酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年05月28日(水) 映画 CHICAGO

 罪が罪でなくなる街、1920年代のシカゴはそんなスキャンダラスで猥雑で退廃した街だった。日々、刺激を求める人々は犯罪者(殺人者)すらスターにしてしまっていた。
 舞台女優ヴェルマは、共に舞台に立っていた妹と自分の亭主を殺し、そのまま舞台へ立つ。ふたりはヴェルマを裏切り密通していた。興奮したヴェルマはいつもはふたりでこなすステージを見事にひとりで演じきり、その場で逮捕される。そのドラマティックなシーンを見ていたスター志望のロキシー・ハートは、ショウに出させる段取りをつけてやると嘘をついていた愛人を射殺してしまう。
 そんなヴェルマとロキシーは、奇しくも留置所で顔をあわせる。悪徳敏腕弁護士ビリーによって、悪女の歌姫としてシカゴのスターになっていたヴェルマ。ロキシーは自分もヴェルマのようなスターになるべく、ビリーを雇うのだが・・・。

 うわぁ、噂どおりわくわくのミュージカルでした。なにより出てくる女性たちの魅惑のボディにはうっとり。中でも悪女ヴェルマ役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズの肉感的な肉体は女の目から見ても生唾ごっくんの垂涎ボディ。演技も悪女っぷりが素晴らしかった。ヴェルマを蹴落としスターダムに乗るロキシー役のレニー・ゼルヴィガーもとってもキュート。でも「ブリジッド・ジョーンズの日記」の時よりかなりウエイトが落としているため、肉体的には見劣りします。ダンスも歌もキャサリンが最高にいいっ。あと女看守ママ・モートン役のクイーン・ラティファも大迫力BODY & シャウトで魅せます。
 つくづく編みタイツに官能的な姿をする女性というものは痩せているよりも肉感的な肉付きのよい方が色艶が数段上。美しく野心のあるしたたかな悪女たちのシニカルな物語でした。サイコー。



2003年05月27日(火) 低俗霊DAYDREAM 原作:奥瀬サキ/漫画:目黒三吉

 19歳の深小姫(みさき)は、霊の口寄屋。父の勤務する都の生活対策課からまわされてくる様々な珍現象の原因究明と除去をしている。それ以外に生活の糧にSMの女王様なんぞもやっていて、高校生にストーキングされていたりする・・・。

 えーっと、まずは18歳未満は読んじゃダメダメです! かなりエロティック。漫画を描いている目黒さんがそっち系(アダルティ漫画)出身だと教えていただきました。でもただのエロ漫画ではなくひとつひとつの物語のテーマが、自殺だったり、ストーカーだったり、レズビアンだったり、現代のさまざまな人間の心の闇をテーマにしていてとても面白い。おとなでエロティック満載な幽霊漫画(読めばわかります)お好きな方にはオススメ。
 私のお気に入りは�4�の『カミングアウト』です。深小姫の友人のシズエ(編集部勤め)はレズビアンであることをカミングアウトしている。彼女がかかわった家出少女が自殺をして・・・。性の問題はこの漫画の一貫したテーマなんだと思います。自分の性癖を隠さず生きていく勇気はすごいなー。シズエ好き。

 あなたは小さな柔らかい箱の中で身内を切り裂くことしかできなかった
 あなたが傷つけたのはあなたを心から愛している人達よ
 (��巻『デイドリーム』 自殺した子への深小姫の言葉) 

『低俗霊 DAYDREAM� 銑ぁ戞仝矯遏П�瀬サキ/漫画:目黒三吉 角川書店



2003年05月26日(月) りかさん 梨木香歩

 ようこは、おばぁちゃんからお雛祭りに『りかさん』という真っ黒の髪の市松人形をいただく。でもようこが本当に欲しかったのはみんなが持っているリカちゃん人形だった。けなげなようこは不満そうな顔をしてはおばぁちゃんに悪いと思いぐっと我慢をする。そしておばぁちゃんからの説明書どおりにりかさんのお世話をするうちにりかさんに夢中になっていく。そしてりかさんを大切にして七日目の夜にりかさんが話し掛けてきたっ!
 これは、『からくりからくさ』と言う物語と続く物語。ただし、時代的には蓉子の少女時代にあたり、りかさんと蓉子の心の交流、『からくりからくさ』でキィとなるマーガレットとの因縁が描かれています。『からくりからくさ』では素敵な気配だけになっているおばぁちゃんも元気です。
 少女時代の蓉子が、りかさんに話し掛けられて自然に受け入れる姿や、草や木を愛する心がのびやかに描かれていて『からくりからくさ』をますますよいものに仕上げている感じがします。『りかさん』は児童書かもしれませんが、『からくりからくさ』と見事に呼応していて大人が読むにもよい物語です。

 価値観というのはね、簡単にいえばその人がどういうことをいちばん大事に思うかってこと。

『りかさん』 1999.12月 梨木香歩 偕成社



2003年05月25日(日) ボイス 吉村達也(映画とはちょっと違うノベライズ)

 ジウォンは雑誌記者。携帯電話で気軽に行われている援助交際を取り上げ、世論の注目を浴びる。そんなジウォンにストーキングが繰り返され、恐れを抱いたジウォンは親友ホジョンの夫チャンフンの好意で彼の持ち家に避難する。
 ホジャンは夫の提案が内心面白くない。なぜならば美しく完璧主義な彼女はどうしても子供が出来ず、ジウォンから卵子提供を受け、ヨンジュという可愛い娘を得た負い目があるから。またジウォンとチャンフンが惹かれあっていることにも感づいている。卵子提供を受け自分は代理母として使われたような被害妄想に陥るホジョン。
 ジウォンは、ストーキングのひとついやがらせ電話を回避するべく携帯電話を変えるのだが、その番号を選んだ者たちは次々と死んでいた。ジウォンの周りで不可思議な現象がおこりはじめ・・・。

 これは韓国発ホラー映画『ボイス』を、吉村達也さんがノベライズしたものです。しかしながら大元の軸は大切にしながらもラストなど映画とは違うらしいです。作家吉村達也さんの書くことへのこだわりが感じられました。
 映画のCMでヨンジュ役の女の子の表情の怖さに規制がかかってしまったほどの映像版も気にかかります。この小説とは違うラストと言うものも見てみたい。
 吉村達也さんは、卵子提供など女性によっては敏感に反応するテーマなので最初は違うアプローチを試みようかと考えたそうです。そういうところに吉村達也さんのお人柄が出ているなぁと好ましく思いました。
 私は子供をなしていないので、そしておそらく子供を持たずに生きていくと思うので主人公のひとりホジョンの苦悩を理解してあげられないのです。子供がいないと一人前ではないという風潮はまだまだ世の中に根強いのでしょうか。私は自分らしく生きているからあんまり問題にしていないのですけどね。

 
 ときに真実というものは、隠してこそ、よき人生を送れることもある。真実はつねに知るべきもの、それこそが人権と思い込む人たちは、人生の機微を知らなさすぎますね。

『ボイス』 2003.4.25. 吉村達也 角川書店



2003年05月24日(土) PAY DAY!!! 山田詠美

 ハーモニーとロビンは16歳の双子。ニューヨークのダウンタウンで育ったふたりは両親の離婚により離れ離れになる。兄ハーモニーはアフリカ系の父と南部へ、妹ロビンはイタリア系の母とニューヨークで暮らすことに。バラバラになった4人の家族にある日突然思いもよらない悲劇が襲う。母、ソフィアが働くビルがテロ(2001年9月11日)に巻き込まれ死亡。大切な人を失った3人が、壊れた自分の心をどうやって再生していくのか。

 大切な人を永遠に失うという予期せぬ出来事は、心を破壊します。私は好きでたまらなかった恋旦那が26歳で死んだ時、ゆるゆると気がふれていく自分を見つめていました。でも再生していけるものでした。それは私に家族が友人がそして今では恋人がいるからです。そしてこの物語のテーマとも言うべき、一瞬の大切さ尊さを身をもって知ったと思います。はらはらと涙を流しながら、そしてその涙は清清しく、読了しました。山田詠美さんもすごいや。感動。

 
 大切な人の死は、魂を成長させる。その事実を認めることは、とてもやるせないことだけど。

『PAY DAY!!!』 2003.3.20. 山田詠美 新潮社



2003年05月23日(金) あのころの宝もの 加納朋子、近藤史恵ほか

 12人の女性作家が描く心の奥にそっとしまわれた、忘れられない気持ち、忘れたくない気持ち。12人のそれぞれの宝もの。
 こういうショートストーリーは通勤とか、待ち合わせとかにちょうどいい。この企画は雑誌ダ・ヴィンチのWEB上で展開されていたらしい(知らなかった)。加納朋子さん、近藤史恵さん、中山加穂さんというお気に入り作家さんの名前が連なっていたので興味深く読みました。またこういう企画もので未読の作家さんで気になる文章と出会えるもまた楽しい。今回発見したのは島村洋子さんの『ルージュ』。毒があるけどなんだか同調してしまう物語でした。また今まで読んでいたけれどそんなに集中していなかった久美沙織さんの『賢者のオークション』もショートならではのうまさを感じました。しかしあえてひとつ選べと言われると加納朋子さんの『モノレール猫』か近藤史恵さんの『窓の下には』のどちらかになってしまう。うーん僅差で近藤史恵さんWINNERかな。どんなにショートでも近藤史恵ワールドなり。
 気軽に手にとって読んでみるにはぴったりのショートストーリーたちだと思います。

 もう会うこともない人なのに、わたしたちは一対の棘を、共有している。

『あのころの宝もの ほんのり心が温まる12のショートストーリー』 2003.3.30.
 メディアファクトリー 



2003年05月22日(木) ラッシュライフ 伊坂幸太郎

 「金でかえないものはない」と豪語する画商の戸田と、恩人を裏切り戸田と契約を結んだ画家の志奈子。美学を持っている泥棒の黒澤。名探偵(?)の教祖を信じ、その神(教祖)を解体しようとする塚本。愛人の妻を殺そうと企む京子。リストラされ途方にくれる豊田。5つのバラバラな物語が、表紙にも使用されているエッシャーの騙し絵のようにどこかが錯綜しリンクし、最後に・・・。

 いやー、伊坂幸太郎さん、よいですねー。去年のこのミスにランクインした時に本気でチェックしておけばよかった。結局伊坂幸太郎さんの本は、『オーデュポンの祈り』→『重力ピエロ』→『陽気なギャングが地球を回す』→『ラッシュライフ』と妙な読み方になってしまいました。でもどれもこれも噂にたがわぬ面白さ!
 今回の『ラッシュライフ』にも、『オーデュポンの祈り』のアノカタがちらりと登場します。伊坂さんはよっぽどアノカタがお気に入りなのですね。
 5つの物語が交錯して物語は進み、最後に読者は綺麗な伊坂幸太郎さんの騙し絵に騙されます。5つの物語がそれぞれ単独でもおもしろいので、もっと分厚くなってもいいところなのでしょうが、伊坂幸太郎さんはそれを潔しとしなかったのでしょう。そのあたりもとても好感の持てる作家さんです。
 この『ラッシュライフ』の中では、泥棒の黒澤さんがすっごく素敵。めろりんでした。いろんな事件がありますが、文章にやさしさを感じます。ラッシュライフー豊潤な人生に乾杯。最高でしたv

 「Lushは酔払いという意味で、飲んだくれのやけっぱち人生ということらしい。おまえに必要なのはむしろそういった開き直った生き方かもしれないな」

『ラッシュライフ』 2002.7.30. 伊坂幸太郎 新潮社 



2003年05月20日(火) ぼくんち 西原理恵子

 一太とニ太のもとに三年前出て行ったきりだったかあちゃんが戻ってきた。綺麗で乳の大きなかのこねぇちゃんを連れて。そうしているうちにまたかあちゃんは消えてしまい、一太とニ太とかのこの三人の生活がはじまった。

 ううーん。つらすぎます。笑えるとこなんだろうなぁと思っても泣けてしまう始末。ううう、参りました。かのこはキュートで可愛いし、優しいし、聖母みたいな存在。他のキャラクターも魅力的。人気が出たこともすごくよくわかります。でも私は笑えない。泣ける。心が痛い。さらりと毒気をまじえて描いていることが深すぎました。よくも悪くもノックアウトです。

 なくすもんがありすぎると人もやっておれん。両手で持てるもんだけで、よしとしとかんとな。

『ぼくんち』 2003.6.1. 西原理恵子 小学館



2003年05月19日(月) 緩やかな反転 新津きよみ

 亜紀子は訪ねてきた見知らぬ女性に玄関先の鏡の前で殴り倒される。気が付いた時、亜紀子は傷つき突っ伏していた。ではそれを見ている私は・・・亜紀子なのに見知らぬ女性の中にいる! 被害者でありながら加害者の中に入り込んでしまった亜紀子は、殴られた動機を探ろうとするのだが・・・。

 入れ替わった人間が見知らぬ他人の中で家族として生活していく。これは考えただけでも恐ろしいことですね。そんな中に身を置きながら、少しずつ情報収集をする亜紀子は強い女性だなぁ。最後まで不思議な謎が残されますが、その謎を受け入れるかどうかで感想もかなり違ってくるでしょう。
 私としては、SFかホラーかどちらかへもう少し偏ってくれた方がすんなり受け入れられた気がします。


 黙って食べればみんな平和なのに、その場の雰囲気を壊す困った人なんだよね。だからこそ、一言多いって言われちゃうんだよ。

『緩やかな反転』 2003.3.30. 新津きよみ 角川書店



2003年05月18日(日) からくりからくさ 梨木香歩

 蓉子は、亡くなった祖母の家で暮らすことにする。蓉子に多大な影響とりかさんをたくした大好きな祖母の気配の残る古い家に。同居人は、すぐに見つかった。鍼灸師を目指す日本的なものを愛する異邦人(あえて)マーガレット。機を織る音がうるさいと苦情がでて困っていた神秘的な紀久。テキスタイルの図案研究をしているはきはきした与希子。4人とりかさんの生きることを慈しむような生活がはじまった。そんな4人とりかさんの織り成す生活の中に神崎と言う男が流れ込んできて・・・。

 ある方の企画に参加させていただきたいなぁと思い、久しぶりに読み返しました。何度読んでも梨木さんの文章から滲み出る美しさ暖かさに涙が止まりません。たまたま個人的に落ち込んでしまっていたところへ、命が連綿と受け継がれていく素晴らしさを再確認させてもらえたようで、不思議な巡り合わせに感謝したい感じです。
 私はこの物語の中では蓉子は別格として不器用な異邦人マーガレットのことがすごくスキなのです。神崎がマギーと呼んでいいかと言うと、マーガレットはきっぱりと「私はそういうマーガレットではない」と答えるところがなんとも言えずスキで。また、マーガレットが今の自分の性質を作り上げた少女時代を語るとき、同調して泣けて泣けて。
 うまく言えないけれど、いつこの物語を読んでも感じることは《受け継がれていく命の尊さ》みたいなものなのかしら、と思います。もし読んだことのない方がおられたら是非読んでいただきたい、そんな宝物のような物語です。

 
 流れをただ見つめていたら、そのうち流されているものも落ち着くところに落ち着くわ。

『からくりからくさ』 1999.5.20. 梨木香歩 新潮社



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