酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年10月17日(火) 『ミーナの行進』 小川洋子

 家庭の事情で親戚の家で暮らすことになった朋子。岡山の田舎から新神戸に降り立ち、ダンディでカッコいい伯父様に連れられて芦屋へ。ドイツ人のオシャレなローザおばあさん。誤植探しに一生懸命な伯母さん。お手伝いの米田さんと小林さん。そして、身体が弱い美少女ミーナとペットのポチ子。あの家で過ごした日々の想い出は損なわれることがない・・・。

 美しくて心に優しい物語にうっとりしながら読み終わりました。小川洋子さんの文章と寺田順三さんのイラストがぴったりと合っていて、まるで音楽(美しいハーモニー)を読んでいるかのようです。朋子が親戚の家で過ごした日々が丁寧に心優しく綴られていてせつないほどに懐かしく感じました。従姉妹の美少女ミーナとマッチとポチ子、その愛しいものたちを朋子は優しく愛しく見守ります。ああ、自分は朋子に同化して物語に参加できていたのかもしれないなぁ。オススメですv

 しかし、現実が失われているからこそ、私の思い出はもはや、なにものにも損なわれることがない。

『ミーナの行進』 2006.4.25. 小川洋子 中央公論社



2006年10月16日(月) 『新宿鮫�察ヽヌ襦戞‖臑�在昌

 鮫島は、警察機構を破壊する爆弾(告発)を残し死んだ友人・宮本の七回忌法要にやって来た。法要で会った宮本の旧友と酒を酌み交わした後、何者かに拉致監禁されてしまう。檻の中で目覚めた鮫は・・・!?

 この『灰夜』は鮫シリーズでも異彩を放つ物語です。鮫が新宿を離れますし、まさに孤軍奮闘!ですから。・・・そう考えて見るとアウトローで一匹狼な鮫には新宿で仲間がいるわけですね。恋人も。しかし、この物語で鮫が檻に監禁されるシーンは読んでいて怖かったです。閉所恐怖症な人間だったら狂ってしまうだろうに。鮫は意外に冷静沈着。そして気持ちが通じ合った存在には頼もしい奴となる。それをわかっていて宮本は警察機構を揺るがす爆弾を鮫に託したのでしょうね。なんだか鮫がかわいそうになってきました。鮫が鮫であるために。

『新宿鮫�察ヽヌ襦戞‖臑�在昌 光文社カッパノベルス



2006年10月15日(日) 『ヘヴンリー・ブルー』「天使の卵」アナザーストーリー 村山由佳

 自分の恋人(歩太)が姉(春妃)に恋してしまった。そんな夏姫の視点からの物語です。「天使の卵」では予期せぬ事態(恋の邪魔者役)に陥ってしまい、大好きな男と大好きな姉への愛憎に苦しんだ夏姫。その夏姫が今はいない姉と同じように年下の男に恋をしている・・・。大好きな姉に投げかけた言葉が夏姫にとって呪となってしまっていて苦しんで苦しんで・・・。誰も悪くはないのに3人が3人とも苦しむことになってしまった苦い過去。そんな過去の呪縛から夏姫は再生できるのか?
 ひとつの出来事があっても、関わった人の数だけ真実がある。視点が変われば真実もカタチを変えてしまうのですよね。どれが正しいわけじゃなくて、どれもがきっと正しくて。簡単じゃないものだよなぁと思います。でも人はいつまでも同じ所に立ち止まっていられない。自分なりに自分の中で消化して、また足を前へ踏み出さなければならない。自分の真実も他の人の真実も大切に出来たらいいのですケレドモ・・・うーん、なかなか難しいことかもしれないなぁ。ただ思うのです。愛だろ、愛っ・・・って。

「誰に何を言われても消えない後悔なら、自分で一生抱えていくしかないのよ」

『ヘヴンリー・ブルー』2006.8.30. 村山由佳 集英社



2006年10月14日(土) 『禿鷹�検‘殿觴蹐蝓戞^�坂剛

 神宮署の悪徳刑事“ハゲタカ”こと禿富鷹秋。自分のやりたように物事をすすめ、人殺しすら平気でやってのけて他人に罪をなすりつけてしまう。ヤクザも南米マフィアも怖いものなしのハゲタカつぶしに警察内部で不穏な動きが・・・。そしてハゲタカの前に現れた岩動寿満子。なにもかも大柄で雑な筋肉質な女・岩動がハゲタカ狩りをはじめた!

 ものすごく好きでたまらないシリーズという訳でもないのですケレドモ、なんとなく読まずにいられないハードボイルドであります。まさかこの刊で完結するとは思っていなかったのでかなり驚きの展開でありました。へぇ〜、まさしくこうあるべきエンディング。刑事であるハゲタカよりもヤクザなふたりのイケメンの方に好感が持ててしまうってある意味すごいことだったわ(笑)v そしてハゲタカの風貌のイメージはリチャード・ウィドマークとのことで、そんなの知ってる人のが少ないのじゃないかしらん(大笑)。私はたまたま中学の時に映画好きが集まってワヤワヤ話してて、その中の男の子がやたらめったらリチャード・ウィドマークを語っていたので辛うじて知っておりました。でももうその面影もぼんやりだなぁ。日本で人気が出た役者さんではないし。私の勝手なイメージではスティーブ・マックイーンだったの。それもまた古いか(笑)。

「撃ってみろ、岩動。人を撃つ度胸があったらな」

『禿鷹�検‘殿觴蹐蝓戞�2006.7.15. 逢坂剛 文藝春秋



2006年10月13日(金) 『QED〜ventus〜御霊将門』 高田崇史

 時は春、三月末の薬局は花粉症の患者さんで忙しい。ホワイト薬局できりきり働く棚旗奈々は元気で姉思い(?)の妹・沙織の画策でタタルさんこと桑原崇と3人でお花見に行くことに。うきうきと桜の名所、九段千鳥ヶ淵へ出かけてみたら、いつの間にやら日本三大怨霊のひとり平将門にまつわる場所を巡りはじめ、タタルの謎解き&講釈もはじまった!(笑) 怨霊に祀り上げられた将門とはいったい・・・?

 うーん、面白いv QEDシリーズで解き明かされる謎を読んでいると知っているはずの歴史の違う顔を垣間見ることができて本当に楽しいです。漠然と頭の隅っこに眠る知識と目の前で繰り広げられる謎解きとのギャップが大きければ大きいほどに面白いなぁと感心することしきりであります。歴史の真実っていったいどこにあるのかしら。なんだか時の為政者の都合のいいカタチで歴史が作られていて、その陰に隠れている真実って残された真実の欠片から想像するしかないって繰り返し教えられる気がします。ただ通り一遍に教えられた歴史の教科書の知識ではなく、自分の目で心で疑問を感じて考えて想像すると歴史は壮大な浪漫となる・・・。うーん、QED片手に将門の縁の場所を巡りたくなってきましたよんよんよん。

「もっと俺たちは、昔、この国では一体何が行われてきたのか、それをしっかりと知っておく必要がある。そして怨霊を作りだしてきたのは誰なのか、なぜ怨霊が生まれなければならなかったのか。その点をきちんと把握しておかなければならないと思う」

『QED〜ventus〜御霊将門』 2006.10.5. 高田崇史 講談社



2006年10月12日(木) 『シャドウ』 道尾秀介

 我茂鳳介は母が亡くなり、父とささやかに暮らし始めた。そんな時、幼馴染の亜紀の母が飛び降り自殺をしてしまった。鳳介と亜紀は家族ぐるみで仲がよく、父親同士・母親同士・子供同士で親しくしていた。なにかがすこしずつ歪みだしたような毎日の中で今度は亜紀が事故に遭い、鳳介の父親までも・・・!?

 人間は、死んだらどうなるの?・・・小学5年生の鳳介が漠然と抱える人の生への疑問と不思議。その疑問に母や周りの人間が死んだり、傷ついたりすることで何かを知ってしまう鳳介。こんな悲しいことを小さな少年が受けとめていくなんて読んでいてやりきれなかったです。人間の汚さや悪意になど触れずに生きていければいいのですケレドモね。ミステリ・フロンティアシリーズも27冊目。ほぼ好きな作品が多くて(ときどき合わないものも)トテモ楽しみなシリーズですv

 果たしてあれは、誰にとって理想的だったのだろう。苦しまなかったことは、誰にとっての救いだったのだろう。

『シャドウ』 2006.9.29. 道尾秀介 東京創元社



2006年10月11日(水) 『新宿鮫�此”紘顱戞‖臑�在昌

 鮫島はマホと言う不思議な美女のひとり語りの芝居を観て引き込まれた。忙しくなった晶にも見せてやりたい・・・と思うが、晶のバンドフーズ・ハニイは売れ始め、会うにもままならなくなっていた。晶との関係が微妙になる中、元CIAのブライド殺しに巻き込まれ、なぜだか捜査を阻もうとする公安とますます対立を深めていく。孤軍奮闘する鮫島の前にマホこと杉田江見里が現れ、ふたりは惹かれあうものを見つけてしまい・・・!?

 警察機構を揺るがす秘密を握っているばかりに孤立する鮫島。その鮫島を救っているのが年下の恋人のロックシンガー晶だったのでありますが、・・・鮫ったら気持ちがよそへふらふらしてしまうのですよー。大馬鹿者めx でもそんな鮫だから人間味を感じるとも言えるのですよね。晶ちゃんは鮫よりずいぶん年下なのに骨太な根性を持っている女の子。今回のことで晶の良さをあらためて知らされました。あなたと私は恋人よ、とか、あなたと私は友達よ、ナンテ契約ではありませんものねぇ。人と人とのつながりはナマモノで揺れ動くもの。確かな絆のいかに難しいものであることか。自業自得な横恋慕を鮫はどう消化していくのかしら。

『新宿鮫�此”紘顱戞‖臑�在昌 光文社カッパノベルス



2006年10月10日(火) 『東京ダモイ』 鏑木蓮

 1947年11月、極寒凍土のシベリアで捕虜となった日本兵たちは互いに疑心暗鬼になっていく。そんな状況で斬首事件が発生。しかし、凶器も犯人もわからなかった。その後、帰還した男が60年経ち自費出版で句集を出そうとした。シベリアでの過酷な生を感じさせる生々しい文章を残し、彼は失踪。出版社の槙野はその文章に惹かれ、失踪事件と殺人事件を追いかけ、そして・・・!

 『東京ダモイ』、そのタイトルに郷愁を感じましたが意味は知りませんでした。ダモイとはロシア語で帰還という意味だそうです。捕虜となった日本兵たちが東京ダモイを信じて必死になって生き抜いた・・・そういう時代を知らずにいるのだなぁと平和ボケな自分にちょっと疑問を感じました。知らずにいればそれはそれでいいのでしょうケレドモ、知ってしまい魂をゆさゆさ揺さぶられてしまった以上はキチンと知識として頭に入れたいなと思います。決して忘れてはいけないことがあるとしたら、二度と起こしてはいけない戦争なのでしょうね・・・。物語がどうこうと言うよりも、自費出版されようとした句集に描かれたシベリアラーゲリの話をもっと読みたいと思いましたもの。そこが一番の魅力でした。

 もう過去のことだと忘れてしまっていいのか。今後ますます戦争体験者の数は減少していく。情報を受け継ぐことが人類を進歩させてきたのではないか。それを考えれば、広島、長崎の原子爆弾に匹敵する大惨事、シベリア抑留者の強制労働を風化させていいのか。シベリア、満州を合わせて三十万人の死者を出したと記述されたものを図書館で読んだ。にもかかわらず、どれほどの人がそれを知っているのだろうか。話題のミステリーベストセラーを読む人々の何割が、ダモイという言葉の意味を理解できるのだろうか。

『東京ダモイ』 2006.8.10. 鏑木蓮 講談社



2006年10月09日(月) 『彼女の命日』 新津きよみ

 楠木葉子、2002年10月1日通り魔に遭遇し死亡。35歳の葉子は父亡き後、母と引きこもりの妹のために家計を支え家族を守っていた。やっと恋人に求婚され、甘えられる存在ができた矢先のことだった。そして1年後、葉子は何故だかこの世に戻ってきた。誰だか知らない女の身体を借りて。そして2年後、3年後、4年後と葉子は誰かの身体を借りてこの世に蘇りつづけるのだが・・・。

 人は誰しもいつか死にます。早かろうが遅かろうが命が尽きる定め。その限りある時をどれだけ後悔なく生きられるか・・・。ただ漫然と生きていると後悔は多いでしょうね。この物語の主人公・葉子は頑張り屋さんでやっと自分の幸せを手に出来ると思った矢先の無念の死。その無念さゆえに、命日に蘇り続けるのかもしれません。ただ蘇ったところで生者は死者のことばかり考えてはくれない。その現実を見て余計にやるせない想いをするなんて・・・死ぬならば静かに朽ち果ててしまうがいいのに。死して尚、かなしい事実を知ってしまうなんて私はいやだなぁ。なんだかトテモ悲しくせつない物語でありました。葉子がんばりすぎ。

 自分がいなければどうにもならない、何もかもストップしてしまう、なんて思っていても、案外何とかなるもんだよ。 〜中略〜 ときには開き直りというか大らかさがないと、ストレスがたまってやってられないんじゃないの?

『彼女の命日』 2006.9.8. 新津きよみ 角川春樹事務所



2006年10月08日(日) 『毒』 深谷忠記

 柳麻衣子は看護士として初めて感じる患者への嫌悪感に悩まされていた。その患者は横暴で卑猥、家族にも看護士にもドクターにも嫌われていた。その患者が毒殺された。麻衣子が結婚を考えているドクターが犯人と疑われてしまったのだが・・・?

 この物語は病院が舞台となるため、タイトルの『毒』は文字通り毒を表し、そしてまた人間の持つ毒をあわせもっています。宮部みゆきさんの『名もなき毒』の毒と相通じるものがあったように感じました。毒を撒き散らして平気でいる人間の神経というのはそれはそれは恐ろしいものだと思います。人間は誰しも身体のどこか毒を持っていて、きっとそれを必死で押さえ込んでいるものではないのでしょうか。あふれでた毒、確信犯であれ無意識であれ毒は毒。かならず汚染します。だからなにかのきっかけで自分の毒を見つめて封じ込めなければならない。そんなふうに思うのです。人間は清濁併せ持ち、決して綺麗な生き物ではない。自分は絶対に間違っていないなんて思わぬように、そんなことを自戒しながら。

 仕事ができようと、社会的に認められようと関係ない。他人を傷つけ、他人を苦しめて平気でいられる者、それでいて罪の意識をまったく感じない者、それこそ最低の人間だろう。

『毒』 2006.8.31. 深谷忠記 徳間書店



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