酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年05月30日(火) 『密室の鎮魂歌』 岸田るり子

 麻美は友人の由加と共に新城麗子の展覧会にやって来た。美大時代、美しかった麗子は37歳の今も変わらず美しい。会場で美大時代の友人・一条哲に再会。彼は絵をあきらめて寺町でイタリア料理店を営んでいる。一条から麗子の双子の息子を紹介されている時に由加が【汝、レクイエムを聴け】という絵の前で悲鳴をあげ白目をむいて倒れそうになる。由加は作者の麗子に「夫を返せ!」とわめくのだが・・・!?

 第14回鮎川哲也賞受賞作品です。この岸田るり子さんは只今マイブームなのです。京都を舞台にしているところが魅力的だし、事件の妖しさもトッテモ好み。ただ読んでいて事件の核は見えてきて、その核って岸田さんの好みのテーマなのかしらと想像しているところです。妖しい事件の背景に蠢く人間達の真実、いいですねぇ。惚れ惚れ。
 エキセントリックな麗子と言う人物は美しいらしいのだケレドモ、ちっとも魅力を感じない。それは岸田さんが設定した麗子の人としての魅力の無さ、底の浅さがキチンと文面から伝わってきたからだと思います。主人公の麻美の人の良さや生活の苦しさもしっかりと伝わってきますし、うまいものだなぁと思います。麗子の魅力の無さから痛感する事は言葉がその人を写す鏡であると言うこと。なにか悪いことをしでかした時の反応や発する言葉が如実にその人物を表します。温かさや率直さや潔さや・・・そういうものを持たない人は私はいやだなぁ。

 そういう何げない麗子の言葉遣いに人間の奥行きの浅さを感じるのは麻美だけなのだろうか。

『密室の鎮魂歌』 2004.10.22. 岸田るり子 東京創元社



2006年05月29日(月) 『パズル・パレス』 ダン・ブラウン

 テロ対策としてあらゆる通信を傍受&解読できるNSAのコンピューター《トランスレータ》は国家機密だった。一般市民の通信も監視してしまうことに疑問を感じた元・暗号解読員がトランスレータに壮大な罠を仕掛けてくる。それが成功するとアメリカはとんでもない事態になってしまう・・・

 今、世界中で最も注目されている作家ダン・ブラウンの10年前の処女作です。パソコンについて詳しくないせいなのか、10年前のコンピューター事情でも色褪せることなく楽しんで読めました。むしろ私的には10年前でもなかなか難しい世界だったくらいです(苦笑)。ダン・ブラウンがすごいなぁと感じるのはフィクションだろうけれども、そのフィクションの中にかなりのパーセンテージで真実が含まれているのではないのか?と思わせるところだと思います。この物語に登場するスーパーコンピューターの存在もひょっとしたらアメリカが保持しているんじゃなかろうか。テロ防止のために一般市民のプライベートまで丸裸、それってどちらをどう重視すべきなのでしょうね。なんだか難しい問題すぎるなぁと思いました。10年前の物語なのに。今はもっとスゴイことに・・・? 怖すぎます。

『パズル・パレス』 2006.4.5. ダン・ブラウン 角川書店



2006年05月28日(日) 『SWITCH』 さとうさくら

 苫子は26歳、フリーターで処女。有能な人間であるにも関わらず、うまく人と接する事ができず、勤め先のファミレスをいきなり解雇されてしまう。ひとりで黙々と働きたいと願い、清掃作業員となるも指導係りのオバちゃんに振り回される。そして隠れ家みないな店を見つけ、開店していようがいまいが店に入っていく客となり、新しい出会いをする・・・

 ああ、こういう<生きづらい>タイプの人間が必死で生きる様ってのは読んでいて胸に迫り来るものがあります。人との付き合いについてあれこれ考えることが多いため、頷きながら反発しながら読みました。なかなか好みの物語です。この物語の中で自分の立場を利用して女に手を出そうとする輩が登場してきて本気で腹が立ちました。長いこと生きてきて、それなりに社会に出てきて、いるんですよね。こういうエロきもい奴が!(激怒) 本人はナンダカンダ言い訳をするけれども、仕事を離れてプライベートに関わろうとする男はろくなもんじゃねぇxと思いますね。ごく最近もそういうエロきもい男にいやな思いをさせられました。思い違いも&思い上がりも甚だしい。でもまぁあんな人だとそうでもしないと駄目なのだろうと思えて気の毒でもあり。男と女は利害関係なく正々堂々といかなきゃツマラナイ。

 わかってほしいことは何ひとつ理解されないのに、やってしまったことは、安易に本質として見られてしまう。言い訳をするほど嘘くさくなるが、黙っていれば誤解される。自分の言動にいちいち説明や言い訳を要する、人の遠さが疎ましかった。

『SWITCH』 2006.5.8. さとうさくら 宝島社



2006年05月27日(土) 『東京バンドワゴン』 小路幸也

 東京の下町の一角に築七十年になる今にも崩れ落ちそうな日本家屋古本屋<東京バンドワゴン>がある。玄関を真ん中に左側が古本屋、右側がカフェ。店主は三代目の堀田勘一。勘一の息子・我南人(がなと)60歳は「伝説のロッカー」と呼ばれる金髪で粋なオトコ。その息子がフリーターの紺。娘でシングルマザーの藍子。紺と藍子の異母兄弟の青。紺の妻の元スッチーの亜美。藍子の娘の花陽と紺の息子の研人。そして彼らを見守る幽霊の堀田サチは勘一の妻。そんな大家族の周りで起こる様々な事件と事件の背後に見え隠れしてくる人間模様とは・・・

 アハハ。笑っちゃう。登場人物を書き出すだけで大変なのですもの。大好きな小路幸也さんが古本屋さんを舞台に心温まるお話をプレゼントしてくださいました。小路幸也さんの物語はどうしてこんなにも心に温かくフィットするのかしら。やはりお人柄が投影されているのでしょう。絶対的に心に優しい温かい物語りというのは本当に魅力的です。これだけ登場人物が多いと贔屓のキャラも出来ちゃうと思うのですケレドモ、私のお気に入りは「伝説のロッカー」我南人さんv こんな人がいたらファンになっちゃう。いいなぁ。傍迷惑に自然体で(笑)おおらかで優しくて。こういう生き方ができたら最高なんだけど・・・。

 憎んでいたって何も始まらないんだよね。憎しみからは何も生まれないのさぁ。ただただその感情が続いていくだけ。暗いねぇ。暗いよ。未来は明るい方がいいよ。うん、明るい方がいい。楽しくなることを考えていく方がずっといいんだよねぇ。過去に何があってもさ。そう思わない?

『東京バンドワゴン』 2006.4.30. 小路幸也 集英社



2006年05月26日(金) 『眠れぬ真珠』 石田衣良

 45歳・独身の咲世子はプロの作家(銅版画家)。 厨子に暮らし、犬と気ままに生きていた。付き合っている男は妻子もち。体の相性はいいが、なかなかやんちゃな問題児。咲世子の他にうんと年下の愛人を持っていて、その女が咲世子や自分の妻に悪意の刃を向け始めてしまう。咲世子は男と別れ、十七も年下の男に激しい恋をするのだが・・・

 うーぬぅ・・・若さを失った女が年下の男に恋をする。そういうドラマを最近よく目にしますケレドモ、個人的には違和感だらけと申しましょうか、美しくないなぁと思ってしまいます。まぁ、美しい黒木瞳さんと岡田准一クンのラブストーリーは演じるふたりの美しさで見せてくれましたが。恋愛なんてのはホント個人の自由、勝手なんでやりたきゃやってくれーと言う感じですよね。でもどうしたってバランス感覚とかってあるのじゃないかと思うのですね。釣り合いって奴かしら。まぁそれでもどうしても恋愛は個人の自由なんで。
 石田衣良さんを敬遠していましたが、この物語は面白かったです。45歳の更年期障害の女性が17も年下の魅力的な男と激しい恋に落ちるナンテ夢物語だなぁとは思いましたが、かなりエロティックで、そういう描写はウンウンと力がはいってしまいました(笑)。年下の男と恋愛をしたいとは思わないけれども女の性を現役であり続けたいとは思いますネェ。快楽は大切v うふ。

「ねえ、いい。咲世ちゃんは十分に若い。わたしの年になったら、きっと後悔するよ。あなたは今日を大事になさい。今日は二度とないし、明日よりは必ず一日若いんだから。恋はここの張りじゃなく・・・・・・」
 中原町枝は頬にあてた手を、ピンクのスエットの胸に移した。
「・・・・・・心の張りでするものよ」

『眠れぬ真珠』 2006.4.30. 石田衣良 新潮社



2006年05月25日(木) 『出口のない部屋』 岸田るり子

 私は編集長に無理を言って担当でもないホラー作家の原稿を取りに行く。彼女は美貌のホラー作家として有名だったが、彼女の顔を見た時にその美は壊れていると感じる。そして彼女は私に気付かない・・・。彼女から渡された原稿『出口のない部屋』、それはふたりの女とひとりの男が出口のない部屋に閉じ込められるという設定だった。三人はどうしてこの部屋に集められたのか、三人に接点はあるのだろうか。

 これはものすごく面白かったです。イントロの編集者と美貌のホラー作家との再会(作家はハジメは気付かない)のシーンからぐいぐいと惹きつけられました。このふたりの関係は何か? そしてホラー作家の原稿の三人の繋がりは何か? 現実と虚構がリンクする時・・・って展開がまぁアナタうまいったらありゃしない! 半分を過ぎた辺りから関係や繋がりや設定は読みきれましたケレドモ、それでも素直にひたすら面白いと思いつつ頁をめくりました。こういう物語を読ませてもらえるナンテ幸せだったなぁ。読書をヤメラレナイと思わせる一冊でありました。この作家さんは要チェック!

 もっとも触れられたくない部分だというのに、なんのデリカシーもない。

『出口のない部屋』 2006.4.25. 岸田るり子 東京創元社



2006年05月24日(水) 映画『ダ・ヴィンチ・コード』

原作か映画か…私は原作を支持します(^-^)v トム・ハンクスは良かったしルーブルをはじめとする絵画や街の景色は素晴らしかったケレドモ…あの原作を映像にしようなんて不可能なことですね。あまりにも原作がよかったのでかなり辛口ではあります。原作を読んでいないとむずかしすぎないかしら。



2006年05月23日(火) 『エンジェル・ウィスパー』 山科千晶

 弓削鷹次の兄・森道は2年前に事故死した。見ず知らずの女性を助けた結果だったため、鷹次たちはマスコミに追われた。その後、山梨と長野の県境の遠見に転居。東京に未練は無かった。そして今度ハ弟の純也が消えた。もう兄弟を失いたくない純也を求めて奔走する鷹次が遭遇する意外な不思議な人々とは・・・?

 分厚い本を手にする時、軽く興奮します。果たしてコノ分厚さを読みきるだけの魅力がコノ中に詰まっているのだろうか、と。だから合わない時にはさっさと手を引きます。合わないものはどうしたって合わないし、時間がもったいないから。もしかしたらまたいつか遠い未来で合うこともあるかもしれないと思いながら。なので今回のようにドキドキ感を最後まで継続させてくれる物語って偉大。SFミステリーになるのかしら。若さが清々しくて切なくて真っ直ぐで胸がキュンキュンしました。若い人たちに是非読んで欲しいなぁ。

『エンジェル・ウィスパー』 2006.4.30. 山科千晶 メディアワークス



2006年05月22日(月) 『カンニング少女』 黒田研二

 天童玲美は姉の事故死の真相を探るために、自分には難しい大学を目指す。悪いことと知りながら時間の無い玲美は成績抜群の天才少女・愛香、理系に強いオタク・隼人、何故だか参謀に入ってきた杜夫の三人とカンニングをすることに。おとなしく愛らしい玲美がハラハラドキドキのハチャメチャなカンニングを決行するのだが・・・!?

 クロケンさんの描いた4人の少年少女たちがトテモトテモ可愛らしい。こんなハイテクなカンニングは無理だろーxと笑いながら読んじゃいました。うふふ。少しだけ心に痛い現実もきっと彼女達は受け入れることができるはずだよね。

 君みたいに強い人間ばかりでこの世界は構成されているわけじゃない。

『カンニング少女』 2006.4.25. 黒田研二 文藝春秋



2006年05月21日(日) 『すべては海になる』 山田あかね

 夏樹は書店でアルバイトをしている。10年前17歳だった時、いつも淋しくて、いつもなにか足りなくて・・・その想いを埋めるかのように出会う人と関係を持っていた。中にはお金をくれる人もいた。27歳になった今も二股をかけている。でも心の隙間は埋まらない。そんな時、目の前で中年女性が万引き事件を引き起こし、その女性の息子と知り合う。彼は17歳の高校生・光治。彼は壊れかけている父と母の狭間で必死に自分を保つようにして生きていた。ふたりは交流していくうちに夏樹も光治もそれぞれの何かの欠片のようなものを・・・・

 この小説を読もうと思ったのは、�〔椡�しをした女性の絵�◆屬垢戮討漏い砲覆襦廚噺世Ε織ぅ肇襪量ノ廊�タイトルの文字が本に合っている・・・要するに表紙の魅力に惹かれました。内容も山田あかねさんのことも全く知識なく読んでみました。とても不思議なトーンの物語で静かなんだけど壊れていて痛くて淋しくて。でも主人公と少年が出会って色合いがどんどん変化していきました。だからと言って結論も解決も無いのですケレドモ、ふたりが光を見出したように思います。こういう物語を純愛と呼ぶのか否か私にはわからない。ただ出会えてよかったね、とそんなふうに清々しく温かく読み終えることができてなんだかトテモ嬉しかったです。

「ここにじっとしていれば、いずれ僕らは海になる」
「ここじゃなくても、たくさん時間が過ぎれば、誰だって消えるよ」

『すべては海になる』 2005.12.20. 山田あかね 小学館



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