酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年06月20日(火) 『オブリビオン 〜忘却』 大石直紀

 梓は六歳の時に生まれた・・・六歳以前の記憶が無いのだ。六歳から人生をはじめ、八年が経ち中学生に成長。しかし、梓が抱える違和感は家族(父・母・兄)との写真が一枚もないことに気付き確かなものとなる。そこに渋井というジャーナリストが接触してきた。梓の本当の母は父に殺され、逃亡していた。ショックで記憶を失った梓を育ててくれたのは母の姉夫婦だった。逃げ続ける父と梓を繋ぐものはバンドネオンという楽器だった。切なく心に響くアルゼンチン・タンゴ、それは逃亡する父の郷愁。梓が辿り着く事件の真相に隠されていた悲しい真実とは・・・!?

 読みやすいだけに筋も真相も早い段階で読めてしまいました。ドラマの原作っぽい感じで映像が浮かびやすい物語でした。たぶん映像化されるのではないかしら。なかなか旅愁あふるる場面も多いし、なによりアルゼンチン・タンゴを演奏するシーンを見てみたいと思いました。すごく素敵だろうなぁ。真実を知りたいと思う気持ちはよくわかりますが、知らずにいたほうがいいこともあるものだなぁと思いますが・・・知らずにいられないものだわなぁ。そこがドラマを作り出すのね。

『オブリビオン 〜忘却』 2006.5.25. 大石直紀 角川書店



2006年06月19日(月) 『墜落』 東直己

 畝原は、依頼された少女を探し出す。依頼人は少女の義理の母。少女は義母を毛嫌いし、自分が援助交際していたことが父親に知られたら死ぬと畝原にわめく。一件落着と思っていたところへ少女の近隣から依頼が舞い込む。飼い猫が首を切られて殺され、怪文書が投げ込まれていたと言うのだ。その家には北海道で有名な詩人が住んでいる。依頼を受け、動き始めた矢先に殺人事件が起こり・・・!?

 東直己さんの畝原探偵シリーズの新作です。ヘビイな体験を重ねる畝原探偵がまたまた陰惨な事件に巻き込まれてしまいます。今回の事件の発端となる少女が忌まわしくて・・・吐き気がしてしまいました。こういう感覚的にズレて摩耗してしまった少女達はどんな女性になっていくのだろうか。自分の性を切り売りして平気だなんてどうにもこうにも気が滅入って仕方なかったです。また畝原にとっての義理の娘の真由が畝原を手伝ってインターネットでの掲示板の会話を分析し、畝原にレポートするのですが、なんとまぁ垂れ流しの会話であることかと暗澹たる思いになりましたね。匿名で攻撃的で悪意だらけ。いったいなにが楽しいのだろう。剥き出しの悪意に平気で接する事ができる感性がもはや私には解読不能。畝原も時代とのギャップを感じた事でしょう。よく「魔が差す」と言いますが、ほんの一瞬の魔で人生が崩れてしまうこともあって・・・なんともxxx このシリーズは本当に大好きなのですケレドモ重くて痛くて辛かったです。ほんの少しの希望の光が救いと言えば救いでした・・・。なんだかやりきれないなぁ。

「人間は、とんでもない出来事を引き起こす力も持っているんだよ」

『墜落』 2006.6.8. 東直己 角川春樹事務所



2006年06月18日(日) 『モドキ』 ほしおさなえ

 自分のことを愛して欲しい、わかって欲しい・・・そう渇望する主婦がAIWというサイトに辿り着く。そのサイトには小さい女が色んな目に遭っていた。そしてその女は子役時代の自分の顔に瓜二つだった・・・!? サイトにはまり、写真にあわせて物語を創作し、サイトオーナーに送信。夢中になれるものがやっとやっと見つかった。このサイトオーナーなら私のことをわかってくれる。きっときっとわかってくれるはず・・・

 いやぁ、ものすごい展開に驚きました。これってSFホラーになるのかしら。なにが怖いって小さな女にぺろりと舐められた女から小さな人間もどきが次々と生まれるところ。生理的に合う人合わない人っているだろうケレドモ、私的には大ビンゴでありました。なんと言うか・・・軋むような寂しさに足掻く人間の心の叫びが聞こえてくる感じでした。ものすごく恐ろしい物語なのでありました。ぞくぞく。

 それは結局、自分にも物語があるって思い込むための道具なのかもしれない。ここにいるのは、ほかのだれでもない自分だ。そんなバカみたいに小さいことを確認するための。
 数え切れないほどいる人間のなかで自分だけが特別なものになるためには、特別な欲望を持つしかない。それがどんなにくだらなかったとしても、それを持ち続けないかぎり、世界が自分が消えてしまう。

『モドキ』 2006.4.30. ほしおさなえ 角川書店



2006年06月17日(土) 映画『ファンシーダンス』

 美意識追求男・陽平は、10代目を継ぐべく寺へ修行に赴く。陽平の未練はシティライフと美女・真朱。たった一年の辛抱と割り切ってみた陽平だったが、なにかとお寺で騒動を巻き起こす。お坊さんになるためのアレコレの修行は厳しく禁欲的、そんな削ぎ落とされた毎日の中にぴて陽平はその生活ゆえの美しさを見出す。持ち前の負けん気を発揮して、どんどんお坊さんらしく成長して行く陽平だったが・・・!?

 『シコふんじゃった!』ではお相撲さん、『Shall we ダンス?』では社交ダンス・・・と一般ピープルがあまり知識の無い世界に踏み込んで、面白おかしくそして素晴らしい魅力を教えてくれる周防正行さんの映画監督デビュー作品(らしい)のですが、これがものすごーく面白い! 周防ファミリー勢揃い。コレが原点だったのですねぇ。すごいなぁ。本木雅弘が顔がいいだけのアイドルから俳優に転身できたのってコノ映画あってこそではないかしら。丸坊主に剃り落としてもカッコいい本木雅弘と大沢健、美男子はすごい。ふたりとも演技うまいし。周防作品の要とも言うべき竹中直人さんの怪演もさすが。あの独特のユニークな存在感ってどうやったら生まれてくるのかしら。陽平の恋人・真朱を演じる鈴木保奈美さんの輝くばかりの美しさには圧倒されてしまう。ちょっと生意気なアノ目つきはあれだけの美貌を持っていないと出来ない! 綺麗だ(溜息)。原作の漫画は読んでいないのですケレドモ、ちょっと読んでみたいと思います。縮小された世界に人間が集まって、権力争いも好き嫌いも当然あって、清らかだけではやっていけない坊主の世界。それでも超越したなにかが手に入る・・・のかもしれません(笑)。厳しい修行のソノ果てに・・・。



2006年06月16日(金) 『魔夢十夜』 小森健太朗

 慈久学院は、かつてはキリスト教のカトリック系ミッションスクールで全寮制の女子校だった。丹崎恵は2年生になる機に寮へ入り、文学部へ入部する。どうやら文学部には恵の好きなライトノベルの現役作家がいるらしいのだ。新しい生活に胸を膨らませる恵だったが、春休みに自殺した少女が文学部に在籍していたことから事件に巻き込まれて行く。謎の自殺、カルト的集まり、性儀式・・・そして第二、第三の死者が・・・!?

 文書や文体との相性というものをつくづく考えさせられた一冊でした。内容(設定)はものすごく好みなのに読み進めるテンポに乗り切れない。一生懸命読み進めないとダメな作品は面白い以前に疲れてしまいます。本当に内容はトッテモとっても好みなのになぁ・・・。残念。

 どのみち起こったことは消せません。逃げるわけにはいきませんから。

『魔夢十夜』 2006.5.30. 小森健太朗 原書房



2006年06月15日(木) ドラマ『トリック』

 マジシャン・山田奈緒子と物理学者・上田次郎が霊能者と名乗る人物達のトリックを次々と見破っていく感動の・・・いや、お笑いの物語である。ブフフ。
 
 ドラマ『トリック』をリアルタイムで見逃してきたのですケレドモ、昼に再放送をやってくれたおかげでシーズン1を見ることができました。奈緒子と上田の出会いが賞金欲しさの奈緒子の偽霊能者ぶりっこだったんだなぁ。宗教と霊能者が結びつくと言うのはありがちで、嘘もだましも世の中にはやりきれないほど横行していて、でも最後の最後に本当の霊能者は・・・という展開とオチはトッテモ面白かったです。
 しかし、このキャラクターたちのユニークさったらなんなんでしょ。ヒロインの山田奈緒子は美しいけれど天然ボケで貧乳。上田次郎は自分大好きな巨根童貞男。奈緒子の母は文字に力が宿る事を知る書道家。奈緒子と上田にやたら絡んでくることになる刑事の矢部はコテコテの大阪弁とカツラで強気に弱く、弱気に強い(笑)。この4人の強烈なキャラクターのぶつかり合いが混沌とした面白さを醸し出しています。登場人物それぞれが好き勝手に小ネタ満載で何度見ても笑えてしまう。
 その中でも群を抜いているのはカツラの矢部刑事の生瀬さん。この人はこういう役をやらせたら今や右に出るものがいないんじゃないかしら。実際リアルでも少々頭髪が危ういことをドラマであそこまで笑いにしてしまえるなんてすーごーいー。現在進行形のドラマ『トップキャスター』でもいい味だしてくれてます。こういう独特の脇キャラが生きてるドラマって成功するんですよね。さて次のシリーズもなんとか見なくては!



2006年06月14日(水) 『東京ボイス』 ヒキタクニオ

 バリーモントプロダクションの社長の針谷は三十年前にフラワーチルドレンというバンドで一世風靡した男だった。イケメンの吉本は、バリーモントでCDを出すも泣かず飛ばず。数年後、フリーランスとなった吉本はかろうじて音楽にしがみついていた。なので針谷からもらう仕事は貴重。ボイス・トレーニングをする吉本の元に様々な人間がやってくる。都会の雑踏の中で自分を必死で表現しようとしている人間達の息苦しいほどの喘ぎ、命の叫び。人生模様。

 これは予想以上に面白かったです。どうにかして音楽で生きて行きたい吉本自身も軸にした歌う人間達の苦しみや悲しみがスーッと心に馴染むように入り込んできました。音楽というものは人間にとって根源的に必要な要素なんだろうなぁナンテ思いましたね。歌うにしろ奏でるにしろ聞くにしろ・・・なくてはならない音たちだよなぁ。うんうん。吉本の元にボイトレに集まる人たちの歌いたい想いも人それぞれで妙に心に響きました。一番その歌が聞こえてきた気がするのはあるヤクザさんのクリスタルボイスでした。あれは・・・泣けるなぁ。また表紙の唇が歌っているようなのだケレドモなにやらエロチックで、内容にもずいぶんとセックスが生々しく描かれています。男と男のセックスの描写は興味深かった。絶対的に体験できないものだから想像するしかないもの。そういうふうに愛し合うんだなぁって。男と男もせつないわ。

「そんなんじゃないの。みんなに共通しているのは喘ぎってこと。あれがしたい、これがしたい、こうなりたい、こうしたい、っていう欲望ばっかり、そういう喘ぎが現れた声なのよ。喘いで喘いで渇き切った喉から絞り出されるような声ね。吉ちゃんの声は、その代表だったわ。今夜はそれが濃密になったみたいね」

『東京ボイス』 2006.4.10. ヒキタクニオ 講談社



2006年06月13日(火) 『家族会議』 吉村達也

 沢木孝は妻・麻紀と相談して3歳と6歳の息子の情操教育を兼ねてはじめての家族会議を行う。しかし、結局は孝と麻紀の思っている方向に息子達を誘導するという後味の悪い会議となってしまった。反省するふたりだったが、麻紀が倒れ、あっけなく死んでしまう。途方にくれる孝の前に現れたのは麻紀の母。義母は勝手に家に入り込み、息子達のためと言う大義名分を振りかざし、孝の生活さえ干渉するようになる。義母の存在に圧迫感を感じた孝は13歳年下の絵里と再婚を決意する。予想通り義母の激怒→壮絶な嫁いびりがはじめるが、絵里は動じない。なぜならば絵里にとって『不幸だから人生は素晴らしい』ものだから・・・

 娘を亡くして孫を育てたいがゆえに婿の家に強引に入り込んでくる義母。13歳年下で不幸大好きな再婚相手。孝はこの妙な二人の女に挟まれて地獄へまっさかさまに落ちて行く。でも結局は孝という男の軸がしっかりしていないからそういう災厄の女を二人も呼び寄せてしまった訳で。優柔不断はよくないなぁ。あと寂しいから大変だから、そういうので再婚をいそぐなんてろくなもんじゃねぇx 

「愛しあいながら別れたふたりは、じつはまだ別れていないんだよ。あの世とこの世に別々に暮らしているだけで、まだまだ心はつながっている」

『家族会議』 2006.4.25. 吉村達也 集英社文庫 



2006年06月12日(月) 『獣王星』 樹なつみ

 350年前に人口増加対策として地球からバルカン星系に移民を開始、2156年にバルカン星系連邦として独立した。バルカンの惑星は総て環境改造され人工的に人の住める星である。バルカンに住む人々の寿命は50年と短命。ある日、バルカン連邦の首都ユノの次期首相と目されているクラインと妻が惨殺されていた。それを目撃した双子の息子トールとラーイは拉致され、バルカン星系に存在しない星キマイラに落とされてしまう。この星は肉食の植物ばかりで人間達にとっては生き辛い地獄のような星。獣に戻らならなければ生きられない。よってこの星は獣王星=獣の王だけが生き残れる星と一部の知識人の間で呼ばれている。まだ幼いトールとラーイの運命は・・・!?

 深夜のアニメ獣王星を録画して見るようになり、その展開の面白さにたまらず原作を読んでみました。するとまぁスゴイすごい! まさか物語がこんな進み方をしてあんなエンディングを迎えるとは・・・いやぁ想像できない凄さで泣き所満載でありました。あらすじを要約していたらどこまでもなにもかも書きたくなってしまって大変でした。ネタバレしないで要約するって本当に難しい。自分が感じた面白さの一部くらいは届けたいし。うーん。要約にはかけなかったのですケレドモ、登場人物がものすごく魅力的です。主人公のトールは、まっすぐで頑なで力をどんどん貯えていく少年。双子の弟ラーイは見た目はトールと瓜二つながら性格は真逆。キマイラで最初に二人を救ってくれるザギはなかなかにミステリアス。次に出会うサードはイケメンで自信満々で憎たらしいほど魅力の垂れ流し。トールを見初めるティズは元気で可愛くて生命力あふるる少女。ティズの上司(って言い方でいいのかしら)チェンは粋でカッコいい姐御。トールが心惹かれるカリムは絶世の美女・・・とまぁ主だったキャラそれぞれが素敵すぎて(まぁラーイは問題ありだけど)こんな奴らが暴れるのだから面白くない訳が無い! ただ漫画を読んで残念だったのはもっと長く描きこんで欲しかったということ。エピソードや登場人物を簡単に使い棄てていて惜しい、ものすごーく惜しい。もっと長くて壮大に描いてくれたらよかったのに。ああ、ほんとに残念で。
 この物語の半ばから獣王星の意味がわかってきて、その意味の凄さにビックリ暁天でありました。しかも、しかも、アノヒトやコノヒトがあんなことにぃぃぃっ!!! もう一気呵成にトンデモナイ展開を見せて涙が止まらないのでありました。アニメではさすがにかなりタイトに搾っているようだケレドモ・・・どう描いていくのかしら。アニメも本当に楽しみなのでありました。ちなみにトールの声はキンキキッズの堂本光一君でサードは小栗旬君。サードの声がセクシーですっごくいいの!

 選んだ人生の決着(ケリ)くらい自分でつけてみろ!!

『獣王星』完全版� 銑� 2006.5.10. 樹なつみ 白泉社



2006年06月11日(日) 『棄霊島』下 内田康夫

 元刑事の後口は、軍艦島で起こった連続する事故死について不審を抱いていたことに光彦は気付く。正義感の強い後口が犯罪を見逃した出来事に行き当たった時に光彦は後口の忸怩たる思いに同調する。生と死と民族と。小さな島国日本に連れてこられた異国の民の苦しみと恨み。過去の怨念が現代に事件を引き起こす。光彦のつける決着とは・・・?

 内田康夫さんの物語は本当に勉強になります。興味の無いことを知ろうとしなくて無知のままきたことを内田節で優しく柔らかく教えてくださいます。日本が強制連行してきた異国の人々、その国の人々が現代で日本人を拉致している・・・そういう本当にあったこと、本当に起こっていることを内田康夫さんの目で見て心で語られています。内田康夫さんの考え方が絶対的に正しくはないにしても、私の様にあまりにも事実を知らないで生きてきた人間には大きな指針となってくださいます。かの国との軋轢、アメリカとの付き合い方・・・何よりも意志も意見も持たない日本、日本国民ーそれが大きな問題なのではないかと思います。自国を守る術を持たない民でいては滅びを待つのみなのではなかろうか。争いも奪い合いも無い世界ならばこんなこと考えなくていいのだろうケレドモ・・・人間は争う生き物なんだなぁ。あーx じたばたxx

 眼下の殉教の島、それに日本列島の至る所から、無為に棄て去られた霊魂たちの慟哭が聞こえてくるような気がした。

『棄霊島』下 2006.4.30. 内田康夫 文藝春秋



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