
|
 |
2002年12月22日(日) ■ |
 |
姥捨てものがたりに愛を |
 |
売上枚数の発表ってどれも 一般リスナーがお金をだして買った数なのか お店やレンタル業者が卸した数なのか、という疑問はあったのだけれど いまは既にそれどころの話しではない。
CDが売れないという話しをごく頻繁に耳にするようになった。 細かい数字の分析はほっておいて 音楽業界は、いままさにローリングストーン。 なにも不景気のせいだけではなく レンタル、中古販売、コピー、ファイル交換ソフトなどが一般的に その原因として挙げられている。 しかし、そのなかには レンタルやコピーで済んでしまうものばかりが作られてきた という理由も大きいと思えるのだ。
標的は中学生から大学生。いわゆる若者。 聴きやすく、コマーシャルの15秒で印象づけて 右から左へ流れる商業歌謡に専念。 話題作りに余念なく、自社で予約、買い込み。 ランキングに押し上げて流行をつくる。 聴き手はそれを見てシングルをまとめてレンタル、ダビング。 一時期を着こなし理解、共有して着こなした気になっていた。 その消費のしかたのなかでは 買うよりも安い方法が現れれば売れなくなるのは必然だ。 レンタルもせずに聴けるんだもん。
逮捕者をだした話題の交換ソフトを使ってみると、じゅうぶん納得。 流行のミュージッシャンの曲なら 30分もあれば10〜20曲をたやすく入手できる。 そのMP3をCDに焼き付けたとして70円程度で一枚のCDが出来上がる。 音質は唯一のデメリットといえるが(大半は製品の半分程度) ウォークマンで聴いたりするのに、また 相当いいスピーカーで聴いているひとでもない限り それほどの支障は予想されない。 中高生なら尚更のこと。 だってなんつっても無料だし。
その際、業界の最終兵器CCCDも意味を成さないことも ユーザーなら熟知している。 実際にコピーコントロールの入ったCDの音源が いくらでも交換ソフトで流通しているのだ。 味をしめたリスナーの「常識」が パソコンで直接再生できない程度でそうそう抑えられるわけがなく その「常識」を叶える技術を提供して 儲けようとする業者がすぐに現れるからである。 そして今迄ターゲットにしてきた若者達がいま金を払わなければいけないのは 無料で手に入るCDよりも、携帯電話のほうなのだ。
この現象を 聴き手が「これは良い。一生ものだ。」と思わせる楽曲を提供できれば 解決するものだ、と言い切ることはできないが 歌ってるひとが作詞作曲した方が「かっこいい」からというやり方を確立させて 各々の専門家を殺し、育てなかった現在は それすらもできない状況だといえる。
いま業界が企てている策としては 下手な若者に曲をかかせるよりは、とオリジナルよりもカバー。 「一生もの」のニュアンスがあるベスト盤。 と(おそらく中高年世代に)方針を変えつつある。 しかし、そんなものはほんの一時のノスタルジア。 流行の20年周期説かは知らないが 昭和歌謡テーストが流行と謳ってはいるが 単に今までの、メディアを使った流行づくりに乗っけられた歌たちが 全く売れなくなり その裏でこつこつと根強いファンを持ち続けてきた歌い手が 残っているだけにも見える。 つまりカバーですらない「サントワマミー」を よっぽどのマニアか中高生しか買わないアイドルに歌わせるのも まったくの的外れだ。。
というわけで、かつてのウハウハを目論む業界は いままさに暗礁空域。 次なる手をワクワクと待ち焦がれるわたくし。 今後はいったいどうなることやら。 ライブじゃ儲からないし(ひとは入るようになっても穴埋めには到底満たない) 配信に切り替えてもすぐにコピーが出回っては氾濫する。
CDに関してはこれからタダで手に入るのに、 わざわざ買うっていうのはマニアだから そういうファンを持てない演じ手から差っぴかれて 音源を買うっていう行為自体がマニアなこと、となるかもしれない。 絵を買ったり、お芝居を観に劇場へ行くみたいに CDを買うってことは「お好きなんですね」って言われること、 になるかもしれない。 でもそれでいいと思う。 それで自然なんだ。 ずっと側に置いておきたいから買うんだし そう思われない商品はコピーで充分なんだ。 ジャンル別売上グラフが全体的に低く、けれど横まっすぐに近い形になって もっといろんなジャンルに脚光があたり話題になるかも。 音楽はファッション的なものだけじゃない。 いま、売れているもの、のジャンルはとても狭いのに ほとんどのひとがカラオケ行くときに「最近の曲って分からないけど」って 言い訳みたく言わなきゃいけない世界ってやっぱりヤダな。
お菓子みたいに、おまけやらで付加価値を高めるぐらいなら いっそLPレコードにもどしたらどないやろ。 いーじゃん。おっきくて「買った!」って気がするし。 音も気持ちいいし。(これは好きずきだけど)
ひと時代を背負わされて いまは中古店の片隅で 100円で叩き売られている、 それでも売れない歌たちに、せめてもの愛を。
(今日のごっちゃ箱を書くにあたり ハセガワアユム氏の大変なご協力をいただきました。 どうも、ありがとう。ごめんよー)
|
|