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2002年04月03日(水)
アマガエル


おじいちゃんに
パチンコ屋へ連れて行ってもらった。
おじいちゃんが
まだ生きてて、元気に歩きまわれた頃だから
わたしがまだ小学生の頃。

確か1000円、最初にもらって
遊んでおいでと言われたんだ。

周りは知らない大人たちで混んでて、席がなかったから
おじいちゃんとは離れた台に座って「パチンコ」というものをした。

いま考えると変な絵だな。
大人たちのタバコに挟まれて
小学生が、よく分かりもしないのに
ひとりでシャキシャキやってるんだもの。

でも楽しかった。
なんだかピカピカ光るのと時々、ザラザラって銀球が転がって出てくるのが。
けれど1000円なんてお金、パチンコでは
すぐなくなってしまう。
「あ〜あ、終わっちゃった」
「でも、いいや。またもらえばいいんだから」
「おじいちゃんはボクを可愛がってるし。きっとくれる」

じいちゃんは
わたしが近づいて、けれど何も言い出せずにもじもじしているのに気づくと
こちらを見ずに
「金が、ほしいか」とだけ言った。

彼は特に他意もなく言ったんだろう。
でもドキっした。
ひどく現実的に聞こえたような。
いちばん下の孫で、可愛がられるのが当たり前の
自分のそういうあさましさが見抜かれたような気がして。

わたしはそれで「ううん、もういい。」とだけ言って
じいちゃんの横でピカピカを見ていた。