酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年12月29日(月) |
映画『The Ring』 ※ネタバレあります |
一人の少女が謎の突然死をした。参列者に死に顔を見せられない恐怖に歪んだ顔のままで。その時いっしょにいた女友達は心を壊し、病院へ入ってしまった。シアトル・ポスト紙の記者レイチェルは、姪にあたる死んだ少女ケイティの死の謎を追うことになる。レイチェルはケイティの葬式で、ビデオテープをめぐる不吉な噂を耳にした。見た者は7日後に必ず死んでしまうと言うのだが・・・。
日本が産んだホラー・クィーン‘貞子’が海を渡ると‘サマラ’と言う眠らない少女に生まれ変わっていました。しかも彼女は母親の66回の流産の末に生まれた少女。その娘は生まれながらに呪われていた。苦しみを撒き散らすウィルスそのもののような存在だったのだから・・・。 面白いですね。日本ならではのホラー「リング」の‘貞子’は増殖し、アメリカへ渡るとアメリカンホラーに変換され、まるでエクソシストの‘リーガン’のようになってしまった。日本には日本の怖さがあり、アメリカにはアメリカの感じる独特のホラーがあるのですねぇ。日本の「リング」ではラストに貞子がテレビから這い出てきて、一瞬の眼力で真田広之を殺しましたが(役名を忘れた)、アメリカのサマラはテレビからの這い出方も違うし、その顔はまるっきりエクソシストなんですもん。サマラの出生の秘密の流産の回数の66はオーメンに通じるし。ホラーの変換が面白いな、なんて感じてしまいました。 あと、日本の松嶋ななこ(役名もななこの漢字も忘れた)は、息子のために両親に呪いのビデオを見てくれるように泣く泣く頼みます。しかしアメリカのレイチェルは息子に「あなたはだいじょうぶよ」と言って、ビデオを見るほかの誰かを案じる息子の言葉をあえて黙殺します。ここも日本とアメリカの感性の違いだなぁ〜なんて気分で見てました。 私が一番怖かった「リング」は原作を読む前に、テレビドラマ化された高橋克典さんがやった「リング」でしたね。呪いのビデオを次々に見せて行かなければならないと気付き、愕然と都会の雑踏を彷徨うラストシーン。あれが怖かった。あれを見たから、速攻で原作を買いに走ったのでした。 あなたはどの「リング」が怖かったですか?
ある弁当工場で深夜から夜明けまで流れ作業のパートに従事する女達。雅子は、旦那がリストラされ、息子は口を聞いてくれない家庭内崩壊。師匠(ヨシエ)は、義理の母親の介護。邦子はブランド依存症でカード破産。弥生は妊娠しているが夫の暴力にあっている。人生に疲れ夢も希望もときめきもない女達が、弥生の暴力に耐えかねた夫殺しに端を発し、日常から逸脱する行為を重ね始める。そしてそれは彼女達を生き生きと輝かせ、人として女として再生させたのだった・・・。
桐野夏生女史の名作『OUT』の映画化作品を観ました。以前はテレビドラマ化されたものも勿論観ていました。テレビドラマでは原作のえぐいまでの行為の数々がさすがに映像化されなかったので、映画ではさぞかし派手にやりまくってくれてるもの!と期待をこめて観たのですが・・・おおいに期待はずれでした。テレビドラマよりもまだソフトな仕上がり。しかもラストがまったく違う。これはがっかりでした。やはりあの原作の桐野夏生ならではの‘ぎらぎらさ’を克明に描写して欲しかったです。残念。 しかしながら、素晴らしい女優陣でかためた映画ですから、原作にこだわらなければそれなりに楽しめます。中でも室井滋は最高にうまいですねー。いい加減な女の役やらせたら天下一品です。原田美枝子と賠償美津子の交わす熟女同士ならではの卑猥な会話なんてエロくてよかった。 あの原作に忠実に映像化するには社会的に問題が大きすぎるのかもしれないな、と思いました。請け負って死体の解体作業をする女達。殺し屋との壮絶な戦いとセックスシーン。観たかったなぁ。やはりとても残念。
2003年12月27日(土) |
『レインレイン・ボウ』 加納朋子 |
片桐陶子は高校時代ソフトボール部のキャプテンだった。卒業して7年。チームメイトはそれぞれの人生を歩んでいた。ある日、チーズと呼ばれていた仲間が病死してしまう。お葬式で再開する仲間たち。しかし、そこにはチーズと一番仲の良かった里穂の姿がなかった。そして里穂の失踪・・・
かつてのソフトボール部の仲間たち7人の物語がリンクして行く短篇集です。これは、加納朋子さんの『月曜日の水玉模様』の主人公・片桐陶子のまた別のミステリィ。陶子や仲間達の日常や悩みやとまどい怒り希望などがた〜っぷり詰まっています。どの子も決して同じ色合いじゃない。それぞれのカラーがあります。いやぁ、加納朋子さん、うまいですねー。登場人物のひとりに‘陽子’という女性が登場します。これがまた気が強くてわがままな奴で(苦笑)。でも憎めないんですよ!(と、なぜかフォローしてみたり) 仲間の死をめぐり、謎や疑惑が渦巻きます。それをこんな綺麗な雨上がりに虹を見るような気分におさめてしまう素晴らしさ。ワタクシ絶賛です。すごい。
そして見えないでいると、つい忘れがちになる。そこに晴れた空や曇った空、夜の星空があることを。降り注いでいる暖かい日差しも、束の間現れる美しい虹も。
『レインレイン・ボウ』 2003.11.30. 加納朋子 集英社
珠緒は×1の子持ち。京都祇園のホステス相手に‘ハンガー屋’をやっている。店舗を持たず、クラブやバーの店先を借りて洋服を格安に売りさばいている。見る目を持つ珠緒の吊るす洋服はホステスたちに人気が高く、赤字を出すことなく生計はたっている。ある日、世話になった女性から男の行方を捜して欲しいと頼まれる。引き受けた珠緒の行く先々で耳にする‘烏女’の噂。「烏女がでるとな、必ず人が死ぬねんぇ」・・・それはただの都市伝説なのか、それとも・・・。
『子盗り』『プルミン』と読んできましたが、今回の『烏女』が一番面白かったです。京都祇園を舞台にすると都市伝説も‘烏女’になる。黒いドレスに黒いヴェール。その正体は老婆とも男とも噂されている。その祇園に微妙にマッチしている味付けがよかったです。 しかし、世の中にはさまざまな商売があるものですね。‘ハンガー屋’なんてはじめて知りました。物語で語られている商売のからくりを読んでいると、やはり商売上手は頭脳勝負なのだなぁとつくづく思います。目の付け所、とでも言いましょうか。女がひとりで(もしくは子供を抱えて)生きて行くと言うことは、やはり根性据えていかねばならないと言うことでしょうねぇ。
着飾ることと着こなすことは違う。そんなことは、珠緒が一番よく知っている。どんなに高い服も、着こなすだけの中身がなければ、ただ躯に布を巻きつけているのと変わらない。着こなすには、年季と経験、技術が必要なのだ。つまり「洗練」とはそうしたことを重ねていくことをいう。
『烏女』 2003.12.20. 海月ルイ 双葉社
2003年12月25日(木) |
『クリスマスローズの殺人』 柴田よしき |
メグは年末支払いのやりくりに行き詰まり、とっぱらいの浮気調査を引き受けた。依頼人が出張してる間の妻の行動監視。メグにはらくな仕事だと監視をはじめたが、妻が消失? そして世間をさわがすクリスマスローズがばらまかれる殺人事件もリンクしてきて・・・。
Vヴィレッジという吸血一族出身のメグはヴァンパイア探偵。ヴァンパイアだと普通の人間にない能力があります。そこを使ってしまえば、完全犯罪も夢じゃないわよねぇ・・・。
人が死ぬこと自体はどうしようもない。人とは死ぬものである。 が、誰かにそれを強制することはできないし、してはならないことなのだ。
『クリスマスローズの殺人』 2003.12.24. 柴田よしき 原書房
2003年12月24日(水) |
『月の扉』 石持浅海 |
那覇空港でハイジャック発生。犯人の要求は、彼らの「師匠」石嶺孝志を滑走路に‘連れて来る’こと。子供を人質にした三人の男女。飛行機内のトイレと言う閉鎖された密室で起こってしまった殺人事件。誰がどうやって被害者を殺したのか? 師匠は滑走路に現れるのか?
ほう。このミステリーがすごいにランクインしただけのことはある物語でした。ハイジャック犯がたまたま名指しした‘座間味’くん(ニックネーム)が、素晴らしい推理を展開し、犯人たちに関わってしまう。巻き込まれ探偵でした。密室殺人の犯人はたぶん予想つくだろうけど、その動機と方法の推理はむずかしい、かな? ラストがね〜、ミステリーなのに〜と驚かされた感ありありでした。ハイジャックまでしてしまう犯人たちの気持ちを思うと、なんとも言えない気持ちが残りました。私だったらどうしただろう・・・。
今の世の中、野心のないカリスマほど厄介なものはない
『月の扉』 2003.8.25. 石持浅海 カッパ・ノベルス
脂祭りで見世物になっていた串刺しの“姉”たちを見て以来、姉に憑かれてしまった男の物語。
第10回日本ホラー小説大賞を受賞した作品(ほかの短篇も含む)です。ホラー好きな私がこれほどゲッソリするくらいだから、すごいホラーなのかもしれません。残虐でエロティックな世界ではあるのだろうけど・・・。うーん(悩)。読ませる力はあります。最後までさっさと読んでしまったから。でもラストの落ちは読めます。確信犯なのかもしれないけれど。 個人的には「姉飼」よりも「キューブ・ガールズ」の方が好き。世にも奇妙な物語に映像化されそうな物語でした。そこそこに残酷だし。
『姉飼』 2003.11.30. 遠藤徹 角川書店
2003年12月22日(月) |
ジュニア版『十二番目の天使 −小さなチャンピオンー』 オグ・マンティーノ |
ジョン・ハーディングは仕事で成功し、生まれ故郷へ大きな会社の社長として戻ってきた。この世の春を謳歌するジョンを突然の悲劇が襲う。愛する妻サリーと息子リックを交通事故で失ってしまうのだ。生きる気力も目的も失い、外の世界を断ち切ろうと拳銃自殺をしようとするジョン。そこへかつての親友ビルが己の生死を左右する病気の療養を放り出して飛び込んでくる。寸前でこの世にとどめられたジョン・・・。ジョンはかつてのリトルリーグでいっしょにプレーしていたビルに古巣「エンジェルズ」の監督を依頼される。死にたい“魔の刻”から放たれたジョンはビルの依頼を承諾し、監督をすることに。彼の天使たちの中には野球が下手でも一生懸命なティモシーと言う少年がいた。自分は毎日あらゆる面でよくなっている、絶対にあきらめない!と言う小さなティモシーの口癖はチームをまとめあげ、あきらめないで頑張りぬくチームとなった。 息子リックに面差しの似たティモシーの一生懸命生きる姿に、“再生”するジョン。ジョンはもう一度生きて行くことを誓うのだった。そしてティモシーが・・・。
私の可愛い姪からクリスマスプレゼントとしてリクエストされたのが、この物語。小学校6年生の少女が自分で映画でもテレビでもない物語を言葉にしたことに新鮮な興味を抱き、読んでみることにしました。 読んだ物語は、まるで昔の私へのエールのように思え、泣けて泣けてしかたありませんでした。世の中にはまだまだ読んでいない、こんなに素晴らしい物語がごろごろしているのだろうなぁ・・・。 愛する人を失う痛みを乗り越えるには、さまざまな偶然や必然や縁が作用します。茫然自失だったり、自暴自棄だったり。でもいつも私を愛してくれる誰かの心が私を生かしてくれました。この『十二番目の天使』のジョンもジョンを愛するたくさんの人たちの愛が彼をこの世にとどめました。小さな少年の頑張りと、彼が守り通した大きな秘密のおかげで・・・。 読んでください、と言いたい物語です。必ず心がさわやかにしゃきっと前向きになります。
「自己暗示・・・・・・実は強力な、おどろくべき道具です。そのパワー・・・・・・単純なフレーズがもつ神秘なパワー・・・・・・それを信じてとなえつづけるだけで、だれもが奇跡的なことを成しとげられるんです。そうやって、潜在意識に前向きな思いや言葉をおくりこむだけで、私たちのだれもが、人生で奇跡をおこせるんです」
ジュニア版『十二番目の天使』 2002.4.27. オグ・マンティーノ 求龍堂
2003年12月21日(日) |
日テレドラマ『共犯者』に思ふ。 ※ネタバレあります |
三上博史さんが気になって録画して見ていた10時間ドラマ『共犯者』。その昔、三上博史さんが多重人格者を演じたドラマ(キョンキョン共演)で女装した姿をまざまざと思い出してみたり。ただの二枚目役に限らず、難しい妙な役をあいかわらずうまく演じていらっしゃいました。 内容は15年前に親友を殺してしまった女性が、時効目前に精神崩壊して行くお話(だと私は思いました)。物語の途中から、ミサキの人格が分裂したものがマサトなんだろうなーと思いながら見ていたのですが、先ほど最終回を見て人格分裂と言うより、マサトはミサキの妄想だったり、願望だったりしたんだろうなぁ(と私は思いました)。結局ミサトとマサトが行動しているシーンは同時刻ではなく、違った時間軸だったというところがトリックなのかな。謎解き自体はドラマ作りでは重視されていない気がする。と言うか、時間が足りなかったのだと思う。きっと全ての事実や出来事に全部きっちり説明がつくように物語上ではなっているはず。あえてそこを省いて、見る側の知りたい願望を煽っている気がする。 最終回ではラストだと言う事で、浅野温子さんを演じる三上博史さんが圧巻だった。本当に浅野温子なんだもの。喋り方や動作が。さすがは三上博史だよなぁ。残念だったことは、次なる妄想を抱く女の奥菜ちゃんを三上さんが踏み切りの向こうから手招きをするシーン。あれは最後の最後に持ってきて欲しかった。ベタだけどありがちだけど、その方がマサトはなんだか妙な精神的移動物体?みたいな謎が増長されたと思うんだけど。 15年前に会社のお金を横領して親友に告発されそうになった。それを阻止するためにかけがえのない親友を殺してしまった。殺した後で気付く。机の上に親友からの手紙と通帳。貯金を全部あげるからいっしょに罪を償って行こうと書いていた親友。その日から生活のカラー色は全て消えうせ、ただ日々を生きる屍となってしまった。大事なものは目先のお金じゃなかった・・・。そして時効を目前に良心と寂しさと後悔から心が砕けていく。愛することも愛されることもなく、自分の中に自分を愛してくれる男を創り上げるしかできなかった女。その男が彼女の心を支えてくれるる共犯者だった。しかし彼女は最後に共犯者を裏切るのだ。そして自由・・・?
2003年12月20日(土) |
『泳げ、唐獅子牡丹』 菊池幸見 |
黒沢裕次郎は岩手県のレジャー産業会社の社長である。メインは風俗店にゲーム機リース・・・いわゆるヤクザである。五歳の娘、美咲の前では紳士として振舞っているが、賢い美咲はなんとなくうちのパパはちょっと違う、と感じている。裕次郎は昔からの付き合いの中村のスイミングクラブを夜、貸切にしている。なぜならば、背中に背負っている唐獅子牡丹をカタギの皆様に見せることができないから。ある日、中村に泣きつかれ、水泳大会大会に参加することになる。大会では背中の唐獅子牡丹を隠すためにイアン・ソープのスイミングスーツを着用することに。大会で目覚しい泳ぎを見せた裕次郎は東京での水泳大会にまで参加することになるのだが・・・。
あぁ〜っ(身もだえ)この話たまらなくいいですぅぅぅ。義理と人情と男気。たまりまへんなぁ。だらだらだら(涎)。この本は本屋さんをスルーするたびに私の酔怪アンテナにぴぴぴっと訴えかけてくるものがありました。うーん・・・と思いながらも自分の感性に賭けてみたら大当たりvだった訳です。浅田さんの『プリズン・ホテル』シリーズをお好きな方なら、間違いなく感動するはずです。 裕次郎は、自分のやんちゃさゆえ、学生時代に水泳から身を引かなければならなくなります。そこからある意味、彼の人生は転落していくのですが、もともと裕次郎の持つ強い運が彼を味方し、新しい人生でも結局は成功者となります。これは裕次郎自身も素敵だし、彼の運命の人・恭子も素敵。出て来る人たちがとてもいいんですよー。 ラストに裕次郎は、ある事件に巻き込まれた恭子救出に向いますが、そこはもう涙いっぱい流しました。これはかなりオススメしちゃいますvv
「女房を助けに行かなきゃならねぇんだ。これにて失礼」
『泳げ、唐獅子牡丹』 2003.9.10. 菊池幸見 詳伝社
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