酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年12月09日(火) |
『橋をわたる』 伊島りすと |
早川は、時給のいいアルバイトとして塾の講師をする。文学部なのに急遽算数の授業まで受け持たされてしまい四苦八苦。あるクラスの子供たちにイコールの概念を言葉と文章で教えていた。すると突然ひとりの少女が自分の顔を目玉をシャープペンで突き刺しはじめた・・・。
“血”をめぐるホラーというものがなぜかとても好きです。血って生命そのののだったり、エロティックだったり、なんだかぞくぞくする。この物語の主人公の早川くんはその血でサイコメトリーできるという不思議な能力を持っています。その力で傷ついた少女や好意を寄せた女性の哀しい体験を知ることになる。この物語の微妙な長さを読みやすかったと捉えるべきか、もっと重厚にするべきだったのにと残念がるべきか判断がつけにくいところ。ラストの少女の起こした奇跡がいいなーと感じたし、タイトルの意味とつけ方なども私的にはなかなか好みの物語でした。
血を介して他人を知ることは、スリルではあるけれど、また同時に地獄を見ることでもある。
『橋をわたる』 2003.3.10. 伊島りすと 角川ホラー文庫
2003年12月08日(月) |
『あそこの席』 山田悠介 |
瀬戸加奈は、父の転勤で東京へ引っ越してきた。転校先のクラスに馴染めるかとても不安。新任の市村先生とクラスに入った時に感じた妙な違和感。加奈は孤独と不安でいっぱいになる。だが、帰り道で仲良し三人組と思われるクラスメイトに誘われ、大勢でカラオケに行く。みんなと一気に仲良くなり、楽しくなる加奈。しかし、それは突如はじまった。加奈を執拗に追いまわす不気味なストーカー・・・?
山田悠介さんは、まだ二十歳過ぎたくらいの青年で(うろ覚えですが)、若年層に爆発的に指示されているそうです。おそらくこのソフトなホラー加減が怖い本を読み始めた若い人たちにちょうどいいのではないかしら。タイトルもテーマも学生さんたちには身近だろうし。 もう若年層にはさすがに分類してもらえない私には読みやすいホラーで流れてしまいましたけど。夜、寝る前にさぁ〜っと読めてしまって、そう言う意味では手軽なホラーでいいかもしれない。 内容については、怖いというより、今の若い子たちの心がこんなにも簡単に壊れたり、傷ついたり、キレたりすることが不思議で不気味。これも時代が変わったということなのでしょうか(謎)。
『あそこの席』 2003.11.15. 山田悠介 文芸社
2003年12月07日(日) |
『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂幸太郎 |
椎名は大学生活突入のため引っ越してきた先で、黒猫に出逢った。次に出逢ったのは黒ずくめの悪魔みたいな美青年、河崎。そしていきなり誘われた。 「一緒に本屋を襲わないか?」
むー、うまい。うますぎる。今年のマイナンバー1はやはりこの伊坂幸太郎さんかしら。この伊坂さん作品のおもしろさを教えてくれた私の愛する青年(ぽぽぽ)が、なんとなく椎名とだぶるところもご愛嬌。性格とか話し振りがかなり似てる(大笑)。 伊坂幸太郎さんは『オーデュポンの祈り』が出てすぐに読みましたが、その時は不思議な話だったなぁ〜くらいでした。そのため仲間同志で話題に上るまでその後の作品を読んでいなかったのです。予言するカカシは気に入っていたのですけどね。 今回の物語も、ばらばらのピースがだまし絵のようにまとめられた時、ひゃぁ〜と感服しちゃいました。こういう進め方、だまし方は本当にうまい。そして登場人物たちの魅力的なことったら涎もんでした。主要メンバーはみんな好きですが、一番好きなのはやはり麗子さんv 素敵vv 河崎もいいなぁ。 清冽な静謐な読後感ではありますが、物語にはかならず毒々しい毒もあります。そこが伊坂幸太郎さんなのでしょうね。超オススメです。むっちゃ好き。この物語。
僕はいかにも自分が主人公であるような気分で生きているけれど、よく考えてみれば、他人の人生の中では脇役に過ぎない。そんなことに、今さらながらに気がついた。
『アヒルと鴨のコインロッカー』 2003.11.25. 伊坂幸太郎 東京創元社
2003年12月06日(土) |
『死人花 「彼岸花」異聞』 長坂秀桂 |
『彼岸花』の裏話ストーリーでいいのかな。昨日書いた『彼岸花』はゲーム化されて、なんとラストが187通りあるのだそうです。この『死人花』はその187のラストのひとつなのか、まったく違う物語なのかわからないのですが。 ストーリー自体は、読んだものに沿って進行されるのでつらつらさらさらと読み進めました。ただ、『彼岸花』よりも、よりミステリー色が強い感じがします。『彼岸花』もホラーとミステリーの融合と言う感じでしたが、こちらはバリバリミステリーだった。手が込んでたし。でも個人的好みから言えば、『彼岸花』の方が面白かった。先に読んだからかもしれないけれど。
「ああ、これは彼岸花の花言葉なのだそうでございます。“悲しい思い出”・・・・・・彼岸花は、悲願花・・・・・・この花って、見れば見るほど、悲しい花でございますよねえ・・・・・・」
『死人花 「彼岸花」異聞』 2003.1.10. 長坂秀桂 角川ホラー文庫
2003年12月05日(金) |
『彼岸花』 長坂秀佳 |
六条有沙は、遠縁にあたる亨(あきら)と付き合っていたが、彼は1年前に京都で死んでしまった。彼の死には謎が多すぎた。有沙はポストへ直接投げ込まれた京都行きの新幹線チケットに誘われて(挑んで)京都へ向う。その新幹線の中で融(とおる)と菜つみというふたりの少女と出逢う。話すうちに意気投合し、京都での行動を共にする。しかし、三人はだんだんと互いに不信感を抱きあう。行く先々に現れる幽霊。導かれるように三人が辿り着いた場所、そこは・・・。
ほー。なかなかぎっしりつまった物語で堪能できました。ホラーとミステリーとカニバリズムとおまけにエロチックさがきちんと融合されていました。ホラー路線に流されないように科学的に検証しつつも、どうしてもどこかに漂い続ける不気味な気配。面白かったなぁ。そしてこの物語に登場する<不思議>はありえることだと私は思っています。
「鬼酔い・・・・・・」 「酔うて浮かれます。鬼の精あふれ、鬼の欲情兆し、やがては、人の肌を喰らいたくなると」
『彼岸花』 2002.6.10. 長坂秀桂 角川ホラー文庫
2003年12月03日(水) |
『蛇 ジャー』下 柴田よしき |
舞子は旅をする。時空さえ越えて・・・。そして舞子たちは選ばれて旅をさせられたのだった。竜が選んだ現代人へ仕掛けてきたゲームのゆくえは。舞子のかわいい甥の生死は・・・。
うー。最後、泣きました。柴田よしきさんご自身の暖かさみたいなものが、いっぱーい伝わってきて思わずラスト感涙。いい物語でした。読みやすかったし。 妖精とか妖怪とかを見たという人は今でもいるようです。有名な妖精の写真もありますよね。この『蛇』を読んでいると、その昔は妖精たちや妖怪たちと共存していたことが本当だったように思えてきます。そうだったらいいな、と思います。 この物語で旅をする何人かの選ばれた人間たちが、さまざまな旅と出会いによって変化する。私はゲームをしませんが、経験値があがるってこういうことを言うのかもしれないなぁ。娯楽作品です。でも思う存分、柴田ワールドを堪能していただきたい素敵なファンタジーでした。私はかなり好きv ちなみにこの上下巻は柴田よしきさんのサイン本を友人がプレゼントしてくれました。宝物となりそうですv またいつか読み返そう。
「歴史が変わっても、出逢う運命の人間は出逢う。僕はそう思います。いつかどこかでまた、僕らは友達になれる。一緒にトカゲを食べる友達に」
『蛇 ジャー』下 2003.11.30. 柴田よしき 徳間書店
2003年12月02日(火) |
『蛇 ジャー』上 柴田よしき |
舞子はブラザーコンプレックスだった。大好きなお兄ちゃんのお嫁さんに子供が生まれることが憂鬱でしかたない。ある日、BFの陽一とDATEしている時にボートに乗り、水面に向って赤ちゃんごといなくなってしまえと念じてしまう。だが、いざ子供が生まれてみるとかわいくて愛しくてしょうがないのだった。なのに舞子の目の前で赤ちゃんがさらわれてしまう。舞子に聞こえてきた言葉、<おまえの望みはこれで叶えられた>。舞子の心の迷いを聞きつけ、甥を奪った相手はいったい何者なのか? 舞子の甥を救出するための冒険がはじまった・・・。
柴田よしきさんならではの壮大な伝奇ファンタジーです。舞子の敵(?)は、琵琶湖を守り続けてきた竜神なのか。どうして舞子の甥を奪ったのか。舞子以外にも竜を追い求めるカメラマンや刑事などなどが登場し、それぞれがそれぞれを呼び寄せあい同じ目的の冒険がはじまります。これはもしかすると都シリーズともリンクするところがあるのかもしれません。都シリーズにも孤独な竜神さまが出てきたはず・・・(確か)。 柴田よしきさんは、この物語を新聞に掲載するにあたって荒唐無稽で縦横無尽で壮大なファンタジーにしたかったそうです。通勤のほんのひとときを楽しませてあげたいという心憎い心遣い。これを通勤で読めた人はしあわせだったろうなぁ。いいなぁ。 上巻を読んで思ったことは自然破壊の怖さでした。自然を破壊してしまい、汚し続けた人間たちは、なんらかの報復を受けてしまうのかもしれません。 下巻を読むのとてもが楽しみですv
どんな人生にも大なり小なり挫折はつきまとう。でもそこでいちいち絶望しないで前に進もうとするなら、割り切って考えないようにしなければならないことや、無理に忘れてしまわなくてはいけないことも出て来る。それが出来るから人間は前進出来るんだし、生きていけるんだ・・・・・・こんなむちゃくちゃな世の中でもね。
『蛇 ジャー』上 2003.11.30. 柴田よしき 徳間書店
2003年12月01日(月) |
『ゴーストシステム』 長江俊和 |
津田楓は頭の良い美少女。しかし憧れだった名門お嬢様学校へ高校受験で入学して、学校では微妙ないじめに遭っていた。ブルジョワのお嬢様がたには庶民で美しく聡明な楓が気に入らないらしい。その上、楓に近頃、おかしなメールが届くようになった。それは受け取ると必ず自殺してしまうというメールだった・・・。
これはどうやら映像化されたもののノベライズらしいです。受け取ると自殺してしまうメールと言う設定はおおいに好みなのですが、問題のゴーストシステムなるものについては理解不能。そんなむずかしいシステムを登場させなくても、都市伝説系怖さでひっぱれるように思いました。ただ、恋愛関係にあった男に殺されそうになった零子(本当の意味でのヒロインかな)の心情は理解できます。ちょっと零子の結末は気の毒すぎました。
「人はいつか、誰でも死ぬからです。死は誰にでも訪れる。そして、最新の科学を以てしても、“死”は回避することが出来ないし、死後の世界を解明することも出来ない。だから、人間は“幽霊”や“心霊現象”を恐れながらも、それに惹きつけられるんだと思います」
『ゴーストシステム』 2003.11.10. 長江俊和 角川ホラー文庫
2003年11月30日(日) |
NHK『楽園のつくりかた』 ABC『流転の王妃・最後の皇弟』 WOWOW『愛と資本主義』 |
昨日は、9時からテレビに釘付けでした。見たいものが同じ時間帯に集中しちゃうのだもの。参っちゃった。
NHK『楽園のつくり方』 今年6月くらいに読んで感動した笹生陽子さんの物語がNHKさんによって映像化されました。しかし驚いた。物語がはじまった途端にネタバレかーい! 唖然としてしまいました。ドラマでいきなりネタバレされるある深刻な事実は小説では最後の方まで明かされないのです。でも長野の美しい風景と主人公の男の子と天海祐希の美しさで許す(えらそうな・・・)。まぁ、あの事実を伏せて映像化するのってむずかしすぎるから、いきなり掟破りのネタバレスタートだったのかな。ただ、主人公の同級生のゲイ(?)の男の子を小説どおりに女装させなかったことはものすごくマイナスですよ。主人公が女装したかわいこちゃんを女の子と信じきってどきどきするさまが可愛いのに。NHK保守的すぎるぞー。 この物語は、軸となる三人の人間(主人公とその母親とその義理の父)の癒しと再生の物語です。あんな綺麗な風景の中で少年時代を過ごすことになる少年自身の変化がものすごく好感を持てました。ちなみに主人の実家へ引っ越した時、天海扮する主人公の母親が主人の子供の頃使用していたものたちを眺めて泣くシーンは号泣してしまいました。あの感覚は生々しいほどわかってしまいました。いっしょに泣いていました(苦笑)。 楽園はどこにもない。でもどこにでもつくることができる。自分さえその気になれば。
ABC『流転の王妃・最後の皇弟』 これは、最初の1時間くらいをちらちらとしか見なかったのですが、途中からどっぷりはまって見入ってしまいました。若手俳優陣のオンパレードに脇を固める名役者さんたち。その豪華さにノックアウトされました。常盤貴子ちゃん大好きですから〜。反町くんも脇役なのに竹之内君を引き立てていい味出してた。さすがビーチボーイズ(笑)。 しかし・・・日本は本当にとんでもないことをしでかしていたのですね。あそこまで日本の過去の恥部を浮き彫りにするとは思わなかったです。ひどいことをしたから、やりかえされた・・・。悲しいことですが、目をそむけてはいけない事実ですね。そしてラスト・エンペラーがゲイだったらしいとは知りませんでした。ふーん。そうだったのか。個人的には江角マキコのナチスっぽい服装が似合ってるな〜と(笑)。あんな江角なら私惚れます。今日、第二部があるのでちゃんと見れたらいいな〜。
WOWOW『愛と資本主義』 昨日、録画していたビデオをさきほど見ました。この物語もたまたま今年原作を読んでいて、おもしろーいと思っていたので、とてもタイムリー。 「お金で愛は買えるのか?」・・・まぁ、買えるわけありませんね。ホストにはまってしまう女性たちの孤独感がせつない。でも繰り返し同じ場面をフラッシュバックしすぎ。ビデオが壊れたのかと思ってしまった。 これについては原作の方が格段おもしろかったかなと思いました。でも伊藤英明みたいなホストがいたら、そりゃーナンバー1でしょう〜。客と寝ないでナンバー1になれて、女性に貢がせるなんてただの人にはできません。やはり美しく高潔な男でないと。ホスト・クラブ行ってみたいけど幻滅しそうなのでやめときます。お金もないし〜。
2003年11月29日(土) |
『鉄柱 (クロガネノミハシラ)』 朱川湊人 |
雅彦は上司の愛人と関係したことで、島流しにあってしまう。その町は久々里(くぐり)町と言う、異常なほどに親切な人ばかりが住んでいる町だった。神経質な雅彦の嫁、晶子でさえ町に馴染み、しあわせそうな笑顔を見せるようになる。雅彦も満更ではないなと思った矢先、自殺した女性を発見してしまう。どうやらこの町では自殺する者が後を絶たないらしい・・・?
うーん。この朱川さんって方は独自のホラー世界を確立されているなと思います。私の好きなホラー作家さんでは、高橋克彦さん・明野照葉さん・貴志祐介さんなどがいらっしゃいますが、やはり独自の世界を堪能させてくださいます。ホラーは、ただこわければいいと言うものでなく、後からボディブローのようにじわじわ効いてくるものも好みなのです。おそらく朱川さんはその路線のような気がします。昨日も書きましたが、せつなさや哀しさを感じさせるホラーっていいと思うなぁ。 この物語のこわさは幸福の臨界点の見極めを考えさせるところにありました。これ以上のしあわせはないと確信した時、あなたは死にたいですか?
願わくは花の下にて春死なむ、そのきさらぎの望月のころ 西行法師
『白い部屋で月の歌を』より 朱川湊人
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