酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年02月01日(日) |
『魔女の息子』 伏見憲明 |
和紀は40歳目前のフリーライター。77歳の母とふたり暮らし。和紀は特定の恋人のいないゲイ。人恋しくなるとハッテンン場に出かけ、その場限りの関係を楽しんでいる。母は今、大恋愛中である。相手は和紀に会うたびに「どちらさま?」と尋ねる痴呆のはじまった男。しかし、ふたりは周囲の目などものともせず旅行に飛び回っている。ある日、ハッテン場で何度か関係を持ち、ほのかな想いを抱いた男が、HIV感染を公けにする姿を見る。彼の啓蒙活動を冷ややかに眺めていた和紀だったが、ある日、鏡の中の自分の姿に愕然とする。ハッテン場で中年男や禿オヤジなどと選別していた自分自身が中年のオヤジになっていることに気付いたのだった・・・。
うーん・・・。伏見さんはこの物語でなにを描きたかったのだろう。文藝賞を受賞したゲイ小説と言うことで読んでみたのですが、わからない。なにかを模索していると言うか、悶々とした感じは伝わってきたのですけど。 和紀という男の性格がすっぱりしていないから、なんとなくすっきり終われなかったのかもしれない。ゲイである自分に悩んでいるのかな。 面白いのは、和紀の恋愛より、和紀の母親の恋愛です。すっごいパワー。老齢と言われる人同士の恋愛は、あれくらい開き直って楽しむ方がステキ。母親はああもやりたいようにやっているのに、和紀は父親に似ちゃったのかな。
「人が死ぬのは戦争からこのかた慣れているんだけど、こういうふうに逢えなくなるっていうのはね・・・・・・」
『魔女の息子』 2003.11.30. 伏見憲明 河出書房新書
2004年01月31日(土) |
『約束の地』 平谷美樹 |
フリーライターの高木琢己は、新城邦明という青年の訪問を受ける。かつて琢己が書いた《超能力者たちの日常》のデータ収拾をしていたウェブサイト《超能力同盟》に書き込みをしていたひとりだった。邦明は本物のサイキック。そして《超能力同盟》に参加していたメンバーの中の本物のサイキックを琢己に探し出して欲しいと依頼する。過去におこした過ちの贖罪と好奇心から、琢己はそれを引き受ける。ひとり、またひとり、と邦明のもとに集まるサイキックたち。しかしながら、人間を卓越した能力を持つ彼らと普通の人間達の間にある溝は深かった。邦明たちは自分達が自分達らしく生きることのできる“約束の地”へたどり着くことができるのだろうか?
久々に血がたぎり、燃えましたねー。すっごい面白かったです。人間の瑣末さと言うか、愚かさと言うか、小さいなぁと恥ずかしくなりました・・・。 超能力の物語は、古くは小松左京さんの『エスパイ』、筒井康隆さんの『七瀬シリーズ』、宮部みゆきさんの『龍は眠る』、大好きな飯田譲治さんの『ナイトヘッドシリーズ』や『アナン』などが心に残っています。マンガで言えば一条ゆかりさんの『こいきなやつらシリーズ』も好きだなぁ。映画では『キャリー』、最近では大ブレイクした貞子ちゃんの『リングシリーズ』もありますねー。おお、忘れちゃいけない『グリーンマイル』! でも、どの物語でもサイキックたちは迫害され、苦労しています。出る杭は打たれる、ってことなのでしょうか。 普通の人間には計り知れない能力。例えば心を読まれ、物を動かし、未来を予知し、時間旅行さえしてしまう。そういう卓越した存在を恐れ、抹殺しようとする。それは結局ホラーにも通じると思うのですが、“理解できない恐怖”ゆえだと思うのです。人間って自分に認識できること理解できることを越えると、それに畏怖し、排除しようとする。 この『約束の未来』も、人間との共存はなく、破滅(戦い)へと向います。これって仕方ない気もしますが、あまりにも辛すぎる。もしもサイキックが存在するとしたら、やはり息をひそめ、静かに埋没するように生きているのだろうなぁ。面白い!と思いながら読みすすめ、最後にせつなくなる。そんな物語でした。
「未来は変えられる。過去は引きずって行くしかない・・・・・・か」
『約束の地』 2003.6.8. 平谷美樹 角川春樹事務所
2004年01月29日(木) |
『EXIT』 雨宮処凛(かりん) |
リスカ、アムカ・・・リストカットにアームカットなど自傷行為を自らのホームページで赤裸々に綴る少女・恵。BBSやジジョ(自助)で暴走していく人人人。恵のEXIT(出口)はいったいどこにあったのだろう・・・。
新潮ケータイ文庫でアクセスナンバーワンを続けた小説だそうです。著者の雨宮処凛(かりん)さんは、『生き地獄天国』や『自殺のコスト』などで自分の人生をあっけらかんと書いているそうです。(私は未読なのですが) 日常で狂気と冷静さの間に苦しむ少女達の苦しみは痛々しいほど伝わってきます。なんて言えばいいのか・・・ここまでどろどろ苦しむ若い人たちがいるってことが私にとっては狂気。現実の自分を見つけて欲しいと思いました・・・。心の痛みに体の痛みにEXIT(出口)を見つけられますように。
生身の人間の言葉には、どうしてもその裏の裏にあるものを読んでしまう。どうしても言葉にある刺を意識してしまう。
『EXIT』 2003.11.25. 雨宮処凛 新潮社
2004年01月28日(水) |
『破壊する男』(コールドスリープより) 飯田譲治 梓河人 |
若葉夕里子はモデルルームのようなマンションを手に入れた。口の悪い親友・山口令子はずけずけとバカにするが、夕里子は意に介さない。愛する優しい旦那さま光一と新居。まさに幸せいっぱいの結婚生活だった。しかし、1点だけ光一に不満があった。それは光一の変わったアンティークコレクション。光一がうっとりと愛でる人形は古く真っ黒で体中に何十本もの釘が刺さっているようなシロモノだった。ある日突然、夕里子の承諾なしに光一はホビールームを作り始めた。業者の男ふたりはうさんくさい。そして夕里子の悪夢がはじまった・・・。
おっもしっろーい! 飯田譲治&梓河人ばんざーい!! 思い起こせば、テレビドラマ『世にも奇妙な物語』で「トラブルカフェ」と「常識酒場」が飯田譲治さんとの出逢いでした。のちにそれは『ナイトヘッド』となり、ますます私の心をつかみ、『アナザヘブン』や『アナン』でとりこにされたのでした。長い付き合いだなぁ。 この『破壊する男』は、ダークサイドに惹きつけられ、周りも自分も破壊していく男の物語です。『アナザヘブン』がそうだったように、人間は善なるものに対してだけではなく、悪なるものにも惹かれてしまう。私自身、ホラーやサイコに惹きつけられる。だからこういうダークな物語を描かせたら、このコンビは天下一品ですね。人ってねたみもすれば恨みもする。哀しいけれど、それもまた人。
人の心とは、この世のなによりも恐ろしい。
『破壊する男』(コールドスリープより) 飯田譲治 梓河人 角川ホラー文庫
2004年01月27日(火) |
『イリヤの空、UFOの夏』その2〜その4 秋山瑞人 |
尾行されながら、初デートにどぎまぎな浅羽とイリヤ。迫り来る文化祭でフォークダンスをふたりは踊ることができるのか?(2巻) 浅羽を巡り、恋の火花を散らすイリヤと晶穂。いつしか大食い対決となり、「鉄人定食」なるとんでもないシロモノで死闘を尽くす。そしていつしか芽生えるそこはかとない友情?(3巻) イリヤの正体と宿命を知り、イリヤをつれ逃げ出す浅羽。小さな恋の逃避行。しかし、たかだが中学生の浅羽には荷が重く、イリヤの依存に爆発してしまう。そして壊れてしまうイリヤの心。ふたりの夏は終っていく・・・(4巻)
ボーイミーツガール。そんなありきたりな恋であったなら、こんなせつない読後感は抱かない。なんとも涙がほろほろ伝ってしまうラストでしたわ。辛かった。 でも面白いです。確実にいい物語だと思った。ただ個人的に言えば、その生い立ちゆえとは言えども、イリヤの浅羽への依存と執着はちょっとどうだろう。常軌を逸脱している気がする。幼いから、初めてだから、一生一度の恋だから。そうなのかなぁ・・・。 イリヤの受け入れたラストシーンは、あまりにも、あまりにも。
『イリヤの空、UFOの夏』 秋山瑞人 電撃文庫
2004年01月26日(月) |
舞台『こどもの一生』 |
1月10日の酩酊本処で読んだ中島らもさんの『こどもの一生』は、もともとこちらの舞台が先にありきだそうで、お友達に貸してもらって舞台を観ることができました。うーん、やっぱり舞台の方が小説より絶対に面白い。あの舞台ならではの空気がいいですねー。コメディから一気にホラーに転じるって舞台にしかできない感じがしました。 わがまま社長を演じる生瀬勝久さんはうまいなぁ。先日見た舞台『人間風車』でもすごくいい味出されてましたが、いやな役の方が合ってる(失礼かしら)! 私は悪役がうまい人って好きなので誉め言葉ですv 見どころは芳本美代子演じるモトアイドルと踊るオールキャストたちのダンスでしたね。ダンスの振り付けはもと米米クラブの宏太郎さん。切れ味ナイスなダンスでした。 山田のおじさんを演じた古田さんは怖かったなぁ。古田さんの外見やイメージを軸に山田のおじさんができあがったんじゃないかってくらい。この役者さんも最近よくテレビで見ますが、こうして舞台で力があればこそテレビからひっぱりだこになるんでしょうねぇ。小説より舞台です!
2004年01月25日(日) |
『そのケータイはXX(エクスクロス)で』 上甲宣之 |
しよりは失恋旅行で兵庫県と岡山県の派境にある温泉に流れ着いた。同行者の愛子の気まぐれに付き合わされた形で。不気味で排他的な村人たち。旅館でしよりはある携帯電話を手にする。その電話が鳴り、しよりに危険を知らせるモノノベという謎の男。しよりと愛子は別々に行動し、命を守るべく闘うのだが・・・。
岡山って横溝正史のイメージ(最近では岩井志麻子)でおどろおどろしい風習の残るホラーな土地って気がする(苦笑)。 この物語は『このミステリーがすごい!』大賞の最終選考に残り、宝島社さんが隠し玉として出版されたそうです。ふたつの恐怖の物語が同時進行するジャパニーズ・スプラッタ・ホラー?かな(笑)。面白いのですが、おおざっぱな感じがするのはどうしてだろう。もっと緻密に書き上げてくれればもっと怖かっただろうに。ちょっと残念。 XX(エクスクロス)は、ふたりの物語がどこかで交差していたことを表しているようです。タイトルは確かに魅力的だけど、無理にふたつの物語を交差させなくてもよかったのでは。交差させるために省いたそれぞれの物語がおおざっぱ感を与えたのかもしれません。
自分には理解できない、正体が知れないという単純な現象が、恐怖のさざ波をもたらすということを、わたしは身に染みて味わっていた。
『そのケータイはXX(エクスクロス)で』 2003.5.22. 上甲宣之 宝島社
2004年01月24日(土) |
『アクセス』 誉田哲也 |
雪乃は美しい女子高生。自分の魅力を知り尽くしている。家庭の事情で家を出てさまざまな友人の家を渡り歩いている。イケメン翔矢とは持ちつ持たれつの間柄。ふたりでいると美しい一服の絵画のようだ。雪乃は従姉妹の可奈子から教えてもらった、インターネットと携帯が使い放題ただになるプロバイダに登録する。自分が登録して、自分が紹介した人間が登録した時点でただになるというシステム。登録した彼らの周りで自殺・殺人が相次ぐ。みなプロバイダに登録したものばかり。彼らに忍び寄る幽鬼の手・手・手。彼らが墜ちた魔界の連鎖から脱出することはできるのだろうか?
面白い。第4回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作で、選考委員の間で雪乃ファンが生まれたというくらい雪乃は妖しく美しいです。私も好きv この物語で契約するとただになると言う、大人であればなにか裏があると疑り、加入はしないでしょう。しかし、そこはまだまだお金の足りない高校生達のこと。友達が加入して実際ただになると知るや、どんどん加入していきます。この連鎖は若者心理でしょうねー。 ネットの向こうにどろどろした悪意や嫉妬や邪悪な世界も広がっていると言う設定は、笑い飛ばせない気がしました。怖くてしかたないホラーではないけれど、青春アクションホラーと言うか、あっさり楽しめる物語でした。
『アクセス』 2004.1.15. 誉田哲也 新潮社
まだ本を一冊も出版できていない童話作家・平川は、公園で子ども達相手にお話を聞かせている。平川の童話は落ちが残酷なものばかりで、子ども親たちに訴えられそうになっていた。友人の童話作家・国尾はそこそこに生活が成り立っている。平川と国尾の友人の小杉はテレビ局のプロデューサー。女優のアキラをくどいているが相手にされない。国尾がテレビ出演をすることになり、平川は見学に行く。そこで出逢う平川とアキラ。そしてふたりの心は接近していく。アキラとの恋の影響で平川は今まで描いたことのない素晴らしい物語を完成させる。感動する国尾。 アキラが平川の部屋に遊びに来た。舞い上がる平川は自分に妙なファンがいることをアキラに話す。そのファンは30過ぎだが、知能が子どものままらしく、平川が語った物語を翌日にはそのまんま表現する。平川が少し小ばかにしたそのファンはアキラ自身が小さい頃あやまって頭を怪我させてしまった弟だった。平川の言葉に傷つき、もう会わないと去っていくアキラ。しかも、権威ある賞に応募した平川の童話は国尾によって出版されてしまった。平川は、友人ふたりの嫉妬と裏切りで破滅していく・・・。
うわー、面白かったです〜。後藤ひろひとさん作の『人間風車』の舞台ビデオ。どうしてこんなタイトルなんだろう、と不思議だったのですが、プロレスの技の名前なのですね。通りで舞台の中でプロレスラーの物真似がしばしば登場するはずです(笑)。これは友人が、中島らもさんの『こども一生』といっしょに貸してくれたビデオなのです。舞台でここまでホラー化が可能なんですねぇ。感動しちゃいましたよ。とにかく見事だったのは、知能の遅れた30男を演じる阿部サダヲに尽きました。あのひと一人でぶっちぎりホラーに仕上げていましたもん。脇を固める(いや主人公は生瀬勝久さんなのですが)役者さんたちも達者でしたわ。2時間半の舞台を食い入るように観ました。すごい。すごい。あぁ、ナマで観たいなぁ。コレ。
由美は、合コンで穴をのぞくことに恐怖するトラウマを指摘される。遅れてやってきた友人・陽子の携帯が本人の聞き覚えのない着信音で鳴る。「着信アリ」のメッセージには、陽子本人らしき悲鳴が残っていた。着信時刻は3日後。そして3日後、陽子は由美に電話をかけながら不審な死をとげる。その後、合コンで携帯のナンバーを交換し合った人間が次々と本人からの「着信アリ」の電話を受け取り死んでいく。ついに由美にもかかってきた由美自身からの着信アリ・・・。
うーん。なんとも感想に困るホラーです。まず、感じたことが物語が映画『リング』や小説『鬼子母神』などがごった煮されているように感じたから。ホラーも出尽くしたから、どうしてもそういうミックスになっていくのかもしれませんね。 映像は綺麗で怖いです。ビデオシリーズ呪怨ほど生理的に怖くて怖くて仕方ないと思わなかったのは、輝くばかりの柴咲コウの美しさ(特に伸びやかな足の美しさは垂涎)と怖さの根源がなんとなく理解できるからではないかと思います。 私的な見どころ(オススメ)は岸谷五朗が演じた死体写真コレクターの葬儀屋さんです。ほんのちょい役なのですが、最高級に笑えます。ホラーだから笑えてはいけないのですが、怪演に笑えます。ほんとv いや・・・もしかするとアレが一番ホラーなのかもしれません。 映画のラストをどう受けとめていいものやらわからなかったので、観終わった後に本屋さんでノベライズを立ち読みしてきて納得しました。映像の終り方よりノベライズの終り方のほうがかなり怖いようなんだけどなぁ。
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