酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2005年09月12日(月) |
『ホームタウン』 小路幸也 |
柾人は北海道の老舗百貨店<三国屋>の顧客管理部特別室に勤務する27歳。部長である。仕事の内容は・・・デパートの探偵。両親が起こした事件が心の傷となり、妹・木実とも離れて暮らしている。その木実から結婚を決意したと手紙が届き、事件発生。三国屋社員の木実の婚約者と木実が相次いで失踪したのだ。柾人はふたりを探すべく行動を起こすのだが・・・。
小路幸也さんは、今トッテモ好きな作家さんのおひとり。読むたびにどんどん好きになる昇り龍的存在。登場人物の痛みや温かさとタイトルがキッチリ合っていて泣かされてしまうんですよね。今回の登場人物も好きな人だらけ。柾人さんが下宿している家のおばあさんナンテ最高にカッコいい。そんなふうに年を重ねられたら幸せだろうなぁ。柾人と木実の両親の事件が物語の根底に流れていて、そこは悲しく、人は脆くて弱いものだなぁとしんみりさせられた。それさえも最後にひっくり返す当たり、うまい。綺麗事過ぎると言う感想を時々目にするケレドモ、いいじゃない。こんな世の中だからこそ、こんな暖かい人たちの物語で。オススメですv
「その間に、溜まっているものは、少しずつでもいいから吐き出しておきなさい。ぜーんぶ私が墓まで持っていってあげるから」
『ホームタウン』 2005.8.25. 小路幸也 幻冬舎
| 2005年09月11日(日) |
『四月になれば彼女は』 川上健一 |
野球で生きていこうと思っていた少年が、肩を壊し夢にやぶれる。そしてそのまま何をしていいのか、何をしたいのかわからないままに高校卒業の時期に。親友や喧嘩相手や初恋の少女と触れ合いながら、少年は少年から一歩大人になろうとする・・・
東北を舞台にしたアメリカン・グラフティですね。大好きな映画のひとつのアメリカン・グラフティ。大人になる前の日まで少年は少年で。なんだかいいんですよね、心にぐっとくるv 今はもそのすごく幼い時期に大人になってしまう子が多いけれど、生き急ぐことはないのに、と思うのです。高校生くらいまで悩んで馬鹿やって、そして青春の日々に別れを告げればいい。それが若者の特権なんだからさ。
『四月になれば彼女は』 2005.7.25. 川上健一 実業之日本社
| 2005年09月10日(土) |
『その日のまえに』 重松清 |
「その日」、自分がこの世を去る「その日」、大切な人がこの世から消える「その日」。自分が愛する人が大切な人が思いがけず早くこの世界から去ってしまう。それは決して特定の誰かに起こることでなく、誰にも起こりうる哀しいこと。「その日」をどう迎えるか、「その日」のあとにどう生きるか。そういうことを切々と教えてくれます。 私が一番好きだなって思ったのは「ヒア・カムズ・ザ・サン」。母がまだまだ頼りない息子を残して先に逝かなければならなくなった物語。先に逝く人も苦しいけれど、頼りにしていた母親を失うことに呆然とする息子の動揺や成長が微笑ましい。人は誰かが死のうとも、残された者は生きていかなければならないのだから。
やはり恋旦那を若い時期に亡くした人間としては、こういう物語は激しく心に響きます。でも私も「その日のあとで」いろんな成長をした気がします。生きるということは死と隣り合わせ。自分の死が訪れる「その日」まで、周りに死が訪れようとも自分の「その日」を早めちゃいけない。生きるということはそういうこと。そんなふうに思って生きています。
泣くなよ、と自分に言い聞かせた。こんなところで泣くのは、迷子になった子どもだけだ。俺はもう子どもじゃない。わんわん泣いておとなに助けてもらうなんて、できない。大事な人とはぐれてしまったら、自分の足で探しに行くしかないのだ。
『その日のまえに』 2005.8.10. 重松清 文藝春秋
| 2005年09月09日(金) |
『ロマンティスト狂い咲き』 小川勝己 |
望月は、喫茶店で編集者・内海と打ち合わせ。自信のあったプロットを却下され意気消沈で妄想の世界へ逃げ込む。望月はここのウエイトレスが気に入っていて彼女にあれこれ奉仕させるための物語を考えたりする。そんな妄想を壊す内海の言葉、そのウエイトレスを「うちのカミさんに似ている」・・・と。そう内海の妻であり、他社の編集者である伏見裕子こそ、望月の本当の妄想の相手だった。
勝手な感覚なのですが、タイトルが『ロマンティスト狂い咲き』より『ロマンティック狂い咲き』の方がよかったな。まぁ、単語の使用法がどうこう言われるとマズイのでしょうけど、なんかその方がますます内容に合った狂いっぷりのような気がして。(どうも歌のタイトルらしいのですが、残念ながらその歌を知らない) 主人公の売れない作家が妄想の挙句、トンデモナイ行動に出てしまう破滅型ストーリー。こういう自分で自分を窮地に追い込んでしまう人間の物語って意外と多いですよね。破滅願望ってあるのかもしれないなぁ。
『ロマンティスト狂い咲き』 2005.7.31. 小川勝己 早川書房
| 2005年09月08日(木) |
『1303号室』 大石圭 |
13階建てのマンション最上階にある2DKの1303号室。駅から近く、1階にはコンビニがある。海が見える最高のロケーションなのに、この部屋の家賃は格安。次々と喜んで入居する若い女たち。しかし、彼女達は数日のうちにベランダから落ちてぐちゃぐちゃになって死んでいくのだった・・・
この本はなにが怖いかと言うと、表紙の写真が怖すぎです(苦笑)。これって呪怨のアノ女優さんかしら? この表紙を見て「読もうっ!」と手にした兵さんたちに乾杯v 入居すると飛び降り自殺をする部屋とその隣の部屋の人形のような美少女。この組み合わせはいいです。もう少し美少女についても語って欲しかったかもしれない。それくらい美少女の存在が大きかった。 内容としては、いかがなものでしょうか。部屋にとりつく女の怨念と言う当たり、名作『呪怨』と同じ設定であるような気も。特定の人間への怨みではなく、たまたまそこへ入居した人間へのとばっちりってところも同じだし。 ただ、3パターンの母と娘の関係には考えさせられました。娘の稼ぎに依存する母、美しい娘を自分の人形として扱う母、性格がそりあわず娘を厭う母。母親と娘という関係の複雑さ、そこから生まれる悲劇ってカタチはうまかったかもしれません。 しかし、それだけ店の前に飛び降り死者が落ちてきて、ぐちゃぐちゃに潰れちゃうことが続出すると、1階のコンビにって閉めないものかしら? そこが一番謎と言うか、ホラーだと感じたのでありました。そんなコンビニで買い物なんてできないー。
『1303号室』 2005.8.20. 大石圭 河出書房新書
| 2005年09月07日(水) |
『写楽・考 蓮丈那智フィールドファイル�掘戞)命更� |
式直男の『仮想民俗学序説』と言う異端の論文の出所《式家文書》を巡り、那智や三國が巻き込まれた殺人事件。式直男の正体と殺人事件の背後に浮かび上がる二人の偉大な・・・
蓮丈那智フィールドファイルも�靴砲覆蠅泙靴拭�今回のフィールドワークは4つ。どのタイトルもシンプルで興味深いものですが、やはりタイトルともなった「写楽・考」がピカ一でした。冬狐堂もスペシャルゲストですしv 歴史というシロモノは、後付想像の産物でしかないのですよね。だから時の権力者によって改竄されている可能性も大きい。ただ歴史として認知しているものが絶対正解ではないのだよなぁ・・・と最近とくに思うのであります。今回の那智が関わったフィールドワークのラストもうまかったですね。「あっ」と言う感じ。タイトルは確かに(どうやら北森鴻さん自身もおっしゃっているようだケレドモ)ストレート過ぎると言うか、ネタバレ過ぎる気もしないではありませんが・・・。
「年寄りの戯言など放っておくがいいさ。どうせ彼らの命数など先が見えている」
『写楽・考 蓮丈那智フィールドファイル�掘戞�2005.8.20. 北森鴻 新潮社
| 2005年09月06日(火) |
『スイッチを押すとき』 山田悠介 |
若年齢層の自殺者が跡を絶たず、政府は青少年自殺抑制プロジェクトを立ち上げた。青少年の深層心理解明のため、無作為に選ばれた子供を高ストレス環境に置き、その精神構造を解明する目的として。選ばれた子供達は赤いスイッチを渡される。苦しまず一瞬にして死ぬ事ができるスイッチ。子供達はいったいどういう精神状態でスイッチを押すのか・・・
設定はすごくいいのに、軽く読み流せてしまうのは何故なのかしら。展開や落ちも早い時点で想像がついてしまうし、なんだかもったいないなぁ。素材を活かしきれていない感じとでも申しましょうか。 ただ、内容はヘビィであるケレドモ、意外にさらっと読めると言う点が逆に受けていると言えるのかも知れませんね。あ、やはりゲーム的な感じを受けます。血や肉がついてきたら、この作家さんスゴイかもしれない。
『スイッチを押すとき』 2005.8.15. 山田悠介 文芸社
| 2005年09月04日(日) |
『鳴釜奇談』 椹野道流 |
森と敏生のもとに父トーマスからと思われる「十牛図」の第二図が舞い込んできた。森には辛く哀しい過去を思い出させる図に導かれ、二人は岡山県へ赴く事になる。二人が手掛かりとした粋呑(すいとん)という岡山の妖怪をモチーフにした木彫りに秘められていた哀しい物語とは・・・
森さんと敏生が岡山にやって来た! この嬉しい事実を幸運にも椹野道流さんとお目にかかり、知ることが出来、感動していた6月。そしてなんと言う幸運の流れか、椹野道流さんから登場人物の岡山弁変換を手伝って欲しいという御申し出をいただいたのです。もうファン冥利に尽きますウルウルと喜んで御手伝いさせていただきました。 椹野道流さんからいただいたのは抜き出した岡山の人間の台詞でした。それを岡山弁に変換しながら、森さんや敏生はどんな岡山の旅をしているのだろうと想像し、なんとも贅沢で幸せな時間を体験させていただいたのですよ。あとがきでは椹野道流さんから謝辞をいただいていて恐縮しきりにございます。こちらこそ貴重な体験をさせていただいてありがとうございました。 さてさて不気味なパパ・トーマスですが(笑)、私はトッテモ好きな方です。大好きな河合さんと対照的でいいのですよね。森さんと敏生のふたりであれば、パパ・トーマスに立ち向かう事が出来ますねっv
『鳴釜奇談』 2005.9.5. 椹野道流 講談社X文庫
| 2005年09月01日(木) |
『福音の少年』 あさのあつこ |
永見秋帆は図書館で北畠藍子にキスをした。性的な興奮ではない奇妙な感情に支配されそうになった瞬間、確信犯的に闖入してきた傍観者、柏木陽。藍子の幼馴染だった。独特の美しい声を持つ陽に秋帆は惹かれていた。秋帆と藍子と陽。三人の奇妙なバランスは、藍子が死んでしまったことから大きく変わっていく・・・
・・・むずかしいなぁ。こんな↑ことじゃないのですよ。この妖しい物語は。高校生の男の子ふたりがメインのようであって、実は藍子が本当の主人公だった気がします。ふたりの少年は藍子に振り回されていただけじゃないかしら。 高校生くらいの女の子は、既に大人顔負けの子もいると思います。表面は爽やかで可愛らしい女子高生でありながら、裏の顔を持つ・・・昔も今もそういうことは変わらないか〜。 物語は意外な展開を見せますし、けっこう新鮮に驚きながら読ませていただきました。あさのあつこさんってこういうものも書かれるのかーと感嘆しつつ。しかしよっぽど少年ズキさんなのだなぁ(笑)v
頭では理解できても、心が赦さない。心の赦さない罪はやっかいだ。
『福音の少年』 2005.7.25. あさのあつこ 角川書店
| 2005年08月30日(火) |
『東京DOLL』 石田衣良 |
MG(マスター・オブ・ゲーム)と呼ばれる相楽は、コンビニで次のゲームに登場する妖精のイメージぴったりの女の子を見つける。彼女の名前はヨリ。背中に翼のタトゥを背負う、不思議な力のある子だった。MGはヨリと出逢ったことで人生の新しい局面を迎えることとなる・・・
石田衣良さんと言えば、『池袋ウエストゲートパーク』、そう思われることに御本人はどう感じていらっしゃるのだろう?と思ったけれど、コメンテーターなどでテレビ出演している様子を拝見するに、そう考えてらっしゃらないのかしら?? 今回はちょっと不思議な恋愛小説。さらりと読めるけれど、だからなになのかしら、と言うところ。厳しいですね。あまりにも大きなヒットを出しちゃうと、それを乗り越えることがいかに大変かと言う証ですねー。可もなく不可もなく。
『東京DOLL』 2005.7.28. 石田衣良 講談社
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