酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年07月25日(日) 『転落』 永嶋恵美

 ほんの一瞬だった。ボクが油断した瞬間に荷物をかっぱらわれてしまった。白昼堂々と人通りもあると言うのに。行くあてもなく彷徨っていたボクはどんどんとホームレスとなっていく。そんなボクに興味を示した少女がいた・・・。

 うーん(困惑)。まずはなにもかもが簡単に展開しすぎてる感じを受けました。この物語の事情ならばもっと重く暗く残酷になり得るだろうに残念だなぁ。ページ数も中途半端だし。人の悪意について描かれているのですが、深く掘り下げればもっともっと面白く空恐ろしかっただろうに、と思いました。

「悪意のこもった沈黙くらい、暴力的なものはないからね」

『転落』 2004.7.8. 永嶋恵美 講談社




2004年07月24日(土) 『空中ブランコ』 奥田英朗

「空中ブランコ」
 いらっしゃーいと場違いに明るい声で神経科へ迎え入れられた飛べなくなった空中ブランコのり(って言うのかな)コウちゃん。コウちゃんはキャッチャーの内田がわざとタイミングをずらして自分の手を掴まないのだと睨んでいる。それなのに周りがやいやい言うので仕方なくやってきた。そこの伊良部先生は往診だと言いながら連日サーカースにやってきて空中ブランコの嬉々として練習するのだった・・・

 心がいっきに軽くなった。言葉の力を思い知った。どうしてもっと早く、対話をしなかったのだろう。

「女流作家」
 星山愛子は流行作家。ワンパターンと言われようと都会派恋愛小説なんてお手のもの・・・なのに、書こうとすると以前に書いた設定と同じかと思い、前の作品を片っ端からチェックしないではいられなくなってしまった。ついに精神科を訪れると「いらっしゃーい」と素っ頓狂な声が! 今度は伊良部先生作家になりたいと言い出した・・・

 人間の宝物は言葉だ。一瞬にして立ち直らせてくれるのが、言葉だ。その言葉を扱う仕事に就いたことを、自分は誇りに思おう。神様に感謝しよう。

 奥田英朗さんの直木賞受賞作。なんと映画化だそうです。すごい勢いだなぁ。ただ映画の主演の松尾スズキさんは細すぎると思うなぁ。私の(?)伊良部はまっちろでぷよんぷよんしたオデブさんなんだものー。小説も映画も伊良部先生シリーズになりそうです。
 最近のヒーローって絶対的にヘン。おもしろい時代になったもんだわ。この伊良部のヘンさっぷりったら群を抜いている。そこが受けたんだろうなぁ。ほんとに気持ち悪いほど面白いv

『空中ブランコ』 2004.4.25. 奥田英朗 文藝春秋




2004年07月23日(金) 『シェエラザード 下』 浅田次郎

 金塊を積んだまま撃沈された弥勒丸の引き上げ。そのための融資を依頼された軽部と日比野と律子の周りで不審な自殺が相次ぐ。宋英明の仕業なのか? 追い込まれながら、弥勒丸の真実に近づいていく。そして宋英明が語り始めた・・・。シェエラザードの調べとともに甦る悲劇。

 どうして弥勒丸が2300人の命とともに撃沈されなければならなかったのか? この真相に身震いしてしまいます(涙)。浅田のおっさんの語る物語には心をがしっと鷲づかみにされて、ぶんぶん振り回されてしまう。シェイクシェイク。宋英明の語りには「あっ」・・・と。ラストは涙で文章がかすんでしまいました。
 タイトルのシェエラザードは千夜一夜の語り部の女性の名前。そのシェエラザードをモチーフにしたクラッシックが物語を通して流れ続けます。公開される映像でもきっとこの音楽が効果的に使われることでしょう。見逃せない、聞き逃せないです。よォーそろォー

 過ぎたことだから忘れてしまってもいいのですか?
 それはちがう。過去があったればこそ現在がある。そして未来から見れば、この現在も過去であるということを、忘れてはならない。だから私はこだわり続けたのです。一人の人間としてね。

『シェエラザード 下』 1999.12.6. 浅田次郎 講談社




2004年07月22日(木) 『シェエラザード 上』 浅田次郎

 昭和20年、弥勒丸は撃沈された。病院船として航海の安全を保障されていたはずなのに。2300人の命と膨大な金塊を積んだまま・・・
 金融業を営む軽部順一と日比谷義政の前に百億の融資を依頼する中国人・宋英明が現れる。融資された金の使用目的は、弥勒丸の引き上げだと言う。この壮大な謎に軽部と日比谷と軽部のかつての恋人律子は巻き込まれていくのだが・・・

 NHKが反町くんを起用して映像化。それに先立って積んでいる本の山から上下巻を引っ張り出しました。これは実際にあった‘阿波丸事件’を基に書かれたそうです。この‘阿波丸事件’について知らなかったため、すこし調べてみて吃驚してしまいました。こんな大きな事件があったのですねぇ・・・。
 上巻は、撃沈された弥勒丸を引き上げる野望を持つ宋英明に出会った3人の男女が、この壮大な謎にぐいぐい惹き付けられていくさまが描かれています。浅田のおっさんの筆の魅力は読んでも読んでもつきません。ベタだったり、浪花節だったり、わかりやすい人情物だったりしますが、最高に面白い世界を見せてくださいます。読めば読むほど好きになってしまうなぁ。

「毎日毎日、命が減ってしまうのです。やらなければならないことは、いくらでもあるというのに」

『シェエラザード 上』 1999.12.6. 浅田次郎 講談社




2004年07月21日(水) 映画『座頭市』

 ある宿場町に三組の旅人が辿り着く。盲目のあんまさん・座頭市。浪人夫婦。旅芸者姉妹。三組の旅人は宿場町を仕切るヤクザにかかわり、因縁により助け合い、闘うこととなる・・・

 北野たけし。今や世界の北野なんて呼ばれるようになってしまったタケちゃん。私の中ではタケちゃんマンを嬉々としてやっていたタケシのイメージばかりが強くって(笑)。タケシの映画は、たまに観ますが、そう好きな部類の映画ではありませんでした。今回の『座頭市』も期待しないで観たのですが、かなり楽しめました。賛否両論だった金髪頭の座頭市のタケシはかっこよかったぁ。吃驚。居合シーンもスッキリ斬りつけて爽快なくらい。エンディングの出演者によるタップシーンもまた意外なことにとってもよかった。楽しい! さすがに座頭市タケシは登場しなかったけど(大笑)。でもきっとタップやりたかったんだろうなぁ、タケちゃん。

 いくら目ん玉ひんむいても見えねぇものは見えねぇんだけどな。



2004年07月20日(火) 映画『ドラゴンヘッド』

 テルは修学旅行帰りの新幹線で事故に遭遇。目覚めたテルの周りには死体ばかりだった。うずくまっていたノブオは狂気に飲み込まれていた。ノブオの狂気の様子から隠れていたアコ。生存者はわずかにこの三名だけ。閉じ込められたトンネルの中でノブオはふたりを支配しようとする。いじめられていた今までの鬱屈を晴らすかのように。そしてノブオから逃れ、トンネルから脱出したテルとアコを待ち受けていたものは・・・?

 山田孝之くんの異様なメイクを見たいがために観てみたら、とんでもないホラーで驚いてしまいました。世紀末と言うか、サバイバルと言うか、映画の出来はともかく(苦笑)ものすごーく怖い物語でした・・・。
 映画としては飯田譲治監督に期待をしていたのですが、これはいかがなものか。起伏に欠けると言うかどこまでも灰色の世界の中をテルとアコがきーきーきゃーきゃー逃げ惑うばかりと言った感じで、まぁ要するに簡単に言うとつまらない。
 しかし、おそらくや原作コミックは面白いはず。なんとかして読みたいと思うのでした。



2004年07月19日(月) 『太陽の塔』 森見登美彦

 京大五回生、しかも休学中の森本は自分を袖にした元カノ水野さん研究に余念がない。それはストーカー行為ではない(と森野は言い張る)。自分を袖にした水野さんという女性を観察し研究しているのだ。仲間の男どももパっとしない。妄想ばかりで生きている。なのに世間では「京都の女子大生は京大生が奪って行く」と言っているらしく愕然とする。そんなものは都市伝説だ・・・

 京大生が書いた妄想青春グラフティ。ファンタジーノベル大賞受賞作なのですが、なんでも選考会では、「美点満載、文句なしの快作!」「一番強烈で一番笑いこけた作品」という評価だったそうな・・・。え、えーっと・・・言葉を見失う私。
 とりあえず最後まで読みきりましたし、なんとも珍妙な持ち味があるとは感じました。でもこういうグズグズしたタイプに嫌悪感を持ってしまうので、周りの反響ほど素直に受け入れなかったですー。しかし、どこらがファンタジーやねん(怒)。

「せっかくの酒を、飲めない人間に飲ませるなど愚の骨頂」

『太陽の塔』 2003.12.20. 森見登美彦 新潮社


 



2004年07月18日(日) 『禅定の弓 鬼籍通覧』 椹野道流

 O医科大学法医学教室で解剖した老人の焼死遺体は火災の前に死んでいた。そして火災付近で頻発していた動物虐待。ミチルと伊月が解明した真実とは・・・

 やっと出ました。鬼籍通覧。やっと出たけれど・・・椹野道流さん、このシリーズに苦心されてるのかしら。伊月が登場したときにもなんとなくそう感じていたのだけれど、今回も話の流れに(短い割には)息苦しい感じがしました。しかもこの事件の真相はおおまかなことは早い時点で読めます。たまたま関西でこの手の虐待が頻発していると聞いていましたから、なんとなくわかってしまった。うーん(悩)、どんなに待ってもいいからズッシリした鬼籍通覧を読みたいと思ったのが本音ですね。ライトなテイストは奇談シリーズにお任せって感じなのですよ。
 より重厚なものを求めすぎなのかもしれませんね。面白いことは間違いないですよん。

「そうそう。適度に煩悩まみれで、適度にバカで。百パーセント清らかなんてつまんねえのは、神様にお任せっすよ」

『禅定の弓 鬼籍通覧』 2004.7.5. 椹野道流 講談社ノベルス




2004年07月17日(土) 『ICO 霧の城』 宮部みゆき

 イコは“生贄(ニエ)の刻”を村の北側にある岩屋で待っていた。そこへこっそりと一番の友達トトが忍び込んできた。トトはイコが村のためにニエにされることを阻みたいと願っていた。そして少年らしい暴挙に走ってしまい・・・。

 宮部みゆきさんが大好きなゲームをノベライズしたものだそうです。ゲームをしていないので、あくまでも宮部さんの冒険ファンタジーとして読みました。うーん、宮部はんらしいキャラクターづくりが出来ていないと言うか、キャラクターに深みがなかった気がします。ゲームをやっている人ならそうは思わないのかしら? 個人的には『ドリーム・バスター』の方が好みです。

「君が誰だって、そんなのいいんだ。こんなところにいちゃいけないよ。ここを出ようよ。僕と一緒に行こう」

『ICO 霧の城』 2004.6.15. 宮部みゆき 講談社




2004年07月16日(金) 『銀弾の森 禿鷹�掘戞^�坂剛

 渋谷をめぐるヤクザと南米マフィア(マスダ)の抗争が続く中、ハゲタカこと禿冨鷹秋が動いた。ハゲタカの狙いは<サルトリウス>のママ・真利子なのか? またしてもハゲタカに翻弄される渋六組の水間と野田なのだが・・・

 やりたい放題です、ハゲタカ(笑)。でも今回はハゲタカが負傷するので、代償としては大きすぎたような・・・。
 このシリーズ、驚くほど人気が悪いのですねぇ。このミスにランクインしたとは思えないくらい叩かれています。まぁ、徹底していないということは魅力に欠けて当然かもしれません。悪や非情さを極めればまた変わってくるのでしょうけど。気楽に読めるピカレスクかな。

 禿冨を見ていると、そうした出世に対する野心があるのかどうか以前に、いわゆる世渡りとは無縁の超然とした雰囲気、得体の知れぬ狂気のようなものを感じる。それが、ある意味ではうらやましく、ある意味では恐ろしかった。

『銀弾の森 禿鷹�掘戞�2003.11.30. 逢坂剛 文藝春秋




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