酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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WOWOWで独占生中継された76回アカデミー賞を見ました。ビリー・クリスタルがホストに返り咲き。導入のパロディ(アカデミー候補作品の)でビリーがさまざまな役に変身していて見事でした。ゲストにジャック・ニコルソンが出てきて吃驚〜。綺羅星たちの前でコンダクターとなり、歌って踊って笑わせるビリーこそが一番の幸せな俳優なのかもしれません。なんたってミュージカル仕立てでクリント・イーストウッドの膝の上に座っちゃうんだもの。キレイな女優さんたちはみんなビリー・クリスタル夫人だし(大笑)v プレゼンターも豪華でした。やはり女優たちのゴージャスないでたちに目が釘付け。私的に一番美しいと感じた女性は二コール・キッドマンでした。凄みを増した美しさでした。次にきらきらしてたのはアンジェリーナ・ジョリーかな。女優って旬の時期が男優より短いから、その年の勢いが歴然とする。一世風靡したジュリア・ロバーツはもうそんなに魅力を感じない(あ、ファンの方、ごめんなさい)。 さて、圧巻だったのはノミネートされた賞をのきなみさらっていった『ロード・オブ・ザ・リング』でした。ただ俳優さんたちが誰ひとりノミネートされていないのは気の毒だった。まぁ、あれって人間を越えてるから。 注目は助演男優賞と主演男優賞。『ミスティック・リバー』のティム・ロビンスとショーン・ペンがふたりダブルでオスカーを手にしました。ティムはオスカー象を手にして「Oh,Boy!」と目をうるうる。あのでっかい身体で童顔のティムが可愛らしかったな。感動的だったのは、「暴力の犠牲者は助けを求めて欲しい」と語ったこと。彼が演じた役は虐待(レイプ)を受けた男でしたから。泣けました。そしてショーン・ペンがオスカー、会場はスタンディングオベーションでした。あれってすごい光景だった。あのやんちゃな悪たれショーンがいい男になったもんだ。感動する男っていいねv スターがスターをリスペクトし讃えあう。そういう光景は何度見ても素晴らしい。だから私はアカデミー賞が好き。
2004年03月01日(月) |
映画『GOTHiKA(ゴシカ)』 |
美人精神科医ミランダは、ある雨の夜、自動車事故(?)で記憶が混濁。気がつくと夫殺しのため、自分が勤めているウッドワード女子刑務所精神科病棟に収容されていた。科学を信じ、霊など信じなかったミランダだが、さまざまな体験をし、戦い、変化していく・・・。
うー、これは「サイコ・サスペンス・アクション・ホラー」です。この4つの単語が全て詰まっているのですもの〜。CMの恐ろしさは映画ではありません。そういうホラーではないのです。恐いのはいつの世も生きている人間ってことですね。 どのジャンルとして観るかで感想(もしくは好き嫌い)が分かれてしまうかもしれませんが、融合された出来のよさは感じました。個人的にはとてもとても面白かったですv 残念だったのは、ペネロペ・クロスの出番が少なかったこと。悪魔にレイプされると訴える囚人なのですが、彼女をもっと出して欲しかったなぁ。ハル・ベリーは脚の姿がよくないから矯正するべきだ。
Not Alone - ひとりではない。
2004年02月29日(日) |
映画『17歳のカルテ』1999年 |
1967年、スザンナは揺れ動く心をもてあましていた。作家になりたくて大学進学を選ばなかったことを周りから咎められ、ある友人の父親の助教授と関係を持ってしまう。ある日、ウォッカを1本と鎮痛剤1本を飲み自殺未遂をおこす。その結果、クレイモア精神病院に入り、病気に逃げ込むのだった。そこにはたくさんの心の病を抱えた少女達がいた。傷つき、風変わりな女たちはやがてスザンナのかけがえのない友となる。中でも脱走を繰り返すリサは女たちのボス。次第にリサに依存をしていくスザンナ。しかし、リサが退院したデイジーを言葉で追い込み、自殺させたことから、見失っていた自分を取り戻すのだった・・・。
この原作のタイトルは『中断された少女』(スザンナ・ケイサン)です。拘束された狭い世界の中で悩み、とまどい、友情を育み裏切りがある。狂気と正気の境界線はどこにあるのだろうか。誰だって一歩踏み外せば迷い込んでしまうのが狂気の世界ではなかろうか。苦しみ、あがく姿を見ていると誰だって完璧じゃないと気付かされます。 この原作に惚れこんだと言うウィノナ・ライダーも良かったですが、この映画でアカデミー助演女優賞を獲得したアンジェリーナ・ジョリーが素晴らしい。ほとんどスッピンなのに美しいこと。反社会的な攻撃的なリサはものすごく魅惑的でした。カリスマ性がある狂気って怖い・・・なんて思ったりしました。 さまざまな心の病の形が出てきますが、それはきっと誰しも大なり小なり心に抱えている。それが大きく前面に出てしまうか、どうか。それだけの差・・・。
心の病とは精神が壊れたり、暗闇を抱えることじゃない。誰にでもある一面が拡大するだけ。ウソをついてそれを楽しんだり、大人になりたくないと願ったり。
映画『17歳のカルテ』1999年
2004年02月28日(土) |
『ひとごろし』 明野照葉 |
泰史は、13年来行きつけの洋食屋『琥珀亭』を手伝いはじめた弓恵に惹かれる。目が合っているのに合っていないような、視点がよそに逸れているような不思議な女。『琥珀亭』のママ、美恵子の心配を潜りぬけ、ふたりは付き合うようになる。泰史の妹・萌子は異常なブラコンっぷりで、弓恵の存在を嗅ぎつけ、反対をし、邪魔をする。そして初めの印象とはだんだんと変わり、仮面を脱ぎ始める弓恵。泰史は窒息しそうな愛の押し売り、大安売りの中で精神が破綻しそうになるのだが・・・。
ひとごろしにひとでなし、そしてろくでなし。今の世の中、境界線っていったいどこにあるのだろう。そんなことをしみじみ考えてしまいました。 明野照葉さんは好きな作家さんのおひとりですが、今回の『ひとごろし』はかなりよかったです。途中で「あ、そう落とすの?そうなの?今回はそうじゃない方がぁぁぁ〜」と勝手にはらはらしてみたり(笑)。しかし、そこはさすがの明野照葉さんです。私の浅はかな読みなんて見事に裏切ってくださいました。うまいなぁ。 作家さんって、同じパターンで突き進む人もいれば、いい意味で裏切ってくれる人もいる。今回は気持ちよく裏切られました。面白い!
気配の濃い人だとくたびれちゃうのよ。
『ひとごろし』 2004.3.8. 明野照葉 角川春樹事務所
2004年02月27日(金) |
『僕は天使の羽根を踏まない』 大塚英志 |
伏姫麒麟、14歳。夏目エリスにそそのかされ、自殺未遂をする。そして、コインロッカーで生まれた犬彦。ふたりはまた巡り合ってしまった。幾たびも転生を繰り返し、出逢う宿命のふたり。またふたりの前世の仲間を探す旅が始まった・・・。
うーん。途中まで面白かったのですが、最後までそれなりに面白いのですが、なんだかところどころ意味不明。 調べてみると、これは、ゲーム、コミックス、小説で多くのファンを獲得した伝奇ファンタジー<MADARA>シリーズの完結編らしい。登場人物も設定も魅力的。もう少しこの本だけでわかりやすければよかったのに。
「うかつに何かことばにすると世界が変わってしまうから」
『僕は天使の羽根を踏まない』 2003.11.30. 大塚英志 徳間書店
2004年02月26日(木) |
『幻痛(ファントムペイン)』 牧村泉 |
笙子の夫は事業に失敗し、やけになって使用していたチェーンソーで笙子の小指を落としてしまう。そして失踪。数年後、夫の失踪の意味をひきずり生きていた笙子は夫の従兄の世話(不倫)になっていた。ある日、笙子と夫が住んでいた家に篭城事件が発生。立てこもり犯人は夫と家出中の女子高生だった?
「邪光」で第3回ホラーサスペンス大賞を受賞した牧村泉さんの作品です。今回は失踪した夫の心と、家出した娘の心を理解したいふたりの女の葛藤が描かれています。なんだか胸に痛かった・・・。 幻痛〜ファントムペイン〜とは、無くなった体の一部に痛みを感じるような気がすること。ふたりの女性の追い求めた相手の心こそふたりにとっての幻痛という事だったのでしょうか。うーん。つらい。
結局、嵐が過ぎ去ってみれば、女の方がいつもしたたかで、打たれ強いとわかっただけだった。
『幻痛(ファントムペイン)』 2004.1.15. 牧村泉 新潮社
2004年02月25日(水) |
映画『ゼブラーマン』 |
2010年、横浜市八千代区に市川という冴えない小学教諭がいた。妻は不倫、娘は援助交際、息子はいじめにあっていた。市川は、子どもの頃すぐに打ち切りになってしまった番組「ゼブラーマン」の大ファンだった。今では自分でゼブラーマンのコスチュームをこっそり作るほど。ある日、美しい母親に連れられた転校生がやってきいた。少年・浅野は父親の自殺のトラウマから足が動かなくなっていた。浅野少年と親しくなるにつれ、彼がゼブラーマンに詳しいことを知り、「浅野さん」と呼ぶ市川。そんな時、八千代区に地球外生命の存在を突き止めた防衛庁が動き出す。市川は、ゼブラーマンとして地球を救うことができるのか?
わっはっは。アニキこと相川翔さまのコスプレ映画。クドカンさんならではの脚本でした。涙あり、笑いあり。ほのぼのするところもあり。なによりキャストにゲストが豪華です。個人的には防衛庁の及川役の渡部篤郎が最高に素敵でしたぁv しかしっ!本当の見どころは鈴木京香のコスプレですっ!! その名もゼブラナース! もうあの美しい肢体(特に美乳まるだし)をおしげなくさらしたコスプレ姿に女優魂を感じました。素晴らしい。 気分が滅入ったり、ストレスためたりした日には、こういう映画が心に栄養になりますよんv
白黒つけたぜっ!
映画『ゼブラーマン』
2004年02月24日(火) |
WOWOW『妄想代理人』#3、#4 今敏(こん・さとし) |
#3「ダブルリップ」 蝶野晴美は、ふたつの顔を持つ女。助教授の秘書や家庭教師のアルバイトをする晴美の顔と、ホテトル嬢として享楽的に生きるまりあの顔。助教授からのプロポーズを受け、まりあを切り離そうとする晴美だが、まりあは絶対にそれを許さない。心の中で葛藤するストーカーになってしまった。そしてふたりが争っている夜に・・・。
#4「男道」 少年バットが逮捕された。あげたのは交番のおまわりさん蛭川。少年バットを追っていた猪狩の友達で、外面は家庭を大事にする地道な男と思われている。しかし、蛭川はヤクザに情報を流し、金と女にまみれた汚れた一面を隠し持っていた。ホテトル嬢まりあはお気に入り。蛭川は、女たちに「おとうさん」と呼ばせる屈折ぶり。調子に乗っていた蛭川はヤクザの幹部に脅され、ひったくりや押し込みを繰り返す。「誰か俺をとめてくれー」と叫んだ時、現れた少年バット・・・?
いやー、妄想が加速しています。謎が謎を呼ぶサイコアニメ。かなり面白い。特に#3と#4は大人の女と男のどろどろした心のうちがよくわかり、かなり良かったです。人は年を重ねるとともにたくさんの泥を腹に抱え込むものなのねぇ。 #4では、妙な数式から予言をするおじいさんが出てきません。#3までは、ヘンテコな数式と歌で少年バットに狙われるターゲットを予感させる数字や言葉を導き出していたのですが、#4ではなし。だから・・・逮捕された少年バットは、誤認逮捕か模倣犯ってことなのかな。 次は2週間先なので待ち遠しさも加速しますー。わーん。
2004年02月23日(月) |
『悪魔を憐れむ歌』 蓮見圭一 |
山崎は、長男の喘息の発作がひどくなったことから、群馬の片品村へ引っ越す。子ども達は田舎生活を堪能するが、都会育ちの妻・洋子には苦痛らしい。夫婦間のギスギスした空気を緩和させようとブルドッグを購入。そしてひょんなことからブルドッグのブリーダーとなる。犬屋家業にのめりこむ山崎を置いて妻と子どもは都会へ戻ってしまう。ある日、ドッグショーで関根元という男と知り合い、口車に乗せられ、彼の手伝いをすることになる。この関根元と言う男、法螺吹きなだけでなく、おそるべき連続殺人犯だった。山崎は関根の死体処理を目の当たりにし、恐ろしさからがんじがらめにされてしまうのだが・・・。
一時期、連続して愛犬家連続殺人事件が起こりました。その後、あの阪神淡路大震災が発生し、私の記憶から抜け落ちていました。今回、蓮見圭一さんが、共犯者となってしまった山崎の視点から描かれています。ほぼノンフィクションに近い小説のようです。犯人の関根元の異常性は、死体の処理のやり方にありました。死体さえなければつかまらないと言う発想で人間を透明にしてしまう。こんなことがフィクションでなく現実に行われていたのかと慄然とします。
一体全体、何でこいつらは捕まらないんだ。こんなの、ありかよ。
『悪魔を憐れむ歌』 2003.12.15. 蓮見圭一 幻冬舎
2004年02月22日(日) |
『黒冷水』 羽田圭介 |
中2の修作は、高校生の兄・正気(まさき)の部屋を荒らし、覗き見をすることを至福としている。お年頃の兄の秘密はエロ満載で修作には一石二鳥の覗きとなる。そして決して覗きの痕跡を残さない。そのことが修作の誇りだった。しかし、正気は気付いていた。緻密な覗きと慢心している弟だが、痕跡はあちらもこちらにものこっているからだった。家庭内で静かな兄弟の火花が散る。気付かない振りで見逃していた正気だったが、学校のカウンセラーに心情を吐露して自分の内に流れる黒冷水に気付いてしまう。そして弟を監視するビデオカメラ。録画したあさましい弟の覗きシーンと見つけたエロ本を使ってそのまま自慰行為に耽る姿を両親に見せるのだが・・・。
弱冠17歳で文藝賞を受賞した羽田圭介さんの家庭内サスペンスホラー(勝手に名づけた)です。最後の方が少し弱い気がしましたが、執拗に覗き行為を繰り返す弟の偏執的なところや、対する兄の残酷な報復には驚かされてばかり。なにより、やはりこれを17歳が書いたというところがすごい。 物語には3人の変態的な少年が登場します。修作・正気兄弟と、伏兵の青野くん。まぁ、オチを考えると正確に3人と言っていいかどうか疑問ですが。近親憎悪というのは、ねじれてしまうと修復がきかないかもしれない。近すぎるからこそ。 さて、この若く自信満々な羽田圭介さんは次回作にどんな物語を持ってくるのでしょう。今からとても楽しみです。
どうやら書くという行為が、だれかに話すという行為の代わりになったらしい。
『黒冷水』 2003.11.30. 羽田圭介 河出書房新社
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