酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年11月21日(日) 『輝夜姫』25巻 清水玲子

 晶は、「月の石」を月へ戻すミッションの同行者に3人を選ぶ。晶が選んだ3人とは・・・

 なんと輝夜姫は、10年を越えているのですねー(驚愕)。1巻から25巻までガーッと読み返す時に、1巻の発行年月日を見ると1994年4月25日になっていました。これっていつまで続くのだろう。
 今までの流れに違和感を抱いていましたが、改めて読み返すとちゃんと物語はつながって流れていたので感心。柏木と藤原を混同していたことに気づいてみたり(苦笑)。
 しかし、いつも思うことだけど主人公はミラーさん? 晶は時々ものすごくゴージャス美女に見えるけど、普段は男みたいなもんだし。由は綺麗、綺麗と晶が言う割にはそうでもないと思うし・・・(由ファンの方にはごめんなさい)。やっぱりミラーさんが眩しいほど美しいのよね。たまーに粗暴なところもトテモ素敵。うっとり。あとサットンとまゆのお馬鹿ちゃんなところがすんごくキュート。ミラーさんは別格として、好みなのはサットンと守。そして高力士(←ますますジャン・レノに似てきた)v
 そう言えば、清水玲子さんは「ボーイズ・ラブ全盛なので女の子同士で描いてみたかった」みたいなこと書かれていたけど、今やすっかりボブボブまっしぐら。晶ちゃんは体型はグラマーな女だけど中味は男みたいなもんだし(笑)、由→碧。サットン&ノブオ→ミラーさん。まゆの想い(執着)は昔ほどではなくなったし。できればサットンとミラーさんに幸あれ。うふふ。



2004年11月20日(土) 『リピート』 乾くるみ

 毛利圭介のもとへいきなりかかってきた電話は、これから発生する地震を予言して切れた。そして予言どおり正確に地震が起こり、圭介は風間と名乗る預言者に現在の記憶を持ったまま時間を遡る「リピート」に勧誘される。圭介とともに勧誘されたメンバーたちは過去に戻る。その過去でリピートした仲間が次々と殺され始めた・・・?

 これは文句なく面白かったです。《時間もの》をこういう思惑で設定するなんて只者じゃない。特に唖然とするラストがうまいっ。唸りましたもん。
 時間だけは生きとし生ける全てのものに平等。だからこそ、それを特権として獲得することは、やはりそれまでのいろんなものが捩れてしまうってことなんでしょう。どんなに美味しい餌をぶら下げられようとも今を生きること、生き抜くことを選ぶべきなんだろう、なんてことを神妙に思わされた〜。かなりオススメv

 苦難を背負うのは僕ひとりで充分だった。すべての原因は僕にあるのだから。

『リピート』 2004.10.25. 乾くるみ 文藝春秋

 



2004年11月19日(金) 『魔女の住む館』 篠田真由美

 「あたし」のおかあさまは美しい女。たくさんの「すうはい者」にいつもちやほやされていた。でもある日おかあさまはピストルで撃たれて死んでしまった。そのことをあたしは夢に見る。「魔女だからね。魔女は昔から火炙りに決まっているからね」という男の人の声が聞こえ・・・

 ううー、少年少女に向けてコレ(笑)ですが。さすがの篠田真由美女史はコドモに媚を売らないのだなぁ(大笑)。謎めいた洋館に住む美しい女性と娘。耽美的な妖しさいっぱいで、コレを読んで目覚める子供たちも多いことかと。
 ただ、あるからくりは最初に解けました。たぶんそうだろうな、と思いつつ読んでいたと言う感じ。それでもきっちり楽しめました。イラストが波津さんって物語にどんぴしゃだし。

「人間は、覚えていると怖くて、苦しくて、死んでしまいそうになることを、忘れてしまうことがある。そうしないと生きていけないから。」

『魔女の住む館』 2003.10.29. 篠田真由美 講談社 



2004年11月18日(木) 『禁断』 明野照葉

 依田邦彦は親友の死(他殺)について調べる。調べていくうちに逃亡者のようにひっそり生きている女の存在にぶち当たる。名前をいくつも使い分けている翳のある女。友人の前園芳香は、ストーカー被害者ではないかと推理する。彼女の本当の名前を知り、彼女に接するうちに彼女に惹かれてしまう邦彦なのだが・・・

 うーん、こういうテーマを持ってこられましたかー。やられた。絆について文中で何度も触れられていますが、血は水より濃いのか、薄いのか。考え込んでしまいました。ただ、やはり人間性がどこまでも顔を出すものなのではないかと。自分中心にしか考えられない人間というものの醜さを痛感しました。
 特に美郷。いい年をしたオバハンがなにやっとんやー、と本気で憐れんでしまうほどの克明な描写(苦笑)。義明に関しては認めるとか認めないではなく、ありえることだと。このパターンは古来より表に出にくいだけでたっくさんあるのでは、と暗澹たる思い。
 私的にストーリーを追いつつ、エンディングを想像するのですが、ヒロインの自作自演でオチるのでは?と。大きく外してしまいました。

 いくら心で打ち消してみても、自分の皮膚感覚が納得しない。

『禁断』 2004.12.10. 明野照葉 小学館



2004年11月17日(水) 『虹果て村の秘密』 有栖川有栖

 推理作家にどうしてもなりたい上月秀介12歳は、刑事になりたくてしょうがない同級生の二宮優希の母親の別荘(笑)へ夏休みに招待される。優希の母親は秀介が大好きな作家さんだった。ちなみに秀介の父親は刑事だった(笑)。ふたりの行き先は虹果て村。虹にまつわる七つの伝説を持つ村は、高速道路誘致に対する意見がまっぷたつに割れていた。そして発生する密室殺人にふたりは・・・

 自分が子供だった時、なりたかったものは古い外国の映画で観たタイピストでした。あの紙が横に移動したら手動で戻す古い奴。勿論、英字の! 映画の中の外人の秘書のような女性がカッコよく見えたんですよー。なつかしいなぁ。中学生になって映画のほかに本も読むようになり、次の夢がやっぱり作家さんだった。あぁ、なんて純粋な夢だった事か。
 そんな昔を思い出させてくれるミステリー・ランドの有栖川さんの作品も、子供の頃に読めていたら幸せだろうに、と思いました。このシリーズは子供に読ませてあげたいことは当然だし、おとなが読んでも十分に楽しめる優れものであります。有栖川さんのこの物語はとっても評判が良いみたい。主人公のふたりが生き生きしていて可愛らしいしなー。
 
 人が読んでいる途中の推理小説の結果をばらすのは最大のマナー違反だ

『虹果て村の秘密』 2003.10.29. 有栖川有栖 講談社



2004年11月16日(火) 漫画『築地魚河岸三代目12 サワラぬ神に・・・』 鍋島雅治(作)&はしもとみつお(画)

 鰆のお刺身、岡山ではものすごく愛されているシロモノです。魚屋の娘で元魚屋の嫁だった私は鰆のお刺身をこさえてました。あの美しい身を刺身で食べるのが岡山だけだと知り、本気で驚いてしまいます。星野仙一さんはサワラ大使ですし、ミスターサワラなる人(漫画にも登場)も実在しておられます。さすがに似ていて大笑いでした。この漫画でどうして岡山だけで鰆が食されていたのか、今更わかりました。なるほどなぁ。
 漫画にも描いてありますが、鰆は刺身か酢で〆て寿司に合います。あぁ、この文章を書いていて鰆を思い、涎がわいてきてしまうほど。岡山に友人が来た時に鰆を食べてもらうのですが、好評です。出来れば春おいでください。魚に春で鰆。春になにより美味しい鰆なのでありますv じゅるるるる。

 「サワラぬ神にたたりなし」ゆうてな・・・
 まるで魚の形をした神様じゃあ思うて・・・
 できるだけ触れんように揺らさんようにせにゃあいけん。
 サワラの事をよう知らん奴はつい魚だと思って
 扱ってしまうんじゃな。

漫画『築地魚河岸三代目12 サワラぬ神に・・・』 2004.12.1. 鍋島雅治(作)&はしもとみつお(画) ビッグ・コミックス



2004年11月15日(月) 『ファントムの夜明け』 浦賀和宏

 真美は、一年ぶりに別れた恋人・健吾の部屋を訪ねる。一年前のあの哀しい出来事ゆえに別れたふたり。健吾は部屋にはいなかった。どうやら行方不明になっているらしい。健吾のことを一日たりとも忘れた事の無かった真美は健吾を捜そうとする。しかし、健吾には新しい恋人が? 苦しみ悲しみ真美は眠っていた力を目覚めさせ、驚愕の真実に突き当たる・・・

 すごーい。こんなにも超好みの作品を読み逃していたなんて私の馬鹿馬鹿馬鹿っ! 真美が目覚める力はサイコメトラー。死者の慟哭にシンクロし、死に追いやった者を倒そうと頑張る姿が痛々しい。はたから見たら真美って危ない奴に近いだろうけど。残酷で哀しいホラーです。ミステリじゃないよね(疑問)。やはり超能力者モノって悲哀あふれるんだなぁ。せつなかった。健吾のバカヤロウ〜。

 誰にも、他人の心の中だけは覗けない。だから、遠慮や自制をする必要なんか、どこにもないのだ。

『ファントムの夜明け』 2002.12.10. 浦賀和宏 幻冬舎



2004年11月14日(日) 『四日間の奇蹟』 浅倉卓弥

 如月敬輔は留学先のオーストリアで左手薬指の第一関節から先を失った。偶然、日本人の親子連れが巻き込まれた事件で犯人に立ち向かった挙句のこと。有望視されていた敬輔のピアニストとしての道は閉ざされてしまった・・・。その時に両親は殺され、残された15歳の少女・千織は知的障害者。皮肉な事に一度聞いた旋律を忠実に記憶できるサヴァン症候群。如月は千織にピアノを教え、さまざまな場所で演奏し、慰問する。そして山奥の診療所で起こった奇蹟とは・・・

 第1回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞金賞受賞作で東野圭吾さんの名作に似ていると聞いていたため、なんとなく読みそびれていました。いや、でも、しかし読んで良かった。泣けました。
 ただこれは決してミステリーではありません。心に優しいファンタジーと言う感じだかと。誰かの何かに似た設定ということもタイシテ気にならない文章の良さがありました。奇蹟はきっとほんのわずかの時間だからこそ奇蹟なんだろうなぁ。しみじみ。

 思い残すことは、ないってこと?
 そうではないわ。たぶんそんな人、どこにもいないと思う。未練なんていっぱいあるわよ。

『四日間の奇蹟』 2003.1.22. 浅倉卓弥 宝島社



2004年11月13日(土) 『さよなら、スナフキン』 山崎マキコ

 大瀬亜紀は三浪の女。大学の農学部に通っているが、どこにも自分の居場所をみつけられないで生きている。亜紀の部屋に転がり込んでいたクラスメイトの川本マユミが出て行って、引きこもりがちになる。これではイケナイと己を叱咤激励し、アルバイトの面接に行く。そこの編集プロダクションのシャチョーに気に入られ、めでたく採用。はじめて自分の居場所を見つけた気分で、亜紀はシャチョーの求める事を必死でこなそうとするのだが・・・

 スナフキンに会えなかったら、わたしがスナフキンになればいい・・・「ムーミン」に登場するスナフキンはカッコよさの象徴ですよね。一人で凛と立ち、人を救う大きさ温かさを持つ。そんなスナフキンを求め続けた亜紀が出会ったシャチョーは決してスナフキンじゃない。
 この物語を読んでいて、自分の中に亜紀もいるし、シャチョーもいるよなぁと感じてしまい、のめりこんで読みました。不器用ながら必死に愛を求めて尽くす亜紀の姿は好き。とってもカッコ悪いけれど・・・。うん、でもとても好き。

 世間の労働というものに対する感覚と、わたしの労働に対する感覚には、なんとなく温度差があるなというのは、まえから薄々感じていたのだった。世間の人は、なんでかしらん、仕事に冷めていて、しかもとても愚痴っぽく、やたらと自分の報酬が労働に対して多いとか少ないとか、取り沙汰するようだ。

『さよなら、スナフキン』 2003.7.25. 山崎マキコ 新潮社



2004年11月12日(金) 『4人の食卓』 大石圭

 結婚を控えたジョンウォンは、地下鉄で母親に毒殺されたふたりの少女を見過ごしてしまう。婚約者のヒウンが買ってきた4人がけのテーブル。ジョンウォンはそこにあのふたりの少女が腰掛けているのを見てしまう。そして出逢うべくしてめぐり合ってしまった運命の女ヨン。ジョンウォンは彼女の特別な力によって封印してきた自分の過去を見てしまうのだが・・・。
 
 グチャッ。この擬態音がこのノベライズを表していると言っても過言ではないと思う。あと似たような高層アパート群かな。「知らずにすむならば、そのまま知らずにやりすごせていれば・・・」そんな繰り言が聞こえてきそうな哀しい宿命の物語。韓国ホラーって日本のホラーと感性が近い気がする。日本で映像化した方がよりグロイ気がするけど。

 だから、忘れてしまったということは・・・・・それはその人にとって、思い出したくない辛い思い出に違いないのだ。辛いから、人はそれを忘れてしまうことで、心が壊れるのを防いでいるのだ。

『4人の食卓』 2004.5.15. 大石圭 日本テレビ



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