酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年06月02日(水) |
映画『クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち』 |
フランス、ロレーヌ地方の古びた修道院の13号室で壁にかけたキリスト像から血がしたたりはじめた。妙な事件担当(笑)の一匹狼ニーマンス警視は科学捜査でキリストの磔の姿で生き埋めにされた死体を発見する。そこから連続して起こる連続猟奇殺人事件。次々と殺される現代の12使徒。その背景に隠されていた謎とは・・・。
うーん、ジャン・レノ素敵v もうジャン・レノを見ているだけで満足だったりするのですけどね。てへへ。これは3年前(勿論観ました)の映画の続編。でも設定としてはジャン・レノ扮する犬が怖い(かわゆい)ニーマンス警視が同じなだけ。今回タッグを組む若い刑事レダがよかったですわー。彼はちょっと注目だ。 物語は不気味でスリリングでスピード感満載。個人的に残念だったのは最後の最後の最後の落ちですね。あれじゃルパン3世だよ。
2004年05月30日(日) |
映画『ENOUGH』 |
ダイナーでウェイトレスとして働く美しいスリムは、自分を賭けの対象にしていた男から救ってくれたミッチと恋に落ちる。建設会社を経営するリッチで優しいミッチとの結婚。かわいい娘グレースが生まれ、スリムは幸福の頂点にいた。しかし、ある夜、ミッチへの不審な呼び出しが浮気相手だと気付き、ミッチに抗議をする。そのスリムを待っていたのは、豹変したミッチの暴力だった。 スリムはミッチの元から逃げ出すのだが、どこまでも執拗に追いかけてくるストーカーと化したミッチ。そしてあの運命の出会いすら、ミッチの策略だったと知ったスリムは決意する・・・。
優しかった旦那様が豹変し、暴力でねじ伏せようとする。それは女性にとっては耐えられない屈辱。この物語のミッチは浮気もやり放題、でもスリムと娘は手放したくない。そこが屈折していて怖いところ。女性を自分の従順な隷属物として扱う感覚はわからないなぁ。 この映画の見どころは、ジェニファー・ロペスが選んだ最後の決断。もうまさしくラストは圧巻です。あんなことをされたのだから、いいとか悪いとか無視して、スリムの決断を指示します。賢い選択と言えます。女をなめるんじゃねー。
2004年05月29日(土) |
『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫 |
1985年、阪神タイガースの快進撃に湧いた夏、日航ジャンボ機が墜落事故を起こした。事故現場は御巣鷹山。地元新聞記者・悠木は、この事故の全権を託される。社内外でのスクープ合戦・足の引っ張りあい。悩み苦しむ悠木が選んだスクープ記事掲載の決断は・・・。
ものすごい物語です。今からもう19年も前にあの悲惨な航空事故が発生し、あの同じ年にタイガースは優勝していたのですね・・・。悠木というベテラン記者の苦悩ぶりが切実で、元新聞記者の横山さんならではの作品なのだと思いました。クライマーズ・ハイと呼ばれる興奮状態を山登りとスクープ合戦にだぶらせ、うまいなぁと思いました。命の重さに違いがあるのか? その問いかけに胸が痛くなりました。すばらしい作品です。オススメv
「言葉っていうものは怖いもんだぞ。案外、活字よりも心に残ったりするからな」
『クライマーズ・ハイ』 2003.8.25. 横山秀夫 文藝春秋
2004年05月26日(水) |
『チルドレン』 伊坂幸太郎 |
鴨居はシャッターの降りかけた銀行に滑り込む‘陣内’に付き合って、銀行強盗に巻き込まれてしまう。相手が強盗であろうとじっとしている陣内ではない。はらはらする鴨居の心配をよそに無茶苦茶な陣内。そしてそこで盲目の青年・永瀬と知り合うのだが・・・。
伊坂さん、まさしく絶好調v 史上最強の脇役なんて誉め言葉(惹句か?)をどこかで見た気がするけれど、陣内は脇役なんかじゃないなぁ。例えるならば京極さんの榎津の流れを汲む男。周りのことなどお構いなしだが、魅力があるって感じかしら。この陣内の物語はもっと読んでいきたいと思いました。オススメv
「そもそも、大人が恰好良ければ、子供はぐれねえんだよ」
『チルドレン』 2004.5.20. 伊坂幸太郎 講談社
2004年05月25日(火) |
『ツクヨミの末裔』 倉本由布 |
花は眠ったまま目覚めないツクヨミの血を継ぐ恋人・琳を救うため、《水》を捜し求める。黄泉の国の神スサノオは花が《水》を見つけてあげないと琳は死んでしまうと予言する。花は《水》をみつけることができるのか?
タイトルに惹かれてさらりと読破。ふむ、この感じなら厭きることなくシリーズでも読めそう。コバルト文庫って私には当たり外れが大きかったり、厭きたりしちゃうから。 花という少女の凛々しいさまが良いです。ラストは、うーん(悩)。これをハッピーエンドと人は呼ぶのだろうか。謎だ。
「言葉にすれば気持ちが軽くなること、あるでしょ?」
『ツクヨミの末裔』 2004.2.10. 倉本由布 コバルト文庫
2004年05月24日(月) |
『ガーデン・ガーデン』 稲葉真弓 |
夫婦が肉体を他者に与える機会を取り付ける場所、肉体の形を見せるショーウィンドウ、それが『ドミノ』という専門誌。そこで働く結婚に失敗した三人の女性の心と葛藤の物語。
夫婦交換、そこまでして他から刺激を得ることで形を守ろうとする夫婦達。なんだかものすごーく深遠な世界でした。男と女がひとつ屋根の下で長年暮らしていると、厭きる人たちも存在すると思います。そこでよそへ走らないで、ふたりで協力をして結びつきを固めようとする。すごすぎます・・・。
年齢も美醜も超えた欲望がひそんでいる
『ガーデン・ガーデン』 2000.8.22. 稲葉真弓 講談社
2004年05月23日(日) |
『看守眼』 横山秀夫 |
「看守眼」 県警の機関誌の編集を担当する悦子は、退職する警察官・近藤から必要な手記を提出してもらうために会いに行く。この男は刑事になりたくてなりたくて、しかし最後まで看守を勤め上げることになった人物だった。その彼が、退職間近にある事件を勝手に追っていたのだが・・・
うーん、うまいものですねぇ。さすが今の横山秀夫さんにハズレなしと言った感じです。今回の短編集も読み応え充分。女心をよくわかっていらっしゃることが不思議なのだけど。さらりと読了。面白かったです。
言葉の暴力は心を傷つけるだけだ。普通に生きていれば誰だって心なんか傷だらけだ。
『看守眼』 2004.1.15. 横山秀夫 新潮社
2004年05月22日(土) |
『さよなら妖精』 米澤穂信 |
高校三年生の守屋路行はある日《マーヤ》と言う異国からやってきた少女と巡り合う。日本を知るために来た少女と過ごすほんの二ヶ月。守屋と仲間達はマーヤが疑問に感じる日本の日常の謎を説明していく。マーヤが帰国した後で、守屋の一番大切な謎解きがはじまった。マーヤはいったいどこへ帰って行ったのだろう?
不思議の国ニッポン。本当に私が暮らすこの国はなんと不思議なことが多いことだろう。そういう当たり前となった日常の謎を異国の少女に説明する高校生達。ほのぼのと暖かい交流が、一転・・・。この展開にはやられました。帯にあるボーイ・ミーツ・ガールに惑わされていると大きく足元を攫われる。これは老若男女全ての人に読んで欲しい本です。読んでよかった。ラストに私は泣きました。
「いらない。忘れたいって言っているでしょう」
『さよなら妖精』 2004.2.25. 米澤穂信 東京創元社
2004年05月21日(金) |
『ダムド・ファイル 「あのトンネル」』 |
隆と美沙子は、事故で繁を亡くした。そこから生まれたふたりの間の不協和音。隆は瀕死の淵にいる叔父から、死者に会えるトンネルの話を聞かされる。そして・・・
数週間前についついパソコンを遅くまでやっていて、ふと始まったドラマに釘付けになりました。それが噂の『ダムド・ファイル』だったのです。これは怖かった。私がたまたま見たエピソードはあるマンションに霊が集まり、そこに住む少女とその家族に災難が降りかかる、というものでした。ありがちな話ですが、映像は怖かった。かなーり怖かった。その『ダムド・ファイル』のスペシャル版のノベライズです。これは映画化されているものかな? 名古屋にあるという心霊トンネルを基に作られた物語。映画『ペット・セメタリー』でも描かれたことですが、死者は生前のその姿心模様とは違っているのではないか? そんなことを考えさせられました。
『ダムド・ファイル 「あのトンネル」』
2004年05月20日(木) |
有元利夫展 光と色・想い出を運ぶ人 |
38歳と言う若さで夭折した天才・有元利夫さん。おそらく本好きさんたちならば本屋さんで見かけたことがあるはず。宮本輝さんの装丁に使用されていますから。色合いが古びていて首と腕がやたら太い女性。でも生命や宗教(神の存在かな)や音楽を感じさせる独特の絵。大好きなんですよ。 彼は岡山県津山市に生まれました。しかし、岡山での大きな展覧会は今回はじめてではないかしら。やっと「お帰りなさい」と言う感じでした。今回の展覧会へ足を運ぶのは今日で2回目(なんとかもう一度行きたい)ですが、雨が降っていたので閑散としていました。雨の音と湿度の高さがまたいい雰囲気で。会場には有元さん作曲の音楽がずっと流れていました。有元さんは音楽と絵を同じに捉えていたようです。だから絵を見ていると音楽を感じて当然。今日の私は中島みゆきさんの「時代」がぐるぐる回っていました。「まわる〜♪まわるよ〜♪時代はまわるー」と口ずさみながらゆるゆる周りました。至福とはこの瞬間。 好きな作品は何枚もあるのですが、特に立ち止まってしまうのは「厳格なカノン」です。女性がはしごをかけて空へ昇って行く場面なのです。あの絵を見るたびに私もあのはしごを昇っていきたい・・・と思うのです。そうしたらもしかしたら亡くなったアノヒトに逢える気がして。ほろり。 もし機会があったら是非見に行ってください。心のどこかを刺激する素敵な絵ですから。
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