酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEX|past|will
| 2006年09月27日(水) |
DVD『いちばん暗いのは夜明け前』 |
海辺のメゾン204号室は邪気の集まる場所。この部屋を借りる若い女性達はみんななんらかの事件を起こし、変死者が続出していた。そんな因縁のある部屋を笑顔で借りる女、不破凡という若い女。彼女は60年前に壊滅させられた不破教団の教祖だった。そしてその姿は60年前と全く変わっていない・・・。不破教団は超能力を持った一族で人間ではなく悪魔族。人間界を滅ぼそうとする凡の姉・天が204号室を使って悪魔族を呼び寄せていたのだった・・・。
ホラーの名作『富江』の監督さんによるテレビドラマ・ホラーと言うことでかなり期待して観たのですが、怖さ的には今ひとつ・・・でした。残念。ソニン演じる不破凡の敵役のアイコ=熊田曜子の台詞の言い回しがどうも緊迫感に欠けていて。ソニンは良かったのだけどなぁ。基本的にまずは美人が好みなのですケレドモ、ソニンのようなタイプには何故だか惹かれます。肉体が美しいし、ちょいとコミカルで一生懸命さも滲んでるからかしら。内容をもっとホラー色濃くしてソニンを全面に出して欲しかった気がします。素材がいいだけにもったいない。
| 2006年09月26日(火) |
『空白の叫び』下 貫井徳郎 |
地獄のような少年院の毎日から卒院した3人の少年。葛城拓馬は親から与えられたマンションで静かに生きたいと望んでいた。久藤美也は家を出て自活するために金を貯える時期だと黙々とアルバイトに精を出していた。神原尚彦は叔母の住むマンションとは別のアパートを用意されていた。それぞれのカタチで生きていこうとする3人を周囲の色眼鏡は情け容赦なく、しかも粘着質な嫌がらせがはじまった。生き辛い3人は、再会し、破滅の道へと足を踏み出すのだった・・・。
14歳や15歳の子供が人を殺すと言う重い罪を背負い、家族をはじめ周囲から疎まれたら・・・どう生き直せると言うのでしょうか。更生するっていったいどういうことを言うのだろうと考え続けてしまいました。この物語の主人公の3人の少年を待ち受ける罰のカタチもそれぞれで、なんとも暗澹たる思いでいっぱい。こういう問題は考えても考えても答えが出てこない気がします。でも目を逸らしてはいけないのでしょうね。見て見ぬふりをしないで貫井さんのように真正面から考えて受け留めないと。
「それともうひとつ。私たちに詫びる気持ちがあるなら、その気持ちを大勢の人に伝えてください。特に、罪を犯しても反省することもできずにいる子どもたちに、今の気持ちを伝えてください。罪を犯すということがどういうことなのか、あなたは生きて、それをひとりでも多くの人に伝えなければならない。あなたがここにいるのも、英之が死んだのも、すべてそのためだったように今は思えます。あなたは自分の思いを語り続けなければならないー」
『空白の叫び』下 2006.9.20. 貫井徳郎 小学館
| 2006年09月25日(月) |
『空白の叫び』上 貫井徳郎 |
久藤美也(よしや)は名前が女の子のようだと小学時代に苛められていたが、中学になり力で周囲をねじ伏せるようになった。己の中に渦巻く瘴気に悶々とした日々を送る久藤の前に邪魔な女が現れた。葛城拓馬は頭脳明晰容姿端麗しかも裕福な家庭に生まれついたが、美意識と自制心で奢ることなくクールにそつなく毎日をやり過ごしていた。ただひとつの問題は自分の心を乱す不愉快で愚鈍な幼馴染の存在だった。神原尚彦は母に見捨てられ、祖母と叔母に育てられた。神原に優しい叔母だったが、神原の母である姉には激しい嫉妬と怨みを持っていた。3人の14歳の少年はそれぞれの毎日の中でトンデモナイ事件を起こし、少年院という地獄で出会ったのだった・・・
うーん、恐ろしい。こういう内容を情け容赦なく差し出す貫井徳郎さんの精神力がとてつもなく恐ろしいと感じました。すごい作家さんだなぁ。素晴らしい。14歳という年齢は儚くて揺れ動いていて、間違えば3人が陥ったような地獄へ落ちていく・・・。まだ幼い彼らは人生をやり直す事ができるのだろうか。一度大きな間違いを起こした人間に世間は情け容赦ないから。どうしても色眼鏡をはずせない。また何かしでかすのではないかと言う恐怖を持って接してしまう。間違いを起こした少年達の心が丁寧に克明に綴られた上巻。下巻で彼らに救いはあるのかしら。
なぜなら、言葉のやり取りとは心と心の接触だからだ。言葉が通じない相手と接すると、心が傷つく。痛みに悲鳴を上げる。それは皮膚を直接鑢で擦る痛みと、なんら変わりがない。
『空白の叫び』上 2006.9.20. 貫井徳郎 小学館
| 2006年09月22日(金) |
鳥取県境港市 水木しげるロード |
山陰へドライブに行き、念願の水木しげるロードを散策して参りました。運のいいことに天気に恵まれ、晴れ渡る美しい青空と港町ならではの海風に吹かれ、トテモ気持ちのよい散策が出来ました。鬼太郎駅(JR境港駅)近くのパーキングは、最初の30分無料と言う考えられないサービスっぷりにビックリ。驚いたまま境港交番を通り過ぎると鬼太郎交番と言うネーミングになっていて笑えました。まさに境港市は町をあげての鬼太郎フィーバー!(古いな) さて、境港駅前では執筆中の水木しげる先生を目玉おやじと鬼太郎とねずみ男が見守るブロンズ像がお出迎え。このブロンズ像の出来の良さは想像以上でした。水木しげる先生が御自身の『日本妖怪大全』から選びだし、妖怪デッサンも手がけられ、それをもとに作成された119体(2006年現在)とのことで、生き生きとした妖怪たちの姿に納得なのであります。全長800メートルのロードには妖怪たちがいっぱいで見ごたえ有りでした。 ただ、個人的に残念だと感じたのは喫茶店や食べ物屋さんに魅力がなさすぎたことでした。入りたいと思えたのは鬼太郎たちをパンにしている神戸パンさん一軒だけ。これでは休日に観光客がたくさん来た時に目では満腹できても実際のお腹はぺこぺこだろうなぁと思うのです。妖怪喫茶とかアイデアしだいで名物飲食店がいくらでも流行るでしょうに。その点を改善してもらえたら、何度でも妖怪たちに会いに行きたい町になること間違いなし!と思ったのでありました。
勝又真吾は深夜放送の人気パーソナリティ。局移転に伴い、ある深夜開局当時に使用していた地下にあるブースから放送することになり、ゴネる真吾。軽妙な語り口で人気の真吾だったが、実際は傲慢でいやな男だった。番組放送中にリスナーからの相談電話を受けるコーナーのテーマは【許せない一言】、最初にかかってきた電話は12歳の少女“ばけみ”ちゃん。彼女の悩みを聞いている時、キーキーという耳障りなノイズが入り、「ウソツキ・・・」という女の声が混じる。そこからどんどんと始まる奇妙な世界。真吾は自分の過去に自ら復讐されるかのようだった・・・!?
主演の佐藤隆太くんは脇でいい味を出す若手俳優さんとして気に入っていました。この映画で今までの飄々とした温かいキャラではなく、傲慢でいい加減な男をそれはウマク演じてらっしゃいます。ホントやな奴なの、勝又真吾って。映画のプロローグは白黒の昔の映像。開局当時のブースでDJが電話相談の女性に意見をしていたら彼女は昔に自分が心中騒動を起こし彼女だけ死んだ・・・はずの女からで・・・と言うなかなか不気味に観客の心をぎゅうっと鷲づかみ。そんないわくありのブースで深夜放送をする羽目になった真吾は、捨てた女や言葉で苛めた同僚や過去の数々の所業から復讐される・・・それをリアル・タイムと真吾の回想と真吾の疑心暗鬼が絡み合って奇妙な世界を生み出しています。ほぼブースの中での一人芝居に近いもので佐藤隆太くん頑張ったなぁって感じでした。勝又真吾が放送中に何げなくもらした「いやぁ言葉って本当に怖い」という本当の意味を真吾は自分の身を持って知るのでありました。
| 2006年09月20日(水) |
『ジウ�掘/契こγ畚�【NWO】』 誉田哲也 |
門倉美咲は東主任に胸キュンしつつ、必死でジウを追跡していた。伊崎基子はミヤジによって自分の中に眠る殺戮の本能を見せ付けられへろへろになっているところを美咲に保護される。そしてまたもやSATへ復帰命令がくだる。そんな折、街頭演説中の総理大臣が拉致され、クーデター勃発。歌舞伎町を封鎖したミヤジとジウの望んだものはいったい何だったのか・・・!?
うーん、なんとも後味の悪い展開となってしまいました。�気鉢兇�好みだっただけに、この�靴陵遒箸形阿良佞永�にはちょっとがっくり。ジウをクローズアップしてくれなかったので欲求不満が残っちゃいましたぁ。ぶぅぶぅぶぅ。ジウとミヤジの「己は何者か?」と言う痛いほどの疑問や欲求に関しては言葉が無く、・・・だからってこんなことしていい訳じゃないですけどね、モチロン。家族がいて愛があれば・・・ってことなのかしら。基子もこの度は少々気の毒な展開が待ち受けていました。ただ基子が毛嫌いしていた可愛いコちゃんの美咲が根性あるところを見せてくれて基子を救おうと頑張ってくれて良かったです。おかげで基子にはまだ人間に戻れる道が残りました。美咲のように芯にキチンとした核を持っていたら人間は強くあれるものですね。ぶりぶりした可愛いコちゃんタイプではなかった美咲の存在が物語を救ってました。最初は美咲のことを基子同様あんまり好きじゃなかったのですケレドモ、最後には「よく頑張ったね」って褒めてあげたい気持ちになりました。でもやはりジウのことをもっともっと書き込んで欲しかったです。ちぇー。
『ジウ�掘/契こγ畚�【NWO】』 2006.8.25. 誉田哲也 中央公論新社
| 2006年09月18日(月) |
『京都祇園迷宮事件』 海月ルイ |
夏目潤子はフリーライター。《祇園えとせとら》と言うコラムを書くために京都祇園の老舗お茶屋“北尾”に住み込みをさせてもらっている。世界中から観光客が訪れる古都京都。その中でも祇園のしきたりは独特でとまどうばかり。女将の喬子が力を入れて育てている舞妓・美代鶴のお店だしが近づく気ぜわしいある日、“北尾”に来ていたお客のひとりが惨殺された。そして連鎖していく殺人事件。“北尾”に遊びに来て品のない騒ぎ方をしていたお客が次々と殺されていく訳とはいったい・・・!?
京都を舞台にした殺人事件のいかに多いことか(笑)。そしてついつい惹かれてまんまと読んでしまうミーハーな読者な私(大笑)。観光地で起こる殺人事件ってその場所になんらかの思い入れがあると手に取ってしまいがち。そうしてみると観光場所ナンバー1の京都が舞台になるって当然の帰結ですね。海月ルイさんは京都のお生まれだそうで上っ面でない舞台となっていました。軽くなかったですね。祇園という摩訶不思議な世界を舞台にうまく殺人事件を起こされていた(苦笑)と思います。つるりと読むにはいいですねv
『京都祇園迷宮事件』 2006.8.31. 海月ルイ 徳間書店
| 2006年09月17日(日) |
『ボトルネック』 米澤穂信 |
嵯峨野リョウは2年前に死んだ諏訪ノゾミを弔うために事故現場の東尋坊に来ていた。2年経ってやっと現場に訪れる事が出来たリョウだったが、間が悪いことに母から兄の死を知らされる。容赦のない母の言葉によって家に急いで戻らなければならくなったリョウを海風がびょうびょうと吹きつけ、「おいで、嵯峨野くん」と言う声が聞こえた気がした。強い眩暈の後、気がついたリョウが家に戻ると鍵が合わない・・・。そして家の中からいるべきはずのない姉サキが出てきた!? リョウは東尋坊で強風に吹かれ眩暈がした後、違う世界に迷い込んでしまったらしい。その世界では死んだはずの人が生きていて・・・!?
酷い。酷すぎる・・・ブルブル、と読みきって震えがきてしまいました。でもその酷すぎるブルブルな感想というのは私の感性から言うと最高級にブラボーってことであります。残酷で容赦のない展開とエンディングにやられまくって快感でありました。でも心に痛いのが苦手な方にはオススメできませんね。私のように痛い系ダイスキ人間をしても「痛い〜っ!」と叫びだしてしまいましたもの。リョウの人間性や考え方に問題がおおいにあるにしても・・・母親が酷い。たぶん父親も。リョウの閉塞的な思考回路の痛ましさとサキの解放された脳天気な明るさの対比になにかと思うことが多かったです。そして伏兵と言うべき悪の存在が光りました。こういう悪の塊って存在しそうですものねぇ。
「そりゃ、あいつの性根がぐにゃんぐにゃんに歪んでいるから」
『ボトルネック』 2006.8.30. 米澤穂信 新潮社
| 2006年09月16日(土) |
『銀の砂』 柴田よしき |
珠美は豪徳寺ふじ子が入院している病院へ駆けつける。一世を風靡した女流作家ふじ子は51歳。珠美が秘書をしていた頃と変わらず妊娠しては流産を繰り返しているのだ。ふじ子に焦がれ、妬み、苦しみ、やっと離れた珠美だったのに、またしてもふじ子の妖しい魅力に取り込まれてしまうのか・・・?
最近、柴田よしきさんの物語を読めていないなぁと渇望していたところへ『銀の砂』が発売され狂喜乱舞しました。どうしたってかなり好きな作家さんの物語と言うものは麻薬みたいな(や、麻薬を体験したわけではないのですケレドモ)もので切れるとダメー。そしてガがガガッと貪るように読んで、内容のあまりのエグさにやられてしまう、と言うジャンキーの正しい姿ですね(苦笑)。ここまで女の汚さを描ききられてはシャッポを脱ぎまくりますよぅ。汚らしくも魅力的な女王ふじ子。その哀しい過去にはなんとも言えず・・・。嫁と姑の確執なんてものは、体験した者には(もしくは現在進行形で体験している者には)殺意すら覚えるんじゃないかしらん。くだらないことなのに無くならない関係ですよね。やだやだ。ふじ子の魔性に絡め囚われ、使い捨てられる人たちの中で珠美だけはスペシャルだったのだなぁ・・・と思いました。珠美がふじ子に惹かれる気持ちは痛いほどわかるし。心にズキズキ痛くてたまらないのに読まずにはいられない、そんな柴田よしきさんならではの圧巻の物語でありました。感服つかまつった。
「とても傲慢な考え方でしょうね。・・・・・・読み手は、書き手が何をどう書こうと、発表された作品を自由に読み、どんなふうにも想像をめぐらせる権利はあるわ。でもね、書き手が、本当は何を思っていたのか、それだけは、読み手には永遠にわからない。想像し、分析し、ああだこうだと結論づけることはできても、それが真実なのかどうかは、決してわからない。わかってはいけない。そういうものじゃないのかな・・・・・・だって、もしそれを知ってしまったら、小説の解釈はただひとつに収束してしまう。他の読み方はゆるされなくなってしまう。あなたのしようとしていることは、強盗みたいなものなのよ。小説を離れたところで、生身の書き手をこうして脅して、その真実を知ろうとするなんて、ね」
『銀の砂』 2006.8.25. 柴田よしき 光文社
新宿のストリートギャング・亞宮柾人は、政治・思想犯専用特別収容所K7号施設に収監される。そこは囚人を生徒と呼び、生徒たちの自主性に重きを置いていて、刑務所と言うより寄宿制の学校みたいだった。さまざまな思想犯たちと関わりあい、成り行きから妙な事件を解決するうちに亞宮柾人は日比谷暴動のカリスマ宇賀神と言う男の存在を知り、興味を覚える。その日比谷暴動で宇賀神に敗北した北と言う男がK7号の所長であり、北は日比谷暴動の真相を知りたがっている・・・? 思想犯でもないストリートギャングの亞宮柾人がK7号に収監された訳とはいったい・・・?
こういうテイストの物語は苦手な部類なのですケレドモ、『エデン』はトテモ面白かったです。やはり小難しい自分の正義・思想・信念で凝り固まった人間たちの中に毛色の変わったやんちゃボーイが旋風を巻き起こす。妙な事件も要領よく片付けていき、まさにカリスマ宇賀神の再来?と言ったところ。魅力のアル人間と言うものは存在自体がカリスマなのですねぇ。
「思い込むことで、不安に打ち勝っていけるんだ。ところが、お前にはそういうものがぜんぜんない。不安にならないのか?」 「なるか。アホくさ」 亞宮は吐き捨てた。「生きるための目標だとか意味だとか、そんな温いこと言ってるから、頭がおかしくなるんだよ」
『エデン』 2006.8.10. 五條瑛 文藝春秋
|