酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年06月24日(木) |
映画『THE UGLY(アグリ)』 |
精神分析医カレンは、連続殺人犯サイモンの精神鑑定に赴く。サイモンが収容されている病院では、野放しの不気味な女性とサイモンを虐待する看守、カレンの活躍を妬んでいるドクターがいた。 サイモンは、幼い頃から母親に虐待され、同級生に苛められていた。同級生の過激な暴力で右顔面をひどく傷つけられたこともある。ある夜、サイモンは爆発し、母親の喉笛をカッターで切り裂き殺してしまう。4年後、収容されていた病院から出たサイモンは老若男女かまわず殺しまくるのだった。 カレンは、サイモンの心の闇を見極めようとのめりこんでいくのだが・・・
監督のスコット・レイノルズの評判がいいので期待して観ました。うーん、なんて言うかとっても中途半端でした。サイコなのか、ホラーなのか、どっちつかず過ぎました。ラストもどう解釈していいものやら。サイコかホラーか、どちらかにしっかり軸を置いてくれればもっと面白いと思うのですが。
2002年2月11日午後2時過ぎ、都内郊外の大型商業施設Mで火災(?)発生。死者69名、負傷者116名。火事と思われたが、火災ではなく、事故原因は特定できず。災害から免れた人々からこぼれ出すさまざまな目撃談。不気味な万引きカップルの暴力行動? 持っていた紙袋を落とした男? サイバーテロ? 政府の実験? いったいなにがパニックを引き起こしたのか・・・。
質問(Q)と答え(A)だけで物語が進行するパニック&サスペンス&SF・ホラー・・・かな? 質問者と回答者もくるくる変わるし、その都度いろんな事実(?)が浮き上がってくる。組み合わせによって残酷だったり、不気味だったり、悲惨だったり。こういう進め方はますます迷宮入りしていく感じ。陸ちゃんらしいなぁ。 しかし、この帯は掟破りでしょう。最初、帯だとは思いませんでしたもの。すごーくホラーなイラストで、これを丸々装丁イラストに使えばよかったのに。帯がつかなくなっちゃうと価値が半減しちゃうわよ。
「皆さん、日常生活を取り戻すのに必死で、ゆっくり悲しむ暇もないんですよ。忘れようとするんです。でも、それはよくありません。ひどいことが起きたのですから、むしろゆっくり悲しまなくてはならないんです。犠牲者を悼むことに時間を掛けないと、あとからじわじわ効いてくる。ちゃんと悲しまないと、心の回復が遅れるんです」
『Q&A』 2004.6.10. 恩田陸 幻冬舎
2004年06月22日(火) |
『99%の誘拐』 岡嶋二人 |
生駒洋一郎は病床で息子・慎吾へ手記を遺す。その手記には、慎吾が誘拐され、洋一郎の会社・イコマ電子工業が大手・リカード社に吸収される原因が書かれていた。11年後、誘拐犯に奪われた金の延べ棒が発見される。慎吾はリカード社で働いていた。そしてまたしても誘拐事件が起こるのだった・・・
いやぁー、面白かったです! 最初の誘拐と、後からの誘拐。どちらも手に汗を握りました。後からの誘拐は最初の誘拐がなければ起こらなかった。誘拐された子供に危害が加えられなかったので後味も悪くないし。 たぶん、これから読む人も多くおいでだと思いますので詳しい感想は自粛。後からの誘拐の動機と誘拐犯の心情が(表現されていないけれど)痛々しくて。西澤保彦さんが解説で書かれているように“孤独”を感じました。スピーディな展開は映像向きだと思いました。 きっと完全犯罪については突っ込みどころ満載なのだろうけれど、フィクションだもん。十二分に楽しめるじゃん!と思います。オススメ。
スペース・シャトル並みの正確さでやってやるさー。
『99%の誘拐』 2004.6.15. 岡嶋二人 講談社文庫
2004年06月21日(月) |
『ダレカガナカニイル・・・』 井上夢人 |
西岡吾郎は、警備会社になんとなく勤めていた。退屈しのぎに盗聴したことがバレ、山梨に左遷される。配属先は新興宗教道場での警備。行った途端、事件に巻き込まれ、吾郎は妙な転倒をする。その時、道場から火災発生。教祖と言われる女性が焼け死んでしまった。責任を取らされ、クビになった吾郎の頭から声が聞こえ出した。僕の頭の中に誰かが住み着いている・・・?
1992年に井上夢人さんが上梓された破天荒な物語。SF?ミステリー?ラブストーリー? どれに分類してもとにかく面白い。12年の時を経て一気に読ませる素晴らしさ! 私が手に入れたのは新潮ミステリー倶楽部から出版されたもの。なんと今では絶版だそうです。しかも、これが文庫落ちするときに井上さんは『ある言葉』を抹殺したそうです。それを知りたいのでまた読み返してしまうなぁ。
繰り言、繰り言、くるくる回る 繰り言、繰り言、くるりと回る 繰り言機械の くるくる回り くるくる、くるくる、くるりんこ
『ダレカガナカニイル・・・』 1992.1.20. 井上夢人 新潮社
2004年06月20日(日) |
『天使の代理人』 山田宗樹 |
桐山冬子は、助産婦。生まれる生命の手伝いをするべき仕事のはずだったが、金のために命を消す手伝い(中絶)を20年間も続けてしまった。ある堕胎手術で死産で生ませる子供が一瞬だけ目を開け、冬子と視線が交錯する。その一瞬の瞳の輝きから今までの行為を悔やみ、暴露本とも言える本を自費出版。そんな冬子を軸に、中絶撲滅組織が生まれる。冬子の本のタイトルから「天使の代理人」と名乗る地下組織だった・・・
なんともものすごい問題を目の前に叩きつけられた感じです。安易な解答なんて許されないと思いました。そして、今の豊かな日本が中絶天国と化していることに驚かされました。日本ではまだまだ公けに語るべきではないとされているし。 産むか、産まないか。それ以前が問題だと私は考えました。避妊しないでセックスすれば妊娠する可能性がある。その知識・認識の問題じゃないかなぁ。例えば暴力的に望まざる妊娠をさせられた場合、中絶は単に子供を堕ろすこととは異なるはず。「望まれない命」と「望まれる命」の境界線なんてあって欲しくはない。快楽を追求したければ避妊をきっちりやりましょう。責任あるセックスを。
人生、なかなか思うようには行かない。だれかが悪いわけではないのだ。
『天使の代理人』 2004.5.25. 山田宗樹 幻冬舎
2004年06月19日(土) |
『薄紅天女』 荻原規子 |
平安時代、阿高は東の坂東という土地で叔父にあたるが同い年の藤太と育てられた。ふたりは二連と人々から呼ばれ、愛されていた。ある夜、阿高は蝦夷たちに告げられる。阿高は彼らの巫女、明るい火の女神の転生だと。阿高は自分のルーツを求め、蝦夷の国へ向う。二連の片割れ藤太と幼馴染の茂里と広梨も同行する。 物の怪が跳梁跋扈する都では、病に伏せった皇子を妹(皇女)苑上が気にかけていた。苑上は少年の姿に扮し、父のため兄のため災厄=阿高に立ち向かおうとする。巫女の力を受けついだ「闇の末裔」の少年・阿高と、「輝の末裔」の皇女・苑上が出会ったとき・・・
勾玉三部作の最後の物語。この物語もまた大きな愛と絆を感じさせてくれる壮大なファンタジーでした。阿高と藤太のボブ(ボーイズラブ)な展開になるのかな?と勝手に想像していたので、苑上の突然の登場とラストには驚いてしまいました。どうやら妄想が勝手に走り出していた模様(苦笑)。 人が人を愛し、慈しみ、大切にする。そんな当たり前で尊いことをしっかりと読ませてくれます。個人的には、『白鳥異伝』が一番おもしろいと思いましたが、この最後の物語にも泣かされました。 勾玉三部作はかなりオススメですv
「そなたに道を説く気はないが、これだけはいっておく。だれもが一人だ。この世に生まれいずるときも、その存在を終えるときも」
『薄紅天女』 1996.8.31. 荻原規子 徳間書店
2004年06月18日(金) |
映画『THE EYE (見鬼)』 |
角膜移植により、光を取り戻したマン。世界は美しいと信じていた。が、しかし、彼女は見えざる者たちが見えてしまう。そして、角膜ドナーが予知能力のある女性だったと知り・・・
これは、タイで実際に起きた事件をもとに作られた映画だそうです。主人公のマンの目つきが本当にこの世ならざるものを見ているといった風情でなかなかに不気味でした。もしも移植された臓器が記憶を持ってしまうものならば、臓器移植はできなくなってしまう。しかも記憶を持っていたとしてもおかしくないから。 映画としてはホラーとしても中途半端。ただ主人公のふたりの女性が美しくてよかったです。ドナー役の女性の方がタイプv
2004年06月16日(水) |
映画『ファイナル・デスティネーション2 《デッド・コースター》』 |
キンバリーは、仲間達と車でバカンスに出かける。ハイウェイを走るうちに、フラッシュバックのように幻覚(予知夢)を見てしまう。それは、大型トラックに積もれた材木が荷崩れを起こし、次々と巻き込み事故を起こすというものだった。キンバリーは自分の車を横付けにし、後続車を堰き止める。その目前で事件が起こった。巻き込まれるはずだったキンバリーたちは、死ぬ運命を覆せたのだろうか・・・。
これは、『ファイナル・デスティネーション』の続編です。前回は飛行機墜落を予知し、生き残った人たちが魅入られた死神から逃れられるのか? でした。前回のたったひとりの生き残りクレアが登場し、クレアの運命もつながっていることに驚かされます。 定められた死を逃れる。言わば自分を魅入った死神との激闘。このホラーの面白いところは次々に死んでいく登場人物たちのとんでもない死に方(殺され方)にあります。ひえ〜っ!と叫びながらもラストまでぐいっと見せてくれる。ラストはねぇ・・・自粛。 こういうスプラッタ・ホラーを観て、またおかしな事件が発生したとか叩かれるといやだなぁと思います。確かに残酷で悪趣味かもしれないけれど、あくまでもフィクションであり娯楽だと思うのだけど。
2004年06月14日(月) |
『白鳥異伝』 荻原規子 |
橘の一族の娘・遠子は、拾われた子供・小倶那(おぐな)と双子のようにして育った。ある日、都から来た皇子に見出され、小倶那は皇子の御影人となるべく、郷を出ていくことに。遠子は、小倶那に女にならず待っているから帰って来てと約束を取り付けるが、数年後、小倶那は生まれた郷を焼き滅ぼす禍々しい者となりはてていた。遠子は、忌むべき力を持った小倶那を殺すために何者にも「死」をもたらすという伝説の勾玉を求めて旅立つのだが・・・
勾玉三部作の二作目です。前作以上にスケールアップ。登場人物も魅力的。悲劇の主人公・小倶那と飄々としたプレイボーイの菅流(すがる)。このふたりが両極端で面白かった。でも私が好きなのは、七掬(ななつか)v 出生の秘密に翻弄される小倶那は、痛々しい悲劇の主人公。その彼を想い慕い続ける根性娘・遠子。この遠子が子供から女へと変貌を遂げるさまも素晴らしかった。男と女の愛の育ち方・深まり方は本来こうあるべきなんだと思います。 忌むべき力を持ってしまった小倶那を倒すために、遠子が散らばった勾玉を菅流とともに探す旅にもじーんっとくる。あきらめないことが大きな力になる。そんなことまで教えてくれる物語。最高にオススメですv
「生き方は自分で選びとるものだ。他人に口は出せない。文句を言ってもしかたないさ」
『白鳥異伝』 1996.7.31. 荻原規子 徳間書店
2004年06月13日(日) |
『星月夜の夢がたり』 光原百合 絵:鯰江光二 |
「暗い淵」 友人が死んだ。彼女の母親から頼まれて、彼女がお世話になった人をアドレス帳から拾い上げていく。そして最後に走り書きの電話番号に気付き・・・
光原百合さんの現代の御伽話たちです。光原百合さんらしいテイストから、意外にダークなものまで多岐に渡ります。鯰江さんの絵がフィットしていて、かなり良かったです。 中でも「暗い淵」は、間違えたら怖い都市伝説になりそうな本当はとてもせつなくて哀しい話。ありそうだなぁ・・・。
私には私をつかまえてくれる手があった。彼女にはなかったのだろうか。この世界の何も、彼女を引きとめてはくれなかったのだろうか。
『星月夜の夢がたり』 2004.5.30. 光原百合 絵:鯰江光二 文藝春秋
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