んだ。従兄の残したメモには支離滅裂な不穏な書き残しがあった。従兄はノイローゼだったのか。結婚を意識している恋人理恵子はその異様な事件を気にせずにいてくれる。それが救いの隼人であったが、隼人と理恵子は同じ悪夢に魘されるようになっていく。この悪夢からふたりは醒めることができるのか?
待ちに待った明野照葉さんの書き下ろしホラーです。いやぁ、明野節健在なり。話の運びと納めはまさしく明野照葉です。嬉しくなってしまう。 明野照葉さんに注目するようになったのは、大好きな高橋克彦さんが見出された方という点にあります。高橋克彦さんの描かれる良質な日本ならではの土着的恐怖が明野照葉さんの世界にもあると思うのです。高橋克彦さんの亜流ではなく、明野照葉さん独自の怪しい恐怖は是非ご一読いただきたい。オススメですv
また“私”の境界線が曖昧になりはじめている。
『感染夢 Carrier』 2003.5.25. 明野照葉 実業之日本社
2003年05月16日(金) |
陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎 |
ギャングの仲間割れを防ぐには、メンバーは4人がいい。嘘を見分けてしまう能力を持ち自閉症の息子を愛する成瀬、銀行強盗をしながら人質に演説をかまして去る妙な響野、鮮やかなスリテクニックを持つ心優しい動物大好きな若者久遠、物事に動じない体内時計を持つドライバー雪子。ひょんな騒ぎで知り合った4人が陽気にギャング行為を繰り返す。ある日、シンプルな作戦途中に邪魔が入り、せっかく強奪したお金を奪われてしまう。4人はお金奪還のために動き出す・・・。
うわー、伊坂幸太郎っておもしろーい。こんなに面白かったんだぁ。感動。先日読んだ『重力ピエロ』とはまた違う角度。登場する4人と4人に関わる人たちとのわやわや交わされる会話が本当に楽しい。良質なコメディ映画を観ているような感じでした。重いテーマもところどころ顔を出しますが、全体的にやさしく暖かい物語です。勿論やっていることは犯罪なんですけどネ。とってもとってもオススメです。今年は伊坂幸太郎さんイヤーとなるかもしれないなぁ。
「感じたこと全部をわざわざ口に出す必要はないんだよ。誰もが心の中で思っているいるだけならば、世界は平和だ」
『陽気なギャングが地球を回す』 2003.2.25. 伊坂幸太郎 NON NOVEL
2003年05月14日(水) |
タイムスリップ森鴎外 鯨統一郎 |
1922年(大正11年)、渋谷道玄坂で森鴎外は突如80年後にタイムスリップしてしまう。どうやら何者かに暗殺をされかけた模様。迷い込んだ現代でキュートな女子高生、麓うららに助けられ、モリリン(とうららに名づけられる)は暗殺者が誰なのかを突き止めるようとするのだがっ・・・!?
鯨統一郎さんのすちゃらか物語ナンバー1は、なんと言ってもこの『タイムスリップ森鴎外』。現代にタイムスリップした森鴎外の奮闘振りや順応ぶりが微笑ましくも涙ぐましい。でも才能のある人っていつの時代でも輝いてしまうものだなぁと感心もしてしまったり。意外な犯人にどうぞ驚いて笑ってください。必読です。
「ミステリマニアというのは、どうなんだろう? “一般の人”なのかな」
『タイムスリップ森鴎外』 2002.3.5. 鯨統一郎 講談社ノベルス
2003年05月13日(火) |
みなとみらいで捕まえて 鯨統一郎 |
半任(はんにん)刑事は、ある事情から警視庁から神奈川県警へ出向した。そこにはショーットカットにミニスカ刑事、南登野洋子(みなとのようこ)若手刑事がいた。半任は、洋子に連れられメイタンテイに出会う。それは、中華街《酩淡亭》の明丹延(めい・たんてい)と言う不思議な老人だった。ふたりは明老人のお言葉から数々の珍事件を解明していくのだが・・・。
まったくもう鯨統一郎さんらしいすちゃらか物語です。この手のお笑い解決ものも笑えるし、面白いけれど、『鬼のすべて』のような路線もまた書いて欲しい。まぁそう言いながら鯨統一郎マイベスト1は『タイムスリップ森鴎外』ですけどね。 さらさらっと面白く読みたい方にはオススメです。おちもうまいv・・・かな(笑)
名探偵は名探偵を知るということか。
『みなとみらいで捕まえて』 2003.4.25. 鯨統一郎 JOY NOVELS
2003年05月12日(月) |
共犯マジック 北森鴻 |
読んだ者の中から自殺が続出してしまう救いのない預言書《フォーチュンブック》、全国の書店は販売自粛の動きを見せた。しかし、長野県松本市にある本屋で在庫の中から出てきた《フォーチュンブック》を店頭に置き、売り切ってしまう。その時その本を手に入れた人たちがその後の人生においてさまざまに絡み合い、破滅していく・・・。
この作品は、北森鴻さん的ある意味ホラーだと思います。だからたまに読み返してはうなってしまう。それぞれの事件が最後に編みこまれる時は、ぞーっとしてしまう。扱った事件の大きさには度肝を抜かれますが。なんにしても読ませてしまう作家さんです。 北見隆さんの装丁も好みだわv
『共犯マジック』 2001.7.31. 北森鴻 徳間書店
敏生(としき)は絵のお師匠さんと出雲へ一泊旅行へ。たった一泊旅行でも森(しん)と離れた敏生は寂しくてたまらない。帰ってみると森がいない。式神の小一郎の気配もない。どうやら森は早川から「組織」の依頼を受け、なにかに巻き込まれてしまったらしい。べそべそ甘ったれ敏生が森を救うためのたったひとりの戦いが始まった!
えーっとこの奇談シリーズは、いわゆる《ボブ》ですよね。ボブ=ボーイズラブ(笑)。男性同士の恋愛ものはヴィジュアルが美しいならまぁ許せます。←勝手 椹野道流さんの描く不思議な世界が好きです。この奇談シリーズより、鬼籍通覧シリーズの方がよりシビアで好きですが。 今回の奇談には、気になる新しいキャラクターが登場しますよっ。(あ、けっこう好きなんじゃん) 森さんに負けず劣らずいい男です〜。今後が楽しみv
けれど、心は最初から万能ではない。俺たちは皆、それを育てていかなくてはならないんだ。
『琴歌奇談』 2003.4.5. 椹野道流 講談社
2003年05月10日(土) |
映画 ハリー・ポッターと賢者の石 J・K・ローリング原作 |
ハリー・ポッターは交通事故で両親を亡くし、母の妹夫婦の家でいじめられながら育つ。11歳の誕生日を迎えたハリーのもとに魔法の手紙が届く。それはホグワーツ魔術学校入学許可書だった。ハリーの両親は交通事故ではなく、名前を言ってはいけないアノ人と戦って敗れたのだった。ハリーはホグワーツで、冒険と共に成長しながら、かけがえのない仲間と自分の生きていく道を見つける!
うーん、あらすじを簡単に書いてみると陳腐ですねー。原作は勿論、映画も最高級に素晴らしいこの物語。今更私などが言うに及ばずって感じですね。 私は、小さい子たちの頑張る姿に弱くて、しかも友情のために自分の身を犠牲にしようとするところなんて涙がとまりませんっ。いやはや今回は映画のほうで書いていますが、映像も夢とスリルにあふれていて世界中をとりこにしたのも当然。何度でも観てしまう映画です。
2003年05月09日(金) |
重力ピエロ 伊坂幸太郎 |
泉水の母は情熱的な美しい人。泉水が一歳の時に男に襲われてしまう。泉水に危害を及ぼすぞと脅迫し、強姦するという未成年の割には卑劣きわまる熟練した強姦魔だったらしい。春はその結果生まれた泉水の弟。ふたりの父は春を自分の息子と言い切る。心に悲しみを抱えながら春も20代となる。母は亡くなり、父は癌におかされ入院をしている。そんな三人の周りで放火事件が続発。春は現場の近くにいつも書かれている落書きに着目。三人三様の事件へのアプローチがはじまった。
いやー、いいものを読ませていただきました。春がレイプされて生まれた子供と言うことが物語全体からいろんな問いかけとなっていて、春自身物語の内外(と言うのもおかしな書き方ですが)で悩みぬいたであろうことがわかります。その春を愛する父・母・兄がまことにいい。物語の謎もまたうまいv これは読んでください。 伊坂幸太郎さんの作品は『オーデュポンの祈り』しか読んでいなかったので、他の作品も読みたいと思います。そう言えばこの作品にオーデュポンのアノ方(?)がちらりと出てきてそれは嬉しい。
「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」
『重力ピエロ』 2003.4.20. 伊坂幸太郎 新潮社
2003年05月08日(木) |
クレイジー・クレイマー 黒田研二 |
袖山剛史は、大型スーパーのマネージャー。彼の悩みは、異常なクレイマー岬と万引き常習犯マンビー。岬の執拗なクレームは、ストーカーまがい。マンビーは、鮮やかな手口で万引きを繰り返す。岬とマンビーがエスカレートしていき、ついに袖山は・・・。
怖いですね、人間って。ストレスの発散をクレームにしていたり、万引きをしたりする人もいるかもしれないなと思ってしまった。展開はそうくるよねと思いましたが、ちょっと物足りなかったかな。うーん。
『クレイジー・クレイマー』 2003.4.25. 黒田研二 ジョイ・ネベルス
2003年05月07日(水) |
映画 DREAM CATCHER スティーブン・キング原作 |
メイン州の小さな町に住む少年、ヘンリー、ジョーンジー、ビーヴァー、ピートの少年4人は、いじめられている少年ダディッツを助ける。人より知能の遅れが見られるダディッツは、心の美しい、不思議な能力を持つ少年だった。4人の少年は、それぞれダディッツから不思議な能力を授けられる。 20年後、大人になった4人は与えられた不思議な能力ゆえに悩み苦しむようになっていた。そんな4人が集まった時、悲劇の幕が下ろされた! かつて勇気ある少年だった4人は、ダディッツとともに人類の命運をかけて身の毛もよだつ恐怖に立ち向かっていくのだっ!!
いやはや、まさか物語がこういう展開になるとは想像だにしていなかったため、かなりかなり驚いてしまいました。最初少年たちが出てきたときには、大好きな「スタンドバイミー」を彷彿とさせて嬉しかったのですが・・・ちょっと路線は違います(苦笑)。まったく先入観なく観たため驚きも素直でよかったかもしれない。 観ていくうちに物語のラストの予想がつくことと、そのラストのつじつまが合わないような気がする点さえのぞけば、非常にどきどきさせていただきました。でも誤解を恐れずに言うならば、いろんな映画のミックスという感覚もありました(笑)。
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